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蛇の血をひく日向の子とやりたい放題の剣客たち

作者:笠福京世
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第08話 卑の意志を弄ぶ剣客たち

「気狂い……ですか?」

「そうとしか言いようがないわ」

 大蛇丸は利己的な研究者肌だが、教育者として向いてないわけじゃないと思う。
 というか研究者としての豊富な知識もあるし、忍術に限らず様々な事象に対して独自の考察を練っている。
 だから、こちらが知りたそうな目で見つめると、割とペラペラと教えてくれるのだ。

「私だって研究者として忍術に対抗するという剣技に興味があったから調べたの。
 もう無茶苦茶ね。忍者の修行だって厳しいと言われてるけど、剣客の修行法は非常識もいいところよ」

「どんな修行ですか?」

「私が教えてもらったのは“1日1万回の感謝の上段斬り”よ」

 それってハンター×ハンターのネテロ会長の修行法じゃん!!バカだろ!此処はNARUTOの世界だぞ!?
 思わず口から叫び出そうになったツッコミ押さえて話の続きを聞く。

「気を整え、拝み、祈り、構えて、斬る。
 一連の動作を一万回終えるまで忍びと言えども1日24時間で足りるのかしら?
 そして上段斬りが終われば、中段斬り、下段斬りと行って、
 剣客となれば、その三万回の素振りを1時間以内に終わらせるそうよ」

「その修行で、どんな技が身につくんですか?」

「秘剣・燕返し、空飛ぶ最速の忍鳥である燕が斬れるそうよ」

 なんで百式観音の修行やったら、佐々木小次郎の燕返しが使えるようになるんだよ!!

「しかも一太刀の斬撃にも関わらず、上段・中段・下段の三か所が同時に斬られるの。
 チャクラも印も用いずに一呼吸の斬撃で時空間忍術並みの現象を発生させるとか訳が分からないわね」

 僕だって訳が分からないよ!!それってFateの農民のアレか!?
 なんかNARUTOの世界の燕って凄そうだよな。ツバメじゃなくってTUBAMEか!?

「忍びの術にも未知の部分があるとはいえ理(ことわり)があるわ。
 だから研究によって新たな術を生み出したり、既存の術を改良できるの」

「けど剣客の技は世の不条理そのものよ。
 刀一本渡されて燕が斬れるまで、1日1万回の感謝の上段斬り?
 バカじゃないの? チャクラも用いずにそれをやろうなんて気狂い意外にいるのかしら?
 忍びの術でいうと習得難易度SSどころじゃないわね」

「あまりにも馬鹿げてるので研究の対象にもならなかったと?」

「そうよ。アナタは水の上を走ろうと努力したりするかしら?」

「まあチャクラを使えば走れますけど?」

「アイツらはチャクラなしで水の上を走るのよ」

「は?」

「足が水に沈む前に、足を上げればチャクラがなくても人間は水の上を走れるそうよ」

 そいつら僕と同じ転生者だろ絶対。何だか頭が痛くなってきた。何やってんだ?
 なんでNARUTOの世界で忍術使わないでワンピースごっことかハンター×ハンターの修行とかやってるの??

「えっと……すいません。少し落ち着かせて下さい」

 そもそも何の話をしてたんだっけ?何だか混乱してきた。話の始まりは……。

「その剣客とかいう無茶苦茶な奴がダンゾウを斬ったんですか? 一体どうして?」

 たしかに転生者ならダンゾウは斬りたい忍者の上位だろうけど。アイツを好きな奴っているのか?

「さあ? ダンゾウは二代目火影と同じく“剣客に対する”タカ派筆頭だから狙われたんじゃない?」

「え? ダンゾウが穏健派の三代目に対してタカ派って言われてるのは、
 他の忍びの里から木ノ葉の里を守るには武力第一で問題を解決しようとしてるからじゃないんですか?」

「それも間違いじゃないけど、ダンゾウは剣客に対しても武闘派路線なのよ。
 剣客は忍び同士の争いや国同士の戦争に対して基本的には不干渉だけど例外があるの」

「……例外ですか?」

「それが最初に言った忍殺ね。
 今は殆どいないけど彼らは自らの技を忍びを斬ることで試すの。
 いわゆる試し斬りってヤツね」

「め、迷惑な話ですね」

「そうよ。そして不殺の剣客であっても、自らの技を試すために強い忍びに襲い掛かることがあるわ。
 木ノ葉の里の汚点って言ったけど、その最もたる例が二代目火影の千手扉間様よ」

 た、たしかにヘンな転生者なら卑劣様とか呼ばれて愛されてる二代目火影を襲っても不思議ではない。

「二代目は多くの術を開発した忍びとして知られてるけど殆どが剣客対策なの。
 ただ問題だったのが術を新たに開発すればするほど、剣客たちが喜んで木ノ葉の里にやってきたってことね」

「怒ってじゃなくて、喜んでですか?」

「そう。剣客の価値観は私たち忍者とは違うのよ。剣客は己の技を高めて競う者。
 彼らにとって新術を開発する二代目は自らの技を試す格好の遊び相手だったのよ。
 今は殆ど見かけないけど当時は多くの剣客が木ノ葉の里に観光にやってきてたわよ」

「か、観光ですか?」

 転生者たちの玩具にされてる卑劣様を想像して思わず吹き出しそうになる。

「そう。当時の剣客たちにとって強い忍を相手に試し斬りができる
 木ノ葉の里は絶好の観光スポットだったってわけね。
 猿飛先生が三代目火影になったとき、二代目が開発した術の多くを禁術としたり、
 対忍殺部隊として創設された火影直属の暗部を組織改編したりしたお陰で観光客も随分減ったわ」

「え? 暗部って対忍殺部隊として創設されたんですか?」

「アナタね。わざわざ忍者を相手にした暗殺戦術特殊部隊が必要だと思うわけ?」

「た、たしかに……言われてみれば」

 呆れた顔で言われたけど、そんな原作知識にないこと言われても困る。

「真っ向からの一対一で戦いによる勝利が難しい剣客を相手にするには、
 忍びの特性を活かした暗殺という戦術が用いられた。
 そしてチャクラを用いない特殊な相手に対する部隊が必要とされた。それが暗部よ」

「な、なるほど」

「暗部の改編に反対したのがダンゾウね。
 ダンゾウは二代目と里を弄んだ剣客たちを里の誰よりも憎んでるわ」

 そして自らが次に転生者たちの玩具として標的になっていると……可哀想に。

「私としては剣客に対しての扱いに関しては、ダンゾウよりも猿飛先生に賛成ね。
 気狂いなんてまともに相手にする方がバカなのよ」

「つまり剣客に手を出すなと?」

「そう。親の仇でもないんだから相手にするだけ無駄よ」

 このNARUTOの世界への転生者は自分一人だけだと思ってたけど、よくよく考えたら大勢の人が転生されてたんだ。
 転生者が自分一人だけで原作知識を活かして、平穏に原作キャラたちの活躍を見守りたいなんて思ってたけど、
 他に転生者が複数いたら原作ブレイクも良い所じゃん。めちゃくちゃ不安になってきた……。

「その剣客ってのは三忍の従伯父さんが危惧するくらい強いんですか?」

「そうね。上忍を斬れるような剣客は極一握り。私たち忍びが真に警戒する剣客といったら御三家ね」

「御三家ですか?」

「そう。忍びは血のつながり、一族を大事にするけど、剣客の技は血によって受け継がれることはない。
 だから一家や一門とか流派と呼ばれるの。その最も知られた三つの名が御三家よ」

「柳生とか飛天御剣流とかそんな感じですか?」

「あら? アナタ、剣客のことは知らないって言ってたけど……知ってるじゃない?」

「は?」

 思わず大きな声で呆れた声をあげる。

「柳生御剣流は御三家の一つよ。
 三代目の父であり“最強の忍び”と謳われた猿飛サスケを斬った“忍斬り抜刀斎”は柳生一門よ。
 柳生一門は忍殺集団として最も名の知られた剣客集団ね。
 私が出会ったことがある剣客も柳生一門の人間で名前を十兵衛と名乗っていたわ」

「じゃあ燕返しは柳生御剣流の剣技なんですか?」

「いえ、燕返しは柳生一門の入門技だと聞いたわ」

「じゃあ柳生御剣流の技は?」

「入門技を身に着けてない者には教えられないって言われたわ。
 ただ、一人の剣客対大勢の忍びの実戦闘を想定して作られたとされる殺人剣だと聞いたわね」

 ってか柳生十兵衛って名前で飛天御剣流の真似して何やってんだよ他の転生者!!
 忍斬り抜刀斎って、完全にアレだろ。るろうに剣心じゃねーか!!

「他の二つは?」

 もう嫌な予感しかしないけど聞くしかない。

「一番メジャーなのは魂魄流ね。剣客王ディーを倒したのは魂魄の者と言われてるわ。
 土遁を斬る岩斬り、水遁、火遁を斬る海斬り、風遁、雷遁を斬る空斬りの三つの剣技を極めた者が名乗れると聞いたわ」

 あー、それも知ってるぞ。古い漫画だけど小さいころに再放送で見たから知ってるわ。
 大地斬、海破斬、空破斬、全部できたらアバンストラッシュでも放つんかい!!

「ホント、バカばっか、みーんなバカばかり」

 そいつら転生特典に何て書いたんだよ!!ってかNARUTOの世界に来るんじゃねーよ。バーカーバーカ。

「どうかしたの?」

「いえ、すいません。続き……お願いします」

「最後の一つは圓明流ね」

「エンメイリュウですか?」

「千年無敗の流派と言われてるけど私も詳しくは知らないの」

 圓明流は知らないな。僕の知らない漫画かな?せめて剣の技が分かれば元ネタがわかるんだけどだなぁ。

「どこかで聞いたことある名前ですね」

「そうね。アナタ、本好きだから剣客の本を知らず知らずのうちに読んでたのかしら?」

「剣客の本ですか?」

「まあ娯楽小説だから自来也が詳しいわね」

「自来也様が?」

「自来也が最初に書いた娯楽小説は、ベストセラーの剣客浪漫伝に触発されてって聞いたわ。
 剣客に対抗して忍びを主人公にしたらしいけど、全く売れなかったみたいね」

 アレか『木ノ葉剣客浪漫伝~るろうに十兵衛~』とか『雲隠れ剣客浪漫伝~るろうにようかん~』とか
 何かパクりっぽい小説があるなーって思ってて読むのを避けてたんだけど、読んでみるか……ツッコミどころ満載だろうけど。
 それに自来也が最初に書いた小説ってナルトの名前の元ネタになったド根性忍伝だよな?

「御三家の流派を勝手に名乗る奴とかいないんですか?」

「いるんじゃない? でも間違いなく消されるわよ」 
 

 
後書き
我ながら剣客たちの設定を書いてて酷いな……っと(汗)
更新が止まってたのはNARUTOを読み返してて、
いくつか疑問が発生し解決しなかったので続きが書けませんでした。

ポイントとしては「九尾事件」と「うちは一族事件」ですね。
とりあえず捏造設定で力押しする目途がついたので、更新ガンバリマス。

主人公はジャンプは詳しいけど、マガジンはイマイチで世代的に『修羅の門』や陸奥圓明流を知りません。あとダイの大冒険も週刊連載では見てないし、Fateもエロゲーではなくアニメで知ったゆとり世代という設定です。

剣客たちは三十路を越えたオッサンたちが転生してるという氷河期世代という設定です。 
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