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とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
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第四十七話  戦い終わって

 AIMバーストを倒してからしばらくすると、アンチスキルの増援が到着した。

 さすがにアンチスキルと直接対峙するのは避けたいと言うことで、絹旗さんと滝壺さんは表向き麦野さんに早く会いたいと言って一足先に帰っている。

 到着したアンチスキルは怪我人の応急処置や木山先生の拘束をして、救急車や護送車に連れて行くが、アンチスキルの護送車へと乗せられる木山先生の元に、初春さんや御坂さんと一緒に俺も駆けつけた。

「あの! その……これから子供達のことはどうするつもりなの?」

「ふっ……当然諦めるつもりなんて無い、もう一度やり直すさ。刑務所だろうと世界の果てだろうと、私の頭脳がある限り子供達を救う方法など幾らでも考え続けられるのだからな」

 木山先生の記憶にあった子供達を心配する御坂さんに対して、なかなか格好良い答えを言い放つ木山先生。しかし、木山先生はそれだけでは止まらなかった。

「但し、今後も私は私の方法でしか進むつもりは無いからな。気に入らなければその時はまた、邪魔しに来たまえ」

「……やれやれ、懲りない先生だわ」

 逮捕されたばかりだというのに既に次の犯行予告とも取れる発言をする木山先生に、声に出した御坂さんを始め俺達三人ともがやれやれといった表情になる。

 黄泉川さんやその他の怪我をしたアンチスキルの人たちも救急車で運ばれ、木山先生も護送車で運ばれていったが、それと入れ替わるようにタクシーがやってきた。

「お姉さっ……まぁー!!」

「あっ、黒ぼへっ!」

 タクシーから降りてきた白井さんは、そのままテレポートで御坂さんの胸に飛び込む。御坂さんは白井さんの名前を呼ぼうとしたようだけど、飛び込んできた白井さんに押し倒されていた。

「お姉様! よくぞご無事でっ!」

「いや、アンタのせいで今まさに無事じゃ無くなったけどね」

 白井さんとしては本当に心配していたのだろうが、傍目から見るとどう見ても芝居がかっているようにしか見えない言葉に、御坂さんが妙に冷静なツッコミを入れている。

「通信が切れてからというもの、黒子はもう心配で心配で居ても立っても居られませんでしたのよ……あっ! お姉様の玉のお肌に傷が……ぐへへっ、幸いお姉様は能力の使いすぎで充電切れを起こしていらっしゃるご様子。ここはこの黒子、お姉様の傷を隅から隅まで舐めて舐めて舐め尽くして治して差し上げますわっ!」

 御坂さんに飛び込んで怪我をさせそうになったとしても、言葉が芝居がかって見えても、白井さんは本当に御坂さんを心配しているのだろうと思っていたのだが、もしかしたら最初から白井さんの変態願望が暴走を始めていたのかも知れない。一応言っておくと、白井さんが見つけた御坂さんの傷は、白井さんが御坂さんへ飛び込んだ際に付いた物である。

「こらっ、やめっ!」

「やっと終わりましたね」

「うん、そうだねぇ」

 御坂さんが必死で白井さんに抵抗している中、初春さんと俺はようやく終わったと言う状況にほっと一息ついていた。

「お姉様、そろそろ年貢の納め時ですわよ。もうお姉様に逃げ道は無いんですの、まな板の鯛のごとくおとなしくなさってくださいな」

「冗談じゃ無いわよっ! 確かにアンタはまな板だけど、そんな物に乗るつもりは無い! ついでに言うと、まな板の鯛じゃ無くてまな板の鯉だっ!」

「うわーすげー、(まご)う事なき変態だー」

「まー、白井さんですからー」

 変態チックな白井さんに対して何気に酷いことを言っている御坂さん的には、対AIMバースト以上の危機ということになるのかも知れないが、俺と初春さんは既にほのぼのとした日常といった感じで白井さんを見ていた。しかし、その白井さんがふと初春さんの方へと顔を向ける。

「あっ、そう言えば初春。先程病院から連絡がありまして、佐天さんの意識が戻ったらしいですわよ」

「そうですか、良かったぁ」

 白井さんからの情報に初春さんがほっとした表情を浮かべる。当然俺も安堵したわけだが、もう一つ聞いておかなければならないことがある。

「そっか、良かった。それで、麦野さんの方は?」

「そちらはまだ分かりませんの。それでもレベルアッパー使用者が次々と意識を取り戻しているようですから、恐らくは麦野さんも既に意識は戻っているかと……あっ!」

 俺が聞いたことにも白井さんは答えてくれるが、予想を口にした所で麦野さんだけは普通のレベルアッパー使用者とは違うことを思い出したようだ。

「麦野さんっていうのは?」

 初春さんが麦野さんについて聞いてくる。そう言えば絹旗さんや滝壺さんを紹介した時には麦野さんの話をしてなかったので、初春さんは知らないのだ。

「ウチと一緒にレベルアッパーを聞かされてた人なんだけど、絹旗さんや滝壺さんの仲間で、今は倒れて入院中。一応、俺と絹旗さん達がやってたレベルアッパー対策もちゃんと出来てたはずなんだけど、どうやら木山先生がやってたみたいにデュアルスキルになれないかって色々やってたっぽいから、それで倒れたんだと思われる人」

「そ……そうなんですか……」

 俺が麦野さんについて簡単に説明すると初春さんは微妙な表情で納得していた。まあ、デュアルスキル云々(うんぬん)と言われれば、そんな表情にもなってしまうのだろう。

「だから、解除プログラムだけで助かるかどうかっていうのが微妙なんだよねー」

「そうですねぇ」

「ふぃぎゅぉゎー!!」

 俺と初春さんで話していると、白井さんはまた御坂さんに対する変態行為を再開し、少しばかり回復していた御坂さんに電撃を浴びせられたようだ。

「それじゃ、佐天さんの病院にでも行きますか」

 白井さんの変態行為にも一段落付いたようなので俺が声を掛ける。

「そうですね」

「そうね。行くわよ! 黒子」

「はひっ、おでえざば……」

 こうして俺達は白井さんが乗ってきたタクシーに乗って、佐天さんの病院へ向かうことになったのである。





「佐天さん!」

 病院へ到着すると、初春さんは普段の初春さんから考えられないほどの速度で佐天さんの病室に向かって駆け出す。

「急ぎたい気持ちは分かるけど、病院の中で走っちゃ駄目だよ」

「あっ……はい。あ、すみません」

 なんか前にも似たようなことを言った記憶がある俺の言葉で、何とか止まってくれた初春さんが周囲の人たちに謝った。周囲には走ってくる初春さんを見て松葉杖をついているにもかかわらず慌てて避けようとした人なども居たのである。

「佐天さ……あれ? 佐天さんは?」

 病室に飛び込むなり佐天さんのベッドを見た初春さんが声を上げる。別に布団を頭からかぶってて姿が見えないとかではなく、どう見てもベッドの上には居ないのである。

「ういはるん、涙子なら外の空気吸いに出てるけど」

「お、皆意識戻ったんだね。体の方はおかしな所無い?」

 佐天さんと一緒の病室だった三人の内、初春さんの疑問にはむーちゃんが答えてくれたので俺は皆の体調を聞いてみる。

「うん、大丈夫。ところで、神代君の方は何ともなかったの?」

 三人とも特に問題は無いようだ。まあ、アニメでは恐らく最初の頃に倒れたと思われる量子変速(シンクロトロン)の鎖帷子っぽい名前の人も、後の講習は受けてたはずだし、アニメで木山先生が初春さんに言っていた通り、ほぼ元に戻ったと思って良いのだろう。まあ、漫画の方で初春さんが指摘していたように、お風呂の中とか運転中とかに意識を失った人はその限りで無いかも知れないが……。

「俺は大丈夫だったよ。それどころかレベルアッパー制作者の人がやってたデュアルスキルっぽいことまで出来たし」

『おぉー、凄いねぇ』

「やっぱり神代君は最初からレベルが高いもんねぇ」

「あー、でも元がレベル5の人も倒れてるけどね」

『ええっ!』

 俺の答えに三人が一応驚いたようなリアクションを取り、その後で代表してマコちんが納得したっぽいことを言うが、麦野さんのことを一応名前を出さずに教える。どうも俺のクラスの人たちは、俺が元々レベル4という以外にも気配察知とかその他色々と知っているので、何か凄いことをやっても「まあ、神代だからなぁ」で勝手に済ませてしまう癖があるのだ。なので、俺がデュアルスキルっぽいことをしたという情報よりも、レベル5の人が倒れたという追加した情報の方に驚いていたのは俺としても微妙な所である。

「俺とあと二人かな、レベルアッパー対策してた人だけは無事だったけど、対策してなかった人とか対策できなかった人とか対策したくせにやめちゃった人は倒れたよ」

『へー、そうなんだ』

 俺が更に追加で教えた情報には三人とも微妙な表情で声をそろえる。どうやら、もう脳の理解が追いついてこなくなったようだ。

「それで、佐天さんはどこ行ったか分かる?」

「さあ、外に出たんだろうってぐらいしか……」

 これ以上説明を重ねても理解して貰えそうに無いので、俺が本題の佐天さんの行き先について尋ねると、三人ともはっきりとした行き先までは知らないようである。

「じゃあ、探して来ますね」

「うん。あ、ういはるん」

 初春さんが病室から出ようとした所でむーちゃんに呼び止められる。

「はい」

「涙子は何も悪くないんだ。レベルアッパー持ってるのを知って私達が無理矢理頼んだんだから! 私達が勝手に涙子を巻き込んだだけなんだからっ!」

 初春さんが振り向くとむーちゃんは泣きそうになりながら佐天さんをかばっていた。少なくともアニメでの展開でもそうだったはずだし、更に今までの展開を加味すれば佐天さんが自分から使おうとするのは考えられないので、この三人が何らかの後押しをしたのだろう。そして、それに対して責任を感じているのだと思う。

「そうだよ! 涙子は私達につきあってくれただけなんだ……だから、涙子は責めないでっ!」

 アケミさんも初春さんに必死で佐天さんには非が無いことを伝え、その横ではマコちんも大きく首を縦に振っている。

「アケミさん、むーちゃん、マコちん。うん、分かってますよ。アケミさんもむーちゃんもマコちんも、そして佐天さんも、誰も悪くないです!」

『初春……』

 初春さんもこの三人のことをよく分かっているのだろう。誰も悪くないという宣言に三人は感動して初春さんを見つめていた。

「じゃあ、ちょっと行ってきます」

『うん、行ってらっしゃい』

 三人に見送られて初春さんは病室を出ると、気を利かせて病室の外で待っていた御坂さん達と合流して、佐天さんを探し始めようとする。

「あー、俺はもうちょっとあの三人と話してくる」

「分かりました」

「じゃー、佐天さん見つけたらすぐ戻るわ」

 俺が初春さんに話しかけると、初春さんと御坂さんがすぐに頷いてくれた。

「神代君は行かないの?」

「うん、ちょっと話したいことがあって」

 俺が病室に戻るとアケミさんが聞いてくるので答える。

「何? 説教?」

 アケミさんが面倒臭そうに俺のことを見ているが、俺は佐天さんに関して少し伝えておかなければならないことがあるのだ。

「いや、佐天さんには随分前に話してるんだけど、レベルアッパーってのが何をするのか分かってなかった時期にある仮説を立てたんだ」

「うん」

 俺が話し始めるとマコちんが最初の相槌を打ってくれた。

「もし、レベルアッパーが脳に過剰演算をさせることでレベルを上げてるんだとしたら、って最初に考えてたんだけど、もしそうだったのなら今まで倒れてた人って下手すると今頃脳の活動が停止してるかも知れなかったんだよね」

『うっ!』

 まずは暗に死んでいたかも知れないよと教える。三人とも胸を押さえているが、まあ良いだろう。

「佐天さんに話したたとえ話だけど……能力そのものの強さを光の明るさとして、各個人が使える能力の限界値を電球の規格、演算の速度を電力にたとえると、個人の限界能力が豆電球の人にレベルアッパーで家庭用100ボルトとか、もしかしたらナイター照明用の電流を流した時にどうなるのかってね」

「そ……それは……」

 御坂さんと一緒の時にしたたとえ話を出すと、ある程度実感が湧いてきたようだ。

「その上で、俺は佐天さんにそれを知っても使いたいって思うなら止めないよって言ったんだ。だから、佐天さんはちゃんと覚悟があって使ったんだと思ってる」

「そっか、だから涙子は……」

「そうだったんだね……」

 レベルアッパーを初春さんに送った時にした話をすると、三人とも何か納得したようでうんうんと頷いていた。

「涙子から危ないかもしれないって事は聞いてたんだ。でも、どうしてもレベルを上げたいと思って……」

「倒れた人も居るっぽいって話は聞いたんだ。でも、そんなのごく僅かな確率だとしか思ってなかった……」

「涙子が何回も本当に使うのかって確認してきて……最後に後悔はしないよねって聞いたんだ……。いつもの涙子からは考えられないくらい真剣な表情だった」

「それでも私達は涙子ほど真剣に考えて無くって……どうしても使いたいって言ったら涙子が分かったそれなら私も使うって……」

「それで私達が能力を使えるようになって、涙子も使えるようになってて、アケミなんか想像以上に凄い能力使えてて……でも、いきなり倒れて……」

「そう言えば、あの時の涙子は冷静だったよね。すぐに救急車呼んで、私達への指示も的確で、すぐに私達も倒れちゃったからその後どうしたのか知らないけど……」

 俺の話が終わった後は三人が代わる代わる独白をしていく。話を聞く限り、やはり佐天さんはしっかりと自分で覚悟を決めてレベルアッパーを使ったようだ。それに、この三人にも佐天さんの覚悟は分かったようなので、後は少しだけ後押しがあれば大丈夫だろう。

「そうだったんだね。まー、それなら佐天さんには申し訳ないって思うんじゃ無くて、自分達の事を考えてくれたんだって感謝すれば良いんじゃ無いかな」

「うん、そうだね」

「神代君、良いこと言うね」

「神代君、上手いこと言うね、座布団一枚!」

「いや、上手いことは言ってないだろっ!」

「ぷっ、あはははっ」

 俺の言葉にマコちんは納得してくれて、アケミさんは褒めてくれて、むーちゃんが何故かアケミさんのマネをしながらボケて、それに俺がツッコミを入れると、病室内に笑い声が響き始める。この病室に他の人も居るのなら静かにしないといけないのかも知れないが、佐天さんも含めた四人用の病室みたいなので多分大丈夫だろう。

「あ、そうそう。さっきの話、脳に過剰演算させるんじゃなくて他人の演算能力を使ってるだけだったから、レベルアッパーで能力を使えた人は自分の演算能力を上げれば同じように使えるようになるはずだよ」

『マジでっ!?』

 確か禁書の方では最初から誰がどのくらいのレベルになるかが分かってるみたいな表記があったはずだけど、そういうリストがあると分かっただけでこの三人や佐天さんがレベル0で終わると断定された話は無かったはずなので、これで少しはやる気になって貰えただろうか。一応、後の講習の話ではレベル0のままだけど少しだけ数値が上昇していると言っていたはずだし……。

 話が終わって俺も佐天さんを探しに行くため、取り敢えず屋上辺りの気配を探ってみる。アニメとの違いは無いようで屋上に佐天さんの気配があり、初春さんや御坂さん達もその場に居るようである。





「その辺はともかく、取り敢えず、たっだいまぁー!」

 俺が屋上まで上がると、丁度佐天さんが初春さんのスカートを捲っている所だった。俺はどうやら初春さん達と別の階段で上がってきたらしく、俺の居る場所は佐天さんの後ろ側、初春さんのパンツがよく見える位置取りである。

「きゃー!! 何するんですかっ! 佐天さん!」

「もうすっかりいつも通りだねぇ」

「こんないつも通りなんていりませんっ!」

 初春さんの反応に、いつも通りの日常が戻ってきたと思いながら佐天さんの後ろから声を掛けると、初春さんからの反論が返ってきた。

「神代君……」

 佐天さんが振り返る。少し申し訳なさそうな、それでいてすっきりとした表情になっている。確かアニメでは能力よりも大事な物に気がついて能力にはこだわらなくなった場面のはずで、その後も無能力者としての佐天さんにはいくつか見せ場が用意されていたはずである。しかし、だからといって佐天さんに能力者になるという夢を諦めて貰いたくは無いし、少なくともレベルアッパーの使用で佐天さんにも能力があることが分かっているのだ。

「で、どうだった? 能力を使ってみた感想は」

「そ……それは……」

 俺が尋ねると、やはりレベルアッパーを使ったことに後ろめたさがあったのか、佐天さんは言葉に詰まる。

「一応、使うことは出来たんでしょ?」

「うん、まあ」

 一応アケミさん達から聞いているので聞いてみると、やや気まずそうにうつむきながらも答えてくれた。

「じゃー、佐天さんにもそれだけの資質はあるって事だよ」

「え?」

 俺が言いたいことを言うと、佐天さんは顔を上げてこっちを見た。

「前に話したたとえ話、佐天さんの電球は少なくともそれだけ光る力があるんだから、後は演算能力っていう電力を上手く供給できれば同じように光らせることが出来るはずだよ。レベルアッパーで使ってたのは他人の演算能力だけなんだから」

「そ……そっか……」

 アケミさん達に伝えたことを佐天さんにも伝える。佐天さんはそこまで考えてなかったようで驚きながらも少し嬉しそうである。

「まー、その演算能力をどうやって上げればいいかっていうのが問題なんだけどねー」

「そうなんだよねぇ」

 俺が問題点についても指摘すると佐天さんも苦笑いになる。まあ、それでも今の佐天さんに悲壮感は無い。

「取り敢えず、俺が言えるのは“どれだけ努力をするか”じゃなく“どんな努力をするか”って事だね」

「“どんな努力”って?」

 本当ならこの辺のことはアケミさん達も一緒の時に説明した方が良いのだが、話の流れで言ってしまった以上は説明した方が良いだろう。

「例えば筋力をつけるにはどんな努力をすれば良いかってだいたい分かると思うけど、能力っていうか演算能力をつけるにはどうしたら良いのかっていうのは、まだはっきりと分かってないんだよね。まー、能力そのものにしても、パーソナルリアリティが大事だっていうことを教えてるだけで、パーソナルリアリティそのものも個人個人で全然違うから鍛え方だって全然違うことが分かってる。だから、これからは色々なことをやって効果がありそうなトレーニングを見つけることが目標だね」

「結局は運……みたいな?」

 希望を持たせた割に、結局は今までとそれほど変わらない状態に追い込んでしまったかも知れないが、能力が使えるようになるということを“夢”ではなく“実現可能な現実”として捉えて貰わなければならない。

「そうだね。まー、その運が掴めるかどうかってのは努力次第なわけだけどね。逆に運が良ければ御坂さん並みに上がる可能性もあるかもよ?」

「流石にそれは……」

 完全に冗談とは言い切れないが、ほぼ実現は難しいと思われる可能性を示してみる。まあ、言ってみれば10万ぐらいの給料を貰うために働かなければならない話の中で、宝くじで1億当たったらどうするか、みたいな話を混ぜたわけである。

「まーねー。可能性がゼロって訳じゃないけど、ほぼゼロみたいな感じだからねぇ。それよりも現実的な所なら、レベルアッパーを使った時に使えた程度の能力だよね。少なくとも演算能力さえ有れば使えることは分かってるんだから」

「うん、そうだね。よしっ! 頑張ってみるよ」

 こうしてまた“現実的”な部分に戻ってくると、佐天さんはやる気が出たようである。

 
 

 
後書き
お読みいただいた皆様ありがとうございます。
余り説明がくどくならないようにと思って書いてはみたのですが、逆に気持ちの変化が唐突になってしまったかもしれません。
 
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