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髭男

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第三章

「赤崎には」
「そうだな、赤崎顔いいしな」
「ファッションもお洒落だしな」
「体格も引き締まってるし」
「じゃあダルビッシュか?」
「ダルビッシュな感じか?」
 彼の髭の生やし方ならどうかというのだ。
「ダルビッシュ今は髭生やしてないけれどな」
「生やしてた時あったしな」
「あの時の髭の感じならな」
「赤崎にも似合いそうだな」
「そうだよな」
「ダルビッシュならよさそうだな」
「あら、ダルビッシュなの」
 あのピッチャーの名前を聞いてだ、謙信も笑顔になった。
「あたくしもあの方好きよ」
「あれっ、御前楽天ファンだろ?」
「それでもダルビッシュいいのか?」
「マー君じゃないのかよ」
「ダルビッシュか?」
「敵だったけれど見事な敵だったから」
 それでというのだ。
「好きなのよ」
「ああ、そういうことか」
「敵としても好きな選手は好きだしな」
「それは見事な敵だとな」
「いいよな」
「そうだよな」
「大谷とかな」
 ダルビッシュの次に北海道に来た怪物だ、その能力はまさに改造コードを使ったレベルである。
「凄いからな」
「ああした選手は好きになれるな」
「敵でもな」
「脱帽するしかないからな」
「それでダルビッシュさんも好きだから」
 今はパヴァロッティ系の髭面で言う謙信だった。
「そっちにしてみるわね」
「ああ、じゃあな」
「そうしてみな」
「今度はダルビッシュな」
「それでいってみな」
「そうするわね」
 こうして今度はダルビッシュの髭にしてみたが。
 今度はだ、友人達も口々に言った。
「いいな」
「ああ、これまでの中で一番いいな」
「こうした顔にはこういう髭だな」
「ダルビッシュだな」
「髭の生やし方も色々でな」
「合う髭ってあるからな」
 それぞれというのだ。
「いや、本当にな」
「髭もそれぞれだな」
「そのこともわかったぜ」
「よくな」
 友人達は口々に言う、今度はよしであり謙信自身今の自分の顔を手鏡でチェックしてそのうえで言った。
「あたくしも納得よ」
「だよな、じゃあな」
「その髭でいけよ」
「いい感じだからな」
「それでいったらいいさ」
「そうするわね」
 こうしてだった、謙信はダルビッシュの髭で暫く過ごしたがやがてその髭を奇麗に剃って元のツルツルの顔になって言った。
「やっぱりこれでいくわ」
「何だよ、折角生やしたのにか」
「剃ったのかよ」
「またどうしてなんだ?」
「あれだけ凝って考えて」
「それでもか」
「ええ、実は謙信さんね」
 その敬愛する彼がというのだ、彼の名前の元の人物であり肖像画で髭を生やしていた彼はというのだ。 
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