英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇
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異伝~終焉に諍う英雄達の来訪~第6話
~遊撃士協会・クロスベル支部~
「テスタメンツの元リーダーに関してはそちらの世界と一緒だと思うけど、”星杯騎士団”に戻って”星杯騎士”としての任務で各国を回っていて、”搦め手”は”警視”に昇級して、クロスベル警察の上層部の一人として活躍しているわ。」
「ティオちゃんは一度レマン自治州のエプスタイン財団の本部に戻ったけど、エプスタインのクロスベル支部の開発主任として最近クロスベルに帰って来て、キーアちゃんはロイド君に引き取られて以前のように普通の女の子としての生活をしているわ。」
「元警備隊の若手と”闘神の息子”はそれぞれ准佐待遇でクロスベル帝国軍に所属したけど……”闘神の息子”は第Ⅱ分校の教官の一人として、第Ⅱ分校に派遣されたって話だよ。」
「という事は第Ⅱ分校に元からいた教官陣は分校長を除けば僕達の世界と同じようだな………」
「そうですわね。……ただ、エレボニアとの関係が微妙なメンフィルやクロスベル所属のリィン教官達が何故第Ⅱ分校の教官として派遣された経緯は気にはなりますが。」
「しかもこちらの世界のわたしに関しては、”情報局”のような何らかの任務が命じられるような組織にすら所属していないのに第Ⅱ分校に入学している理由が全く理解できません。」
ミシェル達の説明を聞いたクルトとミュゼは考え込み、アルティナは疲れた表情で呟いた。
「で、肝心の支援課のリーダーの坊やに関してだけど………クロスベル軍警察の上級捜査官の一人として帝都を含めたクロスベル帝国の領土内のあちこちを飛び回って活躍しているわよ。」
「そうだったんですか…………よかった…………あれ?だったら、どうしてこの世界のあたしは第Ⅱ分校に入学したんですか?あたしが第Ⅱ分校に入学した理由はエレボニアがロイド先輩達を指名手配した事を知ったあたしがエレボニアに併合されたクロスベルの軍警本部に抗議しちゃった時に帝国人の新しい本部長から取得した単位を全て取り消されたんですけど、それを見かねたクレア教官が説得してくれたお陰で半分くらいは取り戻せて、残り半分の単位は”別の学校”の単位で代替する条件でクレア教官の勧めもあって、第Ⅱ分校に入学したんですが……」
「君が第Ⅱ分校に入学した経緯はそのような経緯があったのか……」
「ふふっ、そう言えば夏至祭での祝賀会の時にクレア少佐と一緒にいるユウナさん達とリィン教官が話している所を遠目で見た事がありましたけど……もしかして、アルティナさんは既にご存知だったのですか?」
「はい。……その件も含めれば、本来第Ⅱ分校―――”新Ⅶ組”にわたしとユウナさんが入学する理由がないのですが……その件については何かご存知なのでしょうか?」
異なる世界の特務支援課の面々のその後を知った事で嬉しそうな表情をしたユウナだったがある事に気づいて訊ね、ユウナの質問の中にあったユウナが第Ⅱ分校に来た理由を知ったクルトは目を丸くし、静かな笑みを浮かべたミュゼに視線を向けられたアルティナは静かな表情で頷いた。
「黒兎のお嬢ちゃんに関しては知らないけど、アタシ達の世界のユウナの第Ⅱ分校行きの経緯は理由は違えど軍警本部に抗議して、それが原因で第Ⅱ分校に留学した所に関してはこちらの世界のユウナと一致しているわね。」
「へ……ど、どうしてですか?肝心のロイド先輩はこの世界では指名手配されていない所か、上級捜査官の一人として活躍しているのに……」
「………アリオスさんとグリムウッド弁護士の件でこちらの世界のユウナちゃんは軍警本部に抗議したのよ。」
ミシェルの話を聞いて首を傾げているユウナにエオリアは複雑そうな表情で答えた。
「へ………ア、アリオスさんとイアン先生の……?そう言えばさっき聞きそびれましたけど、銀さんやアリオスさんもそうですけど、この世界のマクダエル議長はどういう状況なんですか?ミシェルさん達はさっきマクダエル議長の事を”元議長”って言っていましたけど………」
「銀―――リーシャ・マオは”銀”としての活動は”碧の大樹”の件が解決した時を機に引退してアルカンシェルのアーティストとしての活動に専念しているみたいだけど……たまにロイド達――――クロスベル軍警察に”銀”としての力を使って手を貸しているみたいだよ。」
「マクダエル元議長はクロスベル帝国が建国される少し前に自分は引退してクロスベル皇帝達にクロスベルの事を託す宣言をして議長を正式に退職しているわ。ただ、その後に今年の春に設立されたばかりのクロスベルの高等学校付属の大学院――――”サティア学院”の学院長に就任したわ。で、問題はアリオスさんとグリムウッド弁護士なんだけど………」
「……アリオスはクロスベル皇帝達によって”クロスベルの裏切り者”というレッテルを貼られて”ノックス拘置所”で服役中よ。懲役は現在の所20年らしいわ。そしてイアン・グリムウッド弁護士は………――――半年前に公開処刑されたわ。クロスベル動乱を起こした元凶の一人にして、D∴G教団事件の主犯であるヨアヒム・ギュンターを裏から操っていた黒幕という理由でね。」
「な―――――」
「確か”風の剣聖”はクロスベルの英雄として有名だと聞いた事がありますが………その英雄が”裏切り者”扱いされて拘置所で服役、そしてクロスベルの民間人に親しまれていたグリムウッド弁護士は”公開処刑”ですか………その件も私達の世界とは随分違いますわね……」
「そうですね……その2名は一体何故そんな事になったのでしょう……?特にイアン・グリムウッドはエレボニア帝国政府ですら拘置所で服役させていますのに……」
ミシェルの口から語られた驚愕の事実にクルトは絶句し、真剣な表情で呟いたミュゼの言葉に頷いたアルティナは複雑そうな表情でユウナに視線を向け
「な、な、何で二人がそんな事になっているんですか!?確かに二人はクロスベル動乱を起こした関係者達でしたけど、それでも今までクロスベルを守って来たアリオスさんやクロスベルの人達の相談に気軽に乗ってくれたイアン先生がそんな事になるなんて、おかしいですよ!」
ユウナは口をパクパクさせた後怒りの表情で声を上げた。
「そう、まさに貴女が今言った同じような事をこちらの世界の貴女は軍警本部に抗議して、その件をよく思わなかった本部長が貴女の世界の本部長のように貴女が今まで軍警察学校で取った単位を全て取り消したらしいのよ。」
「………っ!どうして………どうして、ミシェルさん達は、二人がそんな事になったのに、二人を守る為の行動をしなかったんですか!?アリオスさんは言うまでもなくクロスベルの遊撃士達の纏め役で、クロスベル支部の”切り札”でしょう!?それにイアン先生は民間人――――”民間人の保護”を規約にしている遊撃士協会が守るべき存在なんじゃないですか!?なのに、どうして二人を見捨てたんですか……!?」
「ユウナ……」
ミシェルの指摘を聞いて唇を噛みしめたユウナは悲痛そうな表情でミシェル達に問いかけ、その様子をクルトは心配そうな表情で見守っていた。
「………耳が痛い話だね。」
「そうね………ただ、遊撃士協会の言い分としては、残念ながら”クロスベル動乱を起こした関係者であるアリオスさんとグリムウッド弁護士は遊撃士協会の保護対象”に当てはまらない―――つまり、遊撃士協会が二人を守る為の”大義名分”がないから、何もできなかったのよ………」
「え…………」
「それは一体どういう意味でしょうか?」
ユウナの指摘に対してリンと共に複雑そうな表情を浮かべて答えたエオリアの説明を聞いたユウナは呆け、アルティナは不思議そうな表情で訊ねた。
「………なるほど。クロスベル動乱――――それも、世界各国を巻き込む程の大事件を起こした元凶―――つまり、”犯罪者”になってしまったお二人は遊撃士協会の保護対象である”民間人”には当てはまらないのですわね?」
「そうか………遊撃士協会の保護対象はあくまで”民間人”であって、幾ら民間人とはいえ犯罪を犯せば”犯罪者”――――つまり”民間人でなくなるから”、二人を守る為の大義名分が遊撃士協会には存在しないのか……」
「あ……………」
一方事情を察したミュゼの指摘を聞いてある事に気づいたクルトは複雑そうな表情で呟き、ミュゼとクルトの話を聞いたユウナは呆け
「その通りよ。実はアタシ達もせめて二人の罪を少しでも軽くする為に色々と動いていたんだけど、”D∴G教団”の黒幕であるクロイス家を裏から操っていたグリムウッド弁護士は七耀教会にも”外法認定”された存在で、しかも”零の巫女”に対する助言役を務める事でゼムリア大陸の歴史を歪めようとしていた彼の行いを知った”空の女神”の怒りまで買ってしまった事で七耀教会は当然として空の女神を崇めているゼムリア大陸の多くの人々もグリムウッド弁護士に対して怒りを抱いていたから、どうしようもなかったのよ………」
「そしてアリオスさんは国防軍の長官に就任した時に遊撃士を退職したからね………しかもアリオスさんは遊撃士時代、遊撃士協会の目を盗んでクロスベル動乱を勃発させる為に裏で動いていた事実を知った遊撃士協会本部がアリオスさんに対して相当な怒りを抱いちまったようでね………本部にもグリムウッド弁護士同様アリオスさんの罪を軽くする為の協力を要請したんだけど、『既に遊撃士協会を去り、世界各国をも巻き込む大事件を起こした元凶を庇う理由はない』との答えで、アリオスさんの”減刑”に協力しない所か、アリオスさんが今まで重ねてきた”実績”―――A級正遊撃士の資格も剥奪しちまった上遊撃士協会の要注意人物のリスト―――つまり”ブラックリスト”にまでアリオスさんを入れたんだよ……」
「……遊撃士協会はただでさえ、トヴァルさんの件―――”七日戦役”勃発に間接的に関わっていたという失態があるから、これ以上の失態を犯して世界各国から遊撃士協会の存在の有無が問われないようにする為に、アリオスさんを切り捨てたんでしょうね……」
「………っ!」
「ユウナさん………その……話は変わりますが、こちらの世界のユウナさんはわたし達の世界のユウナさんと同じ状況―――第Ⅱ分校に入学してきたのでしょうか?ユウナさんの話からするとクレア少佐が取り消されたユウナさんの単位を取り戻したそうですが………エレボニアから独立している今のクロスベルの軍警察学校にエレボニア帝国の鉄道憲兵隊に所属しているクレア少佐が教官として赴任してくるとは思えないのですが……」
ミシェル達の指摘や説明に唇を噛みしめて両手の拳を握りしめたユウナの様子を辛そうな表情で見つめていたアルティナは重苦しい空気を変える為に別の質問をした。
「何でも、その件を知った臨時で教官を務めていたクロスベル皇帝の妃の一人―――リセル・ザイルード皇妃が見かねてユウナちゃんを庇ったお陰でそちらの世界のユウナちゃんと同じ状況になったみたいよ。」
「へ……ク、クロスベルの皇妃様があたしを……?というかさっきからずっと気になっていたんですけど、そのクロスベルの皇帝や皇妃様ってどんな人達なんですか?」
「あー……そう言えばクロスベル皇帝達――――”六銃士”については、まだ何も説明していなかったわね。まず”六銃士”という存在は――――」
エオリアの説明を聞いて驚いた後戸惑いの表情で訊ねたユウナの質問に苦笑したミシェルはユウナ達に自治州だったクロスベルを”帝国”へと成りあがらせたクロスベルの新たなる英雄達―――――”六銃士”についての説明をした。
「僅か6名で”猟兵団”をも壊滅させる戦闘能力があり、不正を働いていた上流階級の方々を失脚させることができるほどの策略も長けた流浪の英雄達にして、”クロスベル帝国”を建国したクロスベルの新たなる英雄―――――”六銃士”ですか………」
「しかも全員、異世界――――”ディル=リフィーナ”の出身で更には元皇帝や将軍クラスの人物であり、そしてIBCによる”資産凍結”が行われる少し前に起こった猟兵達によるクロスベル襲撃の際にはその”六銃士”のかつての戦友や生まれ変わった戦友達がかけつけて”六銃士”達と共に猟兵達を撃退して、クロスベル動乱時にクロスベル帝国を建国するなんて、まるでおとぎ話のような話だな……」
「正直な所、どれも非常識かつカオスな内容ばかりですね……まあ、カオスな状況になっているクロスベルを治める人物達として、ある意味納得もできますが。」
「こ、この世界のクロスベルって一体どうなっているのよ………警備隊の司令や警察の局長ですらも、その”六銃士”って人達が務めていた上、その局長が”特務支援課”にまで配属していたなんて、幾ら何でも滅茶苦茶よ………」
”六銃士”の説明を受けたミュゼとクルトは真剣な表情で呟き、アルティナはジト目で呟き、ユウナは疲れた表情で溜息を吐いた。
「まあ、”六銃士”が”色々な意味で規格外”なのは否定しないよ。何せ、クロスベル皇帝の一人―――”紅き暴君”が何を考えているのかわからないけど、第Ⅱ分校の教官に自ら名乗り上げてこの世界の第Ⅱ分校の”戦術科”の担当教官になっているのだからね。」
「ちなみにランディ君は”紅き暴君”の”お目付け役”として第Ⅱ分校の”戦術科”の副担任として第Ⅱ分校に派遣されたそうよ。」
「ど、どこまでハチャメチャな事を仕出かしたら気が済む人達なのよ、その”六銃士”って人達は………」
「……案の定”戦術科”もカオスな事になっていましたね。」
「というか、皇帝が他国―――それも緊張状態に陥りかけている国の士官学院の教官を務めるなんて、その”紅き暴君”という人物の意図もそうだが、エレボニアもその人物が第Ⅱ分校の教官として派遣される事を受け入れた意図も全然理解できないな……」
「うふふ、ですがその代わりこちらの世界の第Ⅱ分校の戦力は大幅に強化されている事に関しては朗報と思うべきでしょうね。……という事はこちらの世界のユウナさんの第Ⅱ分校入りの件に関わっていたリセル皇妃という人物はヴァイスハイト皇帝かギュランドロス皇帝、どちらかの妃という事でしょうか?」
リンとエオリアの口から出た驚愕の事実に冷や汗をかいて表情を引き攣らせた後我に返ったユウナとアルティナはジト目で呟き、疲れた表情で溜息を吐いたクルトに指摘したミュゼはミシェル達に確認した。
「ええ、リセル皇妃は”黄金の戦王”―――ヴァイスハイト皇帝の妃の一人で、ヴァイスハイト皇帝の正妃よ。」
「”妃の一人”……という事はヴァイスハイト皇帝には複数の妃が存在しているのでしょうか?」
「ああ、そうだよ。”黄金の戦王”――――ヴァイスハイト皇帝は”好色皇”って呼ばれている程とんでもない”好色家”でね……ギュランドロス皇帝の妃は一人だけなんだが、ヴァイスハイト皇帝の妃は17人もいるんだよ。」
「き、妃――――奥さんが、17人~~~~~!?何なんですか、その皇帝は!?幾ら女の子が好きだからと言って、17人も奥さんがいるなんて滅茶苦茶過ぎません!?」
「まさかこちらの世界のリィン教官を遥かに超える不埒な男性が存在したとは………」
「クスクス、まさに異名通り”好色皇”ですわね♪」
「というか17人も妃を娶るとか、そのヴァイスハイト皇帝という人物は何を考えているんだ……?確かにクロスベルは新興の国だから世継ぎや皇族は後々の事を考えて多く残す事には一理あるが、あまりにも多いと帝位継承権争いの元になる事がわからないのか……?」
エオリアの説明を聞いてある事が気になったクルトの問いかけに答えたリンの説明を聞いたユウナは信じられない表情で声を上げ、アルティナはジト目で呟き、ミュゼは小悪魔な笑みを浮かべ、クルトは疲れた表情で呟いた。
「その辺に関しては意外にもしっかりと考えているようでね。ヴァイスハイト皇帝の第1側妃―――――ユーディット皇妃が産んだ子供とギュランドロス皇帝の妃であり、”六銃士”の一人であるルイーネ皇妃が産んだ子供を結婚させて、その二人に自分達の跡を継がせる事も公言しているわ。」
「子供達の結婚まで既に決めているって………子供も産まれていないのに、幾ら何でもそんな先の事を決めるなんて机上の空論にも程があるでしょ……」
「そもそも、その二人から産まれた子供が異性でなければどうするつもりなのでしょうか?」
「まあ、その辺に関しては他の妃が産んだ子供達で何とかするつもりなんだろうな。片方の皇帝に妃が17人もいれば、幾ら何でも一人くらい異性の子供は産まれるだろうしな………というか、何故ヴァイスハイト皇帝はそのユーディット皇妃―――それも正妃ではなく側妃が産んだ子供に自分の跡継ぎにするつもりなんだ……?普通に考えれば、正妃が産んだ子供を跡継ぎにするべきだと思うが……」
ミシェルの説明を聞いたユウナとアルティナがジト目になっている中静かな表情で指摘したクルトは戸惑いの表情で考え込んだ。
「ユーディット皇妃にはゼムリア大陸側の”尊き血”――――それも”皇族に次ぐ尊き血”が流れているから、皇族や貴族の旗印も無しに”成りあがり”で建国したクロスベル帝国の正当性を証明する為にユーディット皇妃の子供を跡継ぎにするらしいわ。」
「”皇族に次ぐ尊き血”、ですか。……ちなみにそのユーディット皇妃という人物はどちらの上流階級の出身なのでしょうか?ゼムリア大陸出身で、それも”皇族に次ぐ尊き血”を引く上流階級となると相当限られますが……」
エオリアの説明を聞いてある事が気になったミュゼは真剣な表情で訊ねた。
「それがねぇ………そのユーディット皇妃の父親は貴族連合軍の”主宰”―――つまりトップだったクロワール・ド・カイエン元公爵なんだ。」
「へ…………」
「な―――――――カイエン公の……!?」
「……?確かカイエン公は未婚で、養子も存在しなかったはずですが……」
「………”並行世界”ですから、カイエン公の家庭事情も私達の世界とは異なるのでしょうね。…………確かに皇族や貴族―――”尊き血”を引く人物も無しに”国”―――それも”帝国”を建国したクロスベルに”四大名門”―――それも、かつての”獅子戦役”でドライケルス大帝に敗北した”偽帝”オルトロスの子孫であるカイエン公爵家の血が入れば、”帝国としての正当性”を証明しやすいでしょうね。ちなみにそのユーディット皇妃という人物はどのような―――」
リンの話を聞いたユウナ達が様々な反応を見せている中ミュゼが静かな表情で答えた後ある事を訊ねようとしたその時、通信機が鳴り始めた。
「あら、もしかしてもう確認が終わったのかしら?……こちら、遊撃士協会・クロスベル支部よ。………ええ……ええ、わかったわ。ただ、事情の説明の為にもアタシの他にも詳しい事情を知っている4人が同行して”黄金の戦王”と面会してもらう必要があるんだけど………ええ……ええ……わかったわ、お願いね。今、エリィお嬢ちゃんから連絡があったわ。今から”黄金の戦王”との面会が可能だとの事だから、並行世界の新Ⅶ組のアナタ達はアタシと一緒に同行してもらえるかしら?」
「へ………も、もしかして今からあたし達もミシェルさんと一緒にクロスベル皇帝の一人に会って、あたし達の事情を説明するんですか!?」
通信を終えたミシェルの自分達に対する要請を聞いたユウナは驚きの表情で訊ねた。
「当たり前よ。今後の未来の大事件をアタシ達が既に掴んでいるなんてこと、普通に考えれば誰も信じないでしょうけど”未来で起こった大事件を実際に体験してきた本人達”をその目にすれば、誰だって信じるでしょう?」
「まあ、正論ではありますが………」
「クロスベルを帝国へと成りあがらせた”六銃士”の一人にして二人いるクロスベル皇帝の片翼……一体どんな人物だ?」
「ふふっ、少なくても女性には甘い皇帝陛下なのではないでしょうか?何せ、”好色皇”と呼ばれている程のとてつもない好色家なのですから、女子である私やユウナさん、それとアルティナさんの3人でおだてたりお酌でもすれば、あっさり私達の頼みを聞いてくれるのではないでしょうか♪」
ミシェルの説明にアルティナが若干戸惑った様子で頷き、クルトが興味ありげな表情で考え込んでいる中小悪魔な笑みを浮かべたミュゼの提案を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。
「ミュゼ、あんたね………あたし達の許可もなく勝手にあんたの悪だくみにあたし達まで巻き込もうとするんじゃないわよ。」
「というかそんな不埒な行為を本当に実行するつもりなら、ミュゼさん一人でやってください。」
「ふふっ、どこぞの”小さい方の天使”を思い浮かべるような小悪魔な性格をしている娘ね。―――それじゃあ、今からアタシ達は”オルキスタワー”に行ってくるから二人は留守番、頼むわね。」
ユウナとアルティナがそれぞれジト目でミュゼを見つめている中その様子を苦笑しながら見守っていたミシェルはエオリアとリンに視線を向け
「ええ。」
「ああ、任せときな。」
視線を向けられた二人はそれぞれ頷いた。
その後ユウナ達はミシェルと共にクロスベル皇帝の一人――――”黄金の戦王”ヴァイスハイト・ツェリンダーに面会する為にクロスベル帝国の”帝城”であるオルキスタワーに向かった―――――
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