提督はBarにいる。
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肉+夏野菜で夏を乗り切れ!・その2
「足柄から夏バテしてるっぽいと聞いてたが、思ったより食欲はあるみたいだな。良かった良かった」
「え、足柄さん提督さんにそんな相談してたの?」
「だって、アナタ日に日にやつれてくし、目の下の隈がどんどん濃くなっていくんだもの!心配だってするわよ!」
足柄が頬を膨らませて怒ると、彼は気まずそうに目線を反らした。
「あー、なんというかその、それには深ぁい訳が……」
「何よそれ、私にも話せない事!?」
「足柄さんだからこそ話せないというか、何というか」
……ん?ははぁん。何となく読めたぞ、そりゃ足柄にもくっつかれたくないわなぁ?ククク。面白そうだからもう少し黙っておこう。
「まぁまぁ、取り敢えず足柄はこっち(キッチン)に入ってきて調理を手伝ってくれ」
む~……と膨れていた足柄だったが、俺に促されて諦めが着いたのか、大人しくキッチンに入ってきた。
「それで?何を作るのかしら?」
「彼はまだ胃腸が本調子じゃなさそうなんでな、それを整える野菜を使ったレシピをな」
《牛しゃぶの中華風サラダ~薬味たっぷりソースがけ~》
・牛モモ肉薄切り:160g
・醤油:小さじ1
・酒:大さじ2/3
・粉山椒:少々
・大豆もやし:50g
・ニラ:40g
・えのき茸:50g
・ニンジン:40g
・茹でタケノコ:40g
(薬味たっぷりソース)
・白すりごま:2g
・長ネギ:20g
・おろしにんにく:2g
・醤油:大さじ1.5
・酢:大さじ1.5
・砂糖:小さじ2
・ごま油:小さじ1
・一味唐辛子:少々
・白胡椒:少々
ネギや玉ねぎ、ニラ、にんにくなんかのあの独特の『ネギ臭い』匂い。あれは硫化アリルという成分なんだが、実は夏バテ対策にはうってつけの成分だったりする。疲労回復・滋養強壮・新陳代謝の促進効果が期待できるとされている。更に、唐辛子や生姜、山椒等『薬味』と呼ばれる食材は身体の内側から温め、弱った内臓の働きを助ける効果もある。ただし、唐辛子や生姜等の刺激物は胃腸が弱っていると逆効果ってのは前回も話したよな?その点は十分注意してくれ。さぁて、長々とした説明はこれで終わり。早速作っていこう。
まずは野菜の下拵えから。長ネギは粗めのみじん切りにし、タケノコ、ニンジンはやや太めの千切りに。ニラとえのきはぶつ切りにしておく。刻むのは足柄と手分けしてやっているが、中々手際が良い。
「そりゃあね?この位は出来るわよ」
耳を真っ赤にしながら照れている足柄。なんだか彼氏が出来てから、反応が幼くなってねぇか?コイツ。まぁいいや。
鍋に湯を沸かし、牛肉をボイルしていく。薄切り肉を使っているから大丈夫だとは思うが、生煮え等には注意してくれ。
「これなら豚肉とか鶏肉でもイケそうね!」
「まぁ確かにな。ただ、疲労回復って観点から行くと、牛か豚を選ぶといいと思うけどな」
前にも(外伝で)話したと思うが、疲労回復なら豚肉がいい。ビタミンB群が豊富だからな。しかし牛肉が劣っているかと言えば、そうでもない。牛肉はビタミンB群の量は豚肉に負けるものの、その分鉄分が豊富だ。鉄分が不足すると血中酸素濃度が下がり、疲れやすくなる上に、最悪の場合悪性貧血等の病気の元になったりするからな、日頃から気を付けて摂りたい栄養素の1つだ。何の肉をチョイスするべきかは、自分の体調と相談してくれ。
牛肉が茹で上がったら、ザルにあけて水気を切り、ボウルに移して醤油、酒、粉山椒で下味を付けておく。鍋はこのあと野菜を茹でるのにも使うからな、片付けないでおいてくれ。
もう一度鍋に湯を沸かし、長ネギ以外の野菜を茹でる。野菜を茹でている間に刻んだ長ネギと『薬味たっぷりソース』の材料を混ぜ合わせて、ソースを作っておく。
野菜が茹で上がったらザルにあけて水気を切り、皿に盛り付ける。茹でた野菜の上に牛肉を乗せ、ソースを回しかければ完成。
「さぁ出来たぜ、『中華風牛しゃぶサラダ』だ」
「い、いただきます……!」
サッと茹でて歯応えの残る野菜と、ピリ辛に味付けされた牛肉。それらを纏める薬味の効いたソース。飯にも酒にも合う一品だ。
「すんません、ビール……貰えますか?」
「あぁ、勿論」
足柄に、注いでやれよと目配せをすると、わたわたしながらも冷凍庫からジョッキを取り出して、サーバーからビールを注いでいる。
「はい、どうぞ」
足柄からジョッキ受け取ると、喉を鳴らしてグビグビと飲み干していく。半分程飲んだ所で、再びサラダを頬張る。足柄も彼が元通りの食欲を取り戻したのが嬉しいのか、うっすら涙を浮かべている。
「ほれ足柄、泣いてる暇なんぞねぇぞ?彼が食ってる内に、次の料理を準備しねぇとな」
俺がニヤリと笑ってそう言うと、足柄は目尻に溜まった涙を拭い、
「そうね!よーし、提督の味を盗んでやるわ!」
と意気込んでいる。
《焼肉屋メニュー!韓国風スタミナ冷奴》※分量2~3人前
・木綿豆腐:1丁
・牛切り落とし肉:80~100g
・白菜キムチ:70g
・おろしにんにく:小さじ1
・焼肉のたれ:大さじ1~2
・白いりごま:適量
・ポン酢:大さじ1
・コチュジャン:小さじ1/2
・ごま油:小さじ1
・あさつき(なければ万能ネギ):1~2本
これは昔俺が通ってた焼肉屋にあったメニューでな。それをオレ流に再現してみたレシピだ。
まず、牛肉とキムチは細かく刻む。特に牛肉はそぼろになるくらい細かく刻んでも美味いぞ。豆腐はパックから出して、水切りしておく。あぁ、あさつきを小口切りにしておくのも忘れずにな?
次に、仕上げに使うタレを作っておく。……といっても、ポン酢とコチュジャンを混ぜるだけのお手軽な奴だけどな。しかしこれが案外美味い。
フライパンにごま油を引いて熱し、にんにくと牛肉を一緒に炒めていく。牛肉に火が通ったら焼肉のたれを絡めて味付けし、火を切ったら白ごまを振りかけて絡めておく。
水気を切って食べやすい大きさに切った豆腐を皿に盛り、その上にキムチを散らす。その上に炒めた牛肉を乗せ、あさつきを散らしたら完成。食べる直前に、作っておいたタレをかけて召し上がれ。
「さぁ、お次は『韓国風スタミナ冷奴』だ」
「うわ、これまたボリュームがありそうな……」
ところがどっこい、キムチとコチュジャンの辛味が食欲増進を助けてくれる上に、豆腐が上手いこと肉の重さを緩和してくれる。
「あ、ご飯少しだけ貰えます?」
彼の言葉に小さめの茶碗にご飯をよそってやると、豆腐とキムチ、肉をご飯の上に乗ると、豆腐を崩して全体を混ぜ、そこにタレをかけて掻き込み始めた。行儀がいいとは決して言えないが、美味いのは間違いないだろう。
「どうだ、美味いか?」
「えぇ、最高です」
「そりゃ良かった。お前さん、店に入ってきた時は青白い顔をしてたが、今は血色良いもんなぁ」
「そういえば、あんなに食欲無かったのに……提督閣下と足柄さんのお陰ですね」
「にゃっ!?わわわ、私なんて何も……」
「だって、足柄さんが連れてきてくれなきゃ食べる事が出来なかった訳だし。ありがとうね、足柄さん」
「もう……」
足柄は頬を真っ赤に染めて、再び目をウルウルさせている。見てるこっちが胸焼け起こしそうだぜ……ったく。
「ほれほれ、甘ったるい空気を出すのもいいが、次の仕込み始めるぞ~」
俺がパンパンと柏手を打ったので現実に引き戻されたのか、2人の間にはちょっと気まずい空気が流れている。空気読めって?知るか。
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