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ハルケギニアの電気工事

作者:東風
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第22話:平和だね~!

 
前書き
え~、こちらはリゾート地でバカンス中の皇子様です。
なんちゃって!!
でも、傍から見たら立派なバカンスですよね!? 

 
 おはようございます。アルバートです。

 ゴムの木の樹液採集の為、2度目のリゾート地遠征に来て2日目の朝です。
 金色に輝く朝日に目が覚めて小屋の外をのぞくと、白い砂浜の照り返しがまぶしくて目が痛くなりそうです。今日も穏やかで暑い一日になりそうですね。

 小屋を出て、前の時と同じように砂を使って洗面器を練金し、海水を真水に変えて顔を洗います。さっぱりした所で後ろを振り返ると『ヴァルファーレ』が見ていました。

「『ヴァルファーレ』、おはようございます。今日も良い天気ですね。」

[うむ。主も良く眠れたようじゃな。アルメリア殿はまだかな?]

「まだ眠っているみたいですね。今のうちに朝食の準備をしておきましょう。近くに異常はありませんか?」

[今のところ、10リーグ以内に危険な獣などの気配はないようじゃ。安心するが良い。]

「判りました。有り難うございます。」

 それでは、朝食の準備をしてしまいましょう。貯蔵庫からパンとハムに野菜を出します。今回は卵も持ってきたので卵焼きも作りましょう。
 昨日作った竈に火をおこして、フライパンを温めます。油を引いて、卵を2個落とし、軽く塩とこしょうをして箸でかき混ぜました。本当はボールでしっかりとかき混ぜたいのですが、洗い物を増やす事もないので簡単にやってしまいます。
 2枚のお皿に卵焼きを分けて、野菜とハムを盛りつけます。パンを厚めに切ってバターの準備も出来ました。やかんを火に掛けてお湯の準備もして、こんな感じでしょう。洗面器に新しい真水を作って、さて、アルメリアさんを起こしましょうか。

「アルメリアさん。そろそろ起きて下さい。もう朝ですよ。朝食の準備が出来ましたよ!」

 何度か呼びかけると、やっと小屋の中からアルメリアさんが出てきました。
ちらっと見て思わず目を逸らしましたが、すごい格好になっています。まだちゃんと目が覚めていないのか、ボーとしたままのアルメリアさんは、着衣が乱れてCカップの胸の頂がもう少しで見えそうになっています。下もズボンを履いていないので下着のままですから、目のやり場に困ります。僕の事を7歳児としか見ていないから気にしていないのでしょうけど、前世から通算して中身53歳の大人としては、見たいような見ちゃいけないような微妙な所になります。

「えっと、アルメリアさん?申し訳ありませんがちゃんと服を着て頂けないでしょうか?」

「ふぇ?服?服がどうかしたか?」

 まだ、意識がはっきりしないようですが、自分の格好を見回して、ようやく理解出来たようです。

「あっあははは。これは済まない。子供相手とはいえ、失礼した。」

 少し赤くなって小屋の中に戻っていきます。屋敷ではDとかEカップのメイドさん達も居ますから大きな胸も見慣れているのですが、さすがに生胸はお目に掛かる事がありません。刺激が強すぎますね。
 少しすると、ちゃんと服を着たアルメリアさんが小屋から出てきました。

「おはようございます。洗面器に水を作っておきましたから、顔を洗って下さいね。」

「おはよう。済まないね。」

 タオルを渡すと、アルメリアさんは洗面器を持って、少し離れた所に行って顔を洗いました。水を捨ててから大きくのびをすると戻ってきます。

「さっきは済まなかった。どうも朝は弱くていけない。」

「いいえ。気にしないで下さい。それよりも、朝食の準備が出来ていますから、食べてしまいましょう。」

「この前もそうだったが、毎回用意してもらって悪いな。」

「アルメリアさんの家ではごちそうになっていますから、お相子と言う事で良いじゃないですか。それでは頂きます。」

 二人でたわいもない事を話しながら朝食を済ませ、お茶も飲んでから後片付けをしました。

「私はこれからゴムの樹液を取りに森に入ります。アルメリアさんはどうしますか?」

「そうだな。私はこの辺り一帯の植物と動物の調査をするよ。」

「判りました。それではお昼になったら一度戻って下さいね。『ヴァルファーレ』はここで待機していて下さい。周囲をサーチして異常があったら知らせて下さいね。もしも、私やアルメリアさんに異常が発生したら救援をお願いします。」

[判った。任せるが良い。]

「『ヴァルファーレ』は、周囲10リーグ以上を監視する事が出来ますから、多少遠くに行っても大丈夫ですが、この前の事もありますから、気を付けてあまり遠くには行かないで下さいね。」

「半径10リーグなら十分だ。それにしても『ヴァルファーレ』は本当に優秀な使い魔だな。私もこんな使い魔が居れば何処でも自由に行けるのだが。」

 『ヴァルファーレ』のような使い魔はちょっと居ないでしょうね。今のところ異界の住人は僕しか呼び出せないでしょうから、他の人が呼び出す事は不可能だと思います。かといって、この世界に似たような存在が居るとも思えないので、やっぱり無理でしょうね。

 その後、アルメリアさんと別れて必要な荷物を担いで森に入りました。この前付けて置いた目印もちゃんと残っていたので、特に迷いもせずゴムの木の場所に着く事が出来ました。
 1時間ほど掛けて先に見つけていたゴムの木に傷を付けて容器をセットし、樹液の出具合を確認してから次の木へと移動を繰り返しました。
それから他にゴムの木がないか探して廻ります。ゴムの木も多い方が良いですからね。この前は余り時間が無かったので11本しか見つける事ができませんでしたが、今回は少し余裕がありますからもう何本か見つけておきたいと思います。
 この前と同じ地図に調査した場所を記録しながら、南西の方向に1時間くらい探して、新しいゴムの木を5本見つけました。この5本にも幹に傷を付けて容器をセットしておきます。
 この辺で、そろそろ良い時間になったので一旦ベースキャンプに戻ります。途中の泉で水をくんで飲み水も確保できました。

「『ヴァルファーレ』ただいま。異常有りませんか?」

[うむ。特におかしな事はないぞえ。]

「アルメリアさんはどの辺にいますか?」

[大体南西の方向、2リーグの所じゃ。此方に向かって戻ってきているようじゃな。]

「有り難うございます。それじゃあ、昼食の準備をしておきましょう。」

 竈に火をおこし、鍋に水を入れて掛けます。沸騰したら持ってきた豆と塩漬肉を入れてハーブを少々入れてから蓋をしておきます。20分くらい煮込んでから塩とこしょうで味を整えて少し火から離しておきます。
 鍋が煮えるのを待つ間に、フライで飛んで椰子の実を2個取ってきました。
 それから、白パンを切ってバターを塗ってから、ソーセージに木の串を刺して火のそばに立てておきます。後はやかんに水を入れて火に掛けて準備完了です。
 昼食の準備に30分位掛かりましたが、アルメリアさんはまだ戻ってきません。そのまま待って、さらに15分位たって帰ってきました。

「お帰りなさい。」

「ただいま。もう帰っていたのか。」

「ええ。お昼の準備が出来ていますから、手を洗って来て下さいね。」

 アルメリアさんに水を入れた洗面器を渡します。手と顔を洗ってアルメリアさんが戻ってきたのでご飯にしましょう。
 深皿に豆と肉のスープをよそい、白パンに焼いたソーセージをのせて食べます。
 アルメリアさんの食欲に合わせて、多めに作っておいて良かったと思いながら食事を終え、お茶を飲みながら午前中の成果を報告しあいます。

「私の方は、新しくゴムの木を5本見つける事が出来ました。午前中に合計16本とも樹液を採集する容器を付けてきましたよ。」

「頑張っているな。私の方は、南西側の調査を行ってみた。色々な植物を見つける事が出来たぞ。」

 そう言って、スケッチを見せてくれました。
 初めてアルメリアさんの絵を見せて貰いましたが、とても上手で綺麗な色も塗ってあるのでどんな植物なのか良く解ります。どうやって色を塗っているのでしょうね?
 スケッチは15枚有りましたが、その内の2枚が気になりました。どこかで見た事のあるような植物です。
 片方はたしか南アメリカかメキシコあたりが原産のリュウゼツランの一種に見えます。何でこんな北アフリカ(?)に自生しているのでしょうか?絵の特徴から、テキラリュウゼツランだと思います。
 もう片方はたしか生前新しく発見されて一部で柑橘類の代わりに栽培が期待されているケイアップルですね。
 すごい発見です。テキラリュウゼツランはテキーラの原料になりますし、ケイアップルはそのまま食べても良いし、ジャムなどの加工品にもなりますからすばらしい特産品になるはずです。
 夢中になって絵に見入っていると、アルメリアさんが不思議そうに言いました。

「その絵がどうかしたか?」

「この絵の植物は何処にあるか覚えていますか?」

「ああ。大体の場所は記憶しているが?」

「良かった。この植物はとても貴重な物です。こっちはテキーラという強いお酒の原料になるし、こっちの実はそのまま食べても良いし、ジャムなどの加工品にもなる美味しい実です。」

「こんな植物がか?それは驚いたな。良いものを見つけたようだ。それにしても何でアルバートは、そんな事を知っているんだ?」

「以前ゲルマニアの皇城にある書庫で東方の書物を見た時に、絵と一緒に載っていたので覚えていたのです。」

「そうか。昨日聞いた時も気になっていたんだが、アルバートはゲルマニアの皇帝とやらと親しそうだが、どういった関係なんだ?皇帝というと、そちらの世界ではかなり偉い人物と聞いていたように思うが、こちらの物を土産に持って行ったり、書庫に入って書物を読んだりしているのを見ると、けっこう頻繁に皇城とかにも行っているようだが。」

 疑問が疑問を生んでしまいましたね。これはちゃんと話しておかないといけないようですね。

「あまり自分でも認めたくない事なので話さなかったのですが、実は私の母が現ゲルマニア皇帝の娘だと言う事が私が3歳の時に判りまして、結果、私は皇帝の孫になるそうです。その上、現皇帝には王子が居ない為、私が現在の所皇位継承権第1位の皇子という扱いになっています。」

「アルバートが皇子様?冗談じゃないんだな?おいおい、仮にも皇子様が一人でこんな遠くに来て良いのか?ゲルマニアがどれくらいの大きさの国か判らないが、話の感じでは相当大きな国なのだろう?皇子を一人で旅に出すほど護衛に付ける兵隊がいないとも思えないのだが。」

「それは、『ヴァルファーレ』がすごすぎるからですよ。ゲルマニアにいるどの幻獣を連れてきても、『ヴァルファーレ』に着いてこられないので諦めたというのが真相です。今回の旅でも時速900リーグから1000リーグで飛んできましたから。風竜ではとても追いつけません。」

「そのスピードはいったい何なんだ。本当にそんなスピードで飛んだら吹っ飛ばされて、アルバートが乗っている事なんて出来ないはずだぞ。万に一つ、乗っていられたとしても呼吸はどうなるんだ?」

「そこの所は、『ヴァルファーレ』がシールドしてくれているので大丈夫です。その気になればもっと早く飛ぶ事も出来ますが、乗っている私には全然影響がないように出来るのですよ。」

「は~・・・。『ヴァルファーレ』のすごさは良く判ったが、確かにそれでは誰も着いてくる事は出来ないだろうな。まあ、人間の事情は我々エルフには関係のない事だが、アルバートが自分の責任を考えて、気をつけて行動する事だな。皇子と言う事は抜きにしても何かあったら両親が悲しむのだからな。」

「はい。判っているつもりです。」

「なら、良い。話は戻るが、テキーラというのは旨いのか?」

「旨いと思いますよ。私は飲んだ事がないので確かな事はいえませんが、結構有名らしいですから。」

「ふむ。それは是非作って見たいものだな。」

 そんな話をして、昼休みを過ごしてから、午後の作業に掛かりました。アルメリアさんは今度は南の方に行くそうです。
 僕は。ゴムの木を見て回って、樹液の採集状況を確認してきましょう。時間があれば、もう少しゴムの木を探して見ても良いですし。

「『ヴァルファーレ』。それではゴムの木の様子を見てきますね。ついでにもう少しゴムの木を見つけられるか調べてきます。周囲の監視をお願いしますね。」

[判った。気を付けるのじゃぞ。]

 すっかり通り慣れた森の中を進み、ゴムの木の所につきます。
 一通り樹液の採集状況を確認してから、地図を見ながら他にゴムの木が有る所を考えてみます。現在地図上には16個の印が付いていますが、どれも最初に見つけたゴムの木から南西の方向にあります。距離的には大体500メール、幅40メールの範囲でしょうか。この延長線上に他のゴムの木があると見て間違いないでしょう。
 それにしても、だんだん調査範囲が大きくなってきて、ベースキャンプからの移動時間が掛かりすぎるようになってきましたから、一人で採集するのはこの辺が限界になりそうですね。
 今回の収集は、この範囲内だけで諦めましょう。ここで3日位採集を続ければ、それなりの量を集められると思います。
 そう決めると、戻りながら樹液の採集状況を再度確認し、ベースキャンプに帰ります。
 かなり時間の余裕が出来たので、釣りでもしてみましょうか。

「『ヴァルファーレ』、帰りました。」

[ずいぶん早いお帰りじゃな。どうかしたのかえ?]

「どうも、樹液採集の作業範囲が一人で出来る限界になってしまったようなので、新しい木を探すのをやめて、この状態で採集を続ける事にしました。ゴムの木も16本有れば十分な量を集める事が出来るでしょうからね。」

[それも良いじゃろう。それで、余った時間で何をやるのじゃ。]

「そうですね。釣りでもして夕食の食材を増やしましょうか。」

 そう言いながら、『王の財宝』を開いてしまって置いた釣り道具を引っ張り出します。次に近くの砂浜の岩をひっくり返して虫を探します。適当な虫を何匹か集めて、一匹を釣り針に付けて水際から沖に向かって思いっきり投擲しました。
 放物線を描いて飛んでいくおもりを見つめて、レビテーションでさらに遠くに飛ばします。300メール位飛ばした所で海に落とし、十分に沈んだ所で糸を引き始めます。
 ゆっくりと糸を引いていくと、100メール位引いた所であたりがありました。後はタイミングを合わせながら糸を巻き取っていきます。電動リールでも有れば楽なんでしょうけど、ここでは手の力しか有りませんから5分位掛けて岸まで引き寄せ、ようやく魚の姿が見えました。
 体長50サント位の見た事のない魚です。急いで練金で砂のゴーレムを水際で作ります。ゴーレムの分だけ砂に穴が出来、その中に海水が入って小さめのいけすが出来ました。
 引き寄せた魚をそのままいけすに入れて、針を外します。アルメリアさんが帰ってきたら見て貰いましょう。
 すぐに釣り針に新しい虫を付けて、また沖に投擲します。今度は何も掛かりませんでした。虫を変えながら都合10回、投擲を繰り返し、最終的に色々な魚を4匹釣る事が出来ました。こんな物で良いでしょう。食べられる魚がいればいいのですが。
 釣り道具を片付けて、そろそろ夕食の準備に入ります。

 竈に火をおこして、食料庫から出した野菜とソーセージをフライパンで炒めます。
 次は鶏肉を焼いて、水で溶いた蜂蜜を掛けてさらに焦げ目が付くまで焼きます。
 焼いている途中でアルメリアさんが帰ってきました。生簀に気が付いたようで、中の魚を覗いていましたが、首をかしげているようです。
 焼き上がった鶏肉を皿に取り、先に炒めた野菜炒めをその横に盛りつけ、やかんを火に掛けました。

「アルメリアさん、お帰りなさい。」

「ただいま。この魚はどうしたんだ?」

「今日は早く上がったので釣りをしてみたんです。一応釣れたのですが、食べられるか解らなかったのでアルメリアさんが帰ってくるのを待っていたんですよ。」

「いったい何処に釣り道具があったのかも聞きたいが、まあ良い。この黄色の魚は毒があるから食べない方が良いだろう。後は大丈夫、結構旨い魚だ。」

「それは良かった。早速焼いてみますか。」

 その後、魚の内臓を取って木串を刺し、塩を振ってから火の近くに立てて焼きます。焼いている間にパンを切って食事を始めました。今日の夕食も、とても美味しくできました。 今日の出来事を話ながら、夕食も進み、焼き上がった魚も二人で食べて、だんだん暗くなる海を見ながらお茶を飲む頃には、お腹もいっぱいになってすっかり満足していましたね。

 本当にリゾート地の海辺で、となりに美人を座わらせて、のんびり休暇を取っているような気持ちになってきましたよ。屋敷で働いているみんなには申し訳ない気もしますが、頑張ってゴムの樹液は持って帰りますから、それで許して貰いましょう。

 今日も良い気持ちで眠れそうです。お休みなさい。 
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