転生とらぶる
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ペルソナ3
1946話
長鳴神社。
それは、俺にとっては憩いの場所と言ってもいい。
境内とかはあまり人が来るような事はなく、そこに住み着いている犬と一緒に遊んだり、ドッグフードを与えたりといた行為は、俺にとってまさに息抜きに丁度いい行為だった。
犬の方も、俺からは餌を貰えるという事もあったり、フリスビーで遊んだりといった事もあり、それなりに懐いているように思えた。
勿論、それはあくまでも俺の認識であって、実際には違うのかもしれないが。
ともあれ、この長鳴神社は俺にとってそれなりにお気に入りの場所だった訳だが……
現在、そんな俺のお気に入りの場所では、犬がシャドウと戦っているところだった。
シャドウはスライム状の……臆病のマーヤと呼ばれている、現在判明している中では最弱のシャドウだが、それでも普通の人間にはどうこう出来る相手ではない。
……そう、普通の人間であれば、だ。
その相手が犬であれば、どうだろう。
その答えを示すかの如く、現在俺の視線の先では、犬が臆病のマーヤ相手に互角に戦っていた。
ただし、互角ということは相手と同じくらいの実力という事であり、決して圧倒出来るという訳ではない。
「……俺の気のせいじゃなければ、今はまだ影時間で、犬が臆病のマーヤと戦っているように見えるんだが」
「そうね、私もそう見えるわ。……って、こんな場所でじっと見てちゃ駄目でしょ! 早く助けにいかないと!」
俺の腕の中で、我に返ったゆかりがそう叫ぶ。
そこには、先程まで俺に横抱き……いわゆる、お姫様抱っこをされて恥ずかしがっていた様子はない。
俺の方を見て、必死に訴えてくる。
当然俺も懐いている――と思われる――犬を見殺しにしたりするつもりはない。
「分かった、行く……ぞ?」
そう言い、地上に向かおうとした瞬間、犬が激しく吠える。
「ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」
遠吠えとも、雄叫びともとれるその声。
自分に気合いを入れる為だけ……というのであれば、俺もそこまで驚くような事はなかっただろう。
だが、犬が鳴き声を上げた瞬間、その背後には首が3つある犬のような存在……それこそ、ケルベロスと呼ぶに相応しい存在が姿を現したのだ。
それが何なのか、俺は知っていた。
そして、ゆかりはそんな俺よりもその存在については詳しく知っていた。
何故なら、それは……ゆかりにとっては、タルタロスを攻略する上で必須の存在であり、もう1人の己と言ってもいい存在なのだから。
「ペルソナ……?」
呆然と呟くゆかりだったが、その間にも事態は進展した。
犬によって召喚されたペルソナ……取りあえずその形態からケルベロスとでも呼んでおくが、そのケルベロスが素早く地面を蹴ると臆病のマーヤに近づき、3つの首で一斉にその身体を食い千切る……瞬間、その姿が消える。
もう1秒でも長くペルソナがいれば、恐らくそのまま臆病のマーヤを食い千切る事が出来たのだろう。だが、実際には攻撃が命中する直前にケルベロスは消えてしまった。
そんな九死に一生の隙を、臆病のマーヤが見逃す筈がなかった。
次の瞬間、臆病のマーヤの身体から放たれたのは、氷柱。
恐らくブフでも使ったのだろう。
普段であれば、犬もその攻撃を食らうような事はなかったのかもしれないが……ペルソナを召喚した隙を突かれてしまっては、どうしようもなかったらしい。
「ギャンッ!」
「ちっ!」
影時間の中で犬が動いていて、更にはペルソナを召喚するなんて真似をした事に目を奪われていたが、その悲鳴で我に返る。
ゆかりを抱きしめたまま、視線だけで白炎を生み出し……次の瞬間、臆病のマーヤはあっという間に消滅した。
元々氷系の魔法を得意とするだけあって、臆病のマーヤは炎には弱い。
そんな状況で白炎を喰らってしまえば、消滅……いや焼滅してもおかしくはないだろう。
「ふぅ。……っ!? ありがと」
俺の腕の中にいるゆかりが、安堵して俺の方を見て……俺の顔が思ったよりも近くにあった事に驚いたのか、反射的に視線を逸らす。
それでいながら、俺に向かって感謝の言葉を口にする辺り、それだけゆかりにとってもあの犬は可愛い存在なのだろう。
実際、ゆかりも何度か長鳴神社に行った事があるし、犬を連れて郊外の草原にピクニックに行った事もある。
その時の事を考えれば、ゆかりの態度も理解出来ないではない。ないのだが……
「まさか、犬が影時間に適応しているどころか、ペルソナ使いになっているとはな。正直驚いた」
ゆかりを横抱きにしつつ地面に向かって下りていきながら、素直な感想を口にする。
「そうね。ただ、ペルソナの方は、まだ完全て訳じゃないみたいだけど」
「ああ。もう数秒……いや、1秒でもペルソナを召喚したままでいられれば、臆病のマーヤを倒す事も出来たんだけどな」
そうやって空から下りてくる俺とゆかりを、犬はじっと見ている。
それでも下りてくるのが俺だと理解しているのか、警戒体勢を取っているようには見えない。
そうして地面に着地して抱いていたゆかりを地面に下ろすと、俺はじっとこっちを見ている犬に向かって近づいていく。
「大丈夫か?」
「わん!」
俺の言葉の意味が分かっているかのような、そんな返事。
……前から何だかこっちの言葉を理解しているような態度だったが、こうして影時間に適応して、更にはペルソナまで召喚出来るとなると、もしかしたら本当にこっちの言葉を理解しているのかもしれないな。
そんな風に思いながら犬を見ていると、その身体に深い傷が何ヶ所もついており、血が流れているのが分かる。
さっきも思った通り、臆病のマーヤとの戦いは、犬にとっても決して楽勝だった訳ではない。
その戦いの中で怪我を負っているのも、空から見た時に分かっていたのだ。
「取りあえず……こっちに来い。治療した方がいいだろ」
そう告げると、犬は大人しく俺の方に近づいてくる。
そんな犬を見ながら、空間倉庫からミネラルウォーターの入っているペットボトルを取り出して傷口を洗う。
恐らく染みただろうに、犬は特に鳴き声を上げる事もなかった。
そうして傷口を洗うと、次にタルタロスから入手したものの、全く使う事がなかった傷薬を塗る。
「わん!」
ミネラルウォーターはまだしも、傷薬の方は染みたのか、犬の口から悲鳴……とまではいかないが、それでも鳴き声が上がる。
それでもこっちに敵意を見せている様子がないのは、これが治療だと分かってるからか。
「……さて、これでいいだろ。もう傷も殆ど残ってないし」
タルタロスで入手した傷薬は、中々に効果が高い。
もっとも、犬の受けた傷がそこまで酷くなかったというのも大きいのだが。
確かこれと同様の効果を持つ傷薬を桐条グループが手を回してどこぞの店で売ってるって話だったが……買っておいた方がいいのか?
ただ、俺達の場合は基本的にタルタロスで入手した傷薬が結構あるし、ゆかりのイオは回復魔法を得意としているペルソナだ。……ゆかりが使うと、何故か超攻撃的なペルソナになってしまうが。
ともあれ、そんな訳で犬の傷も回復した訳だが……
「どうする?」
「いや、どうするって、私に言われても……助けたのは、アクセルじゃない。どうするつもりだったのよ?」
質問に質問で返されてしまった。
だが、実際ゆかりの言う通り、こいつを助けたのは俺なのだ。
であれば、当然この犬をどうするのかというのは、俺が判断する必要がある。
「今更、本当に今更の話だが、まさか犬にも影時間の適性があったりかペルソナを召喚出来たりするとはな。そうなると、もっと詳しく探せば猫だったりカラスだったりといった風に、他の動物でも影時間に適性があったり、ペルソナに覚醒したりする動物がいるのか?」
犬を撫でながら、ふとそんな事を思う。
実際、人間だけが影時間の適性を得られる訳ではなく、ペルソナ使いとして覚醒する訳ではないというのは、この犬を見れば明らかなのだから。
「そう、ね。この子の事を考えると、その可能性は高そうだけど……その場合、どうやって調べるの? 私には、動物園とか水族館に行ってみるくらいしか思いつかないけど」
「あー……まぁ、そうだな。今からでも行ってみるか?」
東京にも、幾つかの動物園や水族館の類はある。
それを調べるだけであれば、あまり時間は掛からない。
もっとも、ペルソナ使い以外の存在は影時間には棺となっている以上、動物園や水族館に行っても、棺があるだけだが。
……動物園はともかく、水族館だとメダカとかの小さな魚も棺になってるのか?
いや、そもそもの話、棺になる生き物ってのは、どこからなのやら。
プランクトンとかそういうのも棺になって、無数の小さな棺が水の中を浮かんでいる?
そう考えると、色々と気味が悪いな
「わふぅ?」
どうしたの? と、犬が俺の方を見ながら、不思議そうに鳴く。
それに俺は、何でもないという意味を込めて、そっと撫でてやる。
「それで、この子は結局どうするの? まさか、このまま放っておく……という訳にもいかないでしょ? またシャドウに襲われる可能性もあるし」
「そうだな。そっちの問題があったか」
そっちの問題と口にしたが、実際には犬がペルソナ使いだという話から半ば逃避してただけなんだよな。
溜息を吐きながら、改めてこれからどうしたものかを考える。
そもそもの話、犬と言葉が通じない以上、意思疎通をどうするのかといった問題がある。
「……うん、そうだな。やっぱりここは美鶴を……桐条グループを頼った方がいいか」
結局のところ、そういう場所に落ち着く。
そもそもの話、人間ではないペルソナ使いであるというだけで、俺の手には負えないのだ。
であれば、やはりここは大人しく桐条グループに頼る方がいいだろう。
今までも、タルタロスの中で見つけたマジックアイテムに関しての解析は桐条グループに頼っているのだから、この犬に関して頼っても構わないと思う。
ただ、1つだけ問題があるとすれば……
視線をゆかりの方に向ける。
ゆかりの過去についての問題だけだ。
今まではゆかりも桐条グループに頼るという行為に、そこまで反対意見を持ってはいない。
だが、それはあくまでも今の状況であればこその話であり……犬の件でも同じかどうかは、分からない。
「どう思う? どうしてもゆかりが桐条グループに頼るのが嫌だって言うなら、こっちも無理にとは言わないけど」
ただ、その場合色々と面倒な事になるのは間違いない。
そもそもの話、犬の処遇をどうするのかという事もある。
このまま長鳴神社に放っておくのか、それとも戦力として連れて行くのか。
放っておくのであれば、それはそれで構わないが……先程のように、影時間になればシャドウと戦う事にもなりかねないのだ。
今回は、多少の傷程度で済んだが、これから先もそうだとは限らない。
……そもそもの話、あのシャドウは一体どこからやって来たんだ?
今日はタルタロスのエントランスに美鶴と山岸の2人がいた筈だ。
であれば、シャドウがエントランスを通って街中に出るというのは不可能な気がするんだが。
影時間になってから、美鶴達がエントランスに到着するまでの短い間にシャドウが逃げ出した……まぁ、可能性としてはあるだろうけど、それはそれで違和感があるのは間違いない。
ともあれ、現在の状況を考えるとどこからか……それこそ、タルタロス以外からシャドウが現れているという可能性も十分に考えられる。
いや、今はそんな事を考えている場合じゃないか。
シャドウがどこから出てくるのか……そんなのは、俺ではなく、それこそ桐条グループの研究者達に任せておけばいい。
今の俺達に必要なのは、犬をどうするのかという事だ。
俺の言葉に、悩んでいる様子を見せるゆかりだったが、やがて不承不承といった様子で口を開く。
「そうね。他に手段がない以上は……しょうがないと思うわ」
ゆかりが、若干不満が残ったままだったが、それでも犬を撫でながらそう告げる。
本心では、やはり桐条グループに頼るような真似はしたくないのだろう。
だが……実戦という事であればまだしも、研究とかに関しては、俺達は間違いなく桐条グループに及ばない。
いや、そもそも研究とかしてる訳でもない以上、及ばない云々以前に、同じ土俵にすら立っていないというのが正しいのか。
勿論、ホワイトスターと繋がっているのであれば、話は別だ。
性格はともかく、能力という意味では超一流……いや、それ以上の天才が多く揃っている技術班が魔法球を使って研究をすれば、影時間やシャドウ、ペルソナといった代物についてはもの凄い勢いで判明していくだろう。
だが、それはホワイトスターに戻れない今の状況で考えても、どうしようもない事だ。
「なら、影時間が終わったら、犬を連れて巌戸台分寮まで行くとするか」
その言葉に、ゆかりは頷きを返すのだった。
後書き
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1389
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