とある3年4組の卑怯者
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65 決別
前書き
5組の学級委員・橿田ひろ子という女子はちびまる子ちゃん20周年スペシャル「友達になろう!」の巻で出てきたたまちゃんの幼稚園時代の旧友・ひろ子ちゃんという子を基にしています。今回はたまちゃんとそのひろ子ちゃんの決別後を私的に創作してみました。あれ、ひろ子ちゃんはたまちゃんと学校は別でしたっけ・・・?
翌日、4組の女子は朝練を行っていた。
「それっ!」
「はい!」
レシーブ、トス、アタックの連携の練習を順番に行っていた。その時、前田が校門に入った。
「あれ、朝練やってるの!?」
皆は前田の姿を見て嫌な予感がした。前田を誘わなかったのでまた怒り、泣くのではないかと思った。
「ええ、そうよ」
「そんな・・・!どうして私には教えてくれなかったの!?」
「そりゃ前田さんが一々怒ってばかりだからよっ!」
城ヶ崎が腕組みして言った。
「そうだったわね・・・!私もおばあちゃんに叱られたわ・・・!だからもう怒らないよ!みんな・・・、本当にごめん・・・!!」
前田は頭を下げた。
「・・・もう許してあけようよ、みんな・・・」
リリィが皆に言った。皆も微かに反応した。
「そうね・・・、前田さん、小さいことで怒らないでよ?」
みぎわが前田に尋ねた。
「ええ、もう気を付けるよ・・・!」
「前田さん、じゃあ、また練習頑張ろう!」
リリィが前田に微笑んだ。
「う、うん!」
藤木が学校の校門に入ると、女子が校庭でバレーの練習をしているのが見えた。
(皆頑張ってるな・・・。よし、俺も負けられないぞ!!)
藤木はこの後も必死でキーパーとして猛練習を行った。そして球技大会の日は一刻と迫ってくるのであった。
球技大会前日の5時間目、この日の授業は特活であり、球技大会のことについてだった。戸川先生が皆にプリントを配った。
「明日の球技大会の試合の時間はこのプリントに書いてあります。それでは、この後は各自ミーティングを行い、試合出場者の割り振りや作戦などを決めてください」
こうして男女それぞれに分かれてミーティングを行った。
「ふーん、最初は2組で次は5組、3組、最後が1組か」
ケン太がプリントを見ながら言った。
「なら最初の3試合のうちに1組を倒す戦略を考えたらいいぜ!」
杉山が提案した。
「それもそうだね。よし、次は誰をどの試合に出そう?」
「おい、藤木、お前最初の2組との試合でキーパーやんないか?」
「え、僕でいいのかい?」
藤木は大野の質問に驚いて聞き返した。
「ああ、お前、練習頑張ってるし、2組には負けたくねえだろ?」
「う、うん・・・」
「それに俺達も堀内へ普段の借りも試合で返してえんだ。お前も堀内と喧嘩したことあるからわかるだろ?」
杉山が堀内の名を言い、藤木は以前自分が笹山に好きだと伝えるきっかけとなった事件を思い出した。
「ああ、いつも授業の邪魔をするからね・・・」
堀内は藤木と喧嘩をして叱られた後、母親に毎日授業参観の如く監視されながら授業を受けてはいたが、その期間が過ぎると懲りるどころか何もなかったかのように再び居眠りか、勝手に教室を抜け出して遊ぶか他のクラスの邪魔をすることを平気で行っていた。
(よし、まずは2組を倒すぞ!)
藤木は心に2組を打倒することを誓った。
女子のミーティングも同じように誰をどの試合に出場させるか考えていた。
「リリィさん、いいスパイクしてたから全試合出場してみない?」
みぎわが提案した。
「でも、私ばかり出るのもどうかと思うし、それに皆平等に出ないと・・・」
リリィは謙虚な態度だった。
「まあ、途中からでもいいわよ。頑張ってよ」
皆もリリィの活躍を期待しているようで、断るわけにはいかなかった。
「どうもありがとう、頑張るわ!」
「じゃあ、放課後公園で最後の練習するよ!」
前田が呼び掛けた。皆の反応は以前のような嫌々ではなく、積極的でやる気に満ちた反応だった。
放課後になった。リリィはまる子、たまえと教室を出た。そのとき、体操着姿の5組の女子達が練習しに行くところだった。一人の女子が三人の方を向く。橿田ひろ子だった。
「あ、たまちゃん」
「ひ、ひろ子ちゃん・・・」
たまえは橿田に怖れているような反応をした。
「明日の球技大会、楽しみだね。君達には負けないよ!じゃあ・・・」
橿田は勝ち気な表情で友達と共に去った。
「ひろ子ちゃん・・・」
「すごい自信とやる気に満ちてるねえ・・・」
まる子が橿田を見て感心していた。
「たまちゃん、どうしたの?」
リリィがたまえが顔を曇らせているのを見て気にした。
「う、ううん・・・、なんでもない・・・」
「なんでもないように見えないわよ!」
「リリィ、たまちゃんにはたまちゃんの事情があるからあまり首突っ込まない方がいいよ」
「え、うん・・・」
リリィはまる子に忠告され、首を突っ込むのを止めた。
たまえはリリィやまる子と別れた後、橿田との思い出を回想していた。
穂波たまえと橿田ひろ子。二人は同じ幼稚園で大親友だった。二人はよく遊んだものであった。お互いの家へ遊びに行ったこともあった。二人は親友として楽しい日々を築いたのだった。小学校に入るまでは・・・。
幼稚園の卒業式の日にたまえはひろ子から声を掛けられた。
「たまちゃん、学校でも友達でいようね」
「うん!」
二人の友情は堅いはずだった。
小学校に入学後、たまえとひろ子は別々のクラスだった。クラスが違うせいか接触が少なく、一緒に帰る機会も中々掴めなかった。そんな時、ひろ子が穂波家に電話を掛けてきた。
「たまちゃん、今度の私のお誕生日会来てくれるかな?」
「ひろ子ちゃん、うん、いいよ!」
たまえは承諾した。
たまえはひろ子の家へ誕生日会に行った。しかし、たまえは同じクラスのさくらももこという友達ができていた。たまえはその友達と「たまちゃん」「まるちゃん」と呼び合う仲になっていた。なおまる子の誕生日会にも誘われていたが、ひろ子の誕生日会と被っていたので、まる子には行けないかもしれないと言った。 本当はまる子の方に行きたいという気持ちも持ちながらたまえはひろ子の家へ向かった。ひろ子は自分のクラスの女子と友達を誘い、たまえに紹介していた。しかし、ひろ子は自分以上にその新しい友達と仲が良さそうにしていてたまえは場違いに感じた。ひろ子は新しくできた友達と談笑してついていけず、自分は蚊帳の外だと感じた。そして、急にとても大事な用事を思い出したと言って途中で抜け出した。もうひろ子は親友ではない、同じクラスのまる子こそが今の親友だと思い、まる子の家へ道に迷いながらも必死に向かった。
それ以降、たまえはひろ子と疎遠となった。ひろ子とは進級しても同じクラスになることはなかった。またすれ違っても声を掛けられなかった。目も合わせられなかった。
たまえはバレーの練習のため公園へと向かった。
男子は紅白戦を行っていた。藤木は途中から小杉と交代して出場していた。杉山がドリブルして近づいてくる。シュートを放つと、藤木はボールへ向かって懸命にジャンプした。そして、懸命にキャッチした。
(取った・・・!よし、この調子なら本郷君のシュートを止められるかも・・・!!)
そして、そのボールを長山に投げて渡した。
紅白戦が終わり、皆帰ることになった。ケン太が皆に呼び掛ける。
「みんな、これまでの練習で連携もできてるし、それぞれも段々と上手くなって形になってきたよ!その成果を明日見せてやるぞ!」
「おー!!」
こうして解散した。藤木は永沢、山根と共に帰った。
「藤木君、杉山君のシュート止められるなんて凄いよ!」
「え?いやあ・・・」
藤木は山根に褒められて照れた。
「藤木君、君肝心の試合で空回りしないように気を付けろよ・・・」
永沢はその場の空気を変えてしまうような言い方で藤木に忠告した。
「わ、わかったよ・・・」
藤木は永沢にビクビクしながら答えた。
(でも僕が活躍すれば、きっと笹山さんもリリィもカッコいいなんて思ってくれるかな・・・)
藤木は笹山とリリィから活躍した自分がちやほやされる所を妄想した。
「藤木君、急に嬉しそうな顔してるね」
「さあ、またリリィや笹山さんの事でも考えてるんだろ」
山根と永沢の不審に思う感じも気にせず、藤木は意気揚々とした表情で帰るのだった。
後書き
次回:「開会」
ついに球技大会の日が訪れた。4組は男子サッカーでは2組と、女子バレーボールでは1組と最初に対戦する予定となる。藤木は憎き因縁のある堀内のいる2組に対して闘志を燃やす・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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