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真田十勇士

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巻ノ百十三 加藤の誓いその四

 それでだ、こう言ったのだった。
「よし、ではな」
「それではですな」
「あの場に向かいましょう」
「これより」
「加藤殿のお部屋じゃな」
 加藤のいる場所はというのだ。
「ではな」
「はい、これより」
「そこに進みましょうぞ」
「再び影となり」
「そのうえで」
「ではな」
 こう話してだ、そして。
 主従は壁も屋根も越えて加藤の屋敷に入り彼の部屋にまで来た。するとその部屋にだった。
 加藤がいた、加藤は主従が己の前に来たのを見て言った。
「騒ぎ一つなかった」
「左様でしたか」
「城の中でな」
 蝋燭の光の中で言う、だが。
 幸村はその顔を見てだ、すぐにわかった。加藤が余命幾許もないことを。目はくぼみ頬がこけている。
 だが思いを隠してだ、加藤に応えた。
「それがし達もです」
「術を使ってか」
「ここまで来たので」
 それでというのだ。
「騒ぎもです」
「起こさぬ様にじゃな」
「務めてきました」
「そしてその努めがな」
「奏してですな」
「ここまで来られた、ではな」
「はい、これよりですな」
 幸村は加藤に応えた、その後ろに十勇士達が揃っている。
「お話を」
「しようぞ」
「さすれば」
「話は一つじゃ」 
 加藤から話を切り出してきた。
「右大臣様のことじゃ」
「はい」
「大御所様は上総、下総に移って頂きな」
「あの二国において」
「国持ちの大名にと考えておられる」
 加藤もこのことを知っていた。
「確かな城も築いて」
「その城に入られて」
「過ごして頂きたいと」
「思われていますな」
「無論官位もそのままじゃ」
 そちらもというのだ。
「やがては関白、太政大臣もとな」
「考えておられるのですか」
「そうじゃ、しかしな」
「それでもですか」
「問題はな」
「大御所様がそうお考えでも」
「茶々様じゃ」
 彼女がというのだ。
「首を縦に振られぬ、ご上洛の時もじゃ」
「加藤殿が何とかですな」
「行ってであったからな」
 浅野と共に供を務めると言ってというのだ。
「何とか納得してな」
「そうしてでしたな」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「問題はあの方なのじゃ」
「右大臣様はもう」
「うむ、大御所様とお話をされてな」
 二条城で直接だ。
「お考えを決められた」
「その様に」
「もう豊臣家の天下ではない」
「そのこともおわかりで」
「だから後はな」
「国持ち大名、しかも別格の家として」
「大御所様はやがて松平の名を家紋も下さる」
 秀頼にその二つをというのだ。 
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