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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 佐為編(桐嶋和ENDルート)
  第45話 格付け(vs sai second round)

H13年 4月 第3週の土曜日

 奈瀬の後ろで、Ai vs saiの対局を静かに見守る。

 saiの手に対して和-Ai-が珍しく長考する。

「あ、わたしわかった」

 ふと呟いた奈瀬が、和-Ai-より先に“天元の一手”を盤上へと放つ。

 少しの後に白のsaiが投了を告げる。

 その時になって和-Ai-が奈瀬と同じ“天元の一手”を画面に示した。

「私……ね。和-Ai-の手が見えたの。
 和-Ai-先生の声が一度だけ聞こえたことはあったけど……それとは違う」

 興奮して顔を薄っすらと赤く染めた奈瀬がうっとりと呟く。

 よかった。これは必然の対局だった。

 そして間違いなく碁の神様が望んでた対局だったのだろう。
 どうやら僕が元の世界に戻れるキッカケになるであろう一局ができたとことに安堵の息を洩らした。

「よかった。この一局はきっと和-Ai-が奈瀬に見せたかったんだよ」

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H13年5月 憲法記念日 side-Asumi

 4月の最終日に行われたAi vs saiの二度目の直接対決もAiが5目半勝ちで勝利を収めた。
 私は天元戦の予選Cと昨日の大手合い共に勝利を飾り入段から順調に勝ち星を重ねている。

 今日は棋院の和室を借りてプロ棋士たちによる初の和-Ai-研究会が開かれている。
 緒方十段、一柳棋聖という二人のタイトルホルダーの強い頼みを断るなんて出来なかった。
 しかも関西棋院の石橋先生やsaiと対局したことがあるという塔矢アキラまでが来ている。
 進藤も誘ってたんだけど、お祖父ちゃんの家に泥棒が入ったらしく来れなくなったと連絡が入った。

「saiを二度も一蹴したAiが言うまでなく今やネット最強の打ち手だ」

 参加者が頷く。私がAiの黒石を打ち、緒方先生がsaiの白石を打つ。

「このAiの二間ジマリは地に甘く少し損だと考えられてはいませんか?」 塔矢アキラが問う。

「昔から一部の棋士には打たれていたけど……」

「Aiはカタツキを得意としてるねえ」「カタを1回だけ打って手抜き」

「碁は広いので、こう打っても悪くならないのは分かるが……」

「この手順に必然性があるのか分からないところが悩ましいですね」

「この右上を保留した黒の手は新しくはないが珍しいといえる手ですよね」

「Aiは部分的な局面に一切とらわれていないところがすごいねえ」

「この手も厚いオサエだ」

「白のsaiは右辺の位を取りながら黒2子の間を狙っているけど……」

「Aiはsaiの意図を無視するかのように左下への意味深なカカリ」

「ここで白は右下連打の利益を主張している」

「活きるために、この手を打たされたのは少しツライ」

「saiも左下は活きてるとみて更に手抜き」「どちらが得をしているのか?」

「この判断は我々プロにとっても碁で1番難しい」

「Aiが二間トビの隙を狙って堂々の動き出し」「対するsaiも最強の攻撃を仕掛けた」

「黒も強く応戦しているが」「一手ずつ並べてみればどれもが自然な手ばかりだ」

「ここまで進んでみると、左下が厚いため白が助からないことがハッキリしてくる……」

「だが白のsaiも右辺の地が大きいのでフリカワリと考えることもできる」

「ここからの黒のサバキが素晴らしいねー! まずツケで受け方を訊いて」

「saiは眼形を与えないブツカリを選択したが、こちらに受けたときの予定も気になりますね」

「この手は右上を取らせても中央を切れば良しという考えですか……」「なるほど」

「Aiはこのツケでサバける事を見通していると思います」

「ようやく白のsaiも狙いの手を打つが……」「巨大なフリカワリになりましたね」

「Aiはsaiが反撃する前にここまで想定し判断もしていたように思える」

「これで左辺に手がないとは……読み切れるものなのか」「恐ろしくなるヨミの深さだ」

「最後までヨセて228手でAiの黒5目半勝ですか」

「右辺が地になった時点で大勢は決していたが、Aiの強さが際立った一局だった」

「とくにこの右上のサバキの上手さが特に印象的だったねえ」

「ボクはこの碁はsaiが意識的に激しく持っていこうとしている感じを受けました」

「結果はAiが攻めにもシノギにも強さを見せつけたことにはなったが」

「我々でさえ、このAiを相手にしてsaiほどの碁が打てるかとなると……」

「saiとAiは知り合いなのでしょうか?」「……分からん」
 
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