ABULHOOL IN ACCELWORID
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昼休みが終わり、黒雪姫は病院に搬送され、俺は頬にガーゼを、頭に包帯を巻いて授業に出た。
その放課後。
「ハル」
下駄箱で靴を履こうとして声を掛けられた。
「よう、チユ」
昨日のサンドイッチの礼を言おうと口を開き掛けた時…
「ハル、昼休みの事聞いたよ」
昼休みの件はどうやら学校中に広まってるらしい。
「アイツ等に殴られて物凄い吹っ飛んだんだって?」
「なに、さして大きなケガじゃない。
この包帯も飾りみたいな物だ」
「そう…よかった」
チユは本当に安堵したような顔をした。
「じゃぁたまには一緒に帰ろう」
「お前部活は?」
「昼の一件で職員会議があるから今日はどこも休みだよ」
なるほど、下駄箱いつもより混んでるのはそういう理由か。
校門を出ようとした時、黒雪姫の言った言葉を思い出した。
直ぐ様ニューロリンカーをクローズドにする。
マンション近くの歩道橋でチユが"さりげなく"聞いてきた。
「あ、そう言えば二年の黒雪姫先輩と直結したんだって?」
「まぁな。でもお前が思ってるような事じゃないぞ。
なんか訳のわからんアプリを押し付けられただけだ」
ふと、前方に見慣れた長身が写った。
「あ!タッ君!」
チユはその長身に向けて駆け出した。
それに長身も気付き、こっちを向いた。
「おっすハル、久しぶり」
「ああひさしいな」
確か一月くらい会ってなかったな…
すると二人がのろけ始めた。
あーあ…カップル+1だとどうしてもキツいよな…
「ハルも昨日チーちゃんの弁当食べたんだろう?」
なんで知ってんだ?チユが話したのか?
「おお、旨かったぞ。そういや礼を言ってなかったな…ありがとなチユ」
「んーん。大した手間じゃないしね」
「だけど彼氏君は嫉妬してるみたいだぜ。
なぁ、タク」
「まぁね」
「ほら、だから言ったじゃねぇかチユ」
「ごめんねタッ君…」
チユがタクに抱きつき…
「いいよいいよ」
タクがチユの頭を撫でる。
やってらんね…
「ケッ…リア充共が…末永く爆発しやがれ」
そう言い残して俺は家に向かった。
「あっ!ちょっ!ハル!」
チユの声が聞こえたが無視だ無視。
マンションのドアを開ける。
「ナツーただいまー!」
「お兄ちゃん!」
ナツが走ってきて、抱きつかれた。
「おう、どうした?」
「お兄ちゃん殴られたって…」
あー…心配かけちまったかな…
「なに、大したケガじゃない。安心しろ」
その夜見た夢を、俺は当分忘れられそうにない。
俺は暗い場所にいた。
「ナツ?」
近くにナツがいた。
「母さん?」
母さんもいた。
二人がこちらを見ていた。
だけどその目には何も写ってなかった。
やがてクルリと向こうを向き、二人は歩きだした。
「待って!どこ行くんだよ!?」
二人を追おうとした。
だけど…
どぷん…
足が何かに呑まれた。
その粘性の何かは俺の足を絡めとる。
「待って!行かないで!」
二人に手を伸ばそうとした。
でも、伸ばす腕なんてなかった。
二人が再びこちらを見た。
その目には疎ましさがあった。
そして二人は歩き出した。
「待ってよ!いかないでよ!」
待って…!
「見捨てないで!ボクを見捨てないでよ!」
なんで…なんでだよ!
「ボクの腕が無いから!?だからボクを見捨てるの!?」
まってよっ!
「おねがいだよ…ボクを…」
おいていかないでよ…
途方にくれて空を見た。
あぁ…もしも…ぼくに腕の代わりがあったら…
そう…例えば翼があれば…
そしたら二人を追っかけて、隣に立てるのに…
腕がなくても…羽があったなら…
《それが、君の望みか?》
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