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ドリトル先生と奈良の三山

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第十二幕その四

「本当によかったよ」
「そうだよね」
「先生にとってね」
「奈良に来たことは大きな実りだね」
「それになったわね」
「この実りをね」
 是非にというのです。
「論文、そして今後の学問にもね」
「役立てていく」
「そうしていくのね」
「是非ね、それとね」
 このお話をすることも忘れない先生でした。
「トミーと王子、サラ達へのお土産も買おう」
「そして日笠さんにも」
「買って帰ろうね」
「親しい人達にも」
「皆にね」
「そうしようね」
「そうだね、日笠さんだね」
 この人のことを思い出したみたいに応えた先生でした。
「あの人にも」
「忘れないでね」
「そこは絶対にだよ」
「忘れたら駄目だよ」
「忘れてた?」
「学問のことを考えていたら」 
 ついついというのです。
「忘れかけていたよ」
「危ないわね」
「先生はそうだから」
「むしろトミーや王子よりも忘れたらいけないのに」
「サラさんよりもよ」
「あれっ、三人よりもなんだ」
 先生は皆の言葉にわからないといったお顔で返しました。
「日笠さんは」
「そうだよ」
「あの人のことはね」
「ファーストよ」
「うん、レディーファーストだね」
 ここでこう言った先生でした。
「女性は尊重しないとね」
「そこでまたそう言うし」
「アウトもいいところ」
「相変わらずだけれど」
「先生はねえ」
「何でそう言うの?」
「万葉集や源氏物語にも詳しいのに」
 嘆くばかりの皆でした、薬師寺の五重の塔を見つつ。このことは本当にどうしてもでした。それでまた言うのでした。
「万葉集にもよく書かれているのに」
「源氏の君はいつも苦しんでいたのに」
「それはわかるのに」
「それでどうしてね」
「ご自身のことは」
「こうなのかしら」
「僕自身っていうけれど」
 やっぱりわからないという感じで返す先生でした。
「どういうことかな」
「とにかく日笠さんにもお土産買うのよ」
「それも他の人よりも沢山でかつ豪華に」
「そうするのよ」
「絶対に」
「どうしてかわからないけれど」
 それでもと返した先生でした。
「そうするよ」
「それじゃあね」
「お土産買う時に僕達また言うから」
「しっかりしなさいね」
「頑張ってね」
「それじゃあね」
 先生は皆の言葉に頷きました、そしてです。
 薬師寺から奈良市の商店街に行ってそこでお土産を買います、勿論トミーや王子、サラの分も買ってです。
 日笠さんの分も買いました、その量は。
「言われた通りにね」
「それでいいんだよ」
「それだけ買ってね」
「これならいいわ」
 皆も太鼓判を押します、日笠さんへのお土産を見て。 
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