世界をめぐる、銀白の翼
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第七章 C.D.の計略
アンダーワールド
見滝原市
そこで暮らす、ほむらたち魔法少女たちの前に、襲い掛かる者たち。
鉄翼刀、綺堂唯子。
そして、仮面ライダーウィザード/操真晴人。
彼らはいったいどうしてしまったというのか・・・・
------------------------------------------------------------
「クソッ!!いきなりか!!」
ウィザードへと変身をした晴人へと、マミとまどかが躍り出てほむらを守ろうと攻撃を仕掛けた。
それをとっさに展開した「ディフェンド」の魔法で作り出した壁でガードするも、それはあっさりと崩れ去ってしまい、二人の肉薄を許してしまうこととなる。
「思い出せ!!ここは」
「ほむらちゃん、逃げて!!」
「ここは私たちに任せなさい!!早く!!!」
ウィザードを抑え込もうとする二人だが、それを目の当たりにしてほむらだって何もしないというわけではない。
自分も戦おうと一歩踏み込もうとするが、その足元をマミの銃弾が穿った。
「ッ!?」
「分からないの!?早くここを離れて家に戻りなさいって言ってるのよ!!」
「そうはさせっか!!」
ブォン!!と振り回されるウィザーソードガンの銃口から、弾丸が飛び出してその軌道が変わる。
大きく回り込んでから、マミとまどかの後頭部へと襲い掛かるそれらは、しかし回避されて別の場所で火花を散らすだけだ。
「クソッ」
「ほむらちゃんは渡さないよ」
「暁美さんは、絶対に」
と、その瞬間――――――
------------------------------------------------------------
邪魔――――だってんだよ!!!」
多刃VS多刃
しかし、いかにそうとはいえ十五天帝は15しかない。対して、翼刀のヴァルクヴェインの生み出せる刃の数は無尽蔵と言ってもいい。
ならば、その戦いの決着は言うまでもなく
「ぐぅっ!!」
翼刀によって弾き飛ばされる蒔風、という結果に終わる。
だが、相手もそれは分かり切ってる。
今の薙ぎ払い、腹部に命中はしたが大したダメージにはなっていないはずだ。
「おいまだなのか!!」
『こっちは今さやかちゃんと杏子ちゃんの相手中!!』
『こっちに増援は来ないのか!!』
「・・・まだみたいだな。いや」
耳に手を当て、唯子、晴人と通信をする翼刀だが、頭上を見上げてにやりと笑う。
そして、晴人のほうへと報告した。
「今行った」
------------------------------------------------------------
「ほむらちゃんは渡さないよ」
「暁美さんは、絶対に」
そう、その瞬間だった。
ゴゥッ!!というのと、ドゴォッ!!という音が、同時にした。
何かが通り過ぎていったのだろうその突風の跡には、すでにマミもまどかもその姿はなかった。
代わりに、桜色の尾を引いた魔力光だけが、そこに残されていた。
------------------------------------------------------------
「~~~~~!!!」
「あな・・・たは!!」
「高町なのは、ただ今現着!!」
『後は任せます』
「入ってくるのに思ったより時間かかっちゃったよ~」
バインドしてマミとまどかを掻っ攫っていったなのはは、そのまま二人を地上に向けて投げ飛ばす。
ダダゴンッッ!!という凄まじい音とともに土煙が二つ上がり、宙で止まってその二点を睨みつけるなのは。
終わっていないことは、わかっている。
「ティロ―――」
「トゥインクル―――」
「ディバイン!!」
「ボレー!!」
「アロー!!」
土煙の中から飛び出してくる、黄色の弾丸とピンクの弓矢。
それらは飛び出してくると同時に土煙を晴らし、その二人の魔法少女の姿を露わにした。
二人の表情は―――――
「バスター!!!」
ゴッ、ジュァッッ!!!
「――――へぇ、もうそういうフリはやめたってこと?」
------------------------------------------------------------
「あなた・・・いったい何なの!?」
「知ってるだろ?魔法使いだ」
「そうではなくて・・・!!!」
自分が聞きたいのはそうではない。
まだ中学生とはいえ、自分たちは「EARTH」に名を連ねる者だ。
まさかその自分たちを、こともあろうに翼刀、唯子、晴人。さらにはなのは迄もが襲い掛かってくるなど、絶対に何かがおかしいとしか言いようがない。
「いったい、何が狙いなの・・・!!」
「狙いっていうか・・・・とりあえず、大前提から始めようか」
「だい・・・なに?」
「大前提」
だい ぜん てい
と、三つに区切って手をパクパクさせて言い直す晴人。
そして、地面を指さしてはっきりとこう言った。
「ここは、君のアンダーワールド」
そして、上を指さして
「ここは、現実じゃない」
ハッとして、その先を見上げるほむら。
そこにあるのは、間違いなく空だ。
上昇していくと雲があり、ある程度行くと空を抜けて宇宙へと抜けて、さらにその先の星々にまで―――――
「そんなのでたらめよ」
「嘘じゃない。ここは卵型の一種の結界みたいになってる。俺の知ってるアンダーワールドとは少し違うけど、取り合えず現実じゃない」
「だって・・・・だって!!そんなものないわよ!?空があって、雲もあって、この星が」
「なぜわかるんだ?」
「え・・・・・」
「どうして君に、そこまでの視界が得られるんだ?」
「それ・・・は・・・・」
そうだ。自分は今確かに感じた。
真上を見上げる自分から、カメラがズームアウトしていくかのように天空へと昇っていくのを、確かに。
「な、なんなの・・・これ・・・・」
「自覚すればあっという間。ただ、そこまでが長かった」
自覚できる。確認できる。
空を抜けて、雲を抜けて、その先を抜けた先に―――――そう、これはまさか
「・・・・・ソウル、ジェム?」
自分たちはその中にいる。
その中に完成した、偽りの見滝原市の中にいる。
だが、ソウルジェムの外側は真っ暗で見えない。
一体何が起こっているのか――――――
「とりあえず、君を連れ出さないといけない」
「え?」
「この世界から。さ、行こう」
《コネクト・プリーズ》
そう言うと、魔法陣の中から専用マシン・マシンウィンガーを引き出して跨るウィザード。
言われるがままにほむらはその後ろに乗って、その場から移動していった――――
------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------------
「暁美ほむらの反応が、ウィザードとともに移動しています」
「おっけぇ。上手くやったみたいだな」
「ゆーて、いっちばん手間かかってるけどなぁ」
ついに、見事に復旧した「EARTH」ビル。
つい数時間前まで、その医務室に最初の患者が並んでいた。
その人数は、五名。
鹿目まどか、美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子。
そして、暁美ほむらだ。
彼女たちのベッドの周りには、様々な状態を表しているモニターが浮かび、その状態を逐一表示していた。
「段々こっちに遊びに来る子が減ってるから、遊びに行ってみりゃ見滝原にもいないとは思わなかった」
「探し出すのに早くて一日、長くて四日はかかったからな」
「う・・・うん?」
「えと・・・・」
「あったまいてぇ・・・・」
数時間前、というのは、すでに数名は意識を取り戻しているからだ。
まどか、マミ、杏子の三人は、頭を抑えたり首を振ったりして意識を回復させているところ。
目覚めたとはいえまだはっきりしていないようで、もう少し寝てなさいとシャマルやアリスに促される。
「なぜこうなったかの推測は簡単だが・・・・」
「よっとぉ!!」
「お疲れさん、仁藤」
「ま、いいってことよ!!中に出てきた怪物ってのも、腹いっぱい食えたしな!!」
ショウと蒔風が彼女達を目にしながらそう話し合っていると、さやかに重なって表れた魔法陣の中から仮面ライダービースト/仁藤功介が飛び出してきて変身を解いた。
そう。
彼女たちは、現在謎の現象に囚われている。
もしも、これに知る単語を当てはめるとするならば、それはきっと――――
「魔女化、っていうのか?」
「ソウルジェムがなぜか存在しているからな」
最後に残ったソウルジェムは、今ほむらの胸元におかれている。
先ほどまでは、皆がそうだった。
順を追って、説明しよう。
4月下旬。
そろそろ5月に変わろうとする時期になって、5人の魔法少女たちの消息が途絶えた。
ショウの言う通り、5日もかからず「EARTH」によって彼女たちは見つかったのだが、その胸元にはソウルジェムが鎮座されていたのだ。
ソウルジェムは、彼女たちの魂を肉体から抜出し、固体化させて別個管理できるようにするシステムだ。
ソウルジェムには濁りという現象があり、それを引き起こす原因は2つ。
一つは、魂の離れた肉体の維持や、それによる魔法の使用による、魔力の消費によるもの。
もう一つは、彼女たちの精神状態に依存した濁りだ。
当然ながら、数日も放置されていた彼女たちはそれなりの穢れをソウルジェム内に溜めていたが、それは翼刀によって回復していた。
だが、ソウルジェムの濁りを取り除いても彼女たちは目覚めない。
探ってみると、魂とは別の箇所に精神が飛ばされてしまっているらしい。
肉体と、精神と、魂。
肉体は身体。
魂は生きるエネルギー。
精神はそれらをつなぐものだとされているが、その精神が見当たらないらしいのだ。
もしもこの状態でソウルジェムを無効化し、魂を彼女たちの身体に返そうとしてももどらない可能性がある。
借りに戻っても、ただ「生存している」だけの状態であり、人格が戻らない可能性が出てきたのだ。
そこで、今回結合してきた魔法使いのライダーに、協力を求めることとなったのだ。
アンダーワールド
ファントムという怪人が存在した仮面ライダーウィザードの世界では、そう呼ばれる精神世界が存在していた。
それは魔力を持つ人間の精神内にあり、その人物の想い出、特に印象深かったり、一番大切だったりする想い出が描き出されるのである。
そして、その魔力を持つ人間が絶望することで、そこにファントムが生まれ、アンダーワールドを蹂躙、破壊することでそいつらはその人物を、まるで殻のように突き破って現実に現れることとなるわけである(その時点で、元の人格は消滅する)
ウィザードは彼らを救うために「エンゲージウィザードリング」の魔法によって、アンダーワールドに侵入し、そのファントムを倒すことで怪人化を阻止してきた、というわけだ。
ちなみにここで絶望に負けず、自らの力でそのファントムを抑えつけることに成功すると魔力を扱うことが可能となり、魔法使いとなる資格を得るわけだが、今回はそれはいいだろう。
そう、重要なのは・・・・このファントムが生まれるシステムが、魔法少女が魔女へと孵化するシステムに酷似している、という点だ。
結合し、様々な可能性を内包しているこの世界ならば、そこに潜り込んで彼女たちを見つけ出すことができるのではないか?
その考えに至り、彼らはさっそく動き出した、という次第だ。
だが、このアンダーワールド。
魔法少女に発生したというイレギュラーだけあって、少々特殊なカタチになっていた。
第一に、アンダーワールドには主人を守る守護者がいる。
その守護者の選定は、その彼女たち自身が「守ってくれる」「頼りになる」と感じる存在に限ったものとなるのだ。
第二に、アンダーワールドに存在する人物は重複できない。
つまり、その中で守護者となっている人物は侵入できないというわけだ。
これが厄介なもので「ここがアンダーワールドだ」といったところで、侵入者は守護者たちよりも(こういうとなんだが)信頼度が低いということになる。
彼女たちは迷いながらも、守護者のほうを信じてしまいやすい傾向があるのだ。
だが、それでも四人までは戻ってこれた。
異世界に入れるということ、何が待ち受けているかわからないということで、蒔風、ショウ、翼刀が選ばれ、ほか二名にウィザード、ビーストが着くことになったのである。
ちなみに早かった順としては、最初に杏子、そしてまどか、マミと続き、ついさっきビーストがさやかを連れもどしたばかりだ。
現在は、上条が幻想殺しでソウルジェムに触れて消滅させたので戻るのはすぐだろう。
「鹿目まどかは少しごねたが、利発的な子だからな。助かった」
「俺はマミちゃんだったからなぁ。少し・・・・っ、きつかったわ」
「んで、翼刀は」
「佐倉杏子を連れ出してから、暁美ほむらの中、か」
「多分、彼女が一番手ごわい」
「だろうな」
そういって、いまだ眠るほむらに視線を向ける。こう見ると眠っているだけにしか見えないが、ソウルジェム内では何が起きているのか。
「ベテランらしいウィザードに・・・・行かせたけどさ・・・・」
「まあ、翼刀に唯子も付いて行ったから大丈夫だろ」
「さっきなのはさんも飛び込んでいきましたよ?」
「何やってんだよ・・・・」
はぁ、と手を当てて溜息をつく蒔風。
だが、自分も行かねばならないだろう。そう思って腰を上げるが、アリスにそれは止められてしまった。
曰く、これ以上他人を中に入れると危険、だそうだ。
「そうか・・・・じゃあ・・・・少し、休める・・・か・・・」
「・・・蒔風?」
ドサァ、と腰から椅子に座る――――否、落ちた蒔風が、ぐったりと胸元をさらけ出すように腕をだらりと下ろしてしまった。
その異様な光景にアリスもショウもギョッとして驚き、直後に駆け寄った。
「ワリ・・・少し熱っぽい・・・」
「無茶して・・・・これ飲んで、ゆっくりしてください!!」
「うぺっ!あっち!?」
無理やり渡された白湯とともに薬を流しこむ蒔風。
モニターには、円形の街並みと、無機質な点だけですべてがあらわされていた。
------------------------------------------------------------
「ってことで、君の中に侵入して、見つけ出したってこと」
ホントは暴れるファントム倒してその人を助けるためのなんだけどね、と、バイクを走らせる晴人はすでに変身を解いている。
後ろの席では、乗る前にもらったプレーンシュガーのドーナツをもそもそと食べるほむらが。
「それで?どうすればいいの?」
「この世界のどこかに、君の魂が眠っているはずだ」
「・・・・このソウルジェムそのものが魂じゃなくて?」
「君は「人格」、つまりは精神に当たるんだってさ。んで、それと魂を合わせてやれば、後はオッケー」
後は方法は何でもいいので、ソウルジェムを無効化すればいいだけのこと。
だが、この広い見滝原。
偽りとはいえ、実際のものと広さは同一だ。
「心当たりとかはないのかしら?」
「確か・・・・その子の原点、みたいなのだったかな?」
「私の、原点?」
そういう晴人は、言葉を進める。
バイクはとりあえず走らせているが、目的地があるわけではない。
止まっていると守護者に狙われるため、適当に回っているだけだ。
「原点って?」
「えっと、確か翼刀の話だとな」
すでに杏子を回り、ほかの二人のそれを聞いてきた翼刀が言うには
杏子の魂が隠されていたのは、見滝原市郊外の廃墟となった教会内部。
マミの魂は、彼女が初めて魔女から人を救えなかった、中央公園。
まどかの魂は、見滝原市の交差点のど真ん中らしい。
ちなみに、彼らは知らないがさやかの魂は見滝原病院でビーストとさやかが見つけていた。
「だから、君が初めて魔法少女として何かを刻まれた場所。きっとそこに、君の魂はある」
「―――――私の・・・は・・・・」
「蒔風が言うには、ここだと思う、とか」
「え?」
そういって、バイクを止める晴人。
場所は、交差点のど真ん中。
とはいえ、斜め上には高層く道路なのか、高架橋が並行して走っている。
すでに取り繕う必要性がないためか、通行人は皆無だ。
「ここ?でも私、ここは知らないわよ?」
「ここはまどかって子の魂があった場所と同じらしい」
「まどかの?」
「そう。そしてそこは、君が魔法少女の契約を行った場所でもある・・・とか」
「あ・・・・」
『私は・・・・まどかとの出会いをやり直したい!!』
「あの・・・場所が・・・」
そうか、ここだったのか。
ワルプルギスの夜のせいで滅茶苦茶にされていたし、足元は水浸しだったからわからなかった。
だが、確かに自分の原点だというからにはココしかないだろう。
ならば、ここにあるのか?
「それは本人にしかわからないね。何か感じる?」
「・・・・・なにも」
「そっか。んじゃぁ、適当に」
ドォオン!!!
「わお」
「なに!?」
回ろうか、と言おうとした瞬間、轟音がその場を支配した。
とっさに振り返ると、そこにはマミとまどかの二人を相手にしていたなのはが、二人の攻撃を華麗に回避しながら路地から飛び出してきたのが見えるではないか。
「やっば・・・のんびりしすぎた!!」
「え?ちょ!?」
「急げ!行くぞ!!」
ほむらの腕を掴んで後部座席に乗せ、即座にバイクを発進させる晴人。
そのはるか後方では、攻撃をまっすぐ上空へと昇って行って回避していくなのはへと、その攻撃を放つだけはなってほむらのほうへと跳びだしてくマミとまどかの姿があった。
「くっっ!!」
バババン!!と、レイジングハートを振るってその先端から洩らした魔力で弾丸と弓矢を払い消し、その二人の後を即座に追って飛び出してくなのは。
地面まで一気に降下して、スレスレで90度方向転換してその後を追う。
一方晴人は、一般道から高架橋と昇っていく道路へと入り、反応もしない入り口を素通りして侵入していった。
その後を、魔法少女の二人、そしてかなり離れてなのはが追う。
「クソッ!!ほむらちゃん、どっか思いつかないのか!?スーパーとか!!」
「なんで所帯じみてるのよ!?主婦か私は!!」
「ブックオフ?」
「休日暇な男子と一緒にしないでちょうだい!!」
「じゃあホームセンターとか?」
「あ、それはあるかも・・・・じゃなくて!!だから」
「おっと」
「ゥきゃぅお!?」
反論しようとするほむらだが、マミやまどかの攻撃を避けようと晴人がバイクを左右に振ったため、Gで首が置いていかれて変な声が出てしまった。
「ちょっと!?」
「まってくれ、今それどころじゃないかも」
ゴゥッ――――ダキュキュキュキュキュガガガガガガガガガガガッッッ!!!!
「きゃぁ!!」
「あっぶねぇ!!!」
とても強い風切り音。
その後から、たっぷりの弾丸が地面を抉っていき、その音はもはや識別できないほどの連続音となって彼らの高等部を叩くほどに強烈となって襲い掛かった。
しかも、その隙間を縫って蛇のようにまどかのホーミングアローが追いかけてくるので、回避するだけで精いっぱいだ。
「飛ばすぞ!!!」
「ええ!!」
一気にアクセルをひねり、加速していくマシンウィンガー。
だが、魔法少女たちの肉体はそれを難なく追えるだけの力を秘めているのだ。
「思い出すんだ!!君の始まりは、なんだ!!」
「私の・・・始まり・・・・」
そんなことを言われても、こんな状況で思い出せるわけがない。
それに、さっきの場所で思い出せなきゃほかにどこがあると――――
『私は・・・・まどかとの出会いをやり直したい!!』
「・・・・まどかとの・・・出会い―――――あ、そうよ!!」
「なんだ!?」
「学校よ!!見滝原中学、二年教室!!!」
そうだ。
私の始まりは、見滝原中学校。
そこで、まどかと出会ったところから始まったんだ。
「でも、ここからじゃ逆方向よ!!」
「じゃあどっかで・・・・いや、いけるか」
「は?」
「よっしゃ。じゃあ―――――」
ガッ!!
「ショータイムだ!!!」
「え、うわぁぅ!?」
勝手にひとり納得して、ブンッ!!!とほむらの身体を宙に放り投げる晴人。
マシンウィンガーと魔法少女たちは勢いでそのまま走り抜けるも、ほむらだけが宙でおいて行かれてしまう。
そして若干、晴人たちとは逆方向に向かって投げ飛ばされたほむらの身体が重力に従って落下し――――
ドサッ!!
「ナーイスキャッチィ!!!」
「え?は?綺堂唯子!?」
唯子の運転する車の空いた天井から車内へと跳びこんで着地していた。
ウィィィン、とサンルーフが閉まり、バックミラー越しに笑う唯子の顔が見え、ほむらは何か抗議をしようとするが、やはりそれは却下されてしまった。
「おっと!!やっぱりターンしてくるよねぇ?」
戻ってきた、まどかとマミ。さすがに、バイクよりターンは早かったらしい。
だが、戻ってくるということは、彼女に近づいていたということにもなるのである。
「アクセルシュート!!」
「「!!」」
唯子の運転する車を覆うように、前方から無数の魔力スフィアが飛来し、まどかとマミに向かって襲い掛かっていっていた。
それらを回避し、打ち下とす彼女たちだが、その足は大幅に遅れさせられていた。
「このままいくよっ!!」
『おい唯子!!』
ククッ!とアクセルを踏み込む唯子。
しかし、そこに翼刀からの通信が入ってきてしまったので、なんだかキレが悪そうな顔をしてそれに出る。
「な~に~?」
『まさかお前、さやかちゃんと杏子ちゃん倒したからそこにいるとか言わないよな?』
「え?倒したよ?」
『説明したじゃん!!あいつら死ぬとかそういうの無いんだから』
「――――しまった」
『は?おい!!』
ゴォンッッ!!!
「うわぁ!!」
~~~~~
「おい唯子!?くっそやっぱ来たのかよ。あれだけ言ったのになんで聞かねぇんだよ!!」
ドドドッッ!!
「うぉっ!?く、串刺しとはね・・・・」
「あんたこれくらいじゃ死なねぇだろ!!」
ドドドドンッ!!
「両肩貫いてビルに固定して、さらに脇下とかに刃かよ・・・・」
「これなら復活とかもないだろ!!今行くぞ唯子ぉぉぉおおお!!!」
「・・・・」ポツーン
~~~~~
ゴォンッッ!!!
「うわぁ!!」
「や、槍!?ってことは、杏子!?」
高架橋を走る唯子たちの車の後ろを追うように、下から連続で、巨大な槍が突き出してきた。
ガラガラと崩れていく高架橋。その崩壊と槍から逃げるように、アクセルを目いっぱいまで踏み込む唯子。
そのおかげもあって、それに巻き込まれることはなさそうなのだが、槍とともに飛び出してきたもう一人の少女からは逃げられず―――――
バゴンッッ!!
ガキョッッ!!
「きゃあ!!」
「ぬぅお!?」
車の上に着地したさやかの剣が、サンルーフのど真ん中を貫いてきた。
さらにそこからギギギ、と剣をひねり、切り開こうとしてくるではないか。
「ちょっと何してるのよさやか!!」
「それ本人じゃないから言っても無駄!!」
肩越しにそれを見て、唯子が叫ぶ。
そしてさせっか!!と言わんばかりに、ハンドルを思い切り、両手でバン!!と叩いた。
その瞬間、伝わった不動によってドフォ!!と天井に張り付いていたさやかが弾き飛ばされ、そのまま後方へと消えていく。
「これでオッケ~」
「じゃない!!来てるわ!!」
「マジすか!!」
振り返るほむらに、確認する唯子。
そこには、ビルや木々の端にリボンを巻き付け移動してくるマミと、物凄いスピードでコンクリートの柵の上をかけてくる杏子の姿が
「あの二人はまずいわよ!?」
「えぇいスパイダーマンかあの小娘は!!!」
「え、そこなの?おどろくのそこ?」
「逃げるよ!!舌噛まないように!!」
グォン!!と車体が揺れ、マミの放つ弾丸を回避していく唯子。
さらにタイヤを狙って杏子の槍が、縦横無尽に襲い掛かっても来る。
猛攻の中走る車だが、如何せん的が大きい。
左右に揺れて回避するにも限界が訪れ、ついに車の後部にマミのリボンが引っかかってしまった。
「ヤバ!!」
「来るわよ!!」
その時点で、マミはビルにかけていたリボンから手を放し、車とつながったそれを握り締めていた。
当然、両足はコンクリートの道路につくわけだが、靴の裏にリボンを敷くことで、まるで水上スキーのように後ろについてくるではないか。
「驚いた!!」
「なんで他人事!?」
言っているとガクン!!と車が揺れ、一瞬軽くなったと思うと、ガタン!!とマミが車の後部へと着地してきていた。
思うに、最初のガクン!!は、リボンを引いてジャンプした衝撃か。
マスケット銃を振りかぶり、後部ガラスを粉砕し、ほむらの身体へと腕を伸ばして襟をしっかりと掴み取ってしまった。
「しまっ」
バンッッ!!と不動を送るも、すでに間に合わず、マミはフワリと車を蹴って離脱してしまった。
あとは、車が進むだけで距離が稼げる。そんな感じに、いけたのだろうが―――――
「ダァああああ!!不動三連!!」
バガドンッッ!!と、おおよそ人体からは出てはいけない轟音がして、マミの身体が吹き飛んだ。
顔面、心臓部、腹部にそれぞれ、右掌、左拳鎚、右膝が当てられ、一瞬で三撃の不動がマミの身体へと叩き込まれた。
さらに車のほうへと伸ばされた杏子の槍を掴み取り、ぶん回してから杏子ごと地面に叩き付けて引き離す。
そして宙で奪還されたほむらは、その乱入者―――翼刀の手によって、砕けてなくなった後部ガラスの位置から車内へと投げ戻された。
「びっくりした!!おかえり!!」
「え、ええ・・・・」
「さて!!じゃあこのまま学校まで行くよ!!覚悟オッケー!?」
「わかったわ・・・・このまま眠りっぱなしじゃ、しょうがないもの!!」
車は順調に学校へと向かっている。
さて、このまま到着できるのだろうか――――――
to be continued
後書き
誰もが考えたことでしょう。
ファントムと魔女って、同じ感じじゃね?と
そして劇場版の叛逆の物語をみて「ソウルジェム内結界とアンダーワールドって同じじゃね!?」とか妄想したらワクワクテカテカ。
そうして、この第七章のプロローグに当たる話は出来上がりました。
戦闘シーンイメージは、マトリックスエボリューションの高速道路のカーチェイスです。
あれホントすごいっすよね・・・・そんな感じでスピード感出てくれればいいんですけど。
まあ映画見てる人がいれば、というか見てなくても、この事件の仕掛け人が誰だかなんてスッゲーわかりますよねwww
ちなみに、この世界でほむらが「守護者」として無意識内で作り出していたのは
・鹿目まどか
・巴マミ
・美樹さやか
・佐倉杏子
・鉄翼刀
でした。
しかし、鉄翼刀がした侵入したウィザードによって倒され、間髪入れずに翼刀も侵入したので、作り出せなくなってしまったんです。
で、彼に匹敵する、若しくはそれ以上の人物を無意識下で選定。結果蒔風が来たわけですね。
翼刀
「俺ってどう倒れたんだ?」
晴人
「んとな・・・」
~回想~
翼刀
「んじゃ、部屋に戻って~」
《エキサイト・プリーズ》
翼刀
「は?」
ウィザード(ムキムキ)
「HEY!!」
ガシッ!!
翼刀
「うわなんだおま」
ゴキリ★
~回想終わり~
晴人
「みたいな」
翼刀
「ふ、不意打ち・・・・」
いや、目の前にあのムキムキライダー現れたら唖然とするわ。
仕方ないね!!
蒔風
「ああ、仕方ない」
ショウ
「ちかたないね」
ほむら
「次回。ここに私の魂が!!な、なによここ!?」
ではまた次回
ページ上へ戻る