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真田十勇士

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巻ノ百十三 加藤の誓いその二

「それこそ中に通じている者を作らぬ限り」
「到底ですな」
「入ることが出来ませぬな」
「忍でも並の者なら」
「とても」
「そうじゃ、しかし並じゃ」
 ここでこう断った幸村だった。
「だからな」
「我等ならですな」
「入られますな」
「力と智慧を使えば」
「そして術も使えば」
「出来る、例え熊本城でもじゃ」
 加藤がその築城の粋を尽くして築いたこの城でもというのだ。
「入られる」
「あの堀、城壁、造りでも」
「そして石垣でもですな」
「我等ならば」
「越えられますな」
「出来る、我等は如何なる山も川も崖も越えてきた」
 これまでの鍛錬、そして忍としての働きの中でだ。
「それを考えるのじゃ」
「それならばですな」
「乗り越えられる」
「必ず」
「左様ですな」
「そうじゃ、跳んでいくぞ」
 まさにという言葉だった。
「これより」
「はい、わかりました」
「それではです」
「今宵に」
「加藤殿のところに参りましょう」
「加藤殿は試しておられる」 
 幸村達をというのだ、他ならぬ。
「それがわかるな」
「ですな、ご自身のところまで来られねば」
「到底、ですな」
「話は出来ぬ」
「そう思われていますな」
「そうじゃ」
 まさにその通りだというのだ。
「だからじゃ」
「我等もですな」
「至る」
「その越えられぬものを越えて」
「そのうえで」
「そうするぞ」
 こう十勇士達に言って実際にだった。
 幸村と十勇士達は夜に宿を出て熊本城に向かった、夜の闇の中でも彼等には熊本城の雄姿がはっきりと見えていた。
 その城を見つつだ、幸村はまた十勇士達に言った。見事な天守閣も独特の石垣も多くの城壁も広い堀もだ。 
「よい城であるな」
「ですな、数万の軍勢で囲もうともです」
「兵糧さえあり兵もそれなりにいると守れます」
「そして人も入らせませぬな」
「絶対に」
「そうじゃ、並の忍ならな」
 加藤の狙い通りにというのだ。
「入ることは出来ぬ」
「全くですな」
「出来るものではありませぬな」
「この城について」
「到底ですな」
「ましてやじゃ」
 見れば城はただ堅固なだけではない、見張りや見回りの兵達もいる。その数はそれなりにあり。
「足軽達もおる」
「壁にも櫓にも」
「門にもいますな」
「あの者達に見付からぬ様にしようと思いますと」
「実に厄介です」
「並以上の忍達ですら」
「兵までがいますと」
「見付かって捕らえられるか討ち取られる」
 そうなってしまうというのだ。 
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