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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!

作者:織部
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邯鄲乃夢 4

 街の喧騒が風に流れて聞こえてくる。芸姑の奏でる音楽や人々の笑い声、まこと平和で豊かなにぎわいで、ここが戦場だということを忘れてしまいそうになる。
 そう、ここは戦場。崖山に追い詰めた南宋の残党を殲滅せんと元の大軍がまわりを包囲しているさいちゅうだ。
 南宋軍はその数二十五万といわれるが、そのほとんどは市井の民や文官といった非戦闘員で、戦える兵士の数は一万に満たない。
 補給を断たれ糧食を得られなくなった南宋軍は衰弱し、元軍は楽に勝てるはずだった。
 謎の神仙が加勢に現れるまでは。
 元軍の奇襲を退け、風雨を呼んで大衆の渇きを癒し、わずか数日で崖山の険しい山を削って仏顔のような造形の要塞都市を築いた。
 ただ人のなせる業ではない。

「くそっ、あいつら真っ昼間から楽しそうにしやがって。こんないくさ、やってられるか」

 元軍の前線に立つ若い兵士がいまいましそうに吐き捨てた。周りの兵士たちの中にその態度を注意する者はいない。彼らもまた同じ気持ちだったからだ。





「――天若不愛酒――酒星不在天――地若不愛酒――地應無酒泉――」

 せまい店内は歌舞音曲が絶えず流れ、人がごった返していた。
 秋芳と京子は店の主人に銀子をはずみ二階をまるごと貸し切り昼食をとることにした。この三日間、宋のために尽くし街を完成させたのだ、このくらいの贅沢はゆるされるだろう。仏顔都市と化した崖山の登頂部には皇帝が、両目部分には文武百官とその家族たちが、鼻と港もある口の部分には庶民たちが居をかまえ、生活していた。
 いま秋芳たちがいるのは左鼻孔側の雑居街に作られた酒楼だ。
 給仕が注文をとりにくる。

「本日は酒飯博士(シェフ)がそろっておりますので、良い料理が出せますが、お飲み物はなににいたしましょう」
「銀瓶花彫酒をもらおうか」
「おお、お客さんはなかなか通でいらっしゃる。とっておきのがありますよ。料理のほうはいかがいたしましょう」

 ここは三方を海にかこまれた崖山。海の幸が美味しかろう。

「じゃあ豆瓣魚(トウバンユイ)と蟹醸橙(シェニァンチェン)を、あと酒の肴に羊肚絲(ヤントゥスー)があればたのむ」

 豆瓣魚とはニンニクやネギ、豆板醤たっぷりのスープの中で白身魚を煮込んだもので、蟹醸橙はカニの肉をユズの皮でつつんで蒸したもの、羊肚絲は羊の胃袋を細切れにして炒めたものだ。

「はい、ご用意できます」

 さらに白飯と清湯(チンタン)、食後の甘点心をたのんだ。
 酒も料理もすぐにはこばれてくる。卓上には大皿小皿、鉢や茶碗がところせましとならべられ、湯気をあげる。
 秋芳は酒杯を、京子は箸を手に取って舌鼓を鳴らす。

「見た目はザ・中華料理! て感じだけど、あっさりとした味つけで和食みたい」

 この時代の中国料理はあまり油っぽくなく蒸したり炙ったりといった調理法が多かった。

「中華料理が油っこくなるのは元の時代になってモンゴル料理の影響を受けてからだといわれる。味つけはあっさりめだが現代の中華料理に使われる食材はすでに宋の時代に出尽くされたというから、つくづく宋代ってのは文化の隆盛した時代だったんだなぁ」
「平和で豊かじゃなくちゃ料理に凝る余裕なんて出てこないものね」
「ああ、天下人の豊臣秀吉なんかより江戸時代の庶民のほうがよっぽどバリエーションに富んだ食生活をおくってるもんな」

 食事を終えて秋芳は竹葉青(薬酒の一種)を、京子はのちに廬山雲霧茶と呼ばれる緑茶を飲んで雑談に興じる。

「ねぇ、いま気づいたんだけど、お皿も茶碗も陶器じゃないわよね。これって……」
「銀でできている」
「銀食器だなんて贅沢ね、庶民のお店なのに」
「たんに贅を凝らすだけじゃないんだ」

 宋の時代の一流の料理屋では銀の食器を使うことが多かった。銀製の食器ならば落としても割れないし、錆びたり腐ったりもしない。また銀は毒や腐敗物に反応して変色する性質をもっているので、銀の食器を使っていることは『うちの料理は安全ですよ』というアピールにもなる。
 火事などに遭っても銀の食器は溶けたり変形したりするが、そうなってもふたたびまとめて熔かして作り直せばすむ。
 戦争が起きて避難するときはつぶしてたいらにしたものを重ねてはこび、安全な場所で作り直せばいい。もともと銀だからそのまま貨幣のかわりにもなり財産としての価値もある。
 割れたらそれでおしまいの陶器などより実用的なのだ。
 食後に出された甘点心は千層糕(チェンツォンカオ)。小麦粉を練って発酵させた生地を何層にも重ねてパイのような層を作り、あいだに果物や餡をはさんだ蒸し菓子だった。
 繊細な甘味を堪能しつつ窓の外を見ると雑多な町並みが見えた。ここからは元軍の様子は見えないが、この活気ぶりを見てぜひとも戦意をくじいてもらいたい。

「豊臣秀吉は小田原攻めのさい武力で押し潰す強行策をしなかった。それよりも北条方の士気を低下させ内部崩壊させていく策をした。そのために小田原城外に遊郭まで作って城の中と外に天国と地獄を演出した」
「こんかいは籠城するがわが天国になるわけね。――宿霊元」

 手にした銀器をもてあそんでいた京子がおもむろに印を結んで呪を唱えると、銀の器から細長い手足が生えてジタバタとうごめく。

「なんだいきなり、いまさら宇治拾遺物語の実践か?」

 式神とは本来二種類、密教でいう護法童子や安倍晴明の十二神将のように鬼神や精霊を使役するものと紙や木などを呪力によって生き物のようにあやつるものとがある。このあたりは土御門夜光以後の汎式・帝式における使役式と人造式と大差ない。
 おもに今昔物語に登場するのが前者で宇治拾遺物語に記されているのが後者だ。
 ――家の中に人なき折は、この式神をつかひけるにや、人もなき(しとみ)を上げ下げし、門をさしなどしけり――。
 稀代の陰陽師安倍晴明が自在に式神を使役し、京都の一条堀川戻り橋に十二神将という式神を隠していたのは有名な話だ。
 その符以って咒唱えれば式神と成る。

 原理は簡単だが実践するのは容易ではなかった術だが、夜光は簡易式符という、あらかじめ式神作成・操作の術式が組み込まれているベーシックスタイルの呪符を作成することでそのハードルを大きく下げた。
 たったいま京子がもちいたのは簡易式符にたよらない、古い術だ。

「天国の演出とはべつに地獄のほうも式神で演出してみようと思うの」

 京子は花の貌に美しくも危険な笑みを艶麗とよぎらせた。





「兵士たちに疲労と望郷の思いがつのりはじめている。海上陸路を敷いて一斉攻撃に出る前に、いちど決定的な勝利を収め、士気を上げる必要がある」

 そう判断した張弘範は弟の張弘正に命じて崖山の近くにある宋の水源地をふたたび強襲する作戦を立てた。
 あわよくばそこを足掛かりにして陸からも攻撃したいところだったが、戦う前から頓挫してしまった。
 道を進むことができないのだ。
 禁道則不能進。
 道を禁ずれば、すなわち進むことあたわず。
 秋芳のほどこした持禁の術で進路を妨害していたのである。
 障害物などひとつもないというのに、どうがんばっても前に進めない。一定の地点からは足が動かなくなる。

「方臘どのの法力でどうにかならぬか」
「かなり強力な呪が込められているので拙僧ひとりでは……」
「例の強力な助っ人とやらはまだ来ないのか?」
「一〇日以内には到着するかと」
「ええい、ならば近隣から方士、僧侶、行者、なんでもいいから呪術者を呼んで解呪にあたらせろ。人選と指揮は方臘どのにまかせる」
「ははっ」

 こうして多少なりとも霊力のある呪術者たちが五〇人ほどあつまり、秋芳のかけた呪の解除にとりかかったのだが、遅々として進まない。
 その間にも秋芳と京子は式神を打ち、元軍の士気をくじくよう、様々ないやがらせをしかけていた。





 ある日のこと陣中に熟麺舗(うどん屋)があらわれた。近隣の住民が大量の兵士たちを相手に商売っ気を出したのだろうが、なんと時間内に十杯食べると無料。それどころか銀一両の賞金を出すという。健啖家の兵士たちがこぞって挑戦するがなかなか完食できた者はいない。
 まもなく腹痛や下痢に悩まされる兵士たちが急増したので方臘をはじめ医術に心得のある者が診てみれば広節裂頭条虫、いわゆるサナダ虫に寄生されているではないか!
 どうやらうどんに虫を仕込んでいたらしい。えげつのないことである。
 夜中に警備中の兵士が不審な灯を発見したので近づいてみるが、むこうも動いているのかなかなか距離がせばまらない。いよいよあやしいと早足で近づき、灯の目前にせまったとたんに灯が消えた。おかしなこともあるものだと落ち着いてあたりを見回すと、なんと自分は崖の一歩手前に立っているではないか! あやうく落ちる寸前だったと冷や汗をかいたその耳元に「落ちちゃえばよかったのに……」と、女の恨めしげな声が聞こえ、いっそう肝を冷やした。
 またべつの兵士は若い女がしゃがみこんで泣いているのを見かけた。陣中に若い女人とは面妖なと声をかけると、振り向いた女の顔にはなんと目も鼻も口もついていないのっぺらぼう。驚いた兵士は無我夢中で逃げ出して。すると同僚は「こんな顔かい」と兵士のほうへ振り向くと同僚ものっぺらぼうで驚いた兵士は気を失った。
 ある晩に見知らぬ士官があらわれてみんなに酒食を振る舞い宴会になった。一晩中騒いで眠りこけて朝起きてみれば酒だと思って飲んでいたのは馬の小便、食べものは馬糞だった。
 などなどなど……。
 一兵卒だけでなく将官たちも奇怪な目に遭った。
 ある日の晩、軍議を終えた李恒が自分の幕舎にもどり夕餉を食べようとしたときのことだ。酒のそそがれた爵(鼎型の酒器)を口にはこんだとき、くちびるに痛みが走った。

「啊疼(あ痛)ッ!」
 見れば手にした爵の縁にびっしりと歯が生えている。李垣の眼前で縁はぐにゃりと歪んだ。笑ったのだ。
哇哦(なんだこりゃ)!?」
 おどろいて思わずかみついた爵をほうり投げる。すると卓上の食器がいっせいに震え、哄笑をあげた。

ギャハハハハハハ、ガチャガチャ、ワハハハハハ、ガチャガチャ。

「おのれ、妖怪か!」

 騒ぎ立てる酒壷を両断しようと剣を振るうと、卓に鋼の刃が深く食い込む。

「わしに剣を刺すこの不作法者は何者だ」

 卓から声がもれる。

「李垣という裏切り者だ」

 耳のすぐ近くから声がした。なんと李垣が着ていた袍までもがしゃべりだしたのだ。
「攻め込んだ先々で人を殺すものだから、ほうら、こんなに真っ赤になってしまった」

 白い袍がみるみる血に濡れたように赤く染まる。
 李垣はタングート人で西夏の王族の出身であり、西夏は元によって滅亡させられた。それでも李垣はフビライによる世界帝国建設の大義をひたすら信じ、各地を転戦していた。
そのことを揶揄していると理解すると、一気に激昂した。

「激氣(クソったれ)!」

 赤くなった袍を脱ぎ捨てて卓を蹴り飛ばすと、あたりに食器と中身がぶちまかれた。

「おお、もったいない。食べ物を粗末にするのはよくないな」

 鶏の姿煮が首をもたげてみずからの肉をついばみ、「好吃(美味い)! 好吃!」と鳴く。

「ぐぬぬ、面妖な……」
「李垣、矢に気をつけろ。おまえは矢傷を負って命を失う。そのような死相が出ている」

 史実で李垣は崖山の戦いで宋朝を滅ぼしたあと、安南に出征することになる。安南とはベトナム北部を支配する陳王朝のことだ。
 そこでの戦いで李垣は膝に毒矢を受けて戦死する。
 毒がまわった李垣の足は樽のようにふくれ上がり、苦悶の末に死んだという。

「ざれごとを!」

 食器も料理も卓も袍も、すべて焼却された。
 李垣は恐いもの知らずの豪胆な将だったのでそれっきりだったが、ほかの将軍たちのなかには我が身に降りかかった怪異に肝を冷やす者も少なからずいた。
 またこのような怪異は前線から離れた場所でも起きていた。
 輸送隊が兵糧をはじめとする物資を駐屯地にとどけに来たのだが、どうも様子がおかしい。しかも物資のほとんどを失っていた。駐屯地をあずかるモンゴル人将軍のネルグイが青い顔をした輸送兵たちを問いただすと、怪異に遭遇したとのこと。

「夕暮れになり野営していると、まわりから『おいてけ~、おいてけ~』という恐ろしい声がするのです。声は一晩中響き、兵の中には恐怖に駆られて逃走したり、気がおかしくなる者も出る始末。朝になって恐る恐る荷車を点検すると中は空っぽで……」

 そんな馬鹿な話があるものか、兵らが物資を横領して逃亡するのをふせげなかった言いわけにちがいない。
 気の毒な輸送隊長は処断されそうになったのだが、おなじような例が何件も続き、これは偶然ではない。と、ことが解明するまでは保留となった。
 だがその駐屯地でも同様のことが起きた。
 日が落ちると周囲から「おいてけ~、おいてけ~」と、おどろおどろしい声が響く。

「これはたしかに恐ろしい、だがこのわしがあずかる以上、やすやすと糧食に手出しはさせんぞ!」

 ネルグイはまわりに兵を散らし声の主をつきつめようとするとともに、食糧庫の守りを固め、みずから番に立った。
 多くの兵とともに寝ずの番をしていると、厳重に封鎖された食糧庫から物音がする。まるで鼠がものをかじるような咀嚼音だったので、もしやと思いあわてて中を確認すると、異常に腹のつき出た猿のような生き物――餓鬼たちが糧食を喰い散らかしていた。
 床に積み上げられた干し肉や乾餅、小麦粉や米の入った袋に顔を突っ込んでは猛烈ないきおいでむさぼり食っているではないか。

「おのれ、この妖怪どものしわざか!」

 ネルグイはむき出しの乱杭歯で干し肉をほおばる妖怪に槍を突き入れる。
 狙い誤ることなく穂先は腹に突き刺さり、その部分が残像のようにぶれる。引き抜くとそこから腹におさめた生米がざらざらとこぼれ落ちた。

「かゆ、うま……」

 自身の身体におきた損害も気にせずひたすらに貪る餓鬼たち。
 それらを掃討せんと槍を突き、剣を振るう元兵。
 餓鬼らはろくに抵抗もせずに斬り伏せられ、消滅した。

「なんだ、存外あっけないのう」

 ネルグイがひとりごちた、そのとき。

「輜重輸卒が兵隊ならば、蝶々トンボも鳥のうち、焼いた魚が泳ぎだし、絵に描くダルマにゃ手足出て、電信柱に花が咲く~」

 内容はわからないが、あきらかに自分たちをバカにした歌が聞こえてくる。

「なに者だ!」
「やぁ、諸君。黄海の波高くして、定遠はまだ沈まぬかね」

 ネルグイをはじめとする元兵には理解不能な日清戦争時代のギャグを口にして青い牛に乗った青年があらわれる。道服を着た短身痩躯の若者で、道士のような身なりをしているくせに僧侶のように頭を剃りあげているのが特徴的だった。
 賀茂秋芳だ。
 そして秋芳の乗っている牛、これまた奇怪な牛だ。一本の角に真っ青な体色をしているではないか。

「なに者だと問うておる!」

 ネルグイは言うやいなや猛烈ないきおいで牛にむかい槍を突く。しかし餓鬼を串刺しにした刺突は青牛の皮膚にはじかれた。この牛、かなり硬い。

「こらこら、罰あたりな真似はよせ。これは青牛怪といって、かの太上老君、老子さまが乗物としたと言われる聖獣だぞ」

 実際はそれを模倣した動的霊災なわけだが、と秋芳は心中でつけくわえる。

「青牛怪といえば『西遊記』に出てきた獨角兕大王(どっかくじだいおう)の別名ではないか。それと西域の大秦国の王に成りすまして好き放題したりしたと伝わる魔獣だぞ」
「お、よく知っているな。おまえさん、なかなか学があるね」
「あたりまえだ、漢の歴史を知らずしてどうして漢の国を支配できよう」
「ご立派。いまの言葉を第二次大戦中の日本人に聞かせてやりたいよ。敵性語禁止とか愚の骨頂だね、相手の国の言語を知らないで勝てると思うだなんて、戦争というものをなめているとしか思えないぜ」
「ええい、なにをわけのわからぬことを。ここにいた妖怪どもはおまえの手下だな。きさまは宋に味方するうわさの妖怪道士か」
「そうだ。宋だけに」
「ならば死ね!」

 配下に(シャア)と号令しつつ、ふたたび必殺の一撃をくり出さんとかまえる。
 剣刃が殺到するもあわてずにふところから一枚の呪符を取り出し宙に投げ打つ。

「命金行呼鉱、来。疾く」

 金行に命じて鉱を呼ぶ、来い。
 口訣を唱えると呪符――金行符は強烈な磁力を発し、兵士たちの手にした剣や槍を吸いつけてしまった。手にした武器はもちろんのこと、鞘におさめられた刀剣までもが持っていかれ、丸腰にされる。

「けんかはよせ、腹が減るぞ」
「人の糧食を喰い散らかして腹の減るようなことをしておいてぬけぬけと!」

 果敢にも素手で打ちかかってくるネルグイを青牛怪でてきとうにあしらいつつ新たな呪を唱える。

「オン・ハンドマダラ・アボキャジャヤニ・ソロソロ・ソワカ!」

 不空羂索観音咒。
 羂索(けんさく)とは古代インドで狩猟や戦闘に使われた捕縛用の縄のことで手に持っている縄で善人を救済し、悪人を縛り上げる。六観音の真言だ。
 拡散型の不動金縛り法。秋芳を包囲していた元兵たちはひとりのこらず呪縛された。

「――だが先にケンカをしかけたのはモンゴル軍、そっちからだろう。西夏や大理国、金を滅ぼし、平和に営んでいた宋まで滅ぼさんと牙をむく。おまえたちはどこまで侵略すれば気がすむんだ」
「天涯海角!」

 天地の果てまで征服すると言う。

「……軍隊というものは世界の果てまでも攻めていく必要はない。それは『瀆武』であり武の本質を汚すものだ。国境を守り抜く、自国を守る力があればじゅうぶんだろ」
「妖怪道士風情が武人であるわしに偉そうに武を説くか!」
「兵者凶器也、争者逆徳也(兵は凶器なり、争いは逆徳なり)。韃靼人は草原に帰って馬を駆り羊を追い、宋人は故郷で田畑を耕すなり、街で商売するなりして平和に暮らせ。さもないと玉帝陛下のお怒りが降るぞ」
「ざれごとを!」

 不動金縛りにかかっているにもかかわらずネルグイが一歩踏み出した。金縛りを精神力だけで強引に解こうとしているのだ。

(気合いだけで俺の呪にほころびを生じさせるとは、さすがは戦乱の世の武将。さっきの刺突も恐ろしい気迫がみなぎっていたし、本物はさすがにちがうな)

 青牛怪をうながし、距離をとる。

「おのれ妖仙、逃げる気か!」
「むりやり兵にとられた者もいるだろうし、刃傷沙汰におよぶつもりはない。だが、おまえたちがこの地にとどまり崖山の宋朝をおびやかすつもりなら、寒くひもじい思いをすることになる」

 青牛怪からおりた秋芳はしゃがみこむと地面に両手のひらを突きつけ、呪文を唱える。
 秋芳の全身から瘴気の渦が舞い上がった。
 陰なる呪力が大地にそそぎ込まれ、五気の調和を破壊する。煮立ったコールタールのように地面が泡立ち、はじけ、次々と瘴気を飛散させる。

「き、きさまなにをっ!? なにをするつもりだっ!」

 言いようのない悪寒がネルグイの総身を震わせ、思わず叫びをあげ、その叫びが終わる前に初期の霊災が発生した。
 霊災は一足飛びにフェーズ2へ、そして第二第三の霊災が発生し融合する。あっという間にフェーズ3となり実体化する。
 牛とも羊ともつかない獣毛におおわれた胴体に四肢と尾。曲がった角、鋭い牙と爪、人のような顔をした、いびつな獣。ラグとともに姿がたえず変容し続け、やがて完全に姿を定着化した。
 あらかじめ式に降ろしてストックしておいた動的霊災を召喚したのだ。
 体高が四メートル近くある妖獣はネルグイたちをにらみ、雄叫びをあげた。

「アッオーンッ! オレサマ、オマエ、マ~ルカジリ」

 間近にいたひとりの兵士を頭から丸呑みし、くちゅくちゅと咀嚼する。

「啊啊啊啊啊ッ!」

 生きたまま喰われる恐怖に悲鳴があがる。金縛りにあい、同僚を助けることのできないどころか次は自分が食われる番かと脂汗をにじませる兵らの前で、丸呑みされた男がちゅぽんと吐き出された。
生きている。
 傷ひとつ負ってはいないが、一糸まとわぬ全裸のすがたとなっていた。

「そいつは饕餮(とうてつ)といって、悪食でなんでも食べてしまう妖怪だ」

 そう言う秋芳の周囲では濃密な瘴気が凝固し、フェーズ2からフェーズ3へと移行し続ける。
また次の動的霊災――二体目の饕餮が生まれようとしていた。

「動植物はもちろん木でも石でも鉄でもなんでも食べる。とうぜん人肉も嗜むが、いまは俺が制御しているから喰われはしないから安心しろ。ただし身につけている物は根こそぎ喰われて素寒貧になってもらおう」

 二体目、三体目、四体目――。数体の饕餮を生成。まるで簡易式でも作成するように動的霊災を兵らにけしかける。

「ひぇ~」「あはん」「いやん」

 丸呑みされてはすっ裸で吐き出され、丸呑みされてはすっ裸で吐き出され、丸呑みされてはすっ裸で吐き出され――。
 たちまち駐屯地は屈強な男たちの裸地獄と化した。唾液にテカつく裸体が艶めかしいのやら艶めかしくないのやら……。

「ううむ、なんというありがたみのない衣装破壊(ドレス・ブレイク)。近年の萌えアニメやラノベによくあるサービスシーンだが、男でやられても少しもうれしくないな。もっともたとえ美少女でやられてもとってつけたようなあざといエロいシーンには食傷しているが……。ああいう作り手の『ほらほら、おまえらこういうのが好きなんだろ。とりあえず乳出しときゃ円盤売れるんだろ?』的な姿勢は気に食わん。そんなデカい釣り餌で釣られるのは養殖ものの萌え豚だけで、俺のようなちがいのわかる数寄者には通用しないのだ」

 手前勝手なことを言いながら兵士たちの武装を強制解除していく一方、ふたたび餓鬼の群れを召喚して残った食料品もたいらげていく。
 補給なしで戦争に勝つことは不可能だ。
 戦争の本道は敵より多数の兵力を準備することと、それを維持できる兵站を整えることがもっとも重要で、あちらからこちらへ、そこからここへと、計画通りに物資を流通させること、それこそが軍事力というものだ。
 秋芳は元軍の士気をくじくとともに物資を根こそぎ奪い無力化するつもりだ。

「食料や武器を運ぶのはわかるが、やけに木材が多いな。船でも造るつもりか……。あ、おい。酒は少し残しておけよ、あとで味見するから――むっ!?」
 
「――不忍一時之気、生出百日之情、作哭作病作冤仇、禍害臨時莫救、好個当場一忍、計人一歩存楽、舌柔比歯久存留、能忍之人有後、要知前世因、今生受者是、要知後世因、今者作者是、有心無相、相逐心生――」

 どこからか呪文の詠唱が流れてきた。音楽的な旋律をもつそれには豊富な呪力が内包されており、饕餮たちはうなり声をあげ、全身にラグを生じさせる。餓鬼たちにいたってはその強大な呪力に耐えられず一瞬で粉砕するように修祓された。

「――夫入道者多、要而言之、不出二仲一理入、二行入、天往往、地往往、理入者、謂藉教悟宗、深信舎生、鳳凰止於庭、歴草生於階、神龍見於沼、上界有三十三天、何以只有九重、清虚超妙天、是正途直上、欲界十天――」
 
 やがて青牛怪と饕餮たちも耐えきれずに修祓されてしまい、秋芳は騎乗の人から徒歩になる。その秋芳とて無事ではない、とっさに張った結界がびりびりと振動し、呪文のもつ威力のほどをうかがわせた。

「……これは、邪神悪鬼の調伏にすこぶる効果のある破魔の呪文、玉傘聖呪か! 全文で三千二百二十四字あるが、たいていの魔物はすべての文字を読み終える前に耐えられず修祓されてしまうとか」

 それは秋芳の時代には伝わらず消滅した、いにしえの呪法であった。

「いかにも、そのとおりですわ」
 紫がかった黒髪をふたつ結いにし、道服と胡服の中間のような白衣白冠の装いをした少女が輿に乗って姿をあらわす。
 玉傘聖呪を唱えていたのはこの少女であろう、全身から豊潤な霊気をただよわせていた。
 さらに輿を牽いているのは粗末な服を着た、これまた年端のいかない少女で、しかもたったひとり、両手でかついで牽いている。輿とは(ながえ)という二本以上の棒の上に人が乗る台を載せた乗り物で、複数の人間が轅を肩にかつぐ、あるいは手を下げて腰の位置で持って移動するもので、とてもではないが少女がひとりで持ち運べるしろものではない。
 つまりこの少女もまた常人ではないということだ。

(これほどまで強い霊気を持ちながら、ついさっきまで気配を感じさせなかった。これはたいした使い手だ)
貧道(あたくし)は金華山霊応洞の包道乙(ほうどういつ)ともうします」

 少女――包道乙は両手を上げて礼をした。長い袖にかくれて見えないが手を組んで拱手しているようだ。

「包道乙~!?」
 包道乙。その名には聞きおぼえがあった。
 『水滸伝』に登場する妖術使いで、方臘とともに謀叛をおこし、戦闘ではあたりを暗闇にして天地を揺るがし、敵の周囲に巨漢を出現させて取り押さえるなどの妖術を使って相手を倒した。また百歩はなれた相手を斬ることができる魔剣を所持している。

「年代がちがうぞ、時代考証はどうなっているんだ。そもそも包道乙は男性だ、女性じゃない。……あ~、やだやだ。いやだねぇ、なんでもかんでも美少女化すれば良いって風潮。邪神や悪魔や死神や妖怪や魔王にはじまり、剣とか刀とか城とか、タロットが女の子とか、文房具が女の子とか、空き缶が女の子とか、ゴキブリやサナダムシが女の子とか……。そのうち道路標識も美少女化でもするつもりか? 『うちのメイドは一方通行』だの『俺の妹が右折禁止なわけがない』だの作る気か? 俺はそういうのきらいなんだよ、性別のない物を擬人化するならまだしも、あきらかに男性である神話や歴史上の人物の美少女化とか、とくにな」
「なにを言っているのかサッパリわかりませんが、肉体なぞ歴史の中では時代を写す衣装でしかないともうしあげておきますわ」
「どこぞの灰色の魔女のようなことを言う……」
「盛者必衰は人の世の理。滅びゆく宋朝に与していたずらに戦乱を長引かせる鬼道の徒を折伏しに参りました」

 この場合の鬼道の徒とは秋芳を指し、たんにあやしげな術を使うやつ。という程度の意味だ。

「鬼に横道はない。いたずらに戦火を広げ、天の定めた王朝の命数を削るモンゴル軍こそ
無法を重ねる叛徒」
「なにを言う! 重税に苦しむ民衆があいついで蜂起し、金に追われた宋の天命などすでに絶えている。代わりに元朝が天下に立って治めるべし!」

 と、これはネルグイの主張。

「禅譲もされずに剣で天下に立とうとする者を簒奪者というのだ」
「妖怪変化を使って狼藉をはたらく者がなにを言おうと詭弁にしかなりませんわ。おとなしく折伏されなさい。……見れば数多の妖物を従える霊力といい、方術の冴といい、なかなかの実力者。目鼻立ちもととのっておりますし、あなた、あたくしの弟子になるつもりはなくて? 弟子になるのなら手荒な真似はいたしませんことよ。毎日きれいな服を着させて美味しいお料理を食べさせてあげますわ」
「おまえが弟子になればオイラは姉弟子になるッス。オイラのことを師姉と呼ぶッスよ」
「俺は乳のない女には従わない、よっておまえの弟子にはならない」
「……あなた、いまあたくしの逆鱗に触れましたわよ。悪口を垂れ流す舌と手足を斬り落として甕の中で飼ってさしあげますわ」
「まるで呂雉(りょち)だな」
「おほほ、人豚のほうがお望みならそれでもよろしくてよ」

 唐の武則天、清の西太后とともに中国三大悪女として名が挙げられる漢の高祖劉邦の正室である呂雉にはおそろしい逸話がある。
 夫の死後に妾と妾の産んだ子を殺害するのだが、その妾の殺しかたが実にむごい。両手両足を切り落とし、目玉をくりぬき、毒薬で耳を聞こえなくし喉を焼いて声も出せなくしたうえで便所に置き、この処置を『人豚』と呼ばせたのだ。

「お師匠さま、ここはオイラにまかせて欲しいッス」
「ん? おい、ちょっとまてよ。包道乙を師と呼ぶとは、おまえひょっとして鄭彪(ていひょう)か?」
「おお、オイラのことを知ってるッスか!? いかにも鄭彪ッス」

 鄭彪。やはり『水滸伝』の登場人物で包道乙の弟子という設定の妖術使いで、戦いでは身に霊気をまとったことから鄭魔君と呼ばれた。頭上に黒煙とともに金甲の神人を出現させて相手を惑わす妖術を使い、武芸にも秀でる。

「いやもう、そういう『オイラ』とか『ッス』とか現実にありえない口調で無理やりキャラを立たせようとするのもいから、書き手の表現不足の現れだから、キャラの書き分けが大変で科白とかだれがしゃべってるかわかりにくいからって、安易にありえない口調のキャラばかり出すの禁止!」
「意味不明なこと言ってないで勝負ッス! 手合せッス! 組み手ッス!」

 鄭彪はゆっくりと輿を降ろすと、猛烈ないきおいで打ちかかってきた。
 中国武術を説明するのに南拳北腿と言う言葉がある。長江より南では手技が多く、北では足技が多いということだ。鄭彪は江南の出自ということで、やはり拳をもちいた攻撃が主だった。
 鷹爪釣手、穿心掌、上步摘星拳、虎爪絶命手、龍爪擒拿手、嘴鶴手などの多彩な手技を繰り出してくるのを右に避け左にさばき、後ろに跳んで防御する。

「なかなかやるッスね、――第一封呪、解除っ」

 鄭彪の霊気がぐんと上昇した。それだけではない。あふれ出る霊気は身につけた物にも影響をおよぼし、粗末な服装が一変する。白銀の兜、甲冑、手甲、脚絆といった戦装束に変わった。

「なんだそりゃおい、界王拳的ななにかか!?」
「かいおうけんとかじゃないッス。鄭魔拳ッス。(ハイ)! ()! ()!」

 上昇したのは霊力だけではない。身体能力も向上し、膂力も敏捷力も大幅に上がっている。ガードしても威力を殺しきれず、受けた拳脚に痛みが残る。
 いまの鄭彪の攻撃はボクシングのジャブにストレートの威力が込められているにひとしい。

(呪術者を相手するにあたって呪文の詠唱や集中をさせないよう問答無用の肉弾戦をしかける。まぁ、基本だな。俺もよくやる手だ。だが、いかんせん粗い)

 科学にせよ医療にせよ、人の世の技術というものは日進月歩だ。武術という技術体系もまたしかり。
 かの大山倍達が健在の頃の極真空手の訓練動画を見ると、正拳突きのさいに肩が左右に揺れている。これでは重心が安定せず、強烈な一撃はくり出せない。だが当時はそれが常識だった。『重心の安定』や『全身の運動エネルギーを一点に集める』という概念はあったかも知れないが、それを実践する動作がだれもが使える技術として確立していなかったのだ。
 実戦を謳った空手でさえこれだ。
 武術とはより効率よく人体を動かす科学技術であり知識である。
 八〇〇年前の武術は秋芳の生きていた時代よりも洗練されておらず、無駄が多い。現代武術ではルール違反とされる急所への攻撃さえ注意すれば、存外恐れるようなものではなかった。
 秋芳の体術をもってすれば鄭彪の猛烈な攻撃は、さばききれないものではない。

(問題はこいつではなく包道乙だ)

 包道乙は拱手の姿勢のままじっとこちらを見つめている。
 その両手は袖に隠れて見えない。つまりどのような手印を結んでいるのか、わからないということだ。
 ひしひしと殺気が伝わってくる。
そしてあふれる霊力の強さは並の呪術者の比ではない。

(前にもみ手をして下手に出てくるふりをしつつ、印を素早く結ぼうとしたせこい術者とやり合ったことがあったが、こいつはどのような印すら見せていない。やっかいだな)

 こちらがすきを見せれば未知の呪が飛んでくる可能性が高い。たとえすきを見せなくても弟子である鄭彪が劣勢になれば手を出してくるかも知れない。
 肉弾戦に長けた前衛と強力な呪術を使う後衛ふたりを同時に相手にするのは勝ち目が薄い。

(ここは退散するか)

 三十六計逃げるにしかず。
 西暦五世紀の中国、南北朝の時代。宋という国があった。この宋はいま秋芳たちが救おうとしている宋とはまた別の国だ。
 その宋に檀道済(たんどうせい)という名将がいた。彼は北方の国境を守備し、強大な北魏軍と戦い続けた。彼のたいそうな戦上手で、その戦術は巧妙をきわめ、北魏軍を幾度も撃退した。ときには敵の前から逃げ回って、相手の戦力を削ぐという作戦をもちいた。そのためどうしても檀道済に勝てない北魏軍は「逃げ上手の檀道済。三十六策中、逃げるのが上策なり」などと負け惜しみを言ったという。
 しかし時の宋の皇帝は檀道済の能力と名声を恐れ、妬み。無実の罪を着せて死刑にしてしまった。彼の死を知った北魏軍は狂喜して総攻撃をしかけ、あっという間に都に迫り。城外を埋め尽くす敵軍を見た皇帝は「檀道済はどこにおる」と惑乱したとも「檀道済が生きていればこんなことにはならなかったのに」と悔やんだとも伝わる。
 逃げることは恥ではない。時には撤退することも大事なのだ。
 最近の日本には先の負け戦の反省もせずにネット上で気炎を吐く輩が多く、そういう連中は「日中戦争のときの中国軍は逃げてばかりの腰抜けだった」というような発言をする。たしかに日中戦争における戦闘ではたいていの場合、日本軍が攻めると中国軍が撤退し敗走したが、相手を自国領深くに誘い込み、補給線がのびきったところで散発的なゲリラ戦をしかけて叩くというのは立派な戦術だ。
 あとからいくらでも取り返しがつくのに、目先の名誉や安っぽい矜持のために自決や玉砕を強いるのは愚の骨頂であり、後退すべきときに後退を決断できる能力も名将の資格なのだ。

(ふたり同時に叩き、その隙を突いて離脱する!)

 襲いくる鄭彪の乱打をさばきつつ、呪を唱える。ことさら複雑な術式や呪力を込める必要はない、先ほど打った金行符の術式に少し手をくわえてリライトすると、磁力に吸い寄せられていた無数の武器が飛散し、包道乙と鄭彪を目がけて襲いかかる。
 なんらかの防御行動をとるはずだ、その隙に逃げ出す。そのような算段だったのだが。

「縛!」

 包道乙が呪言を発すると強力な呪力が迸り、雨霰と飛来する武器の動きを中空でピタリと停止させた。
 裾がひるがえると手は転法輪印を結んでいた。不動金縛りの術だ。
 肉体や精神の動きどころか、投擲された物体の運動エネルギーをも金縛りにして停止させてしまったのだ。
 これほどまで強烈な呪力をあやつれるとは、完全に予想外であった。微塵の隙も生じていない、それどころか。

「縛! 縛! 縛!」
 流れるような指使いで内縛印、外縛印へと再結印。金縛りの呪縛は秋芳の身にも影響をおよぼし、動きを阻害した。全身に圧力がかかり、まるで水の中にいるかのように動きが鈍化する。
 鄭彪はその好機を見逃さなかった。

「隙ありッス、喰らうッス、伏虎十八掌ッス!」
 霊力の込められた強烈な掌打が秋芳の頭蓋を打ち砕いた。 
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