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真田十勇士

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巻ノ百二 百地三太夫その三

「是非共」
「そしてその理由は」
「はい、それはです」
「才蔵が再び天下に出て働く為に」
「それがしの下で他の十勇士達と共に」
「ですな、やはり」
「はい、それでなのですが」
「承知しました」
 百地はすぐに幸村に答えた。
「是非共」
「そう言って頂けますか」
「だからこそ参りました」
 幸村達の前にというのだ。
「そう致しました」
「左様でしたか」
「はい、それでなのですが」
「これよりですな」
「修行といきたいですが」
 ここでだ、百地は一呼吸置いてそれから幸村と霧隠に話した。
「それだけでは足りませぬな」
「はい、やはり」
「それがしがどうして生きていたのか」
「織田家の伊賀攻めで」
 霧隠が百地に言った。
「あの時でと思っていました」
「左様じゃな、しかしじゃ」
「あの伊賀攻めからですか」
「わしは屋敷に火を点けて自害したと見せてな」
「実は、ですか」
「そこから屋敷の中にいた者達を連れてじゃ」
 そしてというのだ。
「逃げ延びていたのじゃ」
「そうだったのですか」
「他にも多くの周りの者達がそうした」
「そうでしたか」
「それで生き残っておってな」
 そしてというのだ。
「わしはここに逃れて暮らしておるのじゃ」
「そうでした」
「今は一人で暮らしておる」
「故郷には」
「うむ、伊賀はもう服部殿のものとなった」
 伊賀者、彼等はというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「わしは隠居してな」
「ここにおられるのですか」
「そうじゃ」
 その通りという返事だった。
「これでわかったか」
「はい、よく」
「そういうことでな」
 百地は弟子に温和な笑みで話した。
「わしはここのおるのじゃ」
「わかりました」
「さて、ではな」
「これよりですな」
「修行じゃが」
「はい、それがしに再び忍術をですな」
「霧の術を軸にな」
 霧隠が最も得意とするこの術をというのだ。
「もう一度教えていくぞ」
「わかり申した」
「うむ、そして免許皆伝までじゃ」
 まさにその時までというのだ。
「授けるぞ」
「お願い申す」
「それでじゃが」
 百地は霧隠にさらに話した。 
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