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筒井筒~白泉オリジナルバージョン~

作者:白泉
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原文

 
前書き
 どうも、お久しぶりです、白泉です!


 謝罪やらこの作品を上げた動機やらはつぶやきのほうに書かせていただいたので、まだ読んでない読者様は、そちらをお読みくださいm(_ _"m)

 では、これが筒井筒の原文と訳です。(読まなくても特に問題はないはないので、飛ばしてくださって結構です) 

 
 昔、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとに出いでて遊びけるを、

 (昔、田舎まわりの行商などをしていた人の子供達は、井戸の辺りに出て遊んでいたが、)





 おとなになりにければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、


 
 (大人になったので、男も女も互いに恥ずかしがっていたけれど、)





 男はこの女をこそ得めと思ふ。



 (男はこの女こそを自分の妻にしたいと思った。)





 女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども、聞かでなむありける。



 (女もこの男を(夫にしたいと)思い続けて、親は(他の男と)結婚させようとするけれども、聞き入れないでいた。)





 さて、この隣の男のもとより、かくなむ、



 (そして、この隣の男のところから、このように(歌を送ってきた)、)





 筒井筒  井筒にかけし  まろがたけ  過ぎにけらしな  妹いも見ざるまに


 
 (筒型の井戸の井筒と背比べをした私の背丈も(井筒の高さを)超えてしまったようだよ。いとしいあなたに会わないうちに。)





 女、返し、



 (女は、返歌を)





 くらべこし  振り分け髪も  肩過ぎぬ  君ならずして  たれか上あぐべき


 
((あなたと長さを)比べ合って来た私の振り分け髪も、肩よりも長くなりました。あなたではなくて、誰のためにこの髪を結い上げましょうか。(いえ、あなた以外いません。))





 など言ひ言ひて、つひに本意(ほい)のごとくあひにけり。



 (などと、互いに歌の詠んで、とうとうかねてからの願い通り結婚した。)





(2)



 さて、年ごろ経ふるほどに、女、親なく、頼りなくなるままに、



 (そして、数年たつうちに、女は親を亡くし、生活の頼りとなるところを失うにつれて、)





 もろともに言ふかひなくてあらむやはとて、



 ((男は、女と)一緒に、どうしようもなくみじめに暮らしていられようか(、いや、よくない、)と思って、)





 河内の国高安(たかやす)(こおり)に、行き通ふ所出いで来きにけり。



 (河内の国の高安の郡に、通って行く(女の)所ができてしまった。)
 




 さりけれど、



 (そうではあったけれど、)





 このもとの女、悪しと思へるけしきもなくて、出だしやりければ、



 (このもとの女は、(男が河内へ行くのを)嫌だと思っている様子もなくて、(男を)送り出していたので、)





 男、異こと心ごころありてかかるにやあらむと思ひ疑ひて、



 (男は、(妻も)浮気心があってこのよう(な様子)であるのではないだろうかと思い疑って、)





 前栽(せんざい)の中に隠れゐて、河内へ往いぬる顔にて見れば、



 (庭の植え込みの中に隠れていて、河内へ行ったふりをして見ていると、)





 この女、いとよう化粧じて、うちながめて、



 (この女は、たいそう美しく化粧をして、(物思いに沈んで)外を眺めて、)





 風吹けば  沖おきつ白しら波なみ  たつた山  夜半よはにや君が  ひとり越ゆらむ



 (風が吹くと沖の白波が立つという、その龍田山を、夜中にあなたはたった一人で越えているのだろうか。)

 とよみけるを聞きて、かぎりなくかなしと思ひて、河内へも行かずなりにけり。



 (と詠んだのを聞いて、(男は)この上なくいとおしいと思って、河内(の女の所)へも行かなくなってしまった。)


 まれまれかの高安に来きてみれば、



 (ごくまれに、例の高安(の女の所)に来て見ると、)





 初めこそ心にくくもつくりけれ、



 (初めの頃は奥ゆかしくとりつくろっていたが、)





 今はうちとけて、手づからいひがひ取りて、笥子けこのうつはものに盛りけるを見て、心こころ憂うがりて行かずなりにけり。



 (今はすっかり気を許して、自らの手でしゃもじを取って食器に盛っていたのを見て、嫌気がして行かなくなってしまった。)

※いひがひ(飯匙)=しゃもじ。  ※笥子=飯を盛る食器   

※この頃、このような雑用はすべて侍女にやらせていたため、自分から家事をやるのは下品とされていた。





 さりければ、かの女、大和やまとの方を見やりて、



(そうなったので、その女は大和の国の方を見て、)





 君があたり  見つつを居らむ  生い駒こま山   雲な隠しそ  雨は降るとも



 (あなたのいらっしゃる辺りを眺めながら暮らしましょう。あの生駒山を、雲よ隠さないでおくれ。たとえ雨が降っていようとも。)





 と言ひて見いだすに、からうじて、大和人「来こむ。」と言へり。



 (と言って外を眺めていると、やっとのことで、大和の男は「(あなたの所へ)行こう」と言った。)





 喜びて待つに、たびたび過ぎぬれば、



((高安の女は)喜んで待っていたが、その度ごとに(男は来なくてむなしく時が)過ぎてしまったので、)


 君来こむと  言ひし夜ごとに  過ぎぬれば  頼まぬものの  恋ひつつぞ経る



 (あなたが来ようと言った夜が(あなたが来ることもなく)毎度過ぎてしまったので、(私はもうあなたを)頼みに思っていませんが、(それでもまだあなたを)恋しく思いながら暮らしております。)





 と言ひけれど、男住まずなりにけり。



 (と歌を詠んだけれど、男は通って来なくなってしまった。)

 
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