獣篇Ⅰ
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16 お披露目
湯呑みにお茶を注ぎ終わったあと、お茶を出す。
そして、副長には灰皿を追加で出しておいた。
すると、一段落ついた副長が、先に昼御飯を食べに行け、と沖田と私に言った。
_「じゃ、行きやすか…零杏?」
_「はい。参りましょう。
ですが、沖田さんはまだあともう少し、お待ち下さい。軽く片付けして参りますので。」
と言って、部屋を出た。
ある程度片付け終わってから部屋に戻ると、沖田が待ち構えていた。
_「さ、零杏。行きやすぜィ。」
と、私の腕を引っ張る。
では行って参ります、とだけ言って私たちは食堂へ向かった。
めいめい、食べたいものをお盆に載せ、席についた。
食事の挨拶を済ませ、暫く経って沖田が私に話しかける。
_「零杏は、この後何かあるんでィ?」
_「ええ。隊長と一緒に見廻りですよ。」
_「オラァ、聞いてやせん。」
_「嘘はいけませんわ。朝の会議においででしたでしゃう?副長に言いつけますよ。」
_「…いいでさァ。一緒に行きまさァ。」
_「そうですね。ところで、松平さん(?)はいつお見えになるんですか?」
_「午後3時くらい、って聞いてやすぜ。」
_「では、見廻りから帰ってきてからになりますね。」
_「そうですねィ。」
暫くの沈黙。
_「あ、そうだ。零杏に伝え忘れてたが、
今日、伊東から送られてきた荷物に、刀が何本か入ってやしたんで、零杏はその中から好きな刀を選んで下せェ。」
_「あら、伊東殿が?」
_「そうでさァ。そこまで付き合いやす。」
_「ありがとうございます。:)」
そして、食事が終わってから、
まず二人で刀を見に行った。
_「さァ、どれにしやす?」
と、いろいろな種類の刀が並べてある。
ではこれを、と言って私が選んだのは、
柄が山吹色で、鞘が漆黒の刀だ。
隣で何やらカタカナで名前を言っていたが、ちょっと複雑だったので、聞かなかった。
_「さすが、零杏。
お目が高いでさァ。これは中々の業物ですぜィ。」
と、沖田は興奮していたが、イマイチ理解できなかった……。
_「そうなのですか?それは嬉しいです。
では、参りましょう、沖田隊長。」
そして、見廻りに出掛けた。
見廻りが終わったのが、ちょうど未の下刻(午後三時くらい)。
また、ちょうど松平長官が来たらしいので、そのままお披露目となった。
長官がお待ちです、と他の隊士に局長室に案内され、
襖を開けると、中々のいい歳のおじちゃまがどっかりと上座に座っていた。
_「オ~ゥ、コイツが噂の零杏チュワ~ン?
中々の別嬪じゃねェ~かァ~。
真選組の紅一点だなァ~。」
長官と目を合わせ、その正面に正座して、手を畳につけて、言う。
_「お初にお目にかかります、久坂零杏と申します。
ふつつか者ではございますが、これからどうぞ、よろしくお願い致しまする。」
と、そのまま頭を下げた。
流れるようにできたのは、きっと日舞のおかげだ。
私のそんな姿にビックリしたのか、しばらく長官は固まっていたが、やっと冷静を取り戻して口を開いた。
_「そ~ゥか~ィ。そりゃァ~零杏チュワ~ンはとっても素敵な女性だねェ~。」
_「ありがとうございます。:)」
鼻血出してたのは、見なかったことにしよう。笑
やっと解放されたのが、約一時間後だった。
沖田隊長と一緒に部屋に戻ろうとしていると、
ふと話し声が聞こえてきた。
_ 「聞いたか?近々”あの人”が仕事を終え江戸に戻ってくるらしいよ。」
_ 「先生だろ?荷物の方が先に届いてるよ。」
_ 「あの人が仕入れた新型武器…
なんか、上物の刀剣とかも手に入れてきたらしくて、上の連中が取り合ってる、って話だ。」
_ 「いいなぁ~…オレも欲しいなぁ、おニューの刀…」
_ アハッアハッアハン)
_「あ、山崎さん…あ!
ひょっとしてその刀は…長船マークⅡ!
スッゲェ、ブランド物だ!
カッケェー!!!」
なんだ、山崎先輩か。
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