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真田十勇士

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巻ノ百十八 方広寺の裏その五

「だからじゃ」
「駿府にですか」
「誰かを送られますか」
「そうされますか」
「そうするのじゃ、よいな」
 すぐにこのことを決めたのだった。
「わかったな」
「幕府からはです」
 ここで大野が茶々に言ってきた。
「それがしの母君と」
「片桐をじゃな」
「送って欲しいと言ってきておりますが」
「ならその二人じゃ」
 茶々は即座に決めた。
「二人を駿府に送りじゃ」
「そのうえで」
「釈明をさせよ」
 こう言うのだった。
「我等に疚しいところはないからのう」
「だからこそ」
「すぐに送ってじゃ」
 そのうえでというのだ。
「幕府に釈明させよ、よいな」
「わかりもうした」
「大蔵局と片桐ならな」
 この二人ならともだ、茶々は言った。
「大丈夫であろう」
「そうかと」
「して修理、そなたはじゃ」
 その大野にも言った。
「片桐がおらぬ間じゃ」
「留守をですな」
「守るのじゃ」
 こう言うのだった。
「殿もな、そして」
「奥方様も」
「頼むぞ」
「承知しました」
 大野は茶々に絶対の忠義を以て応えた。
「必ずや」
「その様にな」
「お任せ下さい」
「では」
 今度は片桐が茶々に言ってきた。
「これより」
「うむ、大蔵局とな」
「行って参ります」
「そうせよ、方広寺の話はな」
「言いがかりなので」
「しかと説明してじゃ」
 そのうえでというのだ。
「ことを収めよ」
「さすれば」
 こう約してだった、片桐は大蔵局と共に大坂を発ち駿府に向かった。このことがすぐに家康にも伝わり。
 家康は幕臣達にだ、すぐに言った。
「わしが大蔵局殿をお迎えしてな」
「切支丹のことをですな」
「お話されますか」
「何処となく」
「そうじゃ、そしてじゃ」
「はい、片桐殿は」
 崇伝が家康に申し出た。
「拙僧とです」
「それがしが応じます」
 正純も出て来た。
「そしてそのうえで」
「しかとお話します」
「大坂から出てもらいたいことも」
「茶々様に江戸に来てもらいたいことも」
「どちらもな、大蔵局殿は気性が激しい」
 茶々程ではないが彼女もそれで知られている。
「それに実は政に疎い」
「だからですな」
「あの方には政の話は然程されず」
「やんわりとですな」
「言われる位ですな」
「わしからな、しかしどうもな」
 ここでだ、家康は難しい顔になりこうも言った。
「今更だと思うが」
「茶々様がですか」
「果たして切支丹の信仰を認めることを止められるか」
「そのことはですか」
「無理ではないかとな」
 こう言うのだった。
「思えてきた」
「大御所様への反感故」
「それ故のことで」
「しかも極めて強情な方」
「だからですな」
「今大坂にいる誰が話してもな」
 そうしてもというのだ。 
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