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真田十勇士

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巻ノ百十七 茶々の失政その五

「その大御所様も言われていたわ」
「若しもですな」
「豊臣家が切支丹を認めるなら」
「その時はですな」
「戦も止むを得ない」
「その様に」
「そうじゃ、しかしそう言う方は」
 切支丹と認める、その様なことを言うのはというのだ。
「先程出たがな」
「茶々様ですな」
「あの方ですな」
「あの方しかおられませぬな」
「やはり」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「あの方しかおられぬわ」
「大坂でもですな」
「そこまで何もわかっておられず」
「そして断を下せるのは」
「あの方しかおられませぬな」
「そうじゃ、やはりあの方がおられてな」
 そしてというのだ。
「豊臣家が大坂にあるとな」
「どうしてもですな」
「問題がありますな」
「どうにも」
「左様ですな」
「大坂から出て他の国に移ってもらうのは前から思っておるが」
 しかしというのだ。
「やはりそれと共にな」
「茶々様にはですな」
「江戸にいてもらいますか」
「他の大名の方々のご家族の様に」
「そうしてもらいますか」
「江戸におれば無体も出来ぬ」
 幕府が直接治めるそこにというのだ。
「政も右大臣様が為される」
「右大臣様は決して暗愚ではないとのこと」
「大御所様も直接お会いしてから言われていましたな」
「ならばですな」
「切支丹もありませぬな」
「そうじゃ、そして天下の名城大坂城から出られれば」
 このことも言う崇伝だった。
「篭って戦をしようともな」
「思われませぬな」
「茶々様はそうもお考えなので強気と思いますが」
「しかしですな」
「その大坂城から出られれば」
「そうした意味でもご無体はありませぬな」
「人は具足がないと中々戦の場に出られぬ」
 そうしたものだともだ、崇伝は知っていて話した。
「大坂城を人が着る具足にするとな」
「恐ろしいまでの具足ですな」
「まさにどんな刃も矢も通さぬ」
「そうした具足ですな」
「鉄砲ですら通じそうにないですな」
「そんな具足を着ければ人も強気になる」
 自然にというのだ。
「そうなるからな」
「だからですな」
「豊臣家には大坂城から出てもらい」
「大坂は幕府が治め」
「天下の台所としますな」
「そうする、とにかく豊臣家は他の国で国持大名になってもらい」
 そしてというのだ。
「茶々様はな」
「江戸ですな」
「あちらに入ってもらい」
「静かに暮らしてもらいますか」
「切支丹のことは取り消してもらってな」
 そのうえでというのだ。
「そうしてもらう、切支丹なぞ認められぬ」
「はい、到底」
「あの教えだけはです」
「他の神仏を認めませぬし」
「伴天連の者達は民を奴婢にします」
「とんでもない者達です」
「放っておけば天下を乗っ取られまする」
「本朝を」
 弟子達も口々に言う。 
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