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真田十勇士

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巻ノ百十二 熊本その十

「敵はおらん、如何に伴天連の者達が妖しげな力を使おうとも」
「それでもですな」
「服部殿達には勝てぬ」
「天下一の忍達には」
「誰であろうとも」
「戦国の世を生き抜いてきた者達じゃ」
 だからだというのだ。
「しかも十三人おる」
「ならばですな」
「伴天連の者達も勝てぬ」
「妖しげな術で歯向かおうとも」
「それでもですな」
「服部殿と十二神将ならば」
「そこに伊賀者達も多く入れた」
 だからだというのだ。
「必ずことを収める、伊賀者達に任せる」
「わかり申した、それでなのですが」
 ここで言ってきたのは柳生だった。
「加藤殿のことは」
「間もなくじゃな」
「はい、やはり」
「わかっておる、ならばな」
「後はですか」
「安らかに過ごさせてやれ」
 その残り少ない時をというのだ。
「そうしてやれ」
「はい、それでは」
「何もせずともよい、しかし厄介なのは」
「熊本よりもですな」
「薩摩じゃな」
 つまり島津家だとだ、家康は言った。
「あの中には入られぬな」
「忍が入りましても」
「帰って来た者はおらぬな」
「はい」
 そうだというのだ。
「中々」
「少しでも怪しい余所者は切り捨てておるか」
「どうやら」
「そうであろうな、あの家を調べようとしても」
「わかりませぬ」 
 その中がとだ、柳生は家康に苦い顔で答えた。
「これがどうも」
「そうであろうな、何かとな」
「あの家を調べようとしても」
「わかるな、あの者達は厄介じゃ」
 島津家はというのだ。
「手を打っておきたいが」
「それでもですな」
「打たせぬか、しかし何としてもじゃ」
「尻尾を掴みますか」
「そうする」
「三百もの藩の全てをですか」
「わかっておらぬとな」 
 そこはどうしてもというのだ。
「政は出来ぬ」
「そうですな」
「だからな」
「島津家もですな」
「何とかじゃ」
 忍の者を忍び込ませてというのだ。
「調べるぞ」
「細かいところまで」
「そうする、しかしあの家を調べるには」 
 薩摩をというのだ。
「並の忍では無理じゃ」
「ではそこまで出来るとなると」
「半蔵か十二神将じゃ」
 その彼等位だというのだ。
「それこそな」
「そうなりますか」
「さもないと生きては帰れぬわ」
「そこまでですな」
「だからな」
 それでというのだ。
「大久保家の話が終われば一度な」
「薩摩に半蔵殿をですか」
「送りたいが」
 しかしというのだ。 
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