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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第七章 C.D.の計略
  みんなを、信じてるから


ソウルジェム内の結界。
普通、こんなものがそんなところに存在することはあり得ない。

しかしもし、そこに手を加えることができる存在がいるとすれば―――――――――




そのシステムを作り出した生物のほかにありえないだろう。



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「見えた!!学校!!」

「道路の下なのだけれど」

「ぶっちぎるぜぇ!!」

「やめてぇぇええええええ!!!」

大きく回り込む高架道路。
そこから見えた見滝原中学は、まだまだ遠くにある。

だがこのまま走ればカーブだ。大きく回り込んでいくこの道路では、遠回りになってしまう。。
故に、唯子はカーブを無視してまっすぐ走り、高速道路のフェンスや策をブチ破り、眼下に広がる一般道及び街中に飛び込もうとアクセルを踏み込んでいたのだ。

ほむらとて、かつて魔法を用いてタンクローリーをすっ飛ばしたり飛び降りたりはしたものの、実際にこうして車に乗ると怖いものは怖い。
なんだかんだで変身を解いてそのままなのも、その恐怖に拍車をかけているのだろう。



「ちょっと待って!!この車大丈夫なの!?」

「着地の瞬間に不動で衝撃和らげるから平気!!」

「降ろして!!」

しかし、唯子は止まらない。
このまままっすぐ行くのが、一番の近道なのは間違っていないのだ。


だがここで、ほむらは確かに「怖いな」と思ってしまった。
ならば、そこで新たな守護者が生み出されてしまうのは、いわば当然ともいえることであり



「ギィァオオオオオオオ!!!」

「あれは!?」

「うっわ、城戸さん!?」


飛びだそうとしていった車の目の前に、ドラグレッダーとその頭上に立つ龍騎が立ちふさがった。
確かに、あのワルプルギスの夜の時に助けに来た一人ではあるが、ここまで引っ張り出してくるあたり「向こう」もギリギリということかもしれない。

ハンドルを左に切り、車をドリフトさせるように横スライドさせてブレーキを掛ける唯子。

もはやこの際、飛び降りれればそれでいい。
この道路は右カーブ。このまま走るよりは、とにかく飛び降りさえすれば道はいくらでもある―――――


「逃がさ」「ないぞ」

「うそでしょ・・・」

「火野さんにセイバーちゃん!?ちょっと待ってよ!!それ卑怯だよ!!」


高架下から飛び出してきた、セイバーにオーズ。
唯子一人ならばまだ何とか相手にできなくはない相手だが、この状況では車ごと吹き飛ばされて再起不能になる。


「なってたまるかぁあああ!!!」

「うわっ!?」

が、ここで綺堂唯子は、アクセルをさらに踏み込んだ。
もはや回避は不可能だというのなら、真正面から吹き飛ばしてやる!!


「ォォオオオオオオ!!!ほむらちゃん!!最悪あなただけでも学校に向かいなさい!!」

「ちょ、それは」



「その必要はないぜ」

《ドラゴラーイズ!!プリーズ》

ゴォンッッ!!

「晴人くん!!」

「こっちの先輩たちは、俺が相手しておくから!!」


ドラゴライズ・ウィザードリングによる魔法で、操間晴人のファントム・ドラゴンを召喚しそれに跨って三人を相手取るウィザード。
三対一と多勢に無勢だが、時間稼ぎ程度ならいくらでもできる。



「じゃあこのまま一直線に!!」

そうして、蜘蛛の巣のような市街地を抜き去っていき、大通りをまっすぐ走りだす車。
ドカバシャと川と生垣を粉砕し、バキバキと茂みや木々をなぎ倒し、ついに学校正面通学路へと踊り出た。


だが、そこに立っていたのは


「逃がさ~ない~♪」

「舜さん!!」

「本人!?」

「じゃないみたいだね!!」


ほむらの言葉に、なんとなくだが感性で違うと断言する唯子。
気力から感じるモノなのだが、細かいことはこの際いいだろう。

ともかくあそこにいる蒔風は、翼刀の拘束を抜けてやってきたというわけだ。


「学校は目の前だから―――――ほむらちゃん!!」

「わかったわ」

キィ―――と、後部座席に光がともり、ほむらが魔法少女へと変身を完了する。
そしてバギン!と唯子がフロントガラスを殴り飛ばし、そこから蒔風へと飛び出していって拳を交えた。


「いっけぇ!!」

「ッッ!!!」

飛び出した唯子は着地。
同時に、その背後からくる運転手不在の車のバンパーを握り締め、力の限り学校に向かってブン投げた。

山なりに飛んでいくそれを見上げる蒔風だが、追っていくよりも早く唯子が組み合ってそれを阻止する。


「チッ。考えたな」

「私たちは、ほむらちゃんが中に行ければ勝ちなんだから!!!」






そのころ、ほむらはすでに車から脱出していた。

投げ飛ばされ、ある程度の距離を確保できた時点で魔法を発動。
時間を止め、車から抜け出て学校のエリアへと足を踏み入れていたのである。


「行きなさい!!あなたの魂は、そこにある筈だから!!」

「まったく、君たちもよくここまで頑張るものだね」

「大事な友達の為なら、頑張るのは当然っしょ!!」

「やれやれ、またそれかい」

蒔風の口調が、明らかに変わった。
そもそも男の声ではない。

高い声だが、何かというと少年のような声だ。
そしてその瞳の奥には、丸い丸い、宝石のようなピンクの瞳が。



「君たちはそんな不確定要素に身を任せて、よくもそこまで自信を持っていられるものだね」

「それが、信じるってことだよ」

「僕らだって信じることはするさ。だけど、それは確かな数字や現象のみさ。感情なんていう、不確定で不透明で不条理で不理解なものにそれを託すなんてとてもとても」

「それは信じるってことじゃないわよ。私たちが言っているのは、信頼。信用とはまた違うの」

「やれやれ。まさか君たちは、暁美ほむらがあそこにたどり着いたら全て終わりとでも思っているのかい?」

「どういうこと?」

「聞かれれば応えるけどね・・・・彼女のは特別性だ。彼女は絶対にあそこから抜け出せないよ」

「ッ!!どういうことか、もっとしっかり説明しなさい!!インキュベーダー!!!」


「いやだね。この体を使っていること自体、嗚呼――――これを君たち流に言うには「怖気が走る」というらしいね。まったく、この男にあの時「怒り」等という者を教え込まれてから時々僕はおかしくなる。おかげでこんなくる必要もない星の任務に、また駆り出されることになったよ」

「待ちなさい!!!」


タァン、と軽くバックステップしてその場からフワリと浮いて下がっていく蒔風。
それを追って、唯子の手が掴みかかるように振り下ろされ

ブシュッ!!

その蒔風だった肉体は、赤と白で出来た謎の肉片となって消滅してしまった。


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唯子と別れ、学校内部に入り込んだほむら。
聞いた話では、見つけるまではいいのだがその内部に入るとなると、主人ただ一人でしか入れなくなるらしい。

まあそもそも、自分の場合は一緒に入れる状況ではなかったが。


とはいえ、中に入って驚いた。

「完全に構造を無視したつくりになっているわね」


入るためにまず25枚の学校の扉を開け
3階に上がる為に30階分の階段を上がり
去年まで自分たちの教室だった部屋の扉の前まで5キロは走った。

そして飛び込み、そこに広がっていた光景は、いつも通りの教室である。


そこの最前列真ん中の席。
そこに、白い姿をした、見慣れた生物がちょこんと座っていた。


「やあ、暁美ほむら」

「久しぶりね。インキュベーター」

インキュベーター。
宇宙の熱学的な死を回避するため、地球に住む少女たちの感情の起伏によって得るエネルギー/エントロピーを回収していた地球外生命体。

ソウルジェムを作り出したのも、それがいずれ魔女として孵化するシステムを作り出したのも、彼らである。
しかし、宇宙もまた結合してしまったために、その調査も踏まえて地球から手を引いたはずの、ほむら曰く「奇跡を売って歩く奴」。

その彼が、いったい何をしに来たというのか。



「あなたたちって、一つの個じゃなかったのかしら?」

「宇宙にはほかの惑星もあるんだ。他にも、知的生命体というのは存在するのさ」

「そう。で、今回の仕業はあなたの物かしら?」

「そうだね。僕がこれを作り出した」


ソウルジェム内魔女結界。
魔法少女である彼女たちのソウルジェム。

それを非干渉フィールドで覆うことで、魔女へと近づいて行った彼女たちは、結界を外に張ることができずに自らの中にそれを張る。
そして最終的にソウルジェムが染まり切ったところで、そこに円環の理と言われる存在が魂を昇華させようと接触するはずだ。


「それを観測すること。そして、観測ができれば干渉もできる。僕らの目的は、こんなところだね」

「そうよね。魔女化しないというのは、あなたたちにとっては非効率的な手段ですものね」

「わかってくれるかい?」

「ええ。でも、納得したくもないわ」

ジャカッ



盾から取り出した銃を、まっすぐにキュゥべえへと向けるほむら。
対して、キュゥべえはいつも通りである。恐れも、怯みもしない。


「そんなことより、君には目的があるのだろう?」

「言われなくても、わかってるわ」


そう、ここに自分の魂がある。
ならば、それはきっとまどかの席か、ほむらの席のどちらかだ。

だが、ここで始まったのは



『あ、暁美ほむらです・・・・』

『よろしくね、ほむらちゃん!!』

「ッッ!?」


過去の再現。
自分とまどかの出会いの姿。

いきなり始まったホログラムのそれを、暁美ほむらはしげしげと眺めていた。


「どうだい?君らは過去という過ぎ去った時を何よりも大切にしているのだろう?」

「そういうこと・・・・つくづく、癇に障る生き物ね・・・・!!」

彼女らの原点と言える場所にある魂。
そこには自分一人でしか入れないという制約。

どうやらとことん、この生物は――――



「その光景、若しくは一面を吹き飛ばして、滅茶苦茶にでもしないと君の魂は出てこない」

「・・・・・・・」

「だが、その美しいものを破壊することなど、感情に揺れる君らにはできないだろう?」

「・・・・・・・」

「それにできたところで、君たちのソウルジェムは急速に濁っていくはずだ」

「・・・・・・・」

「すでに終わってしまったことだというのに。これはだたの映像だというのに、君たちはそれに手を出すことに戸惑うんだ」

「・・・・・・・」

「本当に、わけがわからないよ」

「・・・・・・・そうね」


そういって、ほむらの銃を握っている手から力が抜ける。
ガシャンと教室の床に音を立てて落ちる銃。

そして



「本当にあなたたちは――――――」

そう、この生物は

「人間、というものを理解していないようね」

カッッ!!と、周囲の視界を光と熱が支配する。

ほむらの盾には、実に様々な武器、兵器は貯蔵されている。
そして今、彼女のお手製の小型爆弾が取り出され、教室の中心からすべてを吹き飛ばし粉々に打ち砕いた。






「・・・・・・おやおや」

「確かに過去は大事なものよ。でも、それは私たちの乗り越えるべきもの。明日への糧。宝箱にしまっておくのも大事だけど、時には吹っ切れるのも大切なことよ?」

「思い出は大切にと言い、かといってそういってそれを平気で踏み越える。どうやら君らは、やはり本当に僕からすれば信じられない、おかしな行動をする生き物のようだ」

「そう?」

「そうさ。まどかも、さやかも、杏子も、マミも。みんなみんな、悩むそぶりも見せずに一撃さ。まいっちゃうよ。ホント」


「だったらこれで私の勝ちね」

「そうかい?」

「ええ。これで私の魂は」




「ああ、だけどね――――――理解はできないけど、こうなることは予測ずみさ」

「え?」



ガラガラと崩れる教室。
否、教室というのは少しおかしい。

まるで今までの部屋が背景だったかのように崩れ落ち、全く別の空間にほむらは立っていたのだから。






真っ白な円形の部屋だった。

一面白の、円形の部屋だ。広さは教室のものと同じくらいか。
しかし、天井が霞んで見えないほどに高い。見上げると、そこに光源があるのか少しまぶしくも感じる。





「な――――――」

「ここだけは特別性だ。暁美ほむら」


天まで伸びているとも思えるような天井。
それを形作る、円形にグルリと張られた壁。


その壁に、無数の扉が現れてきた。
規則的に並ぶそれは、やはり延々と存在していた。

眺めていると、クラリと身体が揺れるほどに。



「君の魂は、この空間のどこかにある」

「な!?」

「さあ、探してみ給え。君自身の魂だろう?」

「インキュ・・・ベーター・・・!!!」

「君らの常套句っぽいじゃないか。自分の魂だというのなら、自分の声に応えてくれ・・・みたいな?」

「くっ!!」

バンッ!!


キュゥべえの言葉にあおられ、乱暴に扉を開けるほむら。
そこには、手を組んで眠る、ほむらの姿が。

しかし、手を触れるとフワリと消えてしまう。

次々に扉を開けていくほむらだが、いつの間にか現れた階段を駆け昇って開けていくほむらだが、それを発見することはできない。


ゴゴォ――――ゥン・・・・・

「な!?」

「そういえば、言ってなかったけどね。君がこの空間に入った瞬間から、この世界の崩壊が始まっている。みんなで外に出たければ、早く見つけることだだ」


「待ちなさい!!もしもそんなことをすれば、私という貴重なサンプルは失われるわよ!!」

「・・・・・そうだね。君たち五人は、ソウルジェムの孵化というシステムを知っている唯一の魔法少女だ。しかも、ほかの元魔法少女たちと違って、何の因果か魔法を使い続けている。そういう意味では、この実験は君ら以外で行うことはできないだろう」

「だったらなぜ!!」




「あのね。外にいた少女にもいったのだけれども、僕はこんなイカレた生物だらけの星になんか二度と来たくなかったんだ。自分の星で養生して、この精神疾患を完治させようと思っていたのに」

「・・・・・は?」

「思い込み。固定概念。君は僕がこうして動いていることで、何か物凄い意味があると勝手に解釈したのさ。若しくは、ほかの四人がこうだったから、次もこうすればいいんじゃないか、とか。その勝手な思い込みで、君たちはいつだって勝手に絶望する。そんなつもりじゃなかったとね。まったく、おかしいじゃないか。勝手に想像されて、そんなやつあたりは迷惑以外の何物でもない。君たちは信頼だのなんだの言うけれどね。僕たちからすればそんなものただの押しつけがましい善意としか見えないね。ああ、反論も何もいらないよ。そんなのは無駄な問答だとわかっているからね。だから、結果で示そう。ここで君が終わるかどうか。君たちが、勝手な思い込みで足元を掬われるか、だ」

「まっ」

「じゃあね」

長い長い持論を述べ、そして最後にそう告げて。
それだけ言って、キュゥべえが消える。

ビキリと亀裂が入り、まさに崩壊現象を起こしつつあるその空間に、彼女だけが取り残される。
だが、それを聞いてほむらは反応することもなく動き続けた。

こうなれば、いくら呼んだところで姿はあらわすまい。
ならば、自分は一刻も早く魂を見つけ出さねばならない。


崩壊が、始まっていた。
助けに来てくれた彼らを巻き込むことはしたくない。



そして何より、あの白色生物の言う通りなどまっぴらごめんだ。


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「あーもう!!崩壊が始まっちゃったよ!?」

「どうして抜け出せない・・・・まさか、あの中で何かあったのか!?」

「守護者が消えたと思ったらこれかよ・・・・」

「とにかく!今はこの崩壊を止めるのが先!!」

「そうだな・・・んじゃ、やってみるか!!」


守護者が消え、後はほむらが魂に接触して抜け出すだけだと思っていた彼らは、ここにきて焦りを見せていた。
ほむらの受けた罠を知らないまでも、何かがあったのだろうと推測は堅くない。

ならば、ここの崩壊を一瞬でも長く止めておくことが自分たちのやるべきことだ。


《バインド・プリーズ》

「レイジングハート!!強化して!!」

「唯子!!絶対放すなよ!!」

「翼刀こそ、鎖引きちぎらないようにね!!」


引きべきと崩れていく結界。
それは、彼女のソウルジェムの崩壊とイコールだ。


時間はない。
余裕もない。


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「どこに・・・どこにあるのよ!!」

ダンッッ!!!


慟哭。
しかし、ほむらの叫びは崩れ落ちていく瓦礫の轟音にかき消されてしまった。

代わりに、拳を叩き付けた床に大きな亀裂が入り、その叫びの大きさを代弁していた。



もう何回扉を開けたのか。
いったい、どこにあるというのか。



「私は、諦めたくない・・・・!!!」

その思い一つで、ここまで来たのだ。
そして今、その幸せが手にある以上、二度と手放してなるものか。


ほむらは願う。
明日もまた、あの日々の笑顔がありますようにと。


だが



『願いなんて、一方的な感情の押し付け合いにしか思えないね』

「ッ・・・・」


確かに、そうかもしれない。
ありがた迷惑、なんて言葉があるくらいだ。

確かに、一方的に信頼されているというのは、苦痛でしかないのかもしれない。
互いに信頼できる、できていると思っているのは、もしかしたら自分だけではないのか。


自分は、何があったとしてもまどかを、彼女たちを信じる。
でも、相手は本当に、自分のことを信じてくれるのか・・・・?


ただの都合のいい、自分の思い込ではないのか?



まどかは、なかなかNOとは言えない子だ。
さやかは、断るのがうまいほうではない。
マミなどは、頼られればそのままズルズルと引き摺る。
杏子は突き放しながらも、結局一緒にいてしまう。

そんな性分だから、大変だけど、一緒にいるだけなのではないか?




「ッッ――――――違う!!!」

確かに。
確かに、そんな関係があるのは認める。

嫌われたくないから、その場の雰囲気に流されて。
そんな大した覚悟もなく、その場の話に合わせたつらい気持ちを伴い信頼は、悲しいことに確かにある。


だけど、私には。
人には絶対に信じられる何かがある。

彼らはそれを「数値や現象」だと言った。
ならば私が信じるのは「私の最高の友達」だ。


人によってそれは違うだろう。
だが、彼らがそれに対して絶対の自信を持っているのと同じように


「私だって、まどかを、さやかを、マミを、杏子を。みんなを、信じてるから!!!」


そう。だから生きていける。

この不確かで不明瞭で不安定な世界だけれども。
感情という不可解で不可思議で非生産的かもしれないことが渦巻くこの世界だけれども


人な何か、その信じられる何か一つを胸に、この世界を生きているんだ―――――!!!



だから私は、今ここで膝を折って、拳を床に叩き付けている場合ではない。
そんなことをしている暇はない。



私は証明して見せなければならないのだ。
この不可解な世界で強く生きていけることを。

そんな無茶無茶な世界ですらをも生きていけるような、そんな最高の彼らの証明の為にも、絶対に!!

「なにか・・・ないの!?」

床も壁も天井も、真っ白だけで何もない。
崩れていくだけの瓦礫すらも白く、ただ影だけが黒い。


ここには何も描かれていない。
何もヒントはない。ならば、元の教室は?

思い出せ思い出せ。なにか、なにかなかったか?


ああもう!!
何故もっとよくあの教室を凝視しておかなかったの!!


『君たちはいつだって、そうして足元をすくわれるんだ』

「うるさいわね・・・・・」

キュゥべえの煽り文句が脳内で再生される。
ニヤリと不敵に笑いながらもイラつくほむらだが、そこでハッとする。


あの生物は、聞かれたならば答えるという生物だ。
はぐらかしはするけれど、よくわからないことは言うけれど、結局のところ事実を口に――――――



ダンッッ!!!

ほむらが飛び降りる。
同時に足場は消え、最初の最下層までの足場が完全に消滅した。


そして、盾からロケットランチャーを取り出して、それを肩に構えて狙いをつけ



床に到達すると同時に、叫びながら引き金を引いた―――――


「見つけたわよ、インキュベーター!!!!」

ドッッ!!!


そして、最初に立っていた床が爆発し、その先に


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「ほむらちゃん!!」

「うぅん・・・・え、あ?」

「よかった!!よかったよぉぉおお!!」

「ほむら!!おかしいとこない?頭痛くない?」

「ダメよ、鹿目さん美樹さん。暁美さんは目を覚ましたばかりなのだから」

「ンなこと言って、なかなか起きないって聞いたら真っ先に肩ゆすったのマミじゃねーか」

「んなっ!!」



「だ、大丈夫よまどか」

「ホント!?ほんとに大丈夫!?」

「だ、だいじょうぶ・・・だkら・・・く・・・b・・・・」

「うわぁ。ほむらの顔がソウルジェムと同じ色に」

「ちょ、まどかオメー放せって!!ほむら死ぬぞおい!!」



「いやぁ。それにしてもどの扉もニセモノで、結局最初に立ってた床の下だったなんて、えげつないねぇ」

「でもそれに気づくなんてすごいね!!」

「そ、それほどでもないわ」ファサァ





医務室。
無事に目を覚ましたほむらに、まどかたちが飛び掛かっていっていた。

そのわきでは、寸でのところでソウルジェムから抜け出ることに成功した晴人たちが、背を合わせてぐったりと座り込んでいた。



そして、ソウルジェムは無事に上条の手によって無効化。
魂は完全に、彼女たちの元へと帰っていった。


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「キュゥべえが?」

「はい。新しい任務と」

「ま、確かに宇宙には寿命があるとはいわれているが・・・・・」

「それをどうにかするってのか?まだいってんのかよ」

「でも、あいつそんなに乗り気じゃなかったような・・・・」


事が落ち着き、ほむらの報告を聞く蒔風。
こちらも体調が落ち着いたようで、冷えピタを張っているものの大丈夫そうだ。

と、その蒔風が顎に手を当て、考え込む。


「乗り気じゃない?」

「はい。なんというか、積極性に欠けるというか・・・・」

ほむら曰く、今回の彼の行動には積極性がないという。
かつて、まどかを魔法少女にしようと勧誘し、付きまとっていたことのような感じがなかったらしい。


「むぅ・・・・」

「だ~め!舜君はそれ以上使わないの~」

「あっ、こらなのは!!」


だが、そこでなのはがおでこをペシンと叩いて蒔風を座る椅子ごと運んで行ってしまった。
キャスターの付いた椅子は、実に軽快に廊下を走っていってしまう。


「んま、あいつはそんな感じだから、こっちはこっちで調査しとく」

「よろしくお願いします」

と、そうしてショウが話を引き継ぎ、今回のことは終わらせる。



なにかが、始まる気がした。
大きな大きな、何かが。




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「これでいいのかい?」


あぁ、十分だ・・・・・

これで奴の手の内はあらかたわかった。
後は任せてもらおう。


「僕らとしても、この星の危険度は理解しているつもりだ」

一見、秩序の中にあるようでいて、いつ崩れるかのわからぬ、不安定なこの星の現状―――――


よぉくわかるぞ、白きモノよ・・・・
故に、我がこの星を変えて見せよう。


「頼んだよ。この星はいずれ、宇宙に進出する。その時彼らは圧倒的な脅威となりうるだろうからね」


そのようなことは知らぬ。
ただ我は―――――



「正しき混沌の中に、この星を堕とそうと思うだけよ」





to be continued
 
 

 
後書き

これにて、第七章プロローグ「Under World」の終了です。
どっかから「カラフル」聞くといい感じかも?

と、とにかく眠いのでこの辺で失礼します・・・・・・


ちなみに、最後の二人の会話。
地の文のほうの人物のイメージボイスは・・・・若本さんです。




津上
「次回。新しいアギト?」

ではまた次回 
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