英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇
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異伝~終焉に諍う英雄達の来訪~第7話
同日、16;00-――
~オルキスタワー・エントランスホール~
「ま、まさか”オルキスタワー”がクロスベルのお城として使われているなんて………」
「ふふっ、私達の世界のルーファス総督を始めとしたエレボニア帝国政府もオルキスタワーを総督府として使っていましたし、それを考えるとオルキスタワーはクロスベルの”帝城”として相応しいかもしれませんわね。」
ミシェルやクルト達と共にクロスベル皇帝に面会する為にクロスベル帝国の”帝城”であるオルキスタワーのエントランスに入った到着したユウナは信じられない表情で呟き、ミュゼは苦笑していた。
「入城の為の手続き等は必要ないのでしょうか?見た限り、一般の人達もチェック無しで出入りをしているようですが……」
一方一般人と思われる人々が帝城であるオルキスタワーを普通に出入りしている事を不思議に思ったクルトはミシェルに訊ねた。
「元々オルキスタワーにはエプスタイン財団を始めとした様々なテナントが入っていたからね。現状テナントが入っている階層までのエレベーターは制限なしかつノーチェックで入れるわ。まあ、将来的には別の高層ビルを建てて、そこにオルキスタワーに入っているテナントに移動してもらう計画が進行しているそうだけどね……」
「テナントが入っている階層までのエレベーターは制限無しという事はクロスベル帝国政府や皇族関係の階層はやはり、制限がかけられていて、荷物の検査等もあるのでしょうか?」
ミシェルの説明を聞いてある事が気になったアルティナはミシェルに訊ね
「ええ、特に皇族関係の階層のチェックはかなり厳しい―――――っと、どうやらちょうどいいタイミングだったようね。」
「あ…………」
アルティナの質問に答えかけたミシェルだったがエレベーターから現れたパールグレイの髪の女性に気づき、女性の登場にユウナは呆けた声を出した。
「―――お待たせしました、ミシェルさん。それでは陛下の元へは私が案内――――あら……?貴女達は………」
「お久しぶりです、エリィ先輩……!」
「”エリィ”………という事は貴女がマクダエル議長の……」
パールグレイの髪の女性―――――エリィ・マクダエルはミシェルを案内しようとしたがミシェルの傍にいるユウナ達に気づくと目を丸くし、ユウナは嬉しそうな表情でエリィに声をかけ、ユウナの言葉を聞いて目の前の女性がユウナが憧れている”特務支援課”のメンバーである事に気づいたクルトは目を丸くし
「ユ、ユウナちゃん……?それにアルティナちゃんまで………確か今の時間、貴女達――――第Ⅱ分校はアルトリザスでの”特別演習”が終わって”リーヴス”への帰還している途中なのに、どうしてユウナちゃん達がクロスベルに………」
「………ユウナさんはともかく、”ここにいるわたし”に関しては貴女とは”初めまして”になります、”特務支援課”サブリーダー、エリィ・マクダエルさん。」
「え、えっと……?」
「ふふっ、その娘達については話せば長くなるから、”黄金の戦王”との面会の時に説明させてもらうわ。」
ユウナ達の登場や自分にとって顔見知りであるはずのアルティナの反応に困惑しているエリィの様子に苦笑したミシェルは軽く説明した。
「ハ、ハア……?……もしかして先程の通信内容で出て来た4人とは、ユウナちゃん達の事なんですか?」
「ええ、そうよ。それじゃあ、”黄金の戦王”の所への案内を頼んでいいかしら?」
「………わかりました。――――陛下達は33階の応接室でお待ちです。本来は荷物検査や武装預りの手続き等も必要ですが、陛下より今回は事情が事情なので、そう言った面倒な手続きは特別に免除するとの事ですので、このまま私についてきてください。」
ミシェルの説明を聞いて少しの間考え込んだ後気を取り直したエリィはミシェル達の案内を始めた。
~エレベーター内~
「そう言えばさっきヴァイスハイト皇帝”達”が応接室で待っているって言っていたけど、ヴァイスハイト皇帝以外にアタシ達と面会する人物を訊ねてもいいかしら?」
「ええ、構いませんよ。ヴァイスハイト陛下以外ですとルイーネ皇妃殿下とユーディット皇妃殿下が皆さんと面会する事になっています。」
「あら、まさか旧共和国領方面と元エレボニア帝国領方面の”総督”まで揃っているなんて、珍しいわね。普段からクロスベルと旧共和国領方面を行き来している”微笑みの剣妃”はともかく、ユーディット皇妃は普段はオルディスでしょう?」
「お二人の陛下への定期報告がたまたま重なったんです。それで、先程のミシェルさんからの通信内容からして、ミシェルさん達の話をそれぞれの方面の”総督”であるお二人の耳にも入れておくべきだという陛下の判断で、お二人も陛下と一緒にミシェルさん達と面会する事になったんです。」
「なるほどね………まあ、その方が大事件の阻止の為の話がよりスムーズに進みそうで助かるわ。……ちなみにその”たまたま重なる定期報告”は来月の”三帝国交流会”の日程にも合わせているのかしら?」
「申し訳ありませんがその件については”対価”も無しに答えられません。お二人のスケジュールについては、私を含めて一部の人物達にしか公開されていないクロスベル帝国政府にとっても相当な機密情報に当たりますので。」
「あら、残念。それにしてもアナタ、段々”叡智”に似てきたんじゃないかしら?前のアナタならそう言った強かな所は見せずに、協力者には自分達が知る可能な限りの情報を共有する考えの人物だっただと思うわよ?」
「フフ、褒め言葉として受け取っておきます。」
(ク、クロスベルの皇帝どころか皇妃様達とまで面会する事になるなんて……!)
(ルイーネ皇妃……先程の話にあった”六銃士”の一人ですか……先程の”六銃士”のそれぞれの特徴を考えると、謀略に長けたその人物がある意味”六銃士”の中で最も厄介と思われる人物のようですが……)
(それともう一人はあのカイエン公のご息女で、しかも二人の会話からするとその人物は元エレボニア帝国の領土の”総督”を務めているようだが………一体どのような人物だ……?)
(ふふ、”まさに鬼が出るか蛇が出るか”、ですわね。(……少々厄介な事になりましたわね。そのユーディット皇妃という人物がクロワール叔父様のご息女ならば、当然”ユーディット皇妃の従妹であるこちらの世界の私とも面識がある”でしょうし………))
ミシェルとエリィの会話を聞いていたユウナは驚き、アルティナとクルトの疑問に苦笑しながら小声で答えたミュゼは困った表情で考え込んでいた。そしてエレベーターは33階に到着し、ミシェル達はクロスベル皇帝達が待機している部屋の前に到着し、部屋の前に到着したエリィは扉をノックした。
~33F・応接室~
「―――エリィです。ミシェルさん達をお連れしました。」
「ご苦労。客人達と共に入って来てくれ。」
「―――失礼します。」
部屋の中にいる人物の許可を聞いたエリィは扉を開けてミシェル達と共に部屋に入った。
(あ…………)
(あの3人が異なる世界のクロスベルの皇族の………)
それぞれソファーに座っている金髪の男性、蒼髪の女性、金髪の女性を見たユウナは呆け、クルトは興味ありげな表情で3人を見つめた。
「あら?貴女は………」
「?どうかしたのかしら、ユーディットさん。」
一方金髪の女性はミシェル達の中にいるミュゼを見つけると目を丸くし、金髪の女性の様子を不思議に思った蒼髪の女性は金髪の女性に訊ね
「………………」
「………後で説明致します。」
自分の事を黙っていて欲しい事を伝えるかのように静かな表情で口元に指を当てて自分を見つめて軽く会釈をしたミュゼの行動を見た金髪の女性は少しの間考え込んだ後答えを誤魔化した。
「ほう………?遊撃士協会からクロスベルにとって無視できない話が聞けると聞いていたが………まさか、件の話―――”1年半前のクロスベル動乱をも超える大事件の予兆”とやらがエレボニアも関係していて、しかもその大事件が”並行世界の未来”で起こっていたとはな。」
「へ…………」
「な――――」
「ええっ!?へ、”並行世界の未来”という事はまさか今目の前にいるユウナちゃん達は……!」
「………何故、わたし達の顔を見た瞬間、そのような非常識な推測をしたのでしょうか?」
金髪の男性は興味ありげな様子でユウナ達の顔を見回した後ユウナ達の正体を察しているも当然の推測を口にし、金髪の男性の推測を聞いたユウナが呆け、クルトが驚きのあまり絶句している中、エリィは信じられない表情で声を上げてユウナ達を見つめ、アルティナは真剣な表情で金髪の男性に訊ねた。
「簡単な話だ。既に遊撃士協会からも”こちらの世界の事情”等もそちらもある程度聞いているとは思うが、トールズ第Ⅱ分校には俺達ですら未だに何を考えているかわからないもう一人のクロスベル皇帝とそのもう一人のクロスベル皇帝のお目付け役としてランディを派遣していて、今日が第Ⅱ分校初めての”特別演習”の最終日で今の時間帯はデアフリンガー号で”リーヴス”に帰還している最中である事は把握している。―――にも、関わらず第Ⅱ分校の生徒達であるお前達が今俺達の目の前にいる事を考えると、お前達の正体はちょっと考えれば大体わかる。」
「僕達の顔を見ただけでそこまで察する事ができるなんて…………」
(た、ただのとんでもない女好きの皇帝だと思っていたけど、クロスベル警察の”局長”を務めていただけあって、一応推理や観察の能力は優れているわね……)
「(幾ら世界は違えど、さすがにその発言は一国の皇帝相手に失礼なのでは?)………しかし、何故わたし達が”並行世界”から来たのだと?そちらの推測ですと単なる時間移動―――”この世界の未来”から来た可能性も考えられるのでは?」
金髪の男性の答えにクルトが驚いている中信じられない表情で男性を見つめているユウナの小声の言葉に指摘したアルティナは不思議そうな表情で男性に問いかけた。
「ああ、そんな事か。それはアルティナ……―――お前達が”並行世界の未来”から来たと確信した一番の理由はお前がいたからだ。」
「わたしが……?ミシェルさん達から”こちらの世界のわたしの事情”はわたしの事情と随分異なる話は聞いていましたが……第Ⅱ分校に入学している点で言えば、こちらの世界のわたしとも一致しているはずですが……」
「そんな小難しい理由じゃない。理由は至って簡単………こちらの世界のアルティナは今目の前にいるアルティナよりも身長もそうだが胸も明らかに成長しているからだ。幾ら人造人間といえど、成長が退化するなんてありえないだろう?ハッハッハッ!」
アルティナの問いかけの理由を答えた後軽く笑った金髪の男性の答えにその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて脱力した。
(……前言撤回。やっぱりただのとんでもない女好きのエロ皇帝じゃない……)
(……ですね。しかも堂々と不埒な発言をして来たことを考えると、リィン教官よりも遥かに不埒な方みたいですね。)
「陛下………お戯れは時と場合を考えてください。」
「フフ、だけどヴァイスさんらしいと言えば、らしい答えだからある意味納得ね♪」
我に返ったユウナとアルティナはジト目で男性を見つめ、金髪の女性は疲れた表情で、蒼髪の女性は微笑みを浮かべてそれぞれ指摘し
「へ・い・か?」
「おっと………俺に次ぐハーレムを形成しているクロスベルの英雄の一人も頭が上がらない我が国自慢の外交官の一人が怒りださない内に話を始めるとするか。―――――クロスベル皇帝の一人、ヴァイスハイト・ツェリンダーだ。」
威圧を纏った微笑みを浮かべたエリィに見つめられた男性―――――クロスベル皇帝の一人であり、”六銃士”の一人でもあるヴァイスハイト・ツェリンダー―――通称”ヴァイス”は話を変える為に自己紹介をし
「クスクス………もう一人のクロスベル皇帝―――ギュランドロス・ヴァスガンの妃のルイーネ・サーキュリーよ。今は旧共和国方面のクロスベル帝国領の”総督”も兼ねているわ。」
「……元エレボニア帝国方面のクロスベル帝国領の総督を務めているカイエン公爵家”当主代理”にして、ヴァイス様の側妃の一人であるユーディット・ド・カイエンです。以後、お見知りおきお願いします。」
ヴァイスに続くように蒼髪の女性――――”六銃士”の一人にしてもう一人のクロスベル皇帝の正妃であるルイーネ・サーキュリー、金髪の女性―――元エレボニアの”四大名門”のカイエン公爵家の”当主代理”にしてヴァイスの側室であるユーディット・ド・カイエンも自己紹介をした。そしてユウナ達は席についてそれぞれ自己紹介をし、自分達の事情を説明した。
「「「「……………」」」」
ユウナ達の事情を聞き終えたヴァイス達はそれぞれ厳しい表情や信じられない表情を浮かべて黙り込み
「やれやれ………衰退したエレボニアを”元通り”―――いや、それ以上の国へと成長させる為にいずれ”鉄血宰相”がクロスベルやメンフィルに”仕掛けてくる”と思ってはいたが……俺達の想定した以上の愚かな事を考えているようだな、”鉄血宰相”達は。」
「しかも皇太子殿下までオズボーン宰相に加担しているなんて……………殿下は一体何を考えてオズボーン宰相達の野望に加担を……」
「………セドリック皇太子の性格の急変は諜報部隊の報告で耳にしていたけれど、話を聞いた感じ、”鉄血宰相”に相当心酔しているようだから恐らくセドリック皇太子は”子供達”の一人に加わっているのでしょうね。」
「”子供達”――――”鉄血の子供達”ですか………ですが、私達の世界のセドリック皇太子も”鉄血の子供達”の一人にはならず、単にエレボニア皇太子としての責任感で、性格が急変した可能性もあるのでは……?エレボニアやクロスベルを含めたゼムリア大陸の情勢も並行世界のユウナちゃん達のゼムリア大陸とは相当異なるようですし………」
我に返った後呆れた表情で溜息を吐いてヴァイスは表情を引き締め、困惑の表情をしているユーディットの疑問に答えたルイーネの推測を聞いて複雑そうな表情で呟いたエリィは否定の可能性も口にしたが
「いや、むしろ並行世界のセドリック皇太子よりも更に”鉄血宰相”を心酔している可能性の方が考えられる。何せ、メンフィルに敗北した事によってエレボニアは国力、戦力共に相当衰退した上そのメンフィルに”ハーメルの惨劇”を公表させられた影響でエレボニアの国際的地位は地の底に堕ち、止めに”属州扱い”していたクロスベルには独立される所か元エレボニアの領土まで奪われた挙句下克上までされて完全に立場が逆転したからな。」
「しかも内戦を終結させる為にメンフィルはアルフィン皇女が世間からエレボニアの内戦の一番の功労者に見られるように情報操作やアルフィン皇女を旗印にした”紅き翼”―――”特務部隊”や”旧Ⅶ組”を内戦で活躍させたから、”七日戦役”勃発の原因の一人となってしまったアルフィン皇女の汚名は返上した所か、むしろ敵国に囚われたにも関わらず内戦終結に最も貢献した上祖国の滅亡を防ぐ為にリィン君―――エレボニアを滅ぼそうとしたメンフィルへと嫁いだけれど、その嫁ぎ相手であるリィン君とは相思相愛の仲になっている事からまるで物語で出てくるような”王道のヒロイン”や”英雄”扱いされている影響で、リィン君に嫁いでから1年半前経った今でもエレボニアの民達の人気は相当なものよ?それらの件による劣等感や焦り等を感じたセドリック皇太子が現状のエレボニアで頼れる上、尊敬できる人物は一人しかいないでしょう?」
「……それとオリヴァルト殿下も内戦でもそうですが、”リベールの異変”でも活躍した事による”名声”がありますから、その”名声”によってオリヴァルト殿下やアルフィン殿下にエレボニア皇帝の座が奪われる事を危惧してお二人を超える”名声”を求めているのかもしれませんね………もしかしたら、オリヴァルト殿下が乗船されている”カレイジャス”が爆破される事を受け入れてまでオリヴァルト殿下達を排除した理由はその辺りが関係しているのかもしれません。」
「それは……………」
ヴァイス達の推測を聞くと複雑そうな表情で答えを濁した。
「―――まあ、何にしてもその”巨イナル黄昏”とやらを含めたゼムリア大陸全土をも巻き込もうとする”鉄血宰相”達の”野望”を必ず阻止する必要があり、その阻止の協力を俺達にも頼む為に面会を望んだ事もわかった。――――当然、”鉄血宰相”達の”野望”を阻止した後俺達がその件を理由にエレボニアを侵略してエレボニアに”止め”を刺す事をしないように頼む為に来たことやあわよくば、メンフィルの説得を俺達にしてもらえないかどうかも頼む為にも来た事もな。」
「あ……………」
「………っ!」
「………既にそこまで気づいていたのですか。」
「ふふっ、さすがは”西ゼムリア通商会議”での二大国の暗躍を覆してクロスベルの裏社会を一掃し、そしてクロスベルを真の意味で独立させた”クロスベルの真の英雄”ですわね。」
ヴァイスの指摘にエリィが呆けた声を出した後複雑そうな表情で黙り込んでいる中クルトは驚きのあまり息をのみ、アルティナは真剣な表情で、ミュゼは微笑みながらそれぞれヴァイスを見つめ
「クロスベルの独立云々は置いて、”西ゼムリア通商会議”の件での真の功労者は正確に言えば俺達ではなくエリィと同じロイドのハーレムメンバーにして、”特務支援課”の”参謀”でもあるどこぞの腹黒天使だがな。」
「”特務支援課”出身でしかもエリィ先輩と同じロイド先輩のハーレムメンバーの一人とか、一体どんな人なんですか、その”腹黒天使”って……?あたし達の世界のレン先輩は他の人達からは”腹黒い”って言われている上異名に”天使”がついていますけど、この世界のレン先輩は特務支援課に所属していませんでしたから、レン先輩の事ではないですよね?」
「え、え~と………”普段”は上司としてとても尊敬できるし、性格も理知的かつ優しい天使族の女性なのよ?ただ、敵対する相手に対しては私達でも”敵”が”哀れ”に思えてくる程”敵”に対しては容赦しないかつ合法スレスレの手段を使ってでも徹底的に叩き潰す方……と言うべきかしら。」
「ふふっ、戦闘能力は高いけれど、それよりも目立つのは知略や謀略と言った”知”の能力に長けている事ね。何せ伝説の暗殺者である”銀”を従わせた事もあるもの♪」
ヴァイスの話を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ジト目で訊ねてきたユウナの質問にエリィは苦笑しながらある人物の顔を思い浮かべながら答え、ルイーネはエリィに続くように答え、二人の答えを聞いたユウナ達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「い、銀さんを従わせるって、その人……じゃなくて天使は何をやったんですか?」
「え、えっと………その件についてはこちらの世界のリーシャさんの許可を取ってから聞いてくれないかしら?その件は正直リーシャさんにとっても”心的外傷”のような出来事だったそうだし………」
「伝説の暗殺者である”銀”に”心的外傷”を感じさせる行動をするその人物……ではなく、その天使の行動は警察に所属する人物として大丈夫なのですか?」
「というか、幾ら相手が銀さん――――暗殺者とはいえ”心的外傷”を感じさせるなんて一種の”傷害罪”になる気がするんだけど。」
「ふふっ、しかもヴァイスハイト陛下のお話ですとその方はオズボーン宰相とロックスミス大統領の暗躍を覆す程の知略の能力があるとの事ですから、敵にすれば厄介ですけど味方にすればとても心強い存在ですわね♪」
エリィの説明に仲間達と共に冷や汗をかいたアルティナとユウナはそれぞれジト目で指摘し、ミュゼは小悪魔な笑みを浮かべた。
「その意見に関しては同感ね………――――それで、話を戻すけど”並行世界の未来”のようにならない為の協力、そしてその件を理由にエレボニアに”止め”を刺さないようにしてもらえないかしら?”クロスベル帝国”は建国してからたった1年半しか経っていない上”クロスベル帝国”建国の経緯からして、クロスベルは世間からは”簒奪者”の国のようなイメージに見られているし、”西ゼムリア同盟”にも調印したのだから、エレボニア侵略はそちらにとってもエレボニアの領土を得て国力を増強させる事よりもデメリットの方が大きいと思うのだけど。」
「………まあ、そうだな。正直、今のクロスベルの状況でエレボニアに戦争を仕掛けてもデメリットの方が大きいしな。」
「そうですね………占領された領土のエレボニア帝国人の反発や世間のクロスベルに対するイメージの悪化等、建国してまだ1年半しか経っていないクロスベルにとっては国内外問わずに様々な問題の発生が考えられますから、幾らエレボニアに敵視されているとはいえ、現状こちらからエレボニアに侵略する事はしない方がいいでしょうね。ただ、ヴァイスハイト陛下にそのつもりがなくてもギュランドロス陛下のお考えはわかりませんが……」
ミシェルの指摘にヴァイスと共に静かな表情で頷いたユーディットはルイーネに視線を向け
「う~ん……多分だけど、ギュランドロス様もエレボニアを滅ぼす事までは考えていないと思うわよ?色々とこちらの予想外の考えを思い付くギュランドロス様と言えど、建国したばかりの今のクロスベルは内政に集中すべき時期や”専守防衛”の時期である事は理解されているでしょうし。」
「内政に集中すべき時期である事を御理解していらっしゃっているのでしたら、第Ⅱ分校―――他国―――それも国家間の関係が緊張状態になりかけているエレボニア帝国の士官学院の教官を務めるという非常識な事を実行しないで欲しかったのですが………フウ………」
視線を向けられたルイーネは苦笑しながら答え、ルイーネの答えを聞いたエリィは静かな表情で答えた後疲れた表情で溜息を吐き、エリィの様子を見守っていたユウナ達は冷や汗をかいた。
「敵国の国王の癖に幾ら停戦中だったとはいえ、センタクス軍に堂々と入隊してきたあのバカ王が、”激動の時代”であるこの状況で大人しくしているようなタマな訳がないだろうが。」
「うふふ、随分と懐かしい話ね♪」
「…………という事はクロスベル帝国はオズボーン宰相達の件でエレボニア帝国に侵略するおつもりはないという事でしょうか?」
エリィの言葉を聞いて呆れた表情で溜息を吐いたヴァイスの話を聞いて微笑んでいるルイーネの様子にユウナ達と共に再び冷や汗をかいたクルトは表情を引き締めてヴァイス達に訊ねた。
「ああ。で、メンフィルの説得の方だが………――――クロスベル(おれたち)の意志も答えたのだから、そちらも答えたらどうだ?」
「へ…………」
そしてヴァイスの誰かに対する問いかけを聞いたユウナが呆けた声を出したその時、ヴァイスがリモコンらしき装置を操作すると応接室の天井に備え付けているモニターが動き、モニターにはリウイの姿が映った!
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