真田十勇士
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巻ノ百二十六 軍議その四
「楽じゃ、しかし茶々殿は疑い深くもあるが」
「ご一門ならばです」
「すぐに信じられるな」
「これまで二度の落城を受けておりますからな」
「あのことは大きいな」
「はい、やはり」
小谷城と北ノ庄城においてというのだ。
「そのせいで疑い深くありますが」
「それと共にな」
「身内ならばです」
「無条件で信じてしまうな」
「そうしたところもおありです」
「その為姉妹仲はよいが」
今もだ、お江は江戸でただひたすら姉が助かることを望んで祈ってもいる。それは必死そのものである。
「しかしな」
「それがですな」
「有楽殿を素直に信じることにつながっておる」
「そしてこのことはですな」
「我等にとって狙い目じゃ」
敵である家康達にとってはというのだ。
「実にな」
「そうなりますな」
「なら有楽殿にはな」
「はい、これからもですな」
「色々と城の中のことを知らせてもらおう」
大坂城の中を隅々まで知っているからというのだ。
「そうしてもらおう」
「さすれば」
「そしてじゃ」
さらに言う家康だった。
「茶々殿に何かと言ってもらうか」
「講和をですな」
「そしてその時にじゃ」
「あの城からですな」
「豊臣家を何としても出す」
「そうしていきますか」
「これは吉法師殿になるかのう」
笑って信長のことも話した。
「出ぬ相手にはな」
「無理にですな」
「出てもらうことにしよう」
「出ざるを得ない様にしますか」
「わしは随分待った」
豊臣家が大坂から出ることをだ。
「その様にしてきたが」
「これからはですな」
「わしも歳であるし戦にもなった」
「ではですな」
「これまで以上にな」
「豊臣家に大坂から出てもらおう」
「そうなってもらう」
是非にというのだ。
「その為の策としてじゃ」
「講和の後で」
「思い切ったことをするつもりじゃ」
「左様ですか」
「その為の講和じゃ、城を囲めば」
その時はというのだ。
「人を攻めるぞ」
「茶々殿をですな」
「その心をな」
「そうしてですな」
「大坂から出てもらおうぞ、しかしわしは本気であったが」
家康は微妙な顔になり正純にこうも言った。
「茶々殿への申し出はな」
「ご正室にですな」
「わしも長い間正室はおらんしな」
「茶々殿もですな」
「太閤殿が去られた」
秀吉、彼がだ。
「だからな」
「是非ご正室にですな」
「本気で言ったのじゃが」
「豊臣家の為にも」
「そう思ったのじゃがな」
「茶々殿はいつもすぐに断られましたな」
「うむ、冗談ではないとな」
実際にこう言ってすぐに断ってきた、茶々は。
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