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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
  第13話 碁界鳴動

H13年初夏 side-Kumiko

 私は毎週月曜日に発売される週刊碁の記事を読む。

 一面には乃木九段を破り十段に続き碁聖を獲得した緒方二冠の記事。対局後にメガネを外した姿の写真が載っている。

 来月始まる名人戦は一柳棋聖と緒方二冠に並ぶ若手の畑中九段の戦い。
 新春に行われた棋聖戦と同じ人物の対戦になったので、再び一柳棋聖が畑中九段を跳ね除けるか、畑中九段がリベンジを果たすか注目されている。

 私は今まであまり囲碁に興味が無かったから知らなかったけど、囲碁のトッププロはキャラクターが立ってる人が多い気がする。
 小池君は緒方二冠のファンでカッコいいと言って憧れてる。一柳棋聖は落語家のような饒舌な口調で解説が面白いと評判らしい。

 進藤君は復帰してから連勝中。あかりもすごく喜んでいた。

 私が大ファンになった奈瀬女流は天元戦の本戦トーナメントに進出。凄いっ!!

 本因坊リーグ入りを果たした塔矢三段に次ぐ快挙で囲碁界の新しい波として記者のコラムで紹介されている。

 しかも女流棋戦でも勝ち進んでいて女流最強の座も近いと言われている。カッコいい!!

 ホントに憧れちゃうな――。

 今年のプロ試験本戦の本命は伊角、門脇、そして院生1位の和谷の三名に本田や小宮、足立が続く……と書かれている。

 院生は年齢制限があって18歳まで、プロ試験の年齢制限は現在26歳。昔は30歳だったらしいけど、26歳になって、また23歳に引き下げられると言われている。

 著名な囲碁棋士の大半が14歳前後に入段しているというのが囲碁の世界。

 私は桜が丘高校に進学しようと思っている。部員じゃないけど現役院生の人がいて時々教えてくれるらしい。

 先日あかりと一緒に行った囲碁サロンで出会った高校囲碁部の女性部長に色々とお話を聞くことができた。

 盤上に初手天元を打ちながら「囲碁とは、宇宙である」っていったときのインパクトが強すぎて名前を忘れてしまったのが残念。

 あ、イベント情報の囲碁まつりに奈瀬女流が来るって書いてある!

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H13年晩夏 

 楊海からのメールを確認する。楊海にはアキラくんの中国語会話の教材づくりを手伝ってもらってる。囲碁用語については僕自身も棋書が翻訳できるように新たに勉強している。
 というかアキラくんの目的意識は凄い。海王中に通いながら対局があるにも関わらず、こちらの用意した多めの課題や宿題もしっかりこなしている。
 僕なんかは社会人になってからと中国にMBA留学したときとか必要にならないと語学力は大きく伸びなかった。人民日報を暗唱したり中国語ラジオを聞いたりして必死になって勉強してHSK最上級合格をしたのは懐かしい記憶だ。

 桐嶋堂という僕の会社が楊海が開発する囲碁プログラムのスポンサーの一つになった。
 また米国の慈善家が囲碁普及のために非営利で運営しているインターネット囲碁対局サーバの立ち上げにも協力した。
 こちらは各国の有志がボランティアとして協力することで成り立っているが、桐嶋堂がスポンサードし桐嶋堂囲碁サーバ(kirishimado Go Sever, KGS)という名称で運営されている。
 KGSでは棋譜データを収集しており、将来的には六段以上のプレイヤーによる対戦棋譜を囲碁AIの学習データに用いるつもりだ。
 またAiの対局の場をWWWGoからKGSに移すことを考えている。このまま対策も無しにAiの対局を続けるとWWWGoではサーバが落ちる可能性があるからだ。
 大学を卒業したら海外向け囲碁書籍出版や販売事業も考えている。というわけで今や大学生社長である。

 塔矢行洋が中国リーグ、北京チームと契約を結び国際棋戦へと活躍を広げたが、雲南チームに所属する楊海が派手に活動を行っている和-Ai-思い切ったコンタクトを取って来た。
 面白い内容だったので返事をしてお互いに内容のすり合わせをしているところだ。中国棋院からの反応によっては原作にない戦いの舞台を和-Ai-のために整えることができる。

 炎上案件はついに韓国棋院が公式で動き始めた。

 韓国棋院が公式サイトで和-Ai-に対して正々堂々と正体を現して欲しいと発表。
 これに対して和-Ai-は自らの公式サイトで自分に勝ったら姿を現すと豪語し返答。

 プロレスのマイクパフォーマンスばりのやりとりが双方で交わされる。

 それに乗った英国のブックメーカー(賭け屋)が和-Ai-に勝った棋士に賞金5万ドルを支払うと発表。

 国際棋戦の個人戦優勝賞金や日本の七大タイトル戦の金額には及ばないが、公式棋戦NHN杯の優勝賞金を超える金額が和-Ai-という正体不明の棋士の勝敗に懸けられることとなった。

 韓国棋院の棋士と和-Ai-のKGSサーバでの三番勝負のネット碁対局が決まる。

 対局はコミ7目半の中国ルールを使い、持ち時間は両者3時間。

 韓国側が定先(置石が無し、コミなしで行われるハンデ対局)で構わないと言ってきたので全て和-Ai-が黒番の互先。

 和-Ai-が正体を隠しているため、韓国棋院の棋士も匿名で対局する。勝利したら名前を公表するらしい。

 世界中が注目し韓国棋院は大盤解説の生配信を発表。

 日本棋院にも問い合わせが相次いだが主催や権利元がハッキリしないということで大盤解説などは見合わせた。

 これから原作を超えて囲碁界は大きく動くだろう。 
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