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真田十勇士

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巻ノ百十三 加藤の誓いその三

「完全にな」
「左様ですな」
「そうなってしまいますな」
「どうしても」
「しかし我等は術も使えて草木や石の声も聞こえる」
 彼等はそうだというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「気配も消せる」
「闇夜だけに姿を闇の中に消せる」
「溶け込むことが出来ますな」
「それが出来る、しかも跳ぶことも出来る」
 飛ぶのではなくだ。
「僅かな足場さえあれば幾らでもな」
「跳べますし」
「如何に反り返った石垣でもですな」
「僅かな足場さえあれば跳び」
「そしてですな」
「加藤殿のところにも」
「行ける」
 幸村主従ならばというのだ。
「これは慢心ではない」
「はい、それが出来る力がある」
「今の我等にはですな」
「それが確かにある」
「だからですな」
「そうじゃ、では行くぞ」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 幸村主従はすぐに気配を消し草木や石の声を聞いてどういった場所に兵がいないかを聞きつつ影となり駆けた。姿も闇の中に溶け込ませ。
 風の様に進む、橋を渡り壁を僅かな場を踏んで踏み台にして跳び越えていきそのうえでだった。
 最初の城壁を越えた、だが誰も主従には気がつかなかった。
「風か?」
「風が通り過ぎなかったか?」
「随分強い風だったか?」
「そうだな」
 誰も気付かないまま話す、その彼等の横をだ。 
 主従はさらに駆けていく、闇の中なのでいつも以上にその姿は見えずこのことが彼等に幸いした。
 複雑な造りの城の中を駆けていく、その反り返った石垣も高い壁もだ。
 踏んだ場所を足場にして上に上にと跳びそうして越える、そうして進み遂に加藤のいる本丸の屋敷まで来た。
 その屋敷を見てだ、幸村は言った。
「ここまで来たが」
「はい、加藤殿は何処におられるか」
「そのことですな」
「ここまでは無事忍び込めましたが」
「これからはですな」
「それじゃ」
 まさにというのだ。
「果たしてな」
「そうですな」
「あの方が何処におられるか」
「それが問題ですな」
「お屋敷の何処に」
「気配はな」
 それはというと。
「今より感じるとしよう」
「はい、目を閉じ耳を澄まし」
「そうすればですな」
「加藤殿がおられる場所がわかる」
「我等ならば」
「強い気を持っておられる方じゃ」
 だからだというのだ。
「気を探ればな」
「それで、ですな」
「わかりますな」
「我等にしても」
「左様ですな」
「そうじゃ」
 その通りだというのだ。
「ではよいな」
「はい、ではこれより」
「加藤殿の気を探り」
「そのうえでおられる場所を把握し」
「そうして」
「進ぞ」
 こう言ってだった。主従は実際に加藤の気を探った。すると屋敷の何処にいるかすぐにわかった。 
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