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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第四章 RE:BIRTH
  翼刀立つ 男来たる



・・・・っと、やっとか


いらないところで苦戦してるから、こっちの復活が遅れたじゃねーか。
あそこで手を出さなきゃもうちっと早く戻れたのに。

俺みたいな人間、登場は重要なのに。
・・・・ま、いいさ。その分いい登場の仕方させてもらいましょう

アイツはまだヘタレてるみたいだし、ここは俺の時間だ。


その前に――――――


もう一人のヘタレ
眼を覚まさせてやらないとな



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「だ、誰だ!?」


森の中を彷徨っていく翼刀
その耳に、謎の声が聞こえてきた。

気配も感じる。
だが姿はない。

その見えざる来訪者に、翼刀はヴァルクヴェインを構えて声を荒げる。


「誰だと聞いている!!」

『そんなのはどうだっていいじゃねーか。それより、聞かせてくれ』

「・・・なにをだ」

『おまえ、ここで何をしている?』



声の問い。
それは簡単に応えられる。


「俺は・・・・探しているんだ。自分が何を背負うべきなのか」

『わからないのか?どうしてだ』

「俺は・・・・言われてしまったんだ。俺が背負うべきだと思っていたものは、本当は背負わなくてもいいものだと」


いきなりの喪失。
それによって、彼は見失ってしまったのだ。

一体何のために戦うのか。
何を背負って、戦えばいいのか。


「それを見つけるまで、オレはあそこには戻れない・・・・・」


背負うものもないのなら、覚悟もない。
そんな状態で、戦えるわけがない。


「全てを失った俺は、一体何を背負えばいいんだ?なあ、話しかけてきたなら教えてくれ。俺は何を背負えばいい!?」

『知るか』


翼刀の叫び。
それに、声はシレッと否定で返した。

だが、言葉は続いていく。


『全てを失ったと?』

「ああ・・・・すべて失った。何もない。こんな男が、いまさら何を背負うというのか!!」

『ヌルいな・・・その程度で「すべてを失った」だと?』

「な・・・・」


声は言う。
今の翼刀の状態程度では、すべてを失ったとは言い難いというのだ。


「ああそうだな・・・・あんたにはわからないだろうよ!!自分の手ですべてを破壊してしまって、それを失った喪失感などあんたにはわかるはずもないよなぁ!!!」


翼刀の言葉。
自分の苦悩をわかる人間などいない。

いるはずがないのだ。こんな地獄を知る人間など。
だが


『わかるさ』


声は言う。
それは理解できると。


『俺も同じさ。ある声にそそのかされ、自ら世界を破壊してしまった』

「え・・・・」

『俺に残ったのは、強大な力と、崩壊した精神だけだった。それでも一つの願いだけは、胸に持っていた』

「それはどんな?」

『俺の世界を戻したい。だが、その方法があまりにも歪んでいてな。世界を取り込んで精神だってまともじゃなかったんだな。妨害されたよ』


男が言う方法は「他の世界を破壊、吸収してそのエネルギーで再建する」という物だった。
確かに、許されるはずもない。


「じゃあ・・・あんたはこの世界を破壊しに来たのか?」

『あれから俺の中に取り込んじまった世界は俺という存在に馴染んでしまって、今ではただの力(エネルギー)になってしまった』


つまり、もうその世界は戻ってこない。
彼の世界は、彼の思い出の中だけにしか残らなくなってしまったのだ。


「同じだ・・・・すべてを破壊して・・・そしてすべてを失った・・・・」

『同じだ?バカ言うな』

「・・・違うと?」

『確かに、喪失したところまでは一緒だ。だからそこまでは共感できる。だが、お前はそれを取り戻そうと立ち上がったか?』


声は言う。
自分の方法は決して許されるものではなかった。

だが、それでも取り戻そうと必死になってあがいたのだ。



それに対し、鉄翼刀はそれを放棄した。
背負うだけして、そのまま逃げようとしたのだ。

そこが違うと、声は言う。


『ふざけた野郎だよな。お前にはまだ残されたものがあるってのに、お前はそれを見捨てようとしてやがる』

「俺に残されたものだと・・・・?そんなもの、何もない!!」

『お前が破壊したという物の中から、たった一つだけ残った物があるだろうが。お前はそれを認めない気か?』


その言葉で、翼刀の脳裏に一人の少女の姿が浮かぶ。



『そいつはお前が何もかもを失っても残り続け、そしてお前のそばにいてくれようとする存在だろ?』

「・・・・・ゆ・・・・」

『たとえ破滅に向かうことになっても、己の命が懸かっても、お前がどんな体たらくを晒しても、お前のために動いてくれていた少女がいただろう!!』

「唯子・・・・」

『そうだ。おまえはまだなくしていない。すべてを失ってなどいない。最も大切で、一番光り輝くものが、まだ残ってるじゃないか』

「だがオレにアイツを背負う資格が・・・・・」

『そんな格付け、誰が決める?お前は守りたいんだろうが!!助けたいんだろうが!!お前は何のために自分をそこまで機関にさらしたのだ!!』

「どんなものからも、あいつを守ると誓ったからだ・・・・!!」

『見ろ』



声が言い、そこに映像が映る。

映っているのは、赤銅の翼人に向かって行く綺堂唯子たち。

見て分かる。
右腕の調子が万全ではない。


『あんな状態でも、赤銅の翼人がお前を縛り付けると考える彼女は立ち向かっていく』

「俺のために・・・?」

『さぁな。もしかしたら、お前を取られたくないからかもしれない。それこそ自分のためかもな』

「では・・・」

『でも、その行動理念の元にはお前という存在がいる』

「!!」

『わかるか?お前は綺堂唯子の柱なんだよ。彼女からそれを奪うつもりか?どんな強がりを言っても、彼女にはお前が必要なんだよ』

「そして・・・俺にも・・・・?」

『好きなんだろう!!彼女が!!!』

「俺は・・・・!!!!」


『護ってやれよ・・・・その命をかけて!!鉄翼刀という彼女の柱として、自分を含めた彼女の世界を、最後に残った大切なものを!!』

「全力で・・・・・!!!俺は・・・・!!!!!」




翼刀の瞳に炎が灯る。
立ち上がり、ヴァルクヴェインを振るい上げる。

その剣が真の光を放ち、剣心が共にあることを表す。


癒しの担い手、此処に有り。
神剣が、命を吹き返した。


「最初から全部あったんだ・・・・怖くて、目を逸らしていただけだった!!」

『エゴだっていいじゃないか。お前が守りたいなら、守ってやれ・・・・・じゃあな』

「まて!!お前は・・・誰なんだ!!!」

『ふん。俺よりもまだ恵まれているくせにヘタってる男に腹が立ったから説教しに来たおせっかい男だ』


声が遠ざかり、気配も薄れていく。



『まあ、もしお前が戦場に来るなら・・・・会うこともあろうよ』




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遥か離れた場所。


海を臨める、断崖絶壁の上。
そこには木々が生い茂っている。



空を見上げれば、ラピュタ。



腕を振るって遠くに飛ばした最後の「欠片」を消し、その一片までもを「自分」として取り戻しきった、先ほどの声の主―――


――――その男が、それを見上げた。


「さて・・・・引っさげて登場だ」




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「ラピュタ、海洋に向かいます!!」

「現在、複数のメンバーが迎撃をしていますが・・・・!!」

「敵飛行戦力増大!!受け切れません!!!」

「ここまで・・・なの!?」


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「全員、固まらないで広がって!!」

「下は海だ!!ほっといたっていい!!空の野郎共をブチ抜け!!」

「「「了解!!」」」



海上のラピュタ。

そこでなのは、フェイト、はやての三人が指揮をとって壮大な空中戦を行っていた。
元起動六課メンバーは勢ぞろい、さらに復帰したキバ飛翔態も背中にディケイドを乗せて飛び回っている。



地上では


「フン!!!」

「(ゴガキィ!!)未だ至らんか・・・・・」

「うォッ!?」


クラウドと赤銅の翼が交戦していた。
ちなみに少し離れた場所では「光」と一刀が、「闇」とセイバー&バーサーカーが交戦している。


空の方はバラバラと模造兵士が撃ち落とされていくが、同じか、それ以上の数がラピュタから出てきていた。
地上用の模造兵士はそのまま海に落ちて行ってしまっているが、それでも出てき続けている。

ヴィータはほっとけと言っていたが、恐らく落下に耐えた個体は上陸してくるのだろう。
いずれは追い込まれる。









「フッ!」

「ぐァ!!!」

赤銅がクラウドの剣を掴み、地面に叩きつける。
クラウドの肺から空気が吐き出され、身体が一瞬固まって動かなくなる。

そして立ち上がるまでのわずかな間に、赤銅は飛翔して行ってしまった。


「なのはちゃん!!赤銅が来るで!!」

「ッ!?」

「危ない!!」


向かうは空で戦う元機動六課メンバー。
その中でも空中戦に最も特化し、多くの敵を撃墜させていたなのはのもとへと赤銅が飛び立っていく。

だが、その眼前に唯子が跳びあがって赤銅の翼に踵落としを叩きこんだ。

その衝撃に十メートルほど叩き落とされる赤銅。
しかし、逆にその足を掴み取られて地面へと投げ飛ばされてしまった。


それを受けても着地に成功する唯子だが、目の前に赤銅が着地して来た。


「行くわよ!!」

「参れ」


赤銅の念動力で振るわれる。

それを腕で弾きながら接近していく唯子が、その胸に向かって蹴りを放った。
赤銅は両腕で受け、跳ねあげる。
それを足場にして唯子はバク転し着地した。


と、ここで赤銅が、戦闘で初めて腕を動かす。
唯子のこめかみを狙って右腕で振り突きを放つ。

それを上腕で受け止める唯子だが赤銅の連続攻撃にだんだんと追い込まれていく。


左右からの連続振り突き。
単調だが、一撃があまりにも重すぎて反撃のチャンスも何もないのだ。

頬に腕がつくほどにまでガードを固め、膝が折れそうになる唯子。

しかし



ガシィッ!!

「む」

「今までの私じゃ、ないっての!!!」

顔面に迫る掌で赤銅の拳を掴み、ギリギリと締めつけていく唯子。
全身からオーラがにじみ出していき、一気に噴き出していく。


そして赤銅の腕を跳ねあげ、胴体をさらけ出させる。
そこに拳を一撃、二撃、三撃と連続に叩きつけ後退させ、さらに押し蹴りで押し退かせる。


態勢を直そうとする赤銅の胸にトン、と唯子の拳が当てられ


ドンッ!!!


一撃をブチ込む。
大地が窪み、それでもさらに左拳から不動拳を叩きこんで、さらには踏みつけてそこから不動で衝撃を押し込んだ。


大地が、森が、大きく振動してヒビ割れたそこから気(オーラ)が噴き出していく。


まるで天変地異。
これがオーラという力を手に入れた綺堂唯子の力である。

しかし、それを持ってしても



バガァッ!!




唯子の背後、地面の下からが飛び出してきて、背中を斬りつけ火花を散らす。
さらにその穴から赤銅も飛び出し、蹲る唯子に向かってΧブレードを突き刺しに向かった。


「ッッ!!」


その刃を紙一重で回避し、柄を踏み付けて地面に深く突き刺す唯子。
そして、懐に入り込んでその胸に右手を当てた。


「?」

「あら、私より小さいのね」


そう、右「手」をだ。
右「拳」ではなく。

反対の腕は、溜め込むように肘から振り上げられている。


「右じゃなくて、左なら!!!」

「まさか・・・・」

「身体だって、もってくれるはず!!!」

ゴォオッッッ!!

「真パニッシャーパンチ、レフトォ!!!」


バガッ、ドォォォォオオオオオン!!!!



その拳は不動と動を掛け合わせ、さらに彼女の気力も織り混ぜられたことで文字通り爆発的な威力を発揮する。
大気を抉り、削り取るような衝撃が周囲を覆い、赤銅の翼人に果てしない衝撃が叩きこまれ―――――



「ふむ」



しかし赤銅はそれを、Χブレードの面で受け止めていた。



「――――そんな!!確かに地面に!!」


驚愕する唯子。
確かに彼女はを地面に埋め込んだ。

しかし、この剣は一度消すことでもう一度所有者の手の中に戻すことができる剣。
地面に受けこんだそれを「収納」という形で消し、「構え」という形で再出させたのだ。



「驚くべき衝撃、威力。担い手を守るこの剣が無くば、其の方の勝利で有ろうに・・・・」

「え・・・・・・グッ!?あァッ!!」



赤銅の言葉。
だがそれと同時に衝撃の反動が唯子を弾き飛ばし、地面にその身体を投げ出させる。


腕を抑えて地面を転がる唯子。
そこに迫る赤銅だが、その前にフェイト、シグナム、そしてなのはが立ちふさがる。

しかし宙を浮遊し、猛スピードで周囲を回転するΧブレードにすべてを弾き飛ばされてしまった。
その動きは軌道上に残像が残り、まるで鞭であるかのようにも見える。


「ぐ、ぁ!」

「あグッゥ!!」

「フェイトさん!!シグナムさん!!!」


大木に叩きつけられてしまうフェイトとシグナム。
その名を悲鳴気味に叫ぶ唯子。


「あぁっ!!」

「なのはさん!!大丈夫ですか!?」


そして、なのはが唯子のもとへと転がって行く。
なのはを抱え込み、起き上がらせようとする唯子だが二人とも立つに立ち上がれない状態である。


二人のもとに、赤銅の視線が向く。
Χブレードがしなり、二人のもとへと刃が迫った。


「ッッ!!!」

《Protection!》

ガギィ!!!



その刃をレイジングハートが展開させたバリアで防ぐが、火花の散り方が尋常じゃない。
おそらくはすぐにでも砕けてしまうだろう。


その光景を、さっきの場所から動かずに見る赤銅。


「吾に至る者は無し、か・・・・神と呼ばれし吾の力、今だ強き事か・・・・」

「なにを・・・・」

「人の子よ。死を前にして、神と言われるそのものの存在に祈るがよい」

「あなたが・・・神だとでも!?」

「吾は・・・そう言われてきた」

「ッッッ!!!」





刃が、二人の命に迫る。


バリアが破られる。



その衝撃で、爆発が起き






ドォッッォォォォンン!!!!






「あぁ!!」

「な、なのは!!!」

「唯子!!!」




爆煙




そこから赤銅の姿、そしての柄が見える。





そして、刃の先端が露(あら)わになって





「え?」




その刃は、ある男の持つ別の剣に防がれていた。


真っ向からその剣を受け止めている剣。


それは美しかった。
「剣」と言われて、およそ思いつくどのものよりも美しかった。

まっとうな西洋剣。純白の汚れ無き剣。


「魔」とはすなわち「悪」ではない。
外れたものを指して「魔」と呼ぶのだ。
ならば美しすぎるものも、「魔」となりうるのだろう。

剣の名は――――――


「魔導八天・・・・?」


赤銅の口から、驚きと呼ばれる声色がこぼれ出る。




男は、不敵な笑みを浮かべ宣告した。


「人は死に直面した時、神に祈りを捧げる。ならば神よ、聞こう!!」


煙が晴れ、男の姿も露わになった。


「神が死に直面した時、何に祈りを捧げるのか!!」


裏天剣・魔導八天を携えて



「さて報酬は、エンドロール特別枠をもらおうか!!!」



かつて「奴」と言われた男が戦線に登場した。





to be continued
 
 

 
後書き


「奴」!!参・戦!!
ついにこの時が来た!!!

イイとこ持って行きやがってこの野郎!!!

「奴」
「うるさいよ!」

「奴」が戻ってくるのがだんだん早くなってくるのは、彼がだんだんと「マイカゼシュン」に戻って来ていたからです。

そして今回、完全に戻ってます。
彼が味方に付く理由等は、また次回で!!



次回、「奴」VS赤銅

ではまた次回
 
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