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真田十勇士

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巻ノ百十六 明かされる陰謀その五

「また騒ぐやもな」
「困った方ですな」
「相変わらず非常に勘のお強い方です」
「それがまた出ますか」
「どうにも」
「あの気質がどうにかならねば」
 家康は難しい顔のまま言った。
「あ奴もやがてはな」
「放ってはおけず、ですか」
「断定を下す」
「そうするしかありませぬか」
「うむ」
 そうだというのだ。
「それしかない」
「どうにか静かになって頂きたいですが」
「あのままでは、ですか」
「仕方ありませぬか」
「何かあれば」
「困った奴じゃ、それで大久保家はそうしてな」
 極めて重い断を下してというのだ。
「このことさらに詳しく調べてな」
「連なる者達もですな」
「断を下しますか」
「そして一切の禍根を断つ」
「そうしますか」
「うむ、切支丹はこれまで以上に厳しく禁じる」
 彼等についてもそうするというのだ。
「そして天下の禍根を断つぞ」
「わかり申した」
 こうしてだった、家康はすぐにだった。
 大久保家に対してこれ以上はないまでに厳しい断を下した。それは一門である大久保彦左衛門にも及び。
 彼は歯噛みしてだ、親しい者達に漏らした。
「無念じゃ」
「お気持ち察します」
「まさか大久保殿まで処罰されるとは」
「大久保家のご本家だけでなく」
「貴殿までとは」
「全ては本多親子の仕業じゃ」
 本多正信、正純のというのだ。
「あの者達はご本家が邪魔でじゃ」
「悪謀を以てですな」
「大久保のご本家を潰された」
「伴天連とのつながりなぞでっち上げ」
「そうして」
「確かにご本家には無体もあった」
 大久保長安にはというのだ、多くの妾を持ち豪奢に暮らしその家臣達も驕り狼藉が多かった。
「しかしな」
「それでもですな」
「伴天連の者達とつながっておるなぞ」
「そんなことはなかった」
「決してですな」
「ある筈がなかった」
 少なくとも大久保はこう思っていた。
「それをあの親子がじゃ」
「大久保殿を陥れ」
「その代わりに自分達が幕府で権勢を握る」
「そう考えてですか」
「動いたのですな」
「そうに決まっておる」
 憤懣やるかたない顔で語った。
「そして大久保の一族全体が処罰されてじゃ」
「大久保殿もまた」
「処罰されてですな」
「そうじゃ、三河以来の家であるぞ」 
 大久保家はというのだ。
「四天王にも引けを取らぬ、いやそれ以上のじゃ」
「三河武士の家であり」
「大御所様も長い間お助けしてきましたな」
「戦の場で常に槍を持ち」
「そして戦ってきましたな」
「この身体には数えきれぬだけの傷があるわ」
 そこまで戦ってきたというのだ、家康ひいては徳川家の為に。
「四天王と同じくな、しかしな」
「あの親子といえば」
「戦ではものの役に立たず」
「元々は鷹匠の家」
「槍も弓も刀も取っておりませぬ」
「武なぞ全く無縁です」
「その家がのし上がっていく」
 大久保が見るに悪謀を以てだ。 
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