| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四十六話  VS AIMバースト



「御坂さん!」

 俺は御坂さんの近くに駆け寄って声を掛けた。今現在、御坂さんがAIMバーストと戦っているというわけでは無いので話しかけても大丈夫である。

「あ、神代さん。初春さんは?」

「アンチスキルの人と一緒にレベルアッパー解除プログラムを流すために移動してる」

 俺の方に振り返った御坂さんが聞いてくるので簡単に説明した。

「そう。それならアレはどうするの?」

「放っておいても害が無いなら良かったんだけど……向こうにある施設って何か知ってる?」

 アニメの時とは何故かスタンスの違う御坂さんが聞いてくるので、「戦いたいんじゃ無いの?」という言葉を飲み込みつつ、御坂さんに前提知識があるのかどうかを確認する。

「いや、知らないけど……」

 一度御坂さんはこの近辺に来ているはずなのだが、やはり覚えて無かったようだ。

「あれ、原子力研究施設なんだってさ」

「なっ! まずいじゃないのそれ」

 俺が前提知識を教えると御坂さんは急に慌て始める。まあ、本当は俺も急いだ方が良かったのだが、前提知識だけはちゃんと教えておかないと後で大変なことになる可能性があるのだ。

「そうなんだよ……ねっ!」

「ちょっ!」

 御坂さんへ答えるついでに、俺はこれで少しでも足止めが出来るのでは無いかと考えてAIMバーストを攻撃してみる。一応、俺はレベルアッパーを使って木山先生と同等のマルチスキルになっているという設定なので、使ったのはRPG系のゲームや小説などで標準装備されているファイアーボールだ。ただ、普通に投げても届かない距離に居るので、掌に浮かべたファイアーボールの前にAIMバーストへ向けた筒状の結界を張り、中を真空にした後でファイアーボールのある入り口側を解放してやると、凄い勢いで中に吸い込まれていき、出口側の結界を中から外への一方通行(いっぽうつうこう)――学園都市第一位の一方通行(アクセラレーター)のことではない――に設定しておけばファイアーボールの高速射出装置になるわけである。

「おわっと!」

「何やってんのよ! アンタはっ!」

 AIMバーストは一時的に止まったようだが、即座に無数の反撃が来て俺は慌てて回避する。御坂さんの方にはあまり攻撃が行かなかったらしく、余裕で躱しつつ俺に悪態をついていた。

「いやー、向こうに行かせないためには攻撃するのが一番じゃん」

「そうかもしれないけど……」

 思わず黄泉川さんっぽい言葉遣いになりつつ言い訳をしてみると、御坂さんが呆れたように返してくる。確か銀行強盗事件の時に黄泉川さんから相当絞られていた御坂さんは、この言葉遣いに嫌悪感というか苦手意識みたいな物があるらしい。

「やっぱりすぐ向こうに向かうみたいだね」

「そうね。原子力施設に向かうなんてどんな怪獣映画よっ!」

 反撃の後、反撃の効果があったかどうかの確認すらせずにAIMバーストは原子力施設方向へと動き出す。どうやら攻撃された分だけの反撃をすればそれで終わりらしい。御坂さんの台詞をアニメでも言ってたなぁと思いながら聞きつつ、AIMバーストを高速射出ファイアーボールで攻撃する。

「確かに。怪獣映画っぽいけどっ、アイツの目的はっ、原子力施設じゃ無くてっ、その向こうだとっ、思うんだよねっ!」

 AIMバーストからの反撃を避けながら俺の思っていたことを御坂さんに伝える。確かに怪獣映画なら放射能を浴びて生まれた怪獣が原子力施設へ向かうのも頷けるが、AIMバーストは放射能を浴びて生まれたわけでは無いので原子力施設へ向かう理由が無いのだ。

「どういう事?」

 やっぱり分からないようで、御坂さんが聞いてくる。

「あの原子力施設の向こう側にっ、俺がレベルアッパーを聞かされた実験施設がっ、あるんだよっ!」

 あの原子力研究施設は、俺が最初の暗部活動をした時に行った施設の、裏山の向こう側にあった施設である。というわけで、こっち側から見れば原子力研究施設の裏山の向こう側は、レベルアッパー関連施設だった場所になるのである。

「じゃー、アイツはそこに向かってるって事?」

 怪獣映画の怪獣が原子力施設へ向かう理由を知っていたかどうかは分からないが、御坂さんもある程度納得してくれたようだ。俺に聞き返してくるのもほぼ確認みたいな物だろう。因みに、今でも俺と御坂さんはAIMバーストにちょこちょこと攻撃を仕掛けては反撃をされ、一緒に反撃を躱すのを繰り返している。

「可能性としてはさぁ、原子力施設に向かってるって言うよりもっ、レベルアッパー関連施設に向かってるって言う方がっ、高いと思うんだけどねぇ」

 俺も完璧な確証が有っての話では無いのでこのように説明するしか無いのだ。AIMバーストに聞く事が出来れば確かな答えがあるのかもしれないが、AIM拡散力場の集合体では答えようが無いだろうから確かな答えを知ることは絶対に無いだろう。あー、でも風斬さんなら答えられるかな。

「まあ、確かにそうよね」

 一応御坂さんも納得してくれたようなので本題に入る。

「けど、さっきから攻撃しても攻撃してもっ、足を止めるだけでこっちに向かってこないからっ、だんだん離れて行っててそろそろ攻撃の範囲から外れそうだっ!」

「そうね。私もそろそろキツイわねっ!」

 俺のレベル4設定での攻撃範囲と御坂さんの電撃の有効範囲はほぼ同じらしい。確かレールガンは50m程度でコインが燃え尽きるという設定だったはずなので、既に射程圏外である。

「じゃ、移動しますか」

「簡単に言ってくれるけど、あれに追いつくのは大変よ?」

 俺が簡単に言うのを納得できないのか、御坂さんはAIMバーストを親指で指さしながら聞いてくる。どうやら御坂さんは俺の能力のことを完全に失念しているようだ。

「大丈夫、方法はある。レイ・ウィング!」

 俺はそう言うと御坂さんを抱え上げて高速道路から飛び降りる。

「え!? ちょっ!! きゃあぁ~~~っ!!」

 御坂さんが驚いて悲鳴を上げるが、レイ・ウィングは高さと飛行速度が反比例するので地面すれすれを飛んだ方がスピードを出せるのである。というわけで俺は今、地上1mぐらいの高さを200km/h程度の速度で飛行している。

「白井さんに知られたら消されるかも知らんね」

 因みに俺は今、御坂さんをお姫様だっこしている状態で飛んでいて、御坂さんからはガッツリと抱きつかれている。白井さんが見れば暴走間違い無しの状況な訳である。

「いくら黒子でもそんなことは……するかも知れないわね……」

 即座に否定しようとしたものの、白井さんの行動原理をよく知る御坂さんは結局否定しきれないと考えたようだ。なお、俺の周囲には結界が張ってあるので会話するのに問題は無い。

「あら、否定しないんだ。まあ、白井さんに殺されそうになったら返り討ちで半殺し……いや、九割九分九厘九毛殺しぐらいしとくわ」

「それって一万分の一しか生きてないじゃない」

 俺が冗談半分で返り討ちとか言ってみると、九割九分九厘九毛がちゃんと分かっているようで、御坂さんから的確なツッコミを貰った。

「あの寮監さんの折檻でも堪えてない白井さんなら、九割九分九厘九毛ぐらい殺しても大丈夫な気がするんだよね」

「……まあ、確かに」

 AIMバーストのすぐ近くまで飛んで来て、御坂さんを降ろしながら言うと少し考えてから肯定していた。寮監さんの話は御坂さんに対して説得力を大幅に向上させる効果があったようである。

「そんじゃー、始めますかっ!」

 ある程度御坂さんとの距離を置いて、俺は言うと同時にAIMバーストへ向かってファイアーボールを投げつける。多少距離があったさっきまでと違って今度は即座に触手の反撃が返ってくる。まあ、それでも避けるのに特に苦労は無い。

「私だって居ることを忘れて貰っちゃ困るわねっ!」

 俺が反撃を避けている時に御坂さんも電撃を繰り出す。

「そうは問屋が卸さない! っと」

 御坂さんに対しても触手での反撃があるが、それを俺はエアカッターで切断してやる。すると今度は空中に氷の塊を作って飛ばしてきた。

「私を無視してんじゃないわよっ!」

 俺が氷の塊をひょいひょいと避けている頃、御坂さんは砂鉄の剣で戦い始めた。というか、見た感じ砂鉄の剣と言うよりも砂鉄の鞭みたいである。

「ストーンブラスト!」

「これでもくらえっ!」

「アイスジャベリン!」

「これならどうだっ!」

 AIMバーストから反撃は来るものの、それを躱しつつ俺と御坂さんで交互に攻撃を繰り出す。そうこうしている内に、どこからか変な音が鳴り始めた。何となくレベルアッパーと似た感じの音なので、恐らくレベルアッパー解除プログラムなのだろう。

「おっ、初春さんやってくれたんだね! ベギラマ!」

 アニメの時とは違って初春さんが攻撃されることも無かったので、順調に事が運んだようである。

「この音が例のレベルアッパー解除なんたらってやつなの? そいやっ!」

「うん、多分そうだよ。レベルアッパーもこんな感じの音だったからね。サンダラ!」

 俺の言葉で察したらしい御坂さんから聞かれて答える。アニメでもこんな音だったはずだし間違いないと思う。

「それなら、これで終わりねっ!!」

「いや、まだだっ!」

 御坂さんが戦闘を終了しようとした所で木山先生から声を掛けられる。思わず振り返ってみると、木山先生はアニメと違って絹旗さんにおんぶされているという何とも締まらない格好だった。

「木山先生が超行かなきゃいけないって言うんで連れてきました」

 俺の視線を感じた絹旗さんが言うと、木山先生はすぐに言葉を続ける。

「ネットワークの破壊には成功したんだろうが、あれはAIM拡散力場を利用して二万人の思念が集合した物だ。今はネットワークが無くなっただけであって、AIMバースト単体でも動けるという可能性は否定できない」

「そんなっ、話が違うじゃない! だったらどうしろって言うのよ!」

 木山先生の言葉に御坂さんが噛み付く。

「俺の記憶が正しければ、ネットワークを破壊すればアレを何とか『出来るかも知れない』って話だったと思うんだけど……」

「それじゃー、私達の今までの苦労は何だったのよ!」

 俺が元の話を持ってくると御坂さんが俺にも噛み付いてくる。

「アレを原子力施設に近づけさせないため」

 俺は「いやいや、御坂さんはそんなに苦労してないでしょ」という言葉を飲み込みつつ冷静に返す。

「あー……そうだったわね……。じゃー、また一からやり直し?」

「まあ、そうなるかな。やったね、御坂さん! まだまだ思う存分戦えるよ!」

 なんだか面倒くさそうな御坂さんに対して、俺が少し煽ってみた。

「何でそうなるのよ! 私をまるでバトルジャンキーみたいにっ!」

 御坂さんが言い返してきたとたん、周囲の空気が凍った。何故かAIMバーストまでもが動きを止めたのである。

「えっ……違ったの?」

「超マジですか……?」

「ふむ、単に認めたくないだけなのか、それとも自分では気づいていないのか」

 俺と絹旗さんが何とか言葉を絞り出した後、木山先生が冷静に御坂さんのことを考察していた。木山先生は多分、俺が木山先生と戦おうとした時に、なんだかんだで結局御坂さんが戦うことになった状況を思い起こしているのだろう。

「何でそうなってんのよっ!!」

 俺たちを相手に御坂さんがヒートアップしているが、すぐにAIMバーストとの戦いでヒートアップするのだから問題ないだろう。

「まー、御坂さんがバトルジャンキーなのは揺るぎない事実なんだからそれは確定しておくとして、アレをどうにかする方法って何か思い当たることある?」

 御坂さんは取り敢えずそれとなく置いといて、俺は木山先生にAIMバーストの攻略法が無いかを聞いてみる。

「いや、確定しないでよっ!」

「そうだな、少なくともネットワークが破壊されているのだから、さっきまでのように切断した部分が再生するというようなことは無いだろう。もし力場が固定されていると考えるならば、何かしら核になる物があるということだから、その核を破壊することで何とか出来るかも知れない」

 御坂さんが文句を言っているが、木山先生もしっかりスルーして俺の質問に答える。この辺まで聞き出せれば後はアニメ通りで倒せるはずなので、バトルジャンキーの御坂さんに頑張って貰うとしよう。

「核があるとしたら、やっぱり頭の辺りか中央付近だよねえ」

「そうなるな」

 アニメで核がどの辺にあったかまでは覚えてないが、俺が核のありそうな場所を呟くと木山先生も同意してくれた。

「能力的なことを考えると、私が参加するのは超厳しいですね」

 俺と木山先生の話から、近距離にしか攻撃手段の無い絹旗さんは残念そうに呟く。

「ちょっと!! 無視しないでよっ!!」

「絹旗さんは無差別攻撃が来た時に木山先生を護ってあげて」

「超ラジャーです」

 御坂さんが何か言っているが、今は関係ないので絹旗さんに守りの方を頼んで、俺はAIMバーストと向き合った。

「本気で無視!?」

「寝言につきあってる暇は無いんで」

「寝言!?」

 御坂さんの戯れ言を完全に黙殺して、俺はAIMバーストの後ろから攻撃を仕掛ける。後ろから攻撃するのは、反撃の流れ弾が原子力施設に当たってしまわないように配慮してのことである。

「アンタばっかり攻撃してんじゃないわよっ!」

 AIMバーストの反撃が俺に向かったのを確認してから、御坂さんはAIMバーストに電撃を食らわせる。反撃で木山先生や絹旗さんが巻き添えにならないようにある程度の距離を置いてからの攻撃だ。

「じゃー御坂さん、攻撃は頼んだ。俺は核の位置を調べてみるから」

「分かったわ。でも、私はバトルジャンキーじゃないからね!」

 俺が滝壺さんの能力、能力追跡(AIMストーカー)覚醒させ(再セッティングし)ながら御坂さんに頼むと寝言の続きが返ってきた。

「おーい、御坂さーん、寝るな-、寝たら死ぬぞー」

「ちょっ! 寝言じゃ無いっ! 何で雪山で遭難したみたいになってるのよっ! 確かに今寝たら死ぬかも知れないけどっ! それと棒読みっ!!」

 俺が棒読みでボケると御坂さんは怒濤の連続ツッコミを返してきた。御坂さんにはまだまだ余裕がありそうな感じである。

「いや、バトルジャンキーじゃ無いとか寝言言ってたもんで……ヤバッ! 御坂さんっ!!」

 御坂さんにボケ返そうとした所で俺はAIMバーストの異変を捉えた。麦野さんの能力である原子崩し(メルトダウナー)発射の兆候、しかも複数だ。

「なぁっ!」

 御坂さんが驚きの声を上げる中、俺はすぐさまAIMバーストと俺達の間に空間盾を設置し、当然木山先生と絹旗さんの方面にも設置した。しかし、AIMバーストから発射された原始崩しは上に向かって……

「げっ! 曲げてきたっ!?」
「ちょっ! 何よこれっ!!」

 上方向に発射された原始崩しは、俺の設置した空間盾を飛び越えて俺と御坂さんの方へ集中して向かってきた。どうやら木山先生と絹旗さんはまだ敵だと認定されてないようである。

 俺は自分の居る空間ごと別位相へ移動する。これで周りからはその場(・・・)に居るように見えるのに全然違う空間に居るので、その場(・・・)に向けて攻撃しても俺には全く攻撃が届かなくなるのだ。トリックアートが似たような能力と言えなくもないが、同じ空間内のどこかには居るトリックアートと比べて、全く別の空間内に居るので広範囲攻撃でも絶対に当てられないというのが違う所である。

「このぉっ!!」

 御坂さんの方を見てみると、御坂さんは電子を操って麦のんビームを逸らしている。漫画でしか見てなかった部分なので良く覚えてないが、御坂さんが麦野さんの原子崩しを防ぐ事は出来ていたので、多分同じ方法を取ったのだろう。見ると御坂さんの周りの土は麦のんビームの影響でどんどん抉れていく。

 しばらくして攻撃が止むと、俺は空間を元に戻した。別位相に居る状態では、姿が見えても気配は感じられないし、滝壺さんの能力を使ってAIM拡散力場を観測することも出来ないのだ。

「あの攻撃はキツイわぁー」

「ふぅ」

 御坂さんが一息つくように言う。咄嗟のことで御坂さんを別位相に保護することが出来なかったから俺もほっとした。

「で、どうするの?」

「取り敢えず核の位置だけ探ってみる」

 御坂さんに聞かれて答える。アニメでは、御坂さんが電撃でAIMバーストを全体的に焼いた上で核にレールガンを撃ち込んでいたが、核の位置が分かれば焼くのはその周辺だけで済むと思ったからである。

「また来るわよ!」

「分かってる」

 俺が能力追跡(AIMストーカー)で核の位置を調べようとすると、またもAIMバーストから麦のんビームが飛んで来るが、それを空間盾で防ぎながらAIM拡散力場の流れを見る。

「見つけたっ!」

「どこっ?」

 俺が声に出すとすかさず御坂さんが聞いてくる。

「体のほぼど真ん中」

「分かったわ」

 俺が答えるとすぐに御坂さんはコインを取り出してレールガンの発射準備に入る。

「行くわよ……って、うわっ!」

 御坂さんがコインを弾いて宙に浮かせると同時にAIMバーストから麦のんビームが発射される。結局御坂さんは麦のんビームからの防御に回らざるを得なくなり、弾いたコインは地面に落ちて転がっていった。

「もうっ! 何なのよっ!!」

 御坂さんが文句を言いながら移動する。麦のんビームの影響で足場が不安定になってしまったようだ。

「もう一回行ける?」

「どう言う事?」

 俺が御坂さんの所へ行って尋ねると御坂さんは怪訝そうに聞き返してきた。

「俺が防御するから御坂さんは超電磁砲(レールガン)に専念して欲しいって事」

「分かった、良いわよ!」

 俺は御坂さんに言うと同時に空間盾を頭上に展開する。AIMバーストの攻撃はさっきからずっと麦のんビームばかりで、しかも何故か上に撃っては曲げてくるという物ばかりなのだ。麦野さん本人が麦のんビームを曲げることが出来たかどうかは知らないが、少なくとも通常仕様では直進ビームだったはずである。

「準備オッケー!」

「じゃあ、行くわよっ!」

 俺が声を掛けると御坂さんがレールガンの準備を始める。すぐにAIMバーストから麦のんビームが襲ってくるが、俺の空間盾で難なく防いでいく。

「おっと! 横からも来るかっ!」

 御坂さんがコイントスしてコインが落ち始めようかという時になって、AIMバーストはずっと上にしか発射していなかった麦のんビームを横方向に発射し始めた。それを見た俺はすぐに両サイドにも空間盾を設置する。

「行っけぇーっ!!」

 御坂さんがそう言うと同時に落ちてきたコインがAIMバーストに突き進む。オレンジ色の軌跡を描きながらAIMバーストにコインが吸い込まれると、いきなりAIMバーストの体のコインが抜けた場所から穴が開き始め、その穴の向こうには抜けていったコインとAIMバーストの核と思われる物が見えていた。

 AIMバーストの体の穴から見えているその核が割れて粉々に砕け散ると、AIMバーストは穴の開いた場所から朽ちていき、体が崩壊し始めていた。

「終わった……のかな?」

「多分ね」

 戦いが終わって少し呆然としながら呟いた御坂さんに答える。何事も終わったと思った瞬間が危険だと言うことで、一応俺は周囲を警戒しながらなのだが、AIM拡散力場や気配に異常は見つからない。

「終わったようだな」

「超お疲れ様です」

 しばらく放心状態の御坂さんと一緒に空間盾を維持したまま様子を見ていたが、木山先生と絹旗さんの気配が動き始めて俺達の後ろにやってきたので、空間盾を解除したところで丁度二人から声を掛けられた。

「まぁ、何とか終わったみたいですね」

「ハッ! ま……まあ、準備運動には丁度良かったんじゃ無いかしら。あれなら相手として不足は無いかなー」

 俺が普通に答えると、御坂さんは急に気を持ち直したようで変な受け答えになっていたのだが、この受け答え自体がバトルジャンキーっぽいということに御坂さんは何時か気づくのだろうか。

 
 

 
後書き
お読みいただいた皆様、ありがとうございます。
大変長らくお待たせしました。一応生きてます^^;
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧