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ハルケギニアの電気工事

作者:東風
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第21話:足りない材料はリゾートに行って!?

 
前書き
領内改革は順調な滑り出しで、アルバート君も気分は上々です。
今日は足りなくなった資源を調達しに、南方へと向かいます。
空の旅は快適でしょうね。
*今後の話のために一部修正・加筆を行いました。2018.11.25 

 
 おはようございます。アルバートです。

先週は教育と防具類の作製で目一杯働きました。流石に疲れましたが、そこは若さで乗り切って、短い休日でしっかりとリフレッシュ出来ました。

 今日からまた、新しい一週間が始まります。
先週一週間で『保健衛生局』員の教育も一段落したので、今週は公衆トイレの設置作業に入ってもらおうと思います。
 この作業は、特に防具もいらない土木作業と大工(建設?)作業なので、主に『施設課』の仕事になりますが、まだ作業が始まっていない『清掃課』と『管理課』にも手伝って貰って、各町や村に必要な台数を設置してもらう事にします。
 おそらく全ての町や村に公衆トイレを設置するには、2~3ヶ月程度の時間が掛かるものと想定していますので、どんどん作業を進める必要が有ります。
 設置作業がある程度進んだ所で『清掃課』と『管理課』の作業を始めれば、丁度良い位でしょう。

 『事務局』員は、読み書きの勉強はかなり進んで、ある程度の書類は読む事も出来るようになりました。もちろん専門的な言葉などはまだ無理がありますが、このまま実践的に覚えていけば充分読めるようになるでしょう。書く方はなかなか難しそうですが、このまま勉強を続ければ近いうちにすらすら書けるようになると思います。字の上手い下手は別ですが。
 算術の方は出来る人と出来ない人がはっきりと分かれてきました。小学校の頃を思い出すと解ると思いますが、足し算と引き算は割と簡単に覚えられるのに、掛け算や割り算になると出来ない人が増えてきます。特に割り算に抵抗がある人が多いようですね。
 分数の計算になると、かなりこんがらがってしまうようで、どうやって教えたらいいのか解らなくなります。
 この際、算術は出来る人に任せて、苦手な人はそれ以外の書類作成をやって貰いながら、算術は仕事の合間にゆっくりと覚えていってもらう方が良いように思えます。
 幸い、書類仕事が本格的に始まるのはまだ先の事でしょう。ゾフィーさんが書類作成の方にも適正があり、先週中に仕事のやり方を少し教える事が出来ましたので、僕の方からゾフィーさんに指示を出して、後は『事務局』の中で進めてもらうようにしようと思います。もちろん解らない事はどんどん聞いてくるように言っておきましたよ。

 週初めの全体朝礼で、先週苦労して作った長靴などの防具類をお披露目しました。僕のサイズで作ったので大人から見るとえらく小さく感じるでしょうが、これは見本という事で納得してもらいました。特に『清掃課』と『管理課』はこの防具類を使う事になりますから、使い方や注意点などをしっかりと話して、後でみんなの分も作る事を伝えておきました。

 さて、それぞれの仕事の指示も済みましたから、僕はゴムの樹液を取りに行ってきます。
 ついでと言っては何ですが、前回見つけておいた森の中の空き地に寄って、本格的に周囲の危険度を確認しておきたいと思います。特に危険がないようでしたら、中継拠点を作ろうと思っています。
 秘密基地みたいですが、あそこに拠点を作っておけば、物資の集積所や休憩地とか色々と使い道はありそうですからね。

 昨日の内に父上と母上には話しておきましたから、不在の間は何かあっても大丈夫でしょう。今回は連絡用の鷹も連れて行きますし、行き先もはっきりしているので両親も特に心配していないようです。
 メアリーには今朝、話をしましたが、しっかりとすねられました。またしばらく居なくなるのが気に入らないようですが、これも仕事ですから我慢して貰います。お土産を持ってくる事を約束して何とか機嫌を直してもらいました。前に持ってきたドライフルーツがとても気に入ったようで、また欲しいと言っています。

 今回は『ヴァルファーレ』用に荷物運搬用の籠を作っておきました。僕の「王の財宝」は秘密にしておきたいので、大量の荷物を運搬するにはどうしても運搬用の機材が必要になってしまします。
 この籠は軽量化の為に籠本体部分は5サントの幅で作った布製のベルトを格子状に縫い合わせて作っています。縦横5メールの大きさで、一番外側は輪になっていて直径2サントのロープが通されています。このロープを引けば籠の周囲が締められて中の荷物が落ちないようになっています。
 これでエルフの集落に持っていくお土産も楽に持っていくことができるでしょう。帰りはゴムの樹液の瓶や他に見つけることができた物など、運ぶ物が多くなっても大丈夫だと思います。

 エルフの集落へのお土産は、こちらで造られたお酒や海産物、肉の加工品など喜んでもらえるか解りませんが、出来るだけ良いものを選んで持って行きます。この前沢山もらったお礼を兼ねていますが、交易に使えそうな品物があるか確かめる意味もあって、色々な種類になりました。

 この籠には、籠の口を締めるロープの他に『ヴァルファーレ』の足に着けられるロープが取り付けられていて、離着陸の時に邪魔にならないだけの長さがあります。ロープの両端近くには捻じれ防止の“より戻し”を付けてロープが捩れないようにしてあります。ヘリコプターで荷物をぶら下げて運ぶ状態ですね。このロープで『ヴァルファーレ』に籠をぶら下げて運んでもらいます。ロープは2年位前に練金の訓練で作ったワイヤーロープで編んでありますから、かなりの無理にも耐えられると思います。『ヴァルファーレ』の足が痛くないように、足に着ける部分にはワイヤーロープの周りに厚いフェルトが巻いてあります。より戻しも何度も固定化の魔法を掛けてあるので、簡単には壊れないでしょう。ちょっと飛びにくいかもしれませんが、交易が出来るようになったら、『ヴァルファーレ』に中継拠点まで交易品を運んでもらう事になりますからね。今のうちになれて貰いましょう。

 前回と同じようにお弁当を作ってもらい、5日分の食料をお土産と一緒に積み込みます。
今回はエルフの集落で子供達を乗せてあげようと思うので、座席は二人乗り用にします。
荷物の積み込みで午前中一杯掛かってしまい、昼食を食べてからウイリアムさん達に後の事をお願いして訓練場に来ました。
 訓練場には母上とメアリーが来ていましたが、驚いた事に『事務局』の人たちも揃っています。お見送りに来てくれたようですね。
 母上とメアリーに行ってきますの挨拶をして、『事務局』の人たちに向かいます。

「わざわざ来てくれたんですか?まだお昼休み中なのに。」

 そう言うと、ゾフィーさんが前に出て言いました。

「いいえ。私たちの『部長』が、しばらく遠くに出かけるというのにお見送りもしないなんて考えられませんわ。資材調達で南の方に行かれるという事でしたが、気をつけて行ってらして下さい。」

「有り難うございます。週末には帰ってくると思いますから、読み書きと算術の方、よろしくお願いします。」

「お任せ下さい。それにしてもずいぶん荷物が多いようですが、どうやって運ぶんですか?」

 そういえば、『改革推進部』の人たちは、『ヴァルファーレ』を見た事がないのでしたね。大丈夫かな?

「まだ見せた事がなかったですね。僕の使い魔ならこれ位軽い物ですよ。これから呼び出しますけど、おそらく今まで見た事のない、とんでもない使い魔ですから、腰を抜かさないように気をしっかり持って下さいね。初めて屋敷の人たちに見てもらった時は、みんな揃って腰を抜かしましたから。」

「そんなに恐ろしい使い魔なのですか?」

「僕は恐ろしいと思った事はないのですが、初めて見た人は大体怖がりますね。何しろ大きいし。」

「解りました。出来るだけ頑張ります。みんなも良いわね?」

「「「「はい。」」」」

 返事は良いんだけど、多分ダメだろうな。これで少し出発が遅れそうだけど仕方ないね。

「それじゃ呼びます。『ヴァルファーレ』おいで。」

 僕の呼びかけに、空が暗くなって大きく裂け、中から咆吼と共に『ヴァルファーレ』が飛び出してきました。いつもながらの迫力です。母上とメアリーは一緒になって喜んでいますが、ゾフィーさんを始め『事務局』の女性陣は白目をむいています。美人が台無しですね。

「『ヴァルファーレ』。また南方のエルフの集落まで飛んでもらいます。今日はここにある荷物も持っていってもらいますから頑張って下さいね。」

[良いじゃろう。これ位の荷物、軽い物じゃ。ところで、そっちで白目をむいている女達は何じゃ?]

「済みません。先週から僕の下で働いてもらっている人たちなのですが、『ヴァルファーレ』とは初対面でしたので、いつも通りの状況です。ちょっと待って下さいね。」

 それから気付けの治療をしましたが、5人が元通りに戻るのにしばらく掛かってしまいました。

「大丈夫ですか?みんなには少しショックが大きすぎましたようですね。」

「申し訳ありませんでした。もう大丈夫です。それにしても本当に大きいですね。今まで何度か貴族の方達がお連れしている使い魔を見る事がありましたが、こんなに大きな使い魔は初めてです。それに何というか、近くにいるのが恐れ多いような、怖いというのとは違った感じがします。」

 他の人たちは、まだボーとしています。しばらくぶりの事ですが、やっぱり初めての人にはかなりのショックを与えるようですね。それにしてもゾフィーさんは結構丈夫ですね。

「この子の名前は『ヴァルファーレ』。召還獣と言って普段は異界と呼ばれる別の世界に住んでいます。空を飛ぶ事が出来て、強力な攻撃能力も持っているし、何より僕とは離れていても頭の中で話が出来ます。僕が作った座席を付ける事で、今のところ二人まで背中に乗る事が出来るんですよ。」

「『ヴァルファーレ』っていうんですか?凄いですね。こんな使い魔に乗って空を飛ぶなんて夢のようでしょうね。」

「その内、一段落したらみんなも乗せてあげますから、待っていて下さい。」

 それから僕は、籠のロープを『ヴァルファーレ』の片足にしっかりと固定し、座席を付けました。

「それじゃ、行ってきます。」

 『ヴァルファーレ』の背中に昇って、座席に座りベルトを締めます。二人乗り用ですが、まだ一人なので前の席に座りました。

「それでは『ヴァルファーレ』行きましょう。」

 僕の合図で『ヴァルファーレ』は一旦少し浮き上がって止まった後、緩やかに上昇します。今日は荷物があるので、ロープや籠に負担が掛からないように気をつけて上昇してくれています。何も指示をしなくてもしっかり考えて対応してくれるので本当に助かります。
 そのまま、高度5000メールまで上昇して一旦止まり、方向を確認すると南南東に向かって水平飛行に移りました。一度通ったルートなので、『ヴァルファーレ』は迷いもなく快調に飛んでいきます。体感になりますが、感覚的に前に飛んだ時より早く飛んでいるように感じるのに、荷物には特に負担が掛かっているように見えないのです。

「『ヴァルファーレ』。今のスピードは、前の時のスピードよりも速いですよね?」

[良く解ったの。前の時より少し早く飛んでいるが、それがどうかしたかえ?]

「いいえ。ロープや籠に負担が掛かっていないようなのが不思議に感じたのですが、もしかして荷物の周りにもシールドが張ってあるのでしょうか?だとしたら、もっと早く飛べるのではないかと思ったものですから。『ヴァルファーレ』が思いっきり飛んだら、どれくらいのスピードが出せるのだろうと考えただけですよ。」

[思いっきり飛んだらかえ?我が思いっきり飛べば、前にこのルートを飛んだ時、屋敷から最初の中継点まで掛かった時間の半分位で行けると思うが。]

 半分という事は、速度が倍になるんですよね。と言う事は前に飛んだ時は時速800リーグでしたから、時速1600リーグですか?気温と気圧を考えなければ対地速度が時速1225リーグで音速ですから、時速1600リーグだとマッハ1.3?完全に音速を突破していますね。しかもこの高度で出来るのですから、ソニックウェーブなんかはどうなるのでしょう?小回りが利いて空中で静止する事も出来るし、攻撃能力を考えるとジェット戦闘機より凄いかもしれません。少なくとも才人のゼロ戦よりずっと強いでしょうね。

「やっぱり『ヴァルファーレ』は凄いですね。こんなに凄い使い魔が側にいてくれるなんて、僕は何て幸運の持ち主なんだろうと思います。」

[なっ!何を言っておるのじゃ?いきなり恥ずかしい事を言うものではないぞえ!!]

 あっ、いま『ヴァルファーレ』が照れましたね。人間だったら顔が真っ赤になっているんでしょうね。

「済みません。それでは、このままの速度で良いですから、この前みつけた森の中の空き地まで行ってください。」

[解った。このままじゃな。]

 快適な空の旅を楽しんでいれば、あっという間に空地に着きました。
 『ヴァルファーレ』には空地の南側に降りてもらい、一旦荷物は足から外しておきましょう。万一幻獣でも表れて戦闘状態にならないとも限りませんからね。

 その後、『ヴァルファーレ』にも周囲の状況をじっくり確認してもらいながら、僕自身も空地の中や周囲の森の状況を確認して回り、全く異常を感じられなかったことから、此処に中継拠点を作ることにしました。

 空地の北側を50メール×100メール位整地して、その中に30メール×50メールの2階建てを土魔法で作りました。
 南側中央に玄関を作って、左右シンメトリにきれいに装飾を施して、全体的にどこかの小宮殿みたいな感じに仕上げています。
 建物の周りには整地した分だけ芝生を張って、はだしで歩いても寝転がってもいいようにしてみました。
 空地の東側には50メール四方の倉庫も作ります。これだけの大きさがあれば、さしあたっての荷物は入るでしょう。
 空地の周囲には高さ3メールの鋼鉄製の柵を作って、万一誰が来ても入ってこれないようにしておきましょう。

 これだけの施設を作り終えてから移動を続けることにします。
 そのまま、『ヴァルファーレ』に乗って空の旅を楽しんでエルフの集落に着きました。
 12日ぶりになるのかな?集落の様子は前に来た時のままのようです。速度を落としながら近づいていくと、風竜が2頭上がってきました。話が出来る距離で一旦停止します。

「こんにちは。以前お世話になりました、ゲルマニアのアルバート・クリス・フォン・ボンバードです。アルメリアさんはいらっしゃいますか?」

「良く来たな。私はザイターンだ。我々は君を歓迎する。アルメリアは家にいるはずだから、以前のように村はずれの草原に着陸して集落に入ってくれ。」

「有り難うございます。それでは着陸します。」

 『ヴァルファーレ』に指示して、前回着陸を許された草原に着陸します。『ヴァルファーレ』から降りて、足に着けたロープを外しました。
 籠の中から僕の食料や資材関係を取りだして、座席の後に付け直します。

「『ヴァルファーレ』、僕はアルメリアさんに会ってきますから、戻ってくるまで自由にしていて下さい。」

 そう言って、お土産の入った籠をレビテーションで浮かべ、集落の中に運びます。アルメリアさんの家まで歩いて行く間に、前に来た時に知り合った人たちや友達になった子供達とも会いましたよ。みんな笑顔で手を振ってくれるので、僕も笑って手を振りながらアルメリアさんの家まで来ました。ドアをノックすると中からアルメリアさんが出てきましたね。

「はい、どなた?ってアルバートじゃないか!良く来たな。今日はどうしたんだ?」

「こんにちは。ゴムの材料が足りなくなったので、またあそこの森まで行く途中なんです。せっかく近くに来たので寄らせて頂きました。この前色々頂いたお返しに、領内で取れる特産物等を持ってきましたから、食べてみて下さい。」

「わざわざお土産を持ってきてくれたのか。それは済まなかったね。ありがたく貰うとしよう。」

 喜んでくれたようなので持ってきたかいが有りました。さっそく籠をドアの前に置きます。

「ずいぶんと大きな籠だね。これは持ってくるのも大変だったろう。こんなに貰って良いのかい?」

「どうぞ、遠慮無く受け取って下さい。この前頂いた物は珍しいものばかりで、両親や妹もとても喜んでいました。実はゲルマニアの皇帝閣下にもお裾分けしたのですが、とても喜んでくれたんですよ。
 持ってきた物がエルフの方々のお口に合うと良いのですが、北の海で取れた魚の燻製や、肉の加工品と地元で作られているお酒です。それから、ゲルマニアの首都『ヴィンドボナ』で人気のお菓子も持ってきました。」

 その他にも色々持ってきた物をアルメリアさんに説明します。全部で300リーブル以上の重さになりますが、全部籠から出してアルメリアさんの家に入れさせて貰いました。

「ちょっと多かったかもしれませんが、集落の皆さんにも分けてあげて下さい。」

「ああ、勿論だ。みんなも喜ぶだろう。人間の作った物はあまりこちらには来ないから、結構珍重されているんだよ。本当に有り難う。」

「いいえ、どう致しまして。ところでアルメリアさんは、まだ次の調査に出かけないのですか?今日も来る間、お出かけ中だったらどうしようかと考えていたのですが。居てくれて助かりました。」

「ああ。調査の方は一緒に行く者を探しているところだ。この前は危なかったから腕の良い者を連れて行こうと思ったんだが、なかなか居なくてな。しばらく待機中だよ。」

「それは大変ですね。私は代表のアル・アミーンさんにご挨拶をしてから、この前のキャンプ地に行こうと思っています。あちらの方に行くのでしたら一緒に行きますか?」

「そうか。アルバートと行く手があったか。君なら腕に心配もない。私も丁度あの辺りの調査をしたかったところだから、一緒に連れて行ってくれるのなら助かる。お願いできるか?」

「勿論です。今回は座席も二人乗り用で来ていますから、乗るのも楽ですよ。」

 そんな訳で、ベースキャンプまでアルメリアさんと一緒に行く事になりました。
 その後、お土産の一部を持って代表に挨拶に行って、今回の訪問の目的を説明したり、アルメリアさんも一緒に行く事の許可を貰ったりしました。
 集落の人たちにお土産を分けて、とても喜ばれました。子供達にはお菓子が好評で、子供はどこでも一緒なんだなと感じました。

 アルメリアさんの準備を待って、集落のみんなにお別れして草原に戻ります。
 草原では『ヴァルファーレ』が先ほど上がってきたザイターンさんの風竜と話し込んでいます。ザイターンさんは側でそれを眺めていました。
 僕たちが近づくとザイターンさんがこちらに気がついて言いました。

「やあ。さっきから『ヴァルファーレ』と私の『スニフ』が話し込んでいるようなのだが、言葉が通じるのだろうか?」

 もっともな疑問ですね。申し訳ないですが、ちょっと話に割り込ませて貰いましょう。

「『ヴァルファーレ』。お話中済みません。そちらの風竜とは話が出来るのですか?」

[やっと帰ってきたかえ。こちらの風竜、名は『スニフ』と申すそうだが、ちゃんと話が出来るぞ。こちらの世界に召還されてからの事を話しておった所じゃ。まだ若い風竜じゃが、素直で賢くて良い竜じゃな。]

 ちゃんと話が通じるんですね。どういった言語体系をしているのでしょうか?

「お互い、言葉がわかるそうです。何か不思議なんですけど、種族が違っても言葉って通じるものでしょうか?」

「交流があれば別だろうが、完全に別の世界の住人が、出会ってすぐに話が出来るなど普通はあり得ないだろうな。もっとも、両方とも精霊のような存在と考えれば、話が出来ても不思議ではないのかもしれないが。」

「なるほど、精霊ですか。そう言うことも考えられますね。」

 話が一応纏まったところで、僕たちは出発する事にしました。
 ザイターンさんともお別れをして、アルメリアさんと『ヴァルファーレ』に乗り込みます。今回は二人乗り用の座席なのでアルメリアさんは前の席になります。アルメリアさんのベルトの状態を確かめて僕も座席に座りました。

「『ヴァルファーレ』。この前のベースキャンプまでお願いします。」

 合図と共に『ヴァルファーレ』が飛び上がります。ぶら下げた籠も中身がないので頼りない感じですが、軽くなったのは確かでしょう。そのまま高度を取って西南西の方向に向かいます。海岸線が見えてきたら、後は海岸線に沿って西に飛んで、15分位でベースキャンプに着きました。ここも離れた時のままのようです。

 着いた時にはもう夕方になっていました。エルフの集落でも時間を使いましたからこんなものでしょう。
 今日はキャンプの準備をして、夕食を食べて寝る事にしました。
 久しぶりに海鳴りを聞きながら満天の星を眺めていると、吸い込まれそうな気がします。 食後のお茶を飲みながら、アルメリアさんと別れてゲルマニアに帰ってからの事を話しました。アルメリアさんもゲルマニアの事に興味を持ってくれたようで、色々な質問をしてきました。
 それから、前と同じように練金で壁を作り、椰子の葉で屋根を葺いて簡単な小屋を作りました。荷物を片付けて、アルメリアさんと小屋に入り横になります。

 お休みなさい。 
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