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とある3年4組の卑怯者

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111 応援

 
前書き
 さて、次は藤木は中部大会に進みます。それにしても、この作品がスケート小説に変貌していきそうな気が・・・。まあ、スケート以外のテーマも引き続き取り入れる予定ではいますけどね。 

 
 藤木はリリィに連れられて永沢と城ヶ崎が入院しているという病院に向かっていた。
「本当に永沢君喜んでくれるのかな?絶交したのに・・・」
「大丈夫よ。きっと分かってくれるわ」
 リリィは母親のお気に入りのブランドのシュークリームが入った箱を持ち、藤木は永沢が入院している事を母親に話した為に母から持たされた饅頭の箱とスケート大会の金賞の楯を持っていた。ちなみにリリィから楯を見せた方が嘘じゃないと証明できると言われた、楯も持っていく事にしたのだ。病院に到着し、永沢達のいる病室に入った。
「こんにちは」
「あら、リリィさんに藤木」
「なんだ、藤木君。君はあの時、どこで何してたんだい?」
 永沢が敵意を向けるような目で藤木を見た。
「永沢君。大変だったね。今日は君に差し入れを持ってきたんだ。母さんが買ってきてくれた饅頭だよ」
「ふん、それがなんだ。花輪クンなんて高級なお菓子を持ってきてくれたんだぜ。君はあの時僕を助けてくれなかった癖に、来たらそんなものを持って来るのか」
「永沢っ!」
 城ヶ崎は永沢に怒った。
「ご、ごめんよ。あの時、スケートの大会で御殿場へ行ってきたんだ。それで金賞を獲ったんだよ。これがその証拠さ」
 藤木は楯を永沢に見せた。
「ふん、君はスケートしかできないんだから呆れるよ。まあ、絶交した君の事なんてどうでもいいけどね」
「永沢君、そんな事言わなくてもいいじゃない。不幸の手紙の犯人も分かったんだし、もう仲直りしましょうよ」
「悪いけど僕は卑怯者なんかと仲直り何て御免だね」
「永沢っ!藤木はあの時何があったか知らなかったんだから仕方ないでしょっ!!」
「うるさいな!君は黙っててくれ!大体なんで僕はこんな奴と同じ病室なんだ!」
「だったら看護師さんに病室替えてくれって言えばいいでしょっ!!」
「そんな事君が言えよ!!」
 永沢と城ヶ崎は相変わらず喧嘩を始めた。その時、一人の女性が入ってきた。
「こんにちは。あら、君男君の友達?」
「あ、はい、そうです」
「あ、お姉さん」
 永沢は照れた。その女性はかつて永沢の家の隣に住んでいたお姉さんであり、今は嫁いだが永沢の初恋の女性だった。各務田の逮捕は彼女の手柄でもあるのだった。
「君男君、友達が心配してくれてよかったわね」
「いや、別に、その・・・」
「折角来てくれたんだからいいじゃない。えっと君は・・・」
「藤木といいます」
「藤木君ね。お姉さんは永沢君男君の家の隣に住んでいた人よ。今は結婚したけどね」
「そうですか。僕、永沢君に差し入れとこのスケート大会で優勝した楯を見せに来たんです」
「へえ、スケート大会でね。私も君男君が小さいころ一緒にスケート場に遊びに行ってたのよ」
「ちょ、ちょっと、お姉さん!」
 永沢は照れくさそうに言った。そして五人で談笑した。
「それじゃあ、僕達はこれで失礼します。さようなら」
「またね、リリィさん、藤木。ほら、永沢も挨拶しなさいよ」
 城ヶ崎は永沢に催促した。
「う、じゃあな」
 永沢は素っ気なく言った。そしてお姉さんとも別れ、藤木とリリィは帰って行った。


 藤木は中部大会のための練習をスケート場で続けていた。トリプルトウループやトリプルアクセルやトリプルルッツ、フライングキャメルスピン、どれも難なく出来た。ただ、それが本番で出来なければ減点で世界一はおろか、全国大会行きすら絶たれてしまう。その場で滑っていた人の多くは藤木の姿を見て凄く驚いていた。
(ふう~、この姿、笹山さんやリリィに見せたいなあ~)
 藤木はリンクから上がり、少し休憩する事にした。ベンチで座って少しすると、和島が現れた。
「やあ、藤木君」
「和島君」
「あの時のボクはしくじったけど今度はキミに簡単に金は獲らせないよ」
「そうか。それなら僕も上を目指すだけだね。とにかく今の僕の目標は世界一になる事だよ。まずは中部大会(そこ)で全国に行く権利を手にする。それには銅、銀、金いずれかを獲る事が必要だ。つまり君より上になる事より、賞を手に入れる事だけを考えるよ」
「フン、やれるもんならやってみろ。ボクは地区大会で見せたキミのあの技よりも凄い技を見せてやるようにするさ!」
 和島はリンクに向かった。
(僕も負けてられないな。また新しい技を作るべきかな?それともあのアクセルからのスパイラルをまた中部大会で披露するべきかな?)
 藤木はどうするべきか考えた。なお、遠くからみどりが藤木を見ていた。
(ああ、藤木さん、やはりスケートする姿は本当に素敵だわ!中部大会、頑張ってください!!)
 みどりは藤木が練習を再開する所も見ていた。そして練習が終わり、藤木が帰る時、みどりは慌てて藤木に声を掛けた。
「あ、あの、藤木さん・・・!」
「みどりちゃん!?来てたのかい?」
「は、はい、先日はお疲れ様でした・・・。あと、私があげたお花を飾ってくれてありがとうございます」
 みどりは照れながら礼をした。
「いやいや、こっちこそ」
「あの、そうだ、中部大会、頑張ってくださいね」
「え?うん、ありがとう。じゃあね」
 藤木は帰って行った。
「はい、さようなら~」
 みどりは藤木が見えなくなるまで手を振った。


 また次の日、藤木は練習の為に急いで帰ろうとした。そして昇降口でリリィに呼び掛けられた。
「藤木君」
「リリィ、何だい」
「今日も氷滑(スケート)しに行くの?」
「そうだよ、中部大会が近づいてきているからね」
「そう、それってどこでやるの?」
「長野県の松本さ」
「わかったわ。ありがとう」
「じゃあね」
 藤木は帰って行った。リリィは松本はどこだろうかと思い、図書室に向かい、地図帳を探した。そして松本の場所を探す。そして見つけた。
(ここか。でも遠いな・・・)
「あ、リリィさん。何見てるの?」
 笹山が声を掛けてきた。
「あ、実は藤木君の事なんだけど、次の大会が松本って言ってて、どこか調べてたの」
「へえ、松本」
「でも私、あの時は不幸の手紙の事で藤木君を避けていて、そのお詫びに今度は応援に行ってあげたいと思うんだけど、松本は簡単に行ける所じゃないからパパもママも簡単には許してくれないと思って・・・」
「そう、でも聞いてみたらどうかしら?リリィさんは別荘持ってるくらいのお金持ちだったわよね?」
「うん、花輪クンほどじゃないけどね」
「そう、私も丁度藤木君に意地悪したお詫びもあるし、応援に行きたいと思ってたの。私も一緒にお願いしてみるわ」
「笹山さん、ありがとう」
 リリィは笹山と共に図書室を出て彼女を自分の家に連れて行った。そして母親にこの事を相談してみた。
「ママ、私、藤木君の氷滑(スケート)の応援しに行きたいの。場所は松本で遠いのは分かってる。でも不幸の手紙の事もあったし、藤木君のスケートは凄い上手いし、どうしても見過ごせないの・・・」
「私からもお願いします。どうか藤木君のために何かしてあげたいと私もリリィさんも思うんです!」
「分かったわ。パパにも相談してみるわ」
「は、はい」
 笹山は帰る事にした。その時、リリィに声を掛けた。
「リリィさん、応援に行けるといいわね。じゃあね」
「うん、さよなら・・・」

 ミルウッド家ではリリィが藤木の応援をしたいという話をしていた。リリィの父が考えた。
「シカタないな。行ってもいいけど、大変だよ」
「うん、分かっているわ。あと笹山さんも一緒に連れて行って欲しいの。家のお手伝いも勉強もちゃんとやるわ」
「ふう、全く・・・。ワカッタ、ワカッタ」
 リリィは少し安堵した。しかし、松本はここからは行きづらい事は承知している。でも藤木のためになにかしてやりたいという気持ちも捨てきれなかった。 
 

 
後書き
次回:「松本」
 藤木が中部大会のために松本へ向かう日が訪れた。リリィと笹山も藤木を追うように松本へ向かう。そして藤木は現地で片山と再会する・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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