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獣篇Ⅰ

作者:Gabriella
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15 仕事は、合間合間で休憩を。

うとうとして朝、ハッとして目が覚めたら、
8:00ちょうどだった。

ついでだから支度をしていると、集合時間の5分前だった。とりあえず私のために新調された真選組の隊服を身にまとい、副長の部屋の前に来た。
ちなみに、制服(それ)はパンツスーツで、隊長クラスのスカーフも付いている。

ノックして、零杏です。失礼致します、と言うと、
入れ、と声がした。

失礼します、と言って襖を開けると、部屋にはもうすでに、近藤と沖田も揃っていた。

_「お待たせ致しました。」


すると彼らは、とりあえず座れ、と言った。
用意された座布団に正座すると、他愛のない話から始まった。


_「零杏、昨日はよく眠れやしたかィ?」

_「はい。おかげさまで、よく眠れました。」

そうか、と土方が小さく呟く。

_「よく眠れたなら、それは良かったよ。」

と、近藤。

_「あと、この制服も、ありがとうございました。」

_「いいんだ。あと、今日の午後、警察庁長官の松平も来ることになった。新入隊員のお披露目も兼ねて。」

_「そうですか。それは大変ですね。
どんな方なのでしょう?」

_「とっつぁんは、とても面倒見がいいから、安心していい。分からないことがあったら何でも聞いてくれ。
もちろん、オレたちに聞いてもらってもいい。」


分かりました、と返事する。
それと、と副長が続ける。

_「零杏の仕事内容について、詳しく説明する。
まず、副長秘書としては、オレの書類の手伝いをしてもらう。そして、一番隊副隊長としては、総悟の手伝いをしてもらう。」

_「零杏さんの立場は、実質トップ2.5だ。
大変だろうが、頑張ってくれ。」

と、近藤が続けた。

それと、スケジュール表を渡された。

_「大体は、(これ)に従え。そして、万が一オレたちのいないところで何かが起こったときは、お前が指示を出していい。そして、今日の仕事としては、午前はオレの書類を手伝い、午後からは、総悟と一緒に見回りに行ってもらう。」

_「了解しました。
では皆様、どうぞよろしくお願い致します。」



会議がお開きになったあと、私は副長実に残り、
副長(かれ)から渡された書類をまとめ始めた。

ほとんどが、沖田の器物破損についての書類だった。

テーブルに向かって、ペンを走らせる。
ちなみに、お向かいは副長が。

部屋に二人きりなので、多少緊張する。


しばらくペンが走る音と、書き上げた書類を積み上げる音だけがしていたが、不意に副長(かれ)が零杏、と口を開く。


_「零杏、伊東の荷物が、明日届くそうだ。」

ペンを止めて、副長(かれ)を見る。

_「予定が早まったのですか?」

_「どうもそうらしい。来る日程も、一週間早まったようだ。」

_「では、部屋などの準備もせねばなりませんね。」

_「大丈夫だ、それについてはオレが手配しておく。」

_「承知しました。」


再びペンを走らせる音と紙の音だけが響く。



分け与えられた書類の山が次々と片付いていき、最後の一枚になったとき、ふと副長(かれ)を見ると、
まだ苦戦しているようだった。

副長、と声をかけると、こちらを向く。

_「副長、これは全て書き終えた分です。
あとは副長の印鑑を捺すだけです。

お茶などは飲まれますか?」

気のせいだろうか、彼の顔が少し赤くなった気がした。

_「あァ。頼む。」

_「ついでに灰皿も新しいのに交換しますね。
少々、お待ちを。」


と言って、部屋を去った。


二人分のお茶を煎れる間、灰皿の中も片付けた。

お盆に急須と湯呑み、土台のお皿、そして空にした灰皿を載せ、再び副長室に向かう。

失礼します、と声をかけてから襖を開けると、
そこには、なぜか沖田がいた。

_「あら沖田さん。」

_「あ、零杏だ。土方さん、零杏が気やしたぜィ?」

_「書類が忙しいのですよ。あ、お茶をお持ちしたので、沖田さんも飲まれますか?」

すると彼は目を見開いて、しばらく固まってから、
頼みまさァ。とだけ言った。


急須の上に引っ掻けてあったお茶っ葉をのけてから、
急須(それ)の蓋を閉め、ぐるんといっしゅうさせてから、受け皿に並んだ2つの湯呑みに、均等に次いでいく。
 
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