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とある3年4組の卑怯者

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1 再会

 
前書き
 いよいよ本編です。キャラがずれているかもしれませんが、ご感想、ご指摘、お待ちしています。
 藤木によるリリィとの回想はアニメ「ちびまる子ちゃん」2期30話「すてきな夏休みの始まり」の巻、97話「藤木のラブレター」の巻から引用しています。 

 
「はあ~・・・」
 静岡県の入江小学校に通う3年4組の少年・藤木茂は溜め息をついていた。理由は今日も散々な目に合ったためだからだ。一昨日は掃除で雑巾がけをやっていた際にバケツをひっくり返して皆から責められた。昨日なんて算数の授業中に先生から回答を要求された時に答えを間違えて皆の笑いものになってしまった上に、昼休みは廊下を走っていた生徒とぶつかった。そして今日は、漢字の宿題をやってきておきながら家に忘れてしまい、先生に正直に伝えたのはいいが、皆から信用してもらえず、皆から卑怯、卑怯と繰り返し言われた。
(なんで誰も信じてくれないんだ!どうして本当のことを言ったのに卑怯になるんだ!!)
 藤木は今日は一日中その自分の代名詞のような言葉である「卑怯」という言葉でで頭を悩ませなければならなかった。だが休み時間・・・。
「藤木君」
 優しそうな声が藤木を呼んだ。クラスメイトの笹山かず子だった。
「さ、笹山さん・・・」
 藤木は頬を赤らめた。藤木は彼女が好きなのだ。
「朝から大変だったわよね。気分悪くなっちゃったでしょ?」
「あ、いや、その・・・」
「気にする事ないわよ。今度から気を付けてね。それじゃあ、元気出してね」
「あ、うん、ありがとう」
(笹山さんは僕を卑怯呼ばわりしていない・・・)
 藤木は好きな女子から心配されて少し元気を出すことができた。

 放課後、藤木は親友である永沢君男と共に下校していた。その時、藤木は前方に笹山の姿を発見した。同じクラスメイトの城ヶ崎姫子と共に歩いている。
(笹山さんと一緒に帰りたいなあ。今日僕の心配をしてくれたお礼も言いたいし・・・)
「藤木君・・・」
 永沢が話しかけた。
「な、何だい?永沢君」
「君、まさか笹山と一緒に帰りたいなんて思っているんじゃないだろうね」
「いや、そんなことないさ!」
 藤木は自分の思っている事を悟られた。
(永沢君はどうして僕の考えていることが分かるんだ・・・!?)
 笹山と帰る方向が分かれた。結局藤木は彼女にお礼を言う事ができなかった。
 こうなってしまえば溜め息をつくしかないだろう。
(僕はなんでこんなドジばっかするんだろう・・・)
 藤木は不幸体質の己を嘆いた。

 とある日曜日、藤木は家でボーっとしていると、彼の母が声をかけた。
「茂~、買い物行ってきてくれる?」
「あ、わかったよ」
 藤木は母から買い物袋を受け取り、家を出て行った。
(なんか変な目に合わないかな?)
 藤木は外出に若干の不安を感じていた。

 買い物をすべて済ませて帰ろうとしているところ、藤木はある家族が目に入った。
 父親と思われる人物は外国人だ。母親の方は日本人だった。そしてその娘と思われる子は茶髪で肌の白い少女だった。そしてその少女もこちらを見てきた。
「あれ、あなたは、もしかして別荘で出会った・・・」
「君は、もしかして、リリィ・・・!?」
 藤木は驚いた。まさか、もう会えないと思っていた、友人の花輪和彦の別荘で出会ったあの美少女だった。
「うん、覚えていてくれたのね、嬉しいなあ」
 リリィと言う少女は微笑んだ。
「いや、はは」
 藤木は彼女の両親にも挨拶を交わしあった。
「あなたの名前はええっと・・・」
「僕は藤木っていうんだ。忘れているだろうね」
「フジキ・・・?ああ、貴方が藤木君だったの!?ごめんなさい。あの時貝殻をくれた人が藤木君だったのね。あの手紙を貰った時ギターを弾いてくれていた人だと思っていたの。あれから手紙が来なかったからどうしたんだろうと思っていたんだけど、私が勘違いで衝撃的(ショック)だったんじゃない?」
「いや、いいんだ。僕はただ連れてきてもらったものの一人だから僕なんか覚えているわけないよね、ははは・・・」
 藤木は寂しげな笑みを浮かべた。
「でも、私また藤木君と会えて嬉しいな。ここに住んでいたのね」
「あ、うん」
「私の家族、ここに住むことになったの。またよろしくね!」
「えっ、そうなの!?」
 藤木はリリィが清水に住むことになるとは予想もつかぬ事で非常に驚いた。
「ハイ、私この静岡で働くことになったのでね、今町を見ているところですよ」
 リリィの父が言った。
「そうなんですか」
「リリィに知り合いがいる所に引っ越すなんてリリィも学校が楽しくなるんじゃない?」
「そうね、ママ」
「もしかして入江小学校ですか?」
 藤木はもしかしてと思って聞いた。
「そうよ」
 リリィが答えた。藤木は心を躍らせた。こんなことがあるなんて、二度と会えないと思った人とまさか同じ学校になるなんて、たとえ偶然でも、自分にだって良い事はあるんだ。藤木はそう心の中で思っていた。
「じゃあ、また学校で会えるかもね」
「うん楽しみにしているわ。バイバイ」
「さようなら」
 リリィとその両親に別れを告げた後、藤木はリリィとの思い出を回想しながら家に向かった。

 いつの日かの夏休み。藤木はお金持ちのクラスメイト、花輪和彦の別荘へ連れて行ってもらった。皆で海水浴というときに自分は海パンを忘れてしまった。バカだなあと自分で思いながら海で遊ぶ皆をよそに一人で浜辺で貝殻を拾っていた。
 その時だった。藤木が顔を上げると一人の少女が立っていた。
 それがリリィだった。藤木は彼女の美しさに一目惚れしてしまったのだ。
 その夜、キャンプファイヤーで藤木は花輪家の隣の家のベランダで夜空を眺めていた彼女に再び出会った。
 リリィもキャンプファイヤーへ参加した。だが、「新しい友達」のためにギターを弾いている花輪を見てリリィは自分より花輪とお似合いな感がしていた。でも別れ際に浜辺で拾った貝殻をプレゼントした。
「どうもありがとう。大切にするわ」
 彼女はそう言って両親のもとへ戻った。藤木はまた会えると信じていながら・・・。

 それからしばらくして、藤木はリリィに好きだと伝えたいがためにクラスメイト達の協力でラブレターを出した。そして返事が来た・・・。だが、返事には藤木とは誰か覚えておらず、キャンプファイヤーでギターを弾いていた男子と勘違いしていた。藤木じゃない、それは花輪クンだよ・・・。そしてその人なら喜んで文通させていただくわ、と。藤木は自分はリリィとは駄目なんだと実感していた。
 返事をもらったと知ったクラスメイトたちは賞賛していた。あの笹山まで疑わずに褒めていた・・・。でも藤木は嬉しくはなかった。なぜなら自分はリリィに忘れられたのだから。

 そんな失恋もあったが、藤木はリリィとまた学校で会えることを楽しみにするのだった。 
 

 
後書き
次回:「学校」
 学校でリリィと会う事を楽しみに登校する藤木。だが、登校中、彼女と遭遇する事はなく、教室にもリリィの姿はない。そして担任の戸川先生が教室に入って来た時・・・。
 
 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!

  
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