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真田十勇士

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巻ノ百八 切支丹禁制その二

「わしも半蔵に言い按針の言うことを調べさせたが」
「実際にですな」
「あちらは我等の戦国以上に乱れ」
「多くの血が流れていた」
「そうだったのですな」
「うむ、そして西班牙や葡萄牙の者達はじゃ」
 こちらはというと。
「実際にじゃった」
「三浦殿の言われる通りに」
「伴天連の者達が悪事を行っていましたか」
「民達を勝手に売り飛ばし奴婢とする」
「他の教えを認めず神社仏閣を壊す」
「国も乗っ取っていましたか」
「しかし今の時点ではな」
 家康は今度は和蘭のことを話した。
「按針は和蘭というより英蘭じゃがな」
「その国からですか」
「本朝まで来た者ですか」
「その国からですか」
「うむ、あの者達の宗派はそうしことはせぬという」
 同じ耶蘇教であってもだ。
「そこも調べた」
「左様ですか」
「半蔵殿に調べてもらい」
「それが確かだとわかり」
「そうされましたか」
「嘘を吹き込まれ政を決めてはならん」
 家康はこうも言った。
「そう思ったからじゃ」
「だからですな」
「しっかりと調べて」
「そしてですか」
「この度も決められた」
「左様ですか」
「わしも按針がわかった」
 彼とよく話をしてそして服部達に調べさせてだ。
「信頼出来る。その言うことはな」
「では、ですな」
「このことはですな」
「禁ずるということで」
「そうしていかれますか」
「そうじゃ、国を乗っ取られるわ」
 そうされるからだというのだ。
「だからな」
「わかり申した」
「ではその様に」
「確かにあの者達は天下を脅かします」
「国を乗っ取ります」
「是非な、若し幕臣で耶蘇教を信じる者がおれば」
 その時はというと。
「わしも勘弁せぬかなら」
「耶蘇教自体が信じられぬ故」
「だからでえすな」
「そうじゃ。そして思うことは」
 それはというと。
「同じ耶蘇教でも宗派が違うとな」
「はい、互いにですな」
「どうにもですな」
「争ってばかりで」
「しかも殺し合う」
「惨たらしいまでに」
「何故じゃ」
 家康はいぶかしむ声で言った。
「一体」
「同じ教えだというのに」
「何故争うのか」
「それがですな」
「訳がわからぬ」
「そういうものですな」
 幕臣達も言う。
「そこがわかりませぬ」
「我等もです」
「どうにも」
「そこまで殺し合うのか」
「全くじゃ」
 家康もそこを言うのだった。 
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