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真田十勇士

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巻ノ百二十六 軍議その二

「しかしそうはせぬ」
「戦は大坂でとなる」
「では敵は篭城しますか」
「大坂の城に」
「そうじゃ、これは下の下の策じゃ」
 大坂にとってとだ、家康は言い切った。
「必ず負けるな」
「はい、大坂城に篭ればです」
「後は幕府が用意した二十万の軍勢で囲む」
「そのうえで色々と仕掛ければよいです」
「人を攻めていけば」
「左様、城を攻めるのではない」
 ここで笑って言った家康だった。
「戦はな」
「人を攻める」
「そうするものですな」
「城を攻めるのは下計です」
「それに対して人を攻めるのは上計です」
「囲んでしまえば人を攻めるのは容易い」
 その中にいる相手はというのだ。
「実にな」
「そうなるのは当然ですから」
「城に篭りますか」
「自ら攻めることを捨てて」
「そうして戦いますか」
「大坂城は天下一の城じゃ」
 まさにとだ、家康も言い切った。
「その堅固さは他の城なぞとても及ばぬ」
「はい、まさに」
「二万いえ一万五千の兵もあれば」
「攻め落とせませぬな」
「到底」
「うむ、そうじゃ」
 このことは家康もわかっていた、大坂城はそれだけの城だとだ。
「あの城はな、しかしな」
「それでもですな」
「あの城に篭れば」
「もうそれではです」
「我等は勝てますな」
「大坂に対して」
「それが出来る」
 こう言うのだった。
「そして茶々殿はな」
「あの方がですか」
「そうされますか」
「大坂城の主であられるあの方は」
「そうされますか」
「茶々殿は戦も政もわかっておらぬからな」
 それでというのだ。
「必ずじゃ」
「そうした様にされますか」
「選んでそうして」
「そのうえで、ですか」
「篭城されますか」
「外にうって出ずに」
「そうすれば負けぬと思っておるのじゃ」
 茶々はそう考えているというのだ。
「大坂城に入っておればな」
「それではどうにもなりませぬが」
「茶々殿はそうお考えですか」
「天下の堅城にいれば負けぬ」
「決してと」
「そういうことじゃ、お主達は戦を知っているから言える」
 今の様なことがというのだ。
「しかしな」
「戦を知らぬとですか」
「篭城すればそれだけで勝てる」
「そう思われてですか」
「外から援軍なぞ来ないのに」
「それでもですか」
「そうじゃ、来ると思われているかはな」
 それはというと。
「まず考えておらぬ」
「そうなのですな」
「篭城しようとですな」
「お考えですか」
「特に考えずに」
「勝てると思われて」
「それが戦を知らぬ場合の考えじゃ」
 即ち茶々のというのだ。 
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