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痩せてみると

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第十章

「俺は御前が気になったのはな」
「そうした気持ちもありましたか」
「辛いだろうと思ってな」
「確かに辛かったです」
「辛くて心がやつれるならだ」
 それならばとだ、岩崎はさらに言った。
「何時でも俺のところに来て話せ、いいな」
「同情でもですね」
「話を聞く、そして話す」
「そうしてくれますか」
「俺でよかったらな、それとだ」
「それと?」
「下らない奴等のことはもう気にするな」
 哲承にスルメを勧めつつ言った。
「気にするまでもない」
「人のことを囃す様な奴は」
「御前はするな、それだけでいい」
「そう、ですか」
「ああ、じゃあ飲め」
 酒も差し出した、カロリーオフのそれを。
「どんどんな」
「そうさせてもらいます」
 哲承も応えてだ、そのうえで。
 哲承はスルメも酒も楽しんだ、そして飲みながら岩崎にまた言った。
「酒、美味いですね」
「そうか」
「そして暖かいです」
「そうか?」
「こんな暖かいのは久し振りです」
 彼にとってはというのだ。
「凄く嬉しいです」
「ならいいがな」
「また、お話お願いします」
「ああ、何時でも来い」
 岩崎の返事は変わらなかった。そして実際にだった。
 哲承は岩崎と話をすることにした、二人の交流はそれからも続き岩崎が八条大学に進学しても続き哲承も八条大学に進み。
 彼は空手はしなかったが岩崎は続けその中で交流を続け。
 それぞれ就職してだ、先に哲承が結婚したが。
 自分から岩崎のところに赴き結婚相手のことを笑顔で話した、岩崎はその話を聞いてから彼に言った。
「いい娘みたいだな」
「はい、とても」
「俺も近々結婚するがな」
「そうですか」
「お見合いした相手とな、そして御前はな」
 あらためて哲承に言った。
「先に幸せになれ、そしてずっとな」
「幸せにですね」
「なれ」
「そうさせてもらいます、そして」
 哲承から岩崎に言った。
「結婚式には来て下さい」
「呼んでくれるのか」
「むしろ先輩には来てくれないと」
 哲承としては親よりもだった。
「どうしようもないです」
「そう言ってくれるか」
「だからお願いします」
「そうか、じゃあ俺もな」
「僕をですか」
「読ぶからな」
「そうしてくれますか」
 哲承は岩崎の言葉に笑顔で返した。 
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