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真田十勇士

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巻ノ百二十六 軍議その三

「まさにな」
「ううむ、では大坂城を囲めば」
「そうするのですな」
「そしてそのうえで」
「大坂城の中の人を攻める」
「そうしていきますな」
「そうしていくぞ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 家康はあらためれだ、傍に控えていた正純に顔を向けた。そのうえで彼に対して確かな顔で尋ねた。
「それでじゃが」
「はい、大坂のことですな」
「あれの用意は出来ておりますな」
「はい、充分に」
「あれだけで攻め落とせるか」
 それはというと。
「無理じゃ」
「左様ですな」
「しかしじゃ」
「攻めることは出来ますな」
「人を攻めることはな」
 笑って言うのだった。
「音だけでも充分じゃ」
「全く以て」
「しかも囲んでそうすれば」
「余計にじゃ」
 正純に笑って話した。
「よい、それと有楽殿じゃが」
「はい、あの方からは逐一です」
「わしに文を届けてくれているな」
「今も」
「ではその文を渡してくれ」
「それと織田家の方でしたら」
「奇妙殿もじゃな」
 織田信雄である、信長の次男であり家康にとっては旧知の間柄でもあって家康もいつも気にかけている。
「もうじゃな」
「はい、今は城の中におられますが」
「いざという時はな」
「出られるとです」
「有楽殿が話されておるか」
「はい」
 そうだというのだ。
「ですからご安心を」
「ならよい、やはりな」
「あの方もですな」
「大事にしたい」
 信雄もというのだ。
「あの御仁とはまことに長い付き合いじゃ」
「あの方がお若い頃からの」
「だからな」
 その縁故にというのだ。
「あの御仁もな」
「お助けしてですか」
「そうしてじゃ」 
 そのうえでというのだ。
「あの御仁にもな」
「何かあれば」
「うむ、城を出られる様にな」
「お伝えしておきます」
「頼むぞ、まさかな」
「はい、大坂方は」
「こちらに話が筒抜けとは思うまい」
 それはというのだ。
「これも普通に考えればじゃ」
「すぐに察しがつきますな」
「有楽殿のこともな」
 家康と縁がある彼をだ。
「その筈じゃが」
「茶々殿はこのことについても」
「わからぬ」
「だからですな」
「ある意味でじゃ」
 こうした密偵を送ることもというのだ。 
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