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真田十勇士

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巻ノ九十八 果心居士その七

「左様ですな」
「はい、これより」
「ではこれから」
「そうして頂けますな」
「だからここにおります」
 まさに最初からというのだ。
「そうしています」
「それでは」
「はい、筧殿」
 果心居士は筧に自ら声をかけた。
「これより」
「お願い申す」
「それでは」
 こう話してだ、そしてだった。
 筧は果心居士と共に修行をはじめた、都にいたままだが都のそのすぐ傍の山や都の中を夜に巡ってだった。幸村と三人で修行を行った。
 五行の術を軸とした仙術、それを筧に授けていくが。果心居士は共に宙を舞う様に飛翔する筧に対して言った、夜の都の空を。
「仙術は不老不死にもなれますが」
「いえ、それがしはです」
「そうしたことにはですか」
「興味がありませぬ」 
 跳びつつ言うのだった。
「そういったことには」
「それでは」
「はい、術を備え」
 そうしてというのだ。
「殿の為に使いたいのです」
「そうしたお考えですな」
「確かに仙術には不老不死もありますな」
「それがしも実際にです」
 かく言う果心居士自身もというのだ。
「そうした術も知っていてです」
「実際にですな」
「長く生きています」
 そうなっているというのだ。
「もう百年以上」
「そうですな」
「しかし筧殿はですか」
「それがし、そして我等は十勇士です」
 彼等はというのだ。
「殿と共に生きて死にたいので」
「だからですか」
「それに人は何時か必ず死にますな」
「はい、仙人といいましても」
 それでもというのだ。
「やはりです」
「人だからですな」
「死にます」
 何時かはというのだ。
「仙人もやはり人なあので」
「そうですね、ですから」
「そうしたことはですか」
「いいと考えています」
「仙術を備えられても」
 そして極めてもだ、果心居士が見るに。
「不老不死はですか」
「長く生きるか短く死ぬかだけで」
「長く生きることにもですか」
「我等は殿と同じ時同じ場所に死ぬと誓っております」
 それ故にというのだ。
「長く生きることにも興味はありませぬ」
「そうですか」
「はい、ですから」
 筧の言葉は揺るがなかった、その横では幸村が跳んでいる。やはりそれは飛ぶ様である。そう言ってもいい位である。 
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