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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第三十六話

 
前書き
どうも、腰の痛みに耐えながらキノの旅第一話を何回も、それこそ覚えるほど流しながら勉強してました。あの作品、と言うかあの作品の作者様の大ファンです。いつか、その二次創作を書きたいと思いつつ、恐れ多いなとも思いつつ、艦これ書いてます。 

 

―練習海域 ―
 
 
「なんて言うかな…………おっそろしいな。」
 
俺は目の前を行っている二人を見ながらそう呟いた。
 
戦艦長門。
 
軽巡木曾。
 
この鎮守府で一、二を争う実力者の二人が同じ艦隊で出撃している…………というか、俺以外の編成が凄すぎる。
 
長門酸を旗艦に、木曾、赤城さん、摩耶さん、時雨と、各艦種のトップが出撃している。
 
なぜこんなガチメンバーが集まっているのか。と言うか、なぜこんなガチメンバーのなかに俺が居るのか。
 
話は、大体五時間前に遡る…………。
 
 
 
―五時間前―
 
 
 
「やぁ、二号くん。お早いねぇ。」
 
まだまだ暑い日が続く九月の中旬、あれから三週間後のことだった。
 
俺はいつもの時間に目覚めて、色々と準備を終わらせた所で、いつも通り木曾とトレーニングしようと廊下を歩いていた所だった。

そこで、ここでは俺以外では唯一の男の声。
 
「ん、おはようさん。提督。」
 
提督だった。何やら色々な資料を持っているようだ。
 
しかし…………。

俺は周りを軽く見回した後で、提督に尋ねた。

「そーいや大淀さんは?いつも金魚の糞みてぇにくっついて来んのに。」
 
大淀さんの姿が見当たらなかったのだ。提督と大淀さんが一緒に居ないところを見るのは歓迎会で報告に行ったとき以来かもしれない。
 
まぁ、この二人、夫婦らしいし(親父に教えて貰った)。
 
「あー……………………耳かして。」
 
と言うと、俺の方に近づく提督。俺も身体の向きを変えて耳を提督の方に向ける。

「……………………(ゴニョゴニョ)。」
 
「……………………。」
 
時雨よ。この二人と拓海&冬華のバカップルがいる限り、雨は止みそうにねぇぞ。
 
ゲリラ豪雨どころか大型台風だよ。
 
「んで、だ。最近どーにも大淀の眼が厳しいんだ。このままだと僕の秘蔵コレクションが見つかってしまうかも知れないんだ。」
 
…………ほうほう。
 
「…………さっき、君の部屋に寄って、ドラム缶の中に隠しておいた。君に譲ろう。」
 
…………。
 
無言で顔を見合わせる俺と提督。
 
「「…………………………………………(ガシッ)。」」
 
握手を交わす俺達。しょーもない友情だった。

「んで、話は変わるけど、今日演習あるんだよね。」
 
提督は俺の手を握ったままにこやかに話し始めた。こいつがこんな感じの顔をするときはろくなことが起こってない。身構える俺。
 
「今回の相手はトラック基地。僕ら呉鎮とほぼ唯一と言って良いくらい仲のいい所だね。」
 
「え、なに?呉鎮嫌われてんの?」
 
いやまぁ、他の鎮守府との演習は何回か見てきたが、うちの主力じゃない連中……普段は遠征とかを主にやってる奴らに負けてるしな。しかも割りと惨敗。
 
普段は遠征と言えども、日々の訓練を怠ることは当然しない(望月とかも何だかんだで参加してる)訳で。
 
おまけにこちらには全艦娘での撃沈数圧倒的一位の木曾が居るわけで。他の提督にしてみたら面目丸潰れだろう。
 
ちなみに、撃沈数ランキングは青葉情報。一体どこまで調べてるんだ、つーかどうやって調べた。
 
「まぁね。僕が優秀だからかな嘘ですごめんなさい何でもないです痛い痛い痛い痛い!艦娘が本気で常人の手を握らないで!潰れる!潰れる!」
 
台詞やら言い方やら顔やらにイラッときたので、握手したままの提督の手を握る俺。最近、握力が百五十を超えました。いえい。
 
俺は程々の所で提督の手を離す。なかなか痛そうだ。
 
「ふぅー、痛かったー。亮太さんに似て力強いねー。」
 
いや、ここまでじゃあねぇだろ。
 
「で、話の続きだけど。今回の編成を伝えとくね。旗艦に長門。それで、木曾、赤城、摩耶、時雨、それで君の六人だ。」
 
「おいこら待て色々言わせろ。」
 
さっきの話をぶち壊してくれるような編成だった。
 
「何でまた各艦種の最強クラスを。」
 
長門さんと言えば、我が鎮守府では提督、大淀さんに次ぐ発言力の持ち主であり、第一船隊の旗艦。
 
木曾は言わずと知れた化け物。『鬼神木曾』の二つ名を持ち、第二船隊旗艦。
 
赤城さんは第四船隊の旗艦。自身の火力もかなりの物だが、他の艦へのサポートに徹したとき、その艦隊の戦力は二倍になると言う。
 
時雨は恐ろしく正確な体内時計と運を持っている(時雨に言わせれば悪運らしいが)。第三船隊の旗艦でもある。

摩耶さんはこの鎮守府一のオールラウンダー。第一船隊の副旗艦。対空射撃に至っては、木曾を超える人。
 
相手の鎮守府そのものを潰す気かよ。
 
「いやー、トラックには全力で行かないとね。同期の腹立つ奴が居るんだよ。」
 
そして、提督の理由はかなり器の小さい解答だった。こんなのがここのトップで良いのかよ。
 
「んで、何でまた俺?」
 
こっちの方が大問題な気がする。まだ実戦五回程の新人なのに。
 

 
―どこかの空間―
 
 

「あ、どもども!青葉ですー。今回、なかなか二号さんが頭おかしいこと言ってくれたので、神様の代わりに説明しに来ました!
 
確かに、二号さんはまだ五回しか出撃していないのは事実であり、経験不足は否めません。
 
しかし!そんな人の成績をご覧下さい!」
 
青葉はあなたに一枚の紙を見せる。そこには、こう書いてあった。
 

 
『二号さん 戦績
 
総撃沈数 二十七
 
平均被弾率 小破
 
戦闘MVP 四回
 
総合MVP 一回』
 
 

「はい。着任して五回の成績では決して無い訳です。下手したら木曾さんレベルです。しかし、どうやら木曾さんを見すぎてかなり感覚が麻痺してるみたいですねぇ…………これからが怖いですねぇ…………あおばらあおばら。

え?くわばらくわばらじゃあって?知りませんよぉ!そんなこと!」

青葉は無邪気に笑った。
 
「というわけで!メタ担当の青葉より、二号さんがいかに謙遜してるかの説明でしたー!カメラお返ししまーす!」
 
 
 
 
―鎮守府 廊下―
 
 

なんだ今の時が止まった感覚は。気のせいか?
 
…………どうやら気のせいらしい。
 
「いやー、今回、お偉いさんが見に来るんだよ。戦績は伝えてるんだけど、実際に見たいらしくて。」
 
成る程、確かに世界初の男の艦娘だ。実際に見ないと分からない事もあるだろう。
 
でも…………。
 
「それって、木曾やら長門さんやらを入れちゃったら俺が目立たなくなるんじゃあ無いか?そうなったら意味なくね?」
 
「…………………………………………。」
 
提督はそれを聞いて、笑顔のまま固まった。こいつまじか。
 
「じゃ、頑張ってね。僕はこれから大淀の寝顔を撮りに行くから。」
 
「おいこら待て!これで俺が期待値以下だったらどうなるか分かんねぇだろ!そうなったら寝込んでる頭に藁人形打ち付けるからな!」
 
俺のその声は、たまたま近くの部屋を使っていた天龍の、「うるせぇクソが!キャンキャンキャンキャン喚くんじゃねぇ!」と言う声に掻き消された。
 
 
 
 
―練習海域―
 
 
 
 
「いやぁ、災難だったわね。」
 
俺に優しく声を掛けてくれたのは、すぐ前を進んでいた赤城さんだった。周りへの警戒は怠らずに、俺の方を見ずにだけども。
 
「いやぁ、あの人の奇行にはいい加減慣れて来ましたよ。今回のはなかなかキツかったですけど。」
 
だから俺も、周りへの警戒を怠らずに話す。今は戦場に立っているわけだ。真面目な長門さんに聴かれたら怒られそうだ。
 
「でも、初演習がトラック相手とは運が良いね。他の鎮守府だったら下手したら沈めちゃうかも知れないしね。」
 
是非とも経験したくないな。つーか演習で轟沈とか笑えない。
 
いや、普段の戦闘での轟沈の方がよっぽど笑えない。
 
死んじまうからな。
 
……………………ん?
 
「まって、時雨。今なんて言った?」
 
なにか今、時雨の発言と俺の思考とが噛み合わなかった気がした。
 
「初演習がトラック相手とは運が良いね。」
 
「もうちょい後。」
 
「他の鎮守府だったら下手したら沈めちゃうかも知れないしね。」
 
そこだ。沈めちゃうかも知れない?
 
「知らない?こっちはわざと外したりしてるのにそこに自分から突っ込んで行って沈んちゃった娘がいたりするんだよ。」
 
そんなの俺達にどうしろと言うんだよ。そんなので沈めちゃったら夢に出るぞ。

…………最大限気を付けよう。
 
『おーい、そろそろ始めるぞー。』
 
すると、耳元のイヤホンから提督の声がした。通信機だ。
 
「うむ、それでは始めるとするか。」
 
長門さんがそう言うと、
 
「そぉい!」
 
木曾がなにか投げて、
 
「一…………二…………三…………。」
 
時雨がカウントダウン。いつもの流れだ。
 
 
 
 

「さぁて……………………演習だからと言って手を抜くことはない!暁の水平線に勝利を掴むぞ!」
 
 
 
 
 
閃光が走った。
  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。やはり、二号くんも男子高校生な訳でして。『そういう欲』が無い訳では無いです。第二十六話で悠人に怒ったのは、『命を掛けている女の子をそんな目で見たから』であり、『それが仕事』の人はセーフ、らしい(おいこら作者)。

それでは、また次回。 
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