真田十勇士
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巻ノ百一 錫杖の冴えその十三
「茶々様のせいでな」
「それでは」
「これからですな」
「何とかしますか」
「これから」
「そうしよう、それとじゃ」
ここでだ、服部は十二神将達にこうも言った。
「今の状況でも大御所様からお話はない」
「だからですな」
「大坂城の隅から隅まで見られても」
「それでもですな」
「この状況でも」
「うむ、軽挙はするな」
こう言うのだった。
「例え茶々様のお命を奪えてもな」
「それでもですな」
「大御所様からのお話がないので」
「それで」
「それは簡単に出来る」
茶々を急死に見せかけて亡き者にすることはというのだ、これは言うまでもなく秀頼に対しても同じだ。
「それこそな」
「実に楽にですな」
「手の平を返す様に出来ます」
「我等十二神将ならば」
「そして棟梁様ならば」
「そうじゃ、しかしな」
それでもというのだった、服部はあくまで。
「大御所様は出来る限りじゃ」
「穏やかに進めていきたい」
「我等に対してもですな」
「そこまでするなと」
「うむ、何かするのは最後の最後じゃ」
まさにというのだ。
「それまではな」
「我等もですな」
「城の中を見るまでで」
「毒等はですな」
「使わぬことですか」
「うむ、確かにそれは楽じゃ」
茶々や秀頼への暗殺はというのだ。
「しかしな」
「大御所様がお許しになられぬ」
「だからですな」
「してはならぬ」
それは絶対にというのだ。
「だからよいな」
「はい、我等もです」
「その様にします」
「必ず」
「ではな」
服部はあらためて頷いた、そしてだった。この話が終わって十二神将達に対してこう言った。
「今はやるべきことをしていく」
「大御所様、上様の言われるままに」
「動くだけですな」
「そうじゃ、我等は幕臣じゃ」
それ故にというのだ。
「大御所様と上様のご命令に従うじ」
「はい、それでは」
「その様に」
十二神将達も応えそうしてだった、彼等は大坂のことに不安も抱いていたがそれでもだった。今は果たすべきことを果たすのだった。
巻ノ百一 完
2017・4・1
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