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真田十勇士

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巻ノ百八 切支丹禁制その三

「何故そこまで出来る、わからぬ」
「我等には」
「どうしてもですな」
「このことは」
「わかりませぬな」
「どうしてもな」
 ここはとだ、家康はまた言った。
「仏教でもじゃ」
「はい、宗派は色々で」
「多くあります」
「しかし」
「それでも」
「殺し合わぬわ」
 それはないというのだ。
「そもそもな」
「全くです」
「南蛮の者達はわかりませぬ」
「同じ教えで殺し合うとは」
「何故でしょうか」
「宗派の違いで」
「それが按針にも出ておったが」
 しかしというのだ。
「あの者はな」
「殺し合うまでは」
「そこまでは」
「嫌っておらぬ」
 宗派の違う者達をというのだ。
「だからよい、しかし宗派が違うだけで惨たらしく殺し合うとは」
「実にですな」
「厄介ですな」
「そこまでするとは」
「理がわかりませぬな」
「教えが違う者も容赦なく殺すという」
 家康はこのことも聞いて知っていた。
「異国の者達もそれで殺し何でも妖術、向こうでは魔術というそうだが」
「妖術が何か」
「どうしたのですか」
「妖術を使う者も容赦なく、疑いをかけられた時点でじゃ」
 家康はさらに剣呑な顔になって述べた。
「惨い責め苦を与え生きたまま火炙りという」
「生きたまま火炙りとは」
「重罪の者にすることですが」
「それをしてですか」
「殺しますか」
「そうらしい、その責め苦も本朝では考えられんものじゃ」
 まさにというのだ。
「わしも聞いて思わず顔を背けたわ」
「それはどういった責め苦ですか?」
「一体」
「それはじゃ」 
 南蛮のその責め苦の話をだ、家康は控える者達に細かく話した。すると誰もは吐き気を催さんばかりの顔になった。
 それでだ、彼等な家康に申し訳のない顔で言った。
「す、すいません」
「その話を聞きますと」
「よい、わしも聞いてそうなった」 
 今の彼等の様にというのだ。
「信じられぬな」
「はい、何といいますか」
「明の責め苦よりも惨いですな」
「伝え聞くあの国の責め苦も信じられませぬが」
「南蛮はそれ以上ですな」
「そうしたことを妖術を使うと聞いただけでじゃ」 
 まさにそれだけでというのだ。
「そうするのが南蛮じゃ」
「耶蘇教の下に」
「そうするのですか」
「何と惨い」
「それが南蛮ですか」
「そうじゃ、その様なことをしてどうなる」
 家康は南蛮の妖術への仕打ち、異端審問のことも述べた。
「国が乱れて仕方なくなるな」
「全くです」
「それでは底意地の悪い者や恨みの強い者が言えばどうなるか」
「片っ端から責め苦を浴びせられ火炙りです」
「国が乱れて仕方ありませぬ」
「どれだけ罪のない者が惨たらしく死ぬか」
「しかもあちらの坊主達はどうもじゃ」
 さらに言う家康だった。 
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