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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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第29話

~パンダグリュエル・パーティーホール~



「そ、そんな……!ただでさえ、メンフィル帝国との和解の為にエレボニア帝国は多くの領土を失う事になるのに、そこに加えて更にリベール王国にまでエレボニア帝国の領土を差し出して賠償金や謝罪金まで支払わないといけないなんて……!」

「今回の戦争と”ハーメルの惨劇”に対する償いでエレボニアは一体どのくらい衰退する事になるのだろうね……」

「しかもユーゲント皇帝陛下は死後代々のエレボニア皇家の方々が眠る墓地ではなく、ハーメル村跡に陛下のご遺体を埋めなければならないのですか………」

「二つ目の条件はユーゲント皇帝陛下にとってはある意味最も厳しい処罰になるだろうな………ユーゲント皇帝陛下だけは死後代々のエレボニア皇家の方々と共に眠る事すらも許されないのだからな……」

「”今後エレボニアは暗躍で領土を得る事は永遠に禁止する”って、完全に”内政干渉”じゃないか~!何様のつもりでそんな条件を出したんだよ、空の女神は~!」

「何様も何も”女神様”だから、エレボニアの政治に干渉してきたんじゃないの、”空の女神”は。」

「フン、自分の政策を空の女神が真っ向から禁じてきたと知れば、どんな反応をするだろうな、”鉄血宰相”は。」

「宰相閣下………」

エイドスがアルフィン皇女に要求した5つの償いの条件を知ったトワは悲痛そうな表情をし、ジョルジュは辛そうな表情で呟き、ラウラとアルゼイド子爵は重々しい様子を纏って呟き、不満げな表情で声をあげたミリアムにフィーは静かな表情で指摘し、鼻を鳴らして呆れた表情で呟いたユーシスの言葉を聞いたクレア大尉は辛そうな表情をした。

「……だけど、よくよく考えてみたら”空の女神”は当然の事しか要求していないわね。」

「セ、セリーヌ……?それは一体どういう意味なの……?」

静かな表情で呟いたセリーヌの言葉を聞いたその場にいる全員が驚いている中エマは困惑の表情でセリーヌに訊ねた。

「ハーメルの民達の墓を建ててエレボニア皇家や帝国政府が毎年墓参りする事もそうだけど、”ハーメルの惨劇”を闇に葬る事に決めて12年も隠蔽し続けてきたエレボニアの”皇”であるユーゲント皇帝が死者であるハーメルの民達に対してできる”償い”は死後の自分がハーメルの民達の下で眠る事くらいしかないと思うわ。」

「更にエレボニア帝国は”ハーメルの惨劇”を利用してリベール王国に冤罪を押し付けてリベール王国の領土を得る為に、”百日戦役”を起こしてリベールの民達や兵達の命を奪ったにも関わらず、エレボニアは冤罪を押し付けて戦争でリベールの民や兵達の命を奪った事についてリベールに賠償どころか謝罪すらも行わなかったのですから、それらに対する”負債”がリベールに謝罪金や賠償金を支払い、更に自国の領土や民達をリベールに差し出すという形で支払わなければならないという事も常識で考えれば仕方のない事かと。」

「そ、それは…………」

「シャロン……で、でも4つ目の条件―――ハーメルの惨劇公表後”空の女神”はリベール王家や王国政府を庇う宣言を出して、エレボニア皇家や帝国政府を庇う宣言をしない事を受け入れろだなんて、間違っていないかしら………?”空の女神”が要求した償いの条件は”空の女神”の怒りを鎮める為の条件なのに……」

セリーヌとシャロンの説明を聞いたマキアスは辛そうな表情で答えを濁し、アリサは悲しそうな表情をした後反論した。



「アリサさんが仰った指摘はアリシア女王陛下やクローディア王太女殿下も女神様に仰り、エレボニアの混乱を鎮める為にも女神様がエレボニアにもご協力して頂きたいと嘆願したのですが……その時女神様はエレボニアの混乱を女神様に頼らず自分達の力で乗り越える事や”ハーメルの惨劇”の真相を碌に調べる事もせずリベールに戦争を仕掛け、更には”ハーメルの惨劇”を隠蔽したエレボニア皇家や帝国政府に対する”空の女神の天罰”だと仰い、女王陛下達の嘆願を断りましたわ………」

「”空の女神の天罰”……か。」

「ハハ……まさに言葉通り私達エレボニア皇家や帝国政府にとっては”天罰”だね。”空の女神”が”ハーメル”の件でエレボニアに対して怒りを抱いている事を知ったエレボニアの民達の私達に対する怒りや不満を鎮める為には、”空の女神”自身の協力は必要なのに、それすらも許して貰えないんだからね……」

「殿下………」

アルフィン皇女の説明を聞いたガイウスは複雑そうな表情で呟き、疲れた表情で肩を落としたオリヴァルト皇子の様子をアルゼイド子爵は心配そうな表情で見つめていた。

「………皇女殿下。何故”空の女神”はハーメルの件に対する”償い”として最後の条件―――”今後エレボニアは暗躍で領土を得る事は永遠に禁止する”事を口されたのかの理由は伺っていないでしょうか?」

「いえ、理由については伺っておりません。………クレア大尉―――いえ、今までエレボニアを豊かにする為に様々な事をして来た”革新派”の方々には申し訳ありませんがわたくし個人としては暗躍をして他国の領土を手に入れるという卑劣なやり方は許せません。ですからわたくしは女神様が要求した最後の条件は女神様が口にされなくても守るべきだと思っております。」

「……そうだね。その事に関しては私も同じ意見だ。エレボニアが再び、”ハーメル”の件のような同じ欺瞞を犯す事は私も絶対に許さない。」

「………………」

自分の質問に対して決意の表情で答えたアルフィン皇女とアルフィン皇女の意見に同意したオリヴァルト皇子の答えを聞いたクレア大尉は辛そうな表情で黙り込んだ。

「む~、オジサンやボク達がエレボニアの為に今までやって来たことをエレボニア皇族のアルフィン皇女達が全否定するなんて、幾ら何でも酷いと思うんだけど~!」

「ちょっ、ミリアム!?幾ら何でも言い過ぎだぞ!」

「貴様………幾らクラスメイトだからと言って、貴様の殿下達に対する余りにも不敬なその発言は見逃せないぞ。」

「今すぐ殿下達に謝罪してください、ミリアムちゃん!ミリアムちゃんの先程の殿下達に対する言葉は完全に不敬罪に当たりますよ!?」

そして不満げな表情で声を上げたミリアムの反論を聞いたマキアスは焦り、ユーシスはミリアムを睨みつけ、クレア大尉は焦った様子でミリアムに注意した。



「ハハ、私達は気にしていないから、落ち着いてくれ。ミリアム君―――”革新派”の私達の考えに対する不満の言葉を受け止める事もまた、私達エレボニア皇家の”義務”だからね。」

「勿論わたくしも気にしておりませんからどうかお気になさらないでください。それに女神様が最後に仰った条件を破ってしまった場合、七耀教会からその破ってしまった方々に対する”処罰”を与えられてしまう事を考えると最もその条件に当てはまる可能性が高いのはミリアムさん達――――”革新派”なのですから、そのような条件を呑んだわたくしをミリアムさんが非難しても仕方ありませんわ。」

「へ……………」

「”最後の条件を破った場合、七耀教会から最後の条件を破った人達に対する処罰が与えられる”って………」

「七耀教会はどのような処罰を最後の条件を破った人達に与えるつもりなのですか?」

苦笑しているオリヴァルト皇子の後に答えたアルフィン皇女の答えを聞いたマキアスは呆けた声を出し、アリサは戸惑いの表情をし、ジョルジュは不安そうな表情でアルフィン皇女に訊ねた。

「七耀教会が最後の条件を破った方々を”外法認定”し、”星杯騎士団”に狩ってもらうとの事です。」

「な―――――」

「何ですって!?」

「よりにもよって、”外法認定”かよ……!」

「随分と思い切った事を考えたわね、”空の女神”は。」

アルフィン皇女の説明を聞いたクレア大尉は絶句し、サラは信じられない表情で声を上げ、トヴァルとセリーヌは厳しい表情をした。

「せ、”星杯騎士団”………?」

「七耀教会が関係しているのですから、恐らく七耀教会に所属している組織だと思うのですが……」

「”狩る”とは随分と物騒な言葉だな……」

「殿下達は”星杯騎士団”についてご存知なのですか?」

一方事情がわからないトワとエマは戸惑いの表情で呟き、ラウラは重々しい様子を纏って呟き、アルゼイド子爵はオリヴァルト皇子達に訊ねた。



「……ああ。アーティファクトが教会に管理されているという話は聞いたことがあると思うが……。その調査・回収を担当するのが『星杯騎士団』と呼ばれる組織さ。メンバーは非公開ながらかなりの凄腕が選ばれるらしい。」

「ちなみに”星杯騎士”の中には私達”執行者”や”蛇の使徒”と同等やそれ以上の使い手である方達も所属しているとの事ですわ。」

「ええっ!?し、七耀教会にそんな組織があったんですか!?」

「そう言えばわたしも七耀教会には”古代遺物(アーティファクト)”を回収する為の”裏の組織”があって、その組織に所属している神父やシスターは凄腕揃いで、どこかの猟兵団が古代遺物(アーティファクト)を手に入れようとしたけども七耀教会の使い手―――それもたった一人のシスターに潰されたって噂を聞いた事がある。」

「りょ、猟兵団がたった一人のシスターに潰されるって……!」

「フン、幾ら何でもそれは誇張された噂だろう。シスターがたった一人で猟兵団を潰す等、普通に考えてありえん。」

(その”ありえない事”ができるシスターに心当たりがある――――というかその場面を見た事があるんだよな………)

(その噂に出て来たシスターは間違いなく”守護騎士(ドミニオン)”第一位にして”最強の星杯騎士”―――”紅耀石(カーネリア)”でしょうね……)

(アハハ……セリカさんやリウイ陛下達を知っている私達からすれば、一人で猟兵団を潰す人なんて、セリカさん達と比べたら大した事はないと思ってしまいますよね………)

(ホントよね……セリカさん達の余りにも非常識過ぎる強さがあたし達の感覚を麻痺させるのよね………)

オリヴァルト皇子とシャロンの説明を聞いたエリオットは驚き、フィーの話を聞いて信じられない表情をしているマキアスにユーシスは呆れた表情で指摘し、猟兵団を一人で潰す人物について心当たりがあるトヴァルは疲れた表情をし、サラは苦笑し、苦笑しているアネラスに小声で囁かれたシェラザードは疲れた表情で同意した。



「アルフィン皇女殿下。先程”星杯騎士団”が”外法認定”した者達を”狩る”と仰っていたがそれはどういう意味なのだろうか?」

「それは………」

「……”星杯騎士団”には”古代遺物(アーティファクト)”の回収以外にも役目があってね……その役目とは後戻りできない”大罪人”――――七耀教会によって”外法認定”された者を”狩る”―――つまり、殺害する事も彼らの役目なんだ。」

ガイウスの疑問にアルフィン皇女が答えを濁している中オリヴァルト皇子はアルフィン皇女の代わりに答え

「そ、そんな……七耀教会がそんな事をしていたなんて………」

「そしてエレボニアの関係者が衰退したエレボニアの為に”空の女神”が皇女殿下に要求した最後の条件を破れば、その者達によって抹殺される事になってしまったのか………」

「フン、今までの事を考えればその抹殺対象は”鉄血宰相”もそうだがお前達”情報局”になる可能性が高いのだから、命が惜しければ今後は大人しくしておくのだな。」

「ぶ~……ボク達に何の恨みがあって、”空の女神”はそんな事を七耀教会にさせるんだよ~。」

オリヴァルト皇子の説明を聞いたトワは悲痛そうな表情をし、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏って呟き、ユーシスはミリアムに忠告し、ミリアムは不満げな表情で頬を膨らませてエイドスに対しての恨み言を口にした。

「……ま、”星杯騎士団”の連中からすれば結社の最高幹部のヴィータもそうだけど、アタシ達”魔女の眷属(ヘクセンブリード)”も”外法”かもしれないわね。」

「そうね………遥か昔私達の先祖が”魔女の眷属(ヘクセンブリード)”に伝わっている秘術を悪しき事に使った事から”魔女狩り”が行われた事によって、私達”魔女の眷属(ヘクセンブリード)”が世間から追われ、決して誰にも見つからないように隠れて生きるようになったと伝えられているものね………」

「エマ………」

それぞれ重々しい様子を纏っているセリーヌとエマの会話を聞いたアリサは心配そうな表情でエマを見つめていた。



「―――横から口で挟むようで悪いけど、その”外法認定”の件でカシウス先生から貴方達”Ⅶ組”に伝えて欲しいって頼まれている”忠告”があるわ。」

「え………ぼ、僕達にですか?」

「カシウス卿は我等にどのような”忠告”をされたのでしょうか?」

シェラザードの話を聞いたエリオットは戸惑い、ラウラは真剣な表情でシェラザードに訊ねた。

「『帝国解放戦線のリーダーにしてお前達のクラスメイト―――クロウ・アームブラストも今回の和解調印式によって七耀教会に”外法認定”された可能性が考えられる。クラスメイトとして彼が今まで犯した罪を生きて償って欲しいと願っているのならば、”特務部隊”の指揮下に入るか、ゼムリア大陸に降臨した”空の女神”エイドスを探し出して彼女に頼る事だ』―――との事よ。」

そしてシェラザードは驚愕の事実をアリサ達に伝えた。

「何ですって!?」

「ク、クロウ君が七耀教会に”外法認定”された可能性があるって……!」

「どうしてカシウス准将はクロウまで”外法認定”されている可能性があると推測しているのですか?」

シェラザードからのカシウスの伝言を聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中サラは信じられない表情で、トワは表情を青褪めさせて声を上げ、ジョルジュは辛そうな表情でシェラザードに訊ねた。

「その……和解交渉の時に第五条の内容でエレボニアがリィン君に適した”騎神”を贈与するって内容があるでしょう?その内容について七耀教会の代表者であるカラント大司教が”騎神”は”古代遺物(アーティファクト)”の可能性があるから、メンフィルは本来七耀教会が回収して管理すべき”騎神”を軍事利用してはいけないみたいな事をシルヴァン皇帝に指摘して、その意見に対してシルヴァン皇帝が七耀教会は既に”騎神”が古代遺物(アーティファクト)ではない事を認めているって指摘して、カラント大司教の反論を封じ込めたんだ。」

「”騎神”は”古代遺物(アーティファクト)”ではないのですが………」

「ま、教会の連中からすれば”騎神”は”古代遺物(アーティファクト)”同然の存在なんだから、何としても回収して管理したいんじゃないのかしら?」

「フン、”管理”という名の一種の独占だな。」

「ま~、七耀教会は”古代遺物(アーティファクト)”が関わってくるとホント、見つけた”古代遺物(アーティファクト)”を渡せってしつこくてうるさいんだよね~。ギリアスのオジサンも遊撃士の次は星杯騎士をエレボニアから完全に追い出したいみたいな事も言っていたくらいだよ。」

「お願いしますから、そういう事は皆さんの前で口にしないでください、ミリアムちゃん……」

「それと口にするにしても、少しはオブラートに包んだ言い方にしてくれ……」

「そんな事よりも何でクロウの”外法認定”に”騎神”や教会は既に”騎神”が”古代遺物(アーティファクト)”ではない事を認めているみたいな事が関係しているのよ?」

アネラスの説明を聞いたエマは複雑そうな表情で答え、セリーヌは目を細めて呟き、ユーシスは鼻を鳴らして七耀教会に対する皮肉を口にし、ミリアムが呟いた言葉を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中クレア大尉とマキアスは疲れた表情でミリアムに注意し、サラは厳しい表情でアネラスに訊ねた。



「それが………シルヴァン皇帝はカラント大司教に”星杯騎士団”は帝国解放戦線のリーダーが操縦する”騎神”の回収や、その騎神の”操縦者”である帝国解放戦線のリーダーを抹殺していない事を指摘してカラント大司教を黙らせたんです………」

「!なるほど………”そういう事”ですか。」

「え……シャロンは今の話がどういう事なのかわかったの?」

不安そうな表情で答えたアネラスの話を聞いて目を見開き、真剣な表情で呟いたシャロンの言葉を聞いたアリサは事情がわかっていそうな様子のシャロンに訊ねた。

「はい。―――恐らくメンフィルは先程アネラス様が仰った件――――”騎神”の件で七耀教会を煽り、”星杯騎士団”にクロウ様を抹殺させる為かと。」

「何だと!?」

「一体どういう事よ、それは!?」

シャロンの答えを聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中トヴァルは信じられない表情で声を上げ、サラは厳しい表情でシャロンに訊ねた。

「サラ様達もご存知のように”星杯騎士団”の役割は”古代遺物(アーティファクト)”の回収、並びに七耀教会が”外法認定”した者の抹殺です。そして今回メンフィルはリィン様に適した”騎神”を手に入れ、軍事利用する事に対して七耀教会は”騎神”は”古代遺物(アーティファクト)”の可能性がある為、”騎神”を利用しようとしているメンフィルに苦言をしましたがメンフィルは現状判明している”騎神”――――クロウ様が操縦している”蒼の騎神(オルディーネ)”を、”星杯騎士団”が回収していない事を理由に『七耀教会は”騎神”を古代遺物(アーティファクト)ではない事を認めている』と指摘されたのだと思いますわ。」

「そ、それは……でも、そこにどうして星杯騎士団がクロウ君を殺していない事まで関係してくるんですか……?」

シャロンの説明を聞いたトワは不安そうな表情で答えを濁したがすぐにある事に気づき、シャロンに訊ねた。



「トワ様や皆様方にとってはクロウ様は”大切な仲間”ですが………エレボニアに加えて各国のVIP達が集まった”西ゼムリア通商会議”でもテロを起こした”帝国解放戦線”のリーダーであるクロウ様は世間一般からすれば、テロリスト―――それも国際犯罪組織同然の犯罪組織のリーダーです。世間一般からそのように評されているクロウ様が騎神―――古代遺物(アーティファクト)を利用―――ましてや”反乱軍”である”貴族連合軍”を勝利させる為に軍事利用し続けているのですから、七耀教会からすればクロウ様はどのような存在になるのでしょう?」

「!!」

「―――間違いなく”外法”ね。」

「そして七耀教会――いや、”封聖省”は古代遺物(アーティファクト)らしき存在を古代遺物(アーティファクト)ではないと認めたという”例外”を作る事によって、今後その例外を理由に各国が”盟約”を破る事をさせない為に”星杯騎士団”に帝国解放戦線のリーダーを抹殺させて、”蒼の騎神”を回収させるようにシルヴァン皇帝は七耀教会を煽ったって事か……!クソッ、交渉の場で教会に帝国解放戦線のリーダーを抹殺させるように煽るなんて、まさかシルヴァン皇帝は”Ⅶ組”が”特務部隊”の指揮下に入らざるを得ない状況へと追い詰める為に、そんな事をしたのか……!?」

説明をした後辛そうな表情で問いかけたシャロンの問いかけを聞いて事情を察したサラは目を見開き、セリーヌは目を細めて呟き、トヴァルは厳しい表情で自身が推測したシルヴァンの意図を口にした。

「さすがにカシウス先生もその件でシルヴァン皇帝がⅦ組を追い詰めるみたいな事は口にしなかったけど………それでも帝国解放戦線のリーダーはどういう状況なのかわかったでしょう?」

「つまりクロウは七耀教会にも命を狙われている可能性が高いという事ですか………」

「そ、そんな……!何か……何か七耀教会がクロウの命を奪わないようにする方法はないんですか!?」

「そう言えば先程シェラザードさんがカシウス准将のオレ達への忠告でその方法があるような事を言っていたが……」

シェラザードの問いかけに続くようにジョルジュは辛そうな表情で呟き、エリオットは悲痛そうな表情で声を上げ、ある事を思い出したガイウスはシェラザードを見つめた。



「ええ。方法は二つ。一つは貴方達が特務部隊の指揮下に入る事で特務部隊に戦闘を仕掛けてくる可能性がある”帝国解放戦線”のリーダーを捕える事よ。レン達の話によると”帝国解放戦線”のリーダーはレン達が今回の戦争で”帝国解放戦線”の幹部を殺害した事に対してリーダーである”C”が仲間を殺したメンフィルに憎悪を抱いている可能性は非常に高いって言っていたわ。」

「………なるほどね。特務部隊――――メンフィルに復讐する為にクロウが特務部隊に戦闘を仕掛けてくる可能性はかなり高いから、その時にクロウを捕まえる事ができるね。」

「フン………憎悪を抱いている”鉄血宰相”を抹殺する為に今までテロを起こしてきた奴の執念深さを考えれば、ほぼ確実に特務部隊に戦闘を仕掛けてくるだろうな。」

「だ、だがその為には……」

「私達が”特務部隊”の指揮下に入る必要があるわよね……」

「レン皇女殿下もオレ達が特務部隊の指揮下に入るのならば、オレ達に配慮してクロウは”殺害”ではなく”捕縛”にすると仰っていたからな………」

シェラザードの説明を聞いたフィーは静かな表情で呟き、ユーシスは鼻を鳴らした後目を細め、マキアスとアリサ、ガイウスはそれぞれ複雑そうな表情をしていた。

「シェラ君、もう一つの方法はどんな方法なんだい?”空の女神”が関係しているようだが………」

「もう一つの方法は”特務部隊”の件同様単純な話よ。このゼムリア大陸のどこかにいる”空の女神”を探し出して、”空の女神”に”C”を”外法”扱いしないように七耀教会に命令するように頼む事よ。」

「……なるほどな。七耀教会は”空の女神”を崇めているから、その崇めている”空の女神”自身の命令も間違いなく従うだろうから、”空の女神”から『帝国解放戦線のリーダーを殺すな』って指示を出されたら、その指示に従うだろうな。」

「でもその方法ってぶっちゃけ、”特務部隊”に同行してクロウを待ち構えるよりも難しいよね~。」

「はい………”空の女神”はこのゼムリア大陸のどこにいるかわかりませんし、そもそも”空の女神”がテロリストのリーダーであるクロウさんを守る事に賛成するかどうかわかりませんし………」

「……シェラザード、アネラス。カシウスさんは”空の女神”の居場所について何か言っていなかった?」

オリヴァルト皇子の質問に答えたシェラザードの説明を聞いたトヴァルは静かな表情で呟き、シェラザードが答えた二つ目の方法がどれだけ難しいかを悟っていたミリアムは疲れた表情で呟き、ミリアムの言葉にエマは不安そうな表情で頷き、サラは真剣な表情でシェラザードとアネラスに訊ねた。



「えっと……その事なんですが、どうやら”空の女神”はエステルちゃん達と一緒に行動しているみたいなんです。」

「ハアッ!?何でエステル達が”空の女神”と一緒に……」

「あ……そう言えば女神様はご自身の”目的”を果たす為に、ご両親や女神様の子孫であるカシウス准将閣下のご息女達と共に行動していると仰っていましたわ。」

「!?」

アネラスの答えを聞いたサラが驚いている中ある事を思い出したアルフィン皇女が内容を説明し、アルフィン皇女の説明を聞いたオリヴァルト皇子は血相を変えた。

「へ…………」

「い、今皇女殿下はとんでもない事を仰っていなかったか……?」

「うむ………カシウス卿が”空の女神”の子孫と仰っていたな……」

アルフィン皇女の話を聞いたエリオットは呆けた声を出し、表情を引き攣らせているマキアスの言葉にラウラは重々しい様子を纏って頷いた。

「ハア………貴方達にとっても正直信じられない話だろうけど、エステルやカシウスさん――――”ブライト家”は”空の女神”の子孫なのよ。」

「な――――――」

「何だと!?」

「あのカシウス卿が”空の女神”の子孫………」

「フフ、七耀教会にとっては”空の女神”に子孫が存在し、その子孫が今も生き続けている事は驚愕の事実でしょうね。」

疲れた表情で溜息を吐いた後答えたシェラザードの説明を聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中クレア大尉は絶句し、トヴァルは驚きの声を上げ、アルゼイド子爵は呆けた表情で呟き、シャロンは苦笑していた。



「シェラ君、よかったのかい?エステル君達の先祖が”空の女神”である事は彼らにも教えてしまって………」

「空の女神自身がアリシア女王達の前でカシウス先生やエステルが自分の子孫だってバラしちゃったから、今更隠す必要なんてないわよ。現に”影の国”とは関係のない貴方の妹も知っていたでしょう?」

オリヴァルト皇子の問いかけにシェラザードは疲れた表情で答え

「あはは……それに”空の女神”は去り際に七耀教会にエステルちゃん達―――”ブライト家”を特別扱いするなって、命令して承諾させましたから、大丈夫だと思いますよ。」

「そうか……ハハ、七耀教会に命令をして、それを承諾させるなんて、さすがはあのエステル君の先祖だけあって、とんでもない存在だね………」

苦笑しているアネラスの話を聞いたオリヴァルト皇子もアネラスに続くように苦笑していた。

「殿下が先程我々にも隠していた”空の女神”の事はカシウス卿―――”ブライト家”が”空の女神”の子孫である事だったのですか?」

「ああ。”ブライト家”が”空の女神”の子孫だと世間に判明すれば、”ブライト家”を利用しようとする者達が現れ、そしてその中にはエレボニアの関係者も含まれている可能性は十分に考えられたからね。我が国の民にそのような愚かな事をさせない為にも黙っていたのさ。」

「例えばギリアスのオジサンなら間違いなく利用するだろうね~。しかも内戦後のエレボニアの悲惨な状況を考えたら、絶対に”空の女神”を利用しようと思って、”ブライト家”の誰かを誘拐する指示をしたりするんじゃないかな~?」

「ミリアムちゃん!」

「このガキは………」

「というかもしそんな罰当たりな事をすれば、オズボーン宰相どころかエレボニアは”七耀教会”や”空の女神”を完全に敵に回して、破滅の道を歩む事になるぞ………」

アルゼイド子爵の問いかけにオリヴァルト皇子が頷いた後に答えたミリアムの推測を聞いたその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中クレア大尉は声を上げ、ユーシスはミリアムを睨み、マキアスは疲れた表情で指摘した。



「まさかカシウスさんやエステルが”空の女神”の子孫だったなんてね………という事は”空の女神”はエステル達と一緒にいる事になるから、エステル達の居場所がわかれば”空の女神”の居場所も大体わかるわね。」

「シェラザード、アネラス。空の女神―――いや、エステル達は今どこにいるかわかるか?」

サラは疲れた表情で溜息を吐いた後真剣な表情で考え込み、トヴァルはシェラザードとアネラスにエイドス達の居場所を訊ねた。


 
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