とある3年4組の卑怯者
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66 開会
前書き
球技大会のルール
男子サッカー:試合は一試合前半・後半で15分ずつ。ハーフタイムは10分。トータルで30分。同点の場合はPK戦を両チーム三人ずつ行う。
女子バレー:マッチポイントは15点。ピンチサーバー投入可能。試合前にじゃんけんを行い、サーブ権とコート権を決める。3セット中2勝したチームが勝利し、セット毎にコートチェンジ。
3年生全員は校庭に集合していた。校長の開会の挨拶が終わり、各クラスはそれぞれ円陣を組んだ。
「では、男子も女子もズバリ、お互い全力で戦いましょう!!」
丸尾が皆に呼び掛けをすると、皆は「おう!」と答えた。
「よし、俺達は最初の試合だ!行くぞ!」
大野が男子にコートへ向かうように呼び掛けた。
(よし、これまでの練習の成果を見せてやるぞ!)
藤木は燃えていた。その時、ケンタが藤木を呼んだ。
「藤木君。これを着けるといいよ。これならボールをキャッチするときに痛みも和らぐからね」
ケン太が差し出した物はキーパー用のグラブだった。
「ありがとう、ケン太君!」
藤木はグラブを受け取り、手にはめた。
女子は体育館に向かった。最初の試合は、2組と5組の試合で、2つあるコートの片方を使い、もう片方は練習用に割り当てられていた。たまえは試合に臨む橿田らがいる5組の方を向いていた。
(ひろ子ちゃん・・・)
「たまちゃん、練習始めるよ!」
「う、うん・・・」
まる子に呼ばれてたまえは我に返った。4組にとって最初の相手である1組に備えての練習が始まった。
男子は最初の試合で2組と対戦する事になり、整列した。藤木は並んでいる堀内を睨み付けた。
(堀内・・・、君はあれからも時々勝手に授業中に邪魔をして・・・、その日頃の恨みも晴らしてやるぞ!)
藤木は嘗て彼によって笹山が傷付けられた事、そして自分に喧嘩を仕掛けてきた事、そして球技大会の種目が決まった時、野球がよかったなどと文句を言っていた事を思い出した。
(そんなにサッカーより野球がいいなら来なきゃいいのに、結局出るのかよ・・・)
ケン太と2組の赤坂という男子がじゃんけんをし、最初のキックオフは2組となった。その後、選手たちはそれぞれのコートの陣地へと向かった。
4組
FW
ケン太、中島
MF
花輪、長山、とくぞう、関口
DF
永沢、山根、若林、たかし
GK
藤木
2組
FW
堀内、半田、赤坂
MF
横須、柴田、朝倉、奥田
DF
竹村、太田、瀬戸
GK
熱田
4組は4-4-2のフラットのフォーメーションで組んだ。それに対して2組は3-4-3の攻撃的なフォーメーションだった。
(大野と杉山が控えならこっちは楽勝だな!)
堀内は楽勝だと思っていた。審判を務める体育の先生の合図と共に試合が開始された。ミッドフィルダーの横須がキックオフを担った。横須がボールを蹴って近くにいる半田にパスした。半田がボールを受け取り、ドリブルする。花輪と長山がボールを奪いに来たので、半田は堀内にパスしようとボールを蹴り上げた。永沢らディフェンダーが守りを固めようとし、永沢、山根が堀内の前に立ち塞がった。
「若林君、西村君!他の選手もマークするんだ!」
ケン太に言われて若林が半田を、たかしが赤坂をマークした。ミッドフィルダーの横須までもが陣地に来た。
「堀内君!パスだ!」
「うるせえ!!」
藤木はなぜ味方の呼びかけに対して堀内が「うるせえ!!」などと言ったのか理解できなかった。堀内はやや強引に永沢と山根をを突き破ってシュートしようとした。
(ここでシュートだと!?)
堀内がゴールへ向かってシュートした。藤木は必死で飛び出し、ボールに飛びついた。ボールは永沢のすねに掠ったこともあってか、威力はわずかながら弱くなっており、藤木は受け止める事ができた。藤木が関口の方へスローイングした。関口がヘディングをし、さらに空中に浮かんだボールを胸トラップした。中島に回そうとするが、朝倉にインターセプトされ、朝倉はドリブルで赤坂に渡そうとしたが、堀内が無理にそのパスを奪って赤坂に体当たりし、ゴールを狙おうとした。
(また、来る・・・!!)
藤木は構えた。しかし、花輪のスライディングタックルでボールを奪い返し、とくぞうがボールを受け取った。
「堀内、邪魔すんなよ!!」
「うるせえ!!」
赤坂に文句言われて堀内は案の定おなじみの言葉で言い返した。藤木は堀内はチームプレイより、自分が得点することを優先しているように見えた。とくぞうがケン太にロングパスをした。ラインぎりぎりだが、ケン太はそれを見事に捉え、右足で思い切りセンタリングシュートを行った。2組のディフェンダーたちは守りに入ろうとするもケン太のシュートに対応できず、その強烈なシュートはキーパー・熱田の手を弾いてゴールインした。
「ヘタクソ!!お前死んでいいぞ!!」
堀内は熱田に罵声を浴びせた。
(なんて奴だ・・・!たかが点を許しただけでそんなこと言うなんて・・・!!)
藤木は堀内の思いやりのない言動に軽蔑した。4組のキックオフとなり、ケン太がボールを蹴った。それを中島に渡す。中島の前に竹村が立ちはだかった。
「長谷川をマークしろ!!」
熱田が太田と瀬戸にケン太のマーク呼び掛けた。その時、ミッドフィルダーの花輪と長山までもが前に出ていた。
「中島君、こっちにパスだ!!」
長山が中島に呼び掛けた。中島が長山にパスした。しかし、堀内が強引に長山からボールを奪い取ろうとして長山にタックルし、交錯した。結果堀内の行為は長山の足を蹴ったことでファウルとなり、4組に直接フリーキックが与えられた。
「長山君、君が蹴っていいよ」
「うん、分かった」
ケン太に言われて長山がフリーキックを行うことになった。長山がボールをシュートする。熱田は今度は止めて前に弾いた。ボールは瀬戸が取り、ドリブルした。花輪が防ごうとするも、瀬戸は柴田にパス、そして柴田が半田にパスしようとしたが、これもまた堀内が勝手にボールと取ってゴールへドリブルした。山根が抑えようとするがかわされ、藤木のいるゴールに近づいた。堀内がシュートする。
(させるか!!)
藤木は必死でボールに飛びついた。ボールは上に弾いて、ゴールの上に乗っかった。2組のコーナーキックとなった。
「俺が行く!!」
堀内がコーナーに立った。そしてゴールへと勢いよく蹴る。藤木は取れるか心配になった。その時・・・。
《藤木君なら取れるよ!》
《藤木君、頑張って!!》
藤木は笹山とリリィの応援する声が頭の中で幻聴した。二人はバレーの方で体育館にいるのでいないはずだ。藤木はその幻聴で奮起し、必死でボールを掴んだ。藤木はボールを見事に止めた。
「ナイスキャッチだ、藤木!!」
ベンチに回っていた大野が藤木を賞賛した。
「よし、行くぞ、西村君!」
藤木はたかしに向かってボールを投げた。たかしがボールを受け取るが、近くにいた赤坂にボールを外に出された。しかし、ボールは4組の物になった。たかしがボールをケン太に必死でスローした。そして、太田と瀬戸が二人がかりでマークした時、中島にパスした。中島がシュートした。熱田は取れずにボールはゴールに突き刺さった。2点目を挙げた。
その後もケン太がさらに3点目を追加し、3-0と4組のリードで前半を終了した。
大野と杉山は藤木を賞賛した。
「藤木、ナイスプレーだったぜ!」
「あ、ありがとう・・・」
「よし、俺たちの出番だ!」
大野と杉山は自信に満ちた表情で後半戦に臨んだ。藤木ははまじとキーパーを替わった。
一方、2組は堀内が熱田に怒鳴っていた。
「テメエ、ふざけんじゃねえぞ、このクズがあ!!」
「何言ってんだ!大体君だって自分勝手なプレーしてんじゃないか!!」
「うるせえ!!」
堀内は横須の指摘に耳を貸そうともしなかった。こうして後半戦が始まった。
4組
FW
ケン太、大野、杉山
MF
花輪、丸尾、ナベちゃん
DF
ブー太郎、山田、永沢、若林
GK
はまじ
2組
FW
堀内、半田、高浜
MF
横須、奥田、大江、寺本
DF
瀬戸、西尾、坂部
GK
星崎
今度は4組のキックオフだった。4組はフォーメーションを4-3-3に変更した。藤木は今度は応援だったが、2組に勝ちたいという気持ちは変わらなかった。
堀内はその後も連携よりも自分の為のプレーが目立った。横須が半田にパスしようとしたボールを味方なのに半田に体当たりしてボールを強奪してシュートしたり(この時は外れた)、無理にマークを突破しようとして逆にボールを奪われたりした。また、高浜のシュートをブー太郎がヘディングで妨害すると、高浜に「お前じゃ無理だ!」などと吐いたり、高浜にパスしようとした奥田が花輪にボールをインターセプトされると、「ヘタクソ!帰っていいよ!」などと罵倒した。大野、ケン太がそれぞれ1点を決めて5-0で4組が勝利した。
その後、4組は勝利に酔いしれる一方、2組は堀内が3失点した熱田に掴みかかっていた。
「テメエがチンタラしてんのがワリいんだぞ!ふざけんじゃねえ、このカスが!!」
「ご、ごめんってば・・・!!」
熱田は涙目だった。横須や瀬戸らが止めようとしたが、堀内は「うるせえ!!」と言って彼らを蹴り払っていた。
「あいつ、最低だよな」
「ああ、自分が一番迷惑かけてんのに、人のせいにするんだからな」
大野と杉山は堀内を非難した。藤木は勝ったのは嬉しいが、堀内に責められる熱田が可哀想になってしまい、堀内を軽蔑した。
(堀内・・・、本当に君は迷惑者だよ・・・!!)
1組の本郷は後半戦を観戦していた。
「4組が勝ったか・・・。俺達も負けられないぞ!」
本郷は次の試合である3組との試合に臨んだ。
バレーボールの5組対2組の試合はは5組が勝利した。
「よし、アタシ達の番だねえ!リリィ、アタック頑張れ!!」
まる子は最初の試合に出るリリィを応援した。
「まるちゃん、ありがとう!」
こうして4組は試合を行うコートに集まった。
後書き
次回:「完敗」
女子のバレーボール、4組と1組の試合が始まった。しかし、苦戦した上に、前田がまた逆上してチームワークがバラバラに。そしてその前田に思わぬ事が・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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