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真田十勇士

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巻ノ百一 錫杖の冴えその十二

「それものう」
「では切支丹も」
「そちらのことも」
「このままですね」
「やっていきましょう」
「そう、このままじゃ」
 変えぬというのだ。
「そうしていく」
「わかり申した」
「さすれば」
 女房達も頷く、そしてだった。
 大坂は切支丹達についても特に変えないことにした、服部はそのことを駿府で聞いて呆れて言った。
「何もわかっておられぬな」
「左様ですな」
「我等も驚いています」
「大坂のそのことを見てです」
「茶々様のそのお言葉をその耳で聞きましたが」
「いや、全くです」
「切支丹のことがわかっておられませぬ」
 そうだとだ、十二神将達も言う。
「他のこともそうですが」
「とかく政に疎いです」
「豊臣家の領内では善政ですが」
「それも片桐殿達あってのこと」
 彼等がそうしたことを仕切っていてこそというのだ。
「しかしです」
「それ以外はです」
「全く出来ませぬ」
「何もかもです」
「わかってもおられませぬ」
「そして切支丹のこともです」
「全くわかっておられませぬ」
「そうじゃな、あれではな」
 服部はこれ以上はないまでに難しい顔で言った。
「下手をすればな」
「戦ですな」
「幕府と豊臣家の」
「それになりますな」
「わしも避けたいと思っておる」
 服部にしてもというのだ。
「それはな、しかしな」
「大坂がああでは」
「相変わらず幕府の話を聞きませぬし」
「このままではです」
「戦は避けらませぬな」
「どうしても」
「ここは少しじゃ」
 服部は今は普通の着物を着ている、その服の袖の中で腕を組みながらそのうえでこう言ったのだった。
「加藤殿にお話をしてもらうか」
「熊本のですか」
「あの方に」
「そうしてもらうか」
 加藤清正、彼にというのだ。
「そしてな」
「何とかですか」
「両家の間に立って頂き」
「そしてですな」
「茶々様もですな」
「石田殿や大谷殿なら茶々様を抑えられたが」
 それが出来たがというのだ。
「今それが出来るとすればな」
「加藤殿か福島殿か」
「どちらかの方だけですな」
「太閤様に幼き頃からお仕えしていた」
「あの方だけですな」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのだ。
「ここはじゃ」
「何とかですな」
「加藤殿に動いてもらいますか」
「そして双方にどうにかしてもらう」
「話を抑えてもらいますか」
「さもなけば戦じゃ」
 それになるというのだ。 
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