艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~
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第三十五話
前書き
どうも、データぶっ飛んだため、一日遅れてしまいました。こっちのほうは良かったのですが、『アタエルモノ』のほうは六千字オーバーでして…………今週はお休みです。
―二時間後―
現在、二三〇〇。
「なんで俺と木曾しか起きてねぇんだよ…………。」
他、全滅。恐らく明日の朝まで起きないものと思われる。
…………飲み過ぎだ。
俺はテーブルに突っ伏したり寝転んだりしてる春雨達を見ながら呆れ返っていた。
「さぁて、帰るとしますかね。」
木曾はさっき起きた事件のことなんて忘れてしまったかのように振る舞っていた。こちとらあのときのこと思い出しちゃって大変だったのに。
「んじゃ鳳翔さん。リヤカー貸して。こいつら運ぶから。」
と、鳳翔さんに話しかける木曾。こいつらは荷物かよ。ぶっちゃけ、俺と木曾なら運べない訳ないと思うんだけど…………。
「はいはい。店の裏にあるからね。また明日にでも取りに行くから。」
…………多分、鳳翔さんに鎮守府に顔を出して貰いたいんだろうな。意外と人懐っこい奴だ。
「んじゃ、オレはリヤカー取ってくるから、お前はそいつらを乗っける準備してくれ。」
木曾はそう言うと、店の外に出てった。
さてと、取り合えずコイツらを店の外に運び出すかね。
「千尋くん、一つだけいいかな?」
すると、鳳翔さんが後ろから話しかけてきた。
「なんすか?」
振り向くと、心配しているような様子の鳳翔さん。どうしたんだ?
「あなたは『始祖の木曾』の血を引いてる…………。だから、絶対に後悔しないこと、受け入れること、そして、抗うこと。」
はい?
いきなり鳳翔さんは、意味の分からないことを言った。『始祖の木曾』?
「どう言うことで―」
「おーい、持ってきたぞー。」
俺が言葉の真意を聴こうとしたとき、ちょうど木曾が店に入ってきた。
「ほら、そいつら乗っけるぞ。ボーッとすんなよ?」
木曾は一番玄関の近くに寝っ転がってた天龍(かろうじて下着プラス上着姿)をお姫様抱っこした。
「あ、あぁ…………。」
俺は木曾に促されるまま、近くに座っていた時雨をお姫様抱っこした。うわ、これなかなか恥ずかしい。
………………軽いな、と思った。
―商店街―
俺達は居酒屋以外の店のシャッターが閉まった商店街をリヤカーを引きながら歩いていた。殆ど人通りは無く、この変な光景は見られていない。
…………時代が時代だったら、人買いみてぇな風貌だな、と思った。
「しかし、四人が乗ったリヤカーを軽々引けるって、どんだけだよ…………。すげぇな艦娘。」
俺は誰に言うでもなくそう呟いた。
「そーいや、明日で…………もう今日か。今日で艦娘になってから一ヶ月経ったんだっけな。どうだい?ここでの生活は?」
木曾は俺のすぐ隣で一緒にリヤカーを引いている。俺がちょっと手を右に動かせば、木曾の左手に俺の右手が触れそうだ。
「忙し過ぎてなにがなんだか分からなくなることだらけだけど、充実してるってところかな。」
流石に楽しいとは言えない。
「ただ…………なんか、余所余所しい奴等が居るかなってのを感じたかな。」
これは、鎮守府に来た初日から思っていたことだ。例えば木曾に対する長門さん以外の戦艦と赤城さん以外の空母。
時雨に対する扶桑さん。
摩耶さんに対する他の重巡などなど。
「仲良しグループとかはあるものの、基本的に他の艦種の奴とは絡まない事が多いって感じかな。」
「んー、一つ訂正な。」
木曾は俺の言葉に被せるように言った。
「この鎮守府では、駆逐艦の一部と軽巡洋艦の奴等がかなり嫌われてる感じだ。」
…………駆逐艦と軽巡洋艦が?
「そんなことない…………とは、言い切れねぇな。」
思い返すと、俺が話をする奴って、木曾、天龍、摩耶さん、神通さん、羽黒さん、間宮さん、明石さん、大淀さん、長門さんと、駆逐艦全員。
確かに、戦艦は長門さんだけだし、空母に至っては一人もいない。
「赤城さんはそんなことねぇんだけどな……。」
木曾はそう切り出して話してきた。
「うちの鎮守府は駆逐艦と軽巡洋艦がかなり強くてな?他の鎮守府なら戦艦一隻で駆逐三、四隻分くらいなんだけど、ここじゃ精々一、二隻位。それなら燃費のいい駆逐&軽巡だ。」
確かに、やけに俺達の出撃多いとは思ってたけども。
「空母の連中も弱くはねぇんだけどなぁ…………提督も気ぃ使ってんのにな。」
そういえば、俺の初陣の時に、加賀さんが質問してたっけな。
「別に仲が悪いのは良いけどさ、訓練や実戦に持ち込まないで欲しいけど…………あの頑固者どもだしなぁ。」
木曾は遠い目をしながらそう言った。
「逆にさ、ほぼ全員と仲のいいやつとか居ねぇかな?」
俺がそう言うと、木曾は「うーん…………そうだなぁ…………。」と、腕くみして悩み始めた。いや、リヤカーは引けよ重いだろ。
「あ、皐月とかは誰とでも話せるな。」
皐月?
「皐月ってーと、あの駆逐艦で僕っ子の?」
つーかこの鎮守府オレっ子僕っ子多いな。四、五人は居るぞ。
「あいつはなー、なんだろ、魔性の女とでも言おうか…………とにかく、一度話してみることをオススメするぜ。」
木曾がこう言う位だ。いい奴なんだろう。
「因みに、木曾から言わせればどんな感じなんだ?」
俺が興味本位で聞くと、木曾はこう答えた。
「初めて萌え死にそうになった。」
意味わからん。
「しっかし、コイツらよく寝てるなー。今なら何しても起きないんじゃね?」
木曾は話を変えるようにそう言うと、後ろを向いて寝ている時雨の頬っぺたをつついた。いやだからリヤカー持てってば。
「正直、俺たちも半分酔ってるからな。朝起きたら忘れてるかもしれん。」
実のところ、表向きはかなり冷静にしているつもりだが、もうあそこの店の名前を忘れてる。なんだったっけ?
「ほー、そうかー、忘れそうかー。」
すると、木曾はニヤリと笑った。
―自室―
「…………ん、あれ?」
俺が目を覚ますと、そこはいつもの自分の部屋だった。
「あれ、確か…………木曾とリヤカー引いてて…………あれ、覚えてねぇや。」
でも、ここに居るってことは、帰ってこれたってことだろう。
「っかしーなー。あそこまでは記憶あんのに…………ま、いっか。」
俺は切り替えるように時計を見た。いつもの時間だった。
「さてと、走りに行くかな。」
俺はいつも通り、ベッドから立ち上がって、クローゼットの前に行こうとした。すると、机の上にメモがあることに気付いた。
「ん?」
表には、『By 木曾』と書かれていた。
俺はそのメモを取り、裏を見た。
『旨かったぜ』
「???」
酒のことかな、と思って、俺はそのメモを机の上に戻した。
その日、木曾は珍しく風邪を引いた。
後書き
読んでくれてありがとうございます。なんとなんと、このサイトでは初めて感想を貰いました。やはり、『初めて』と言うものはなんでも嬉しいものです。『初めての口づけ』とか(そのまま書くのには抵抗がありました。)因みに、僕は恋人すら…………おっと、誰か来たようだ。
それでは、また次回。
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