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真田十勇士

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巻ノ百一 錫杖の冴えその六

「わかったな」
「はい、それでは」
「今は修行じゃ」
「それでは」
 幸村も頷き清海と共に修行に励んだ、そうして熱心に汗をかき続け夜は学問に励んだ。今は確かに潜んでいるが。
 すべきことはしていた、そしてだった。
 清海は遂に免許皆伝となった、そこで後藤に言われた。
「ではな」
「はい、これからも」
「励みじゃ」
 修行、それにだ。
「そのうえでな」
「より、ですな」
「強くなることじゃ」 
 そうあるべきだというのだ。
「よいな」
「承知しております」
 清海もこう答えた。
「拙僧は死ぬまでです」
「修行を続けるか」
「そうします」
 強い言葉での返事だった。
「殿と共に」
「そうじゃ、悟ってもじゃな」
 後藤は清海が僧でもあることから仏門の話もした。
「それで終わりではないな」
「そこから先もありと聞いておりまする」
「だからか」
「はい、拙僧もです」
 まさにというのだ。
「これからもです」
「修行に励むな」
「免許皆伝となりましたが」
 それでもというのだ。
「そうしていきまする」
「その意気じゃ」
 後藤もその意気をよしとした。
「ではな」
「はい、日々錫杖を振り」
 彼しか振れないそれをだ。
「忍術も法力もです」
「どちらもじゃな」
「励みまする」
「それでよい、しかし法力は」
「そちらですか」
「御主は」
「ははは、実は弟もそうですが」
 清海は僧侶としてのそれについては笑って言った。
「術としてはともかく」
「悟りはか」
「全くです」
 まさにそれはというのだ。
「至れていませぬ」
「そうであるか」
「いや、全く」
「悟りはか」
「拙僧も弟もそちらは縁がないやもです」
「僧としてよりもじゃな」
「はい、忍として武芸者として」
 この二つの立場でというのだ。
「励んでいまして」
「だからじゃな」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「僧侶としては」
「やはりそうか」
「しかしです」 
 それでもとだ、彼はこう言ったのだった。
「何時かは」
「左様か」
「はい、そうも思っています」
 僧侶であるからこそというのだ。
「まあそれよりもです」
「やはり真田殿とか」
「共にいたいです」
 悟りを開くよりもというのだ。
「悟りを開き殿と共に同じ場所で同じ時に死ぬなぞ難しいです」
 そこまで津國よく出来ないだろうというのだ。 
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