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真田十勇士

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巻ノ百四 伊予へその六

「そうする、そして権勢や官位もじゃ」
「そちらもじゃな」
「幕府に入ればよい、それにわしが殿とお会いした頃もう徳川家は立派なものじゃった」
「多くの国を治めてな」
「天下でも二番か三番の権勢じゃった」
 その時既にというのだ。
「大御所殿も立派な方、しかしな」
「お主達の主にはじゃな」
「殿以上の方はおられぬわ」
 まさにという返事だった。
「見事なお心を持たれお強く学もお持ちじゃ」
「天下一の武士じゃな」
「だからじゃ」 
 それでというのだ。
「わし等は他のどなたにも仕えぬ」
「真田殿だけか」
「そうじゃ」
 猿飛の返事は変わらない、普遍のものがそこにあった。
「殿以上の方は天下におられぬが故な」
「そういうことじゃな」
「祖父殿にそう言ってもらって嬉しかったわ」
 猿飛は笑みを浮かべそうして大介に告げた。
「これ以上までになくな」
「ははは、そう言うか」
「駄目か」
「それでよい、大きな者になったな」
 孫のその顔を見ての言葉だ。
「天下の豪傑に相応しいまでにな」
「そうも言ってくれるか」
「流石我が孫いやわしよりも遥かにじゃ」
 野山を賭ける中で嬉しそうな、温かい笑みを浮かべてそのうえで孫に対して言うのだった。
「大きな者になったわ」
「いやいや、わしはな」
「謙遜か。お主らしくない」
「大きくない、殿なぞな」
 彼もまた幸村を見て言った。
「わしなぞとてもじゃ」
「比べものにならぬまでにか」
「大きな方じゃ、大きな方とはな」 
 それこそというのだ。
「殿の様な方でな」
「お主はか」
「小さいわ」
 やはり笑って言うのだった。
「とても敵わぬわ」
「真田殿にはか」
「殿の器は大きい、お人柄だけでなくな」
「だからお主達も長い間じゃな」
「お仕えしておる、一度も抜けようと考えたことはない」
 これも十人全員だ。
「それこそな」
「そうか、ならそうせよ」
「それではな」
「そして今もじゃ」
「猿を超えるぞ」
「そうせよ、猿になりな」
 そしてそこからというのだ。
「猿を超えるのじゃ」
「そう励むぞ、そして猿を超えればか」
「その時はじゃ」
 まさにというのだ。
「免許皆伝じゃ」
「その時か」
「猿を超えればな」
「そうか、免許皆伝か」
「そうじゃ」
 そうなるというのだ。
「だから。よいな」
「猿になり猿を超える、か」
「そうなるのじゃ、そうなった時はじゃ」
「わしもじゃな」
「今も充分過ぎる程強いが」
 まさに一騎当千と言えるまでにだ。
「しかしじゃ」
「これまで以上にじゃな」
「さらに強くなるわ」
「だからじゃな」
「猿を超えよ、よいな」
「わかった、ではな」
 猿飛は祖父そして幸村と共に山をまさに猿の様に動いていった。そうして修行を続けていてだ。
 武術の稽古もした、剣や手裏剣を使いだ。猿飛は己の祖父に言った。 
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