| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ九十 風魔小太郎その四

「それだけじゃ」
「ですがその少しが」
「戦では変わってくる」
「そこを詰めるのもですな」
「戦では大事じゃ」
「左様ですな」
 こうした話もした主従だった、そのうえで。
 二人は風魔達が隠棲しているその場に向かった、そこは箱根の奥深くだった。そこに入るとだった。
 すぐにだ、二人がいる山道の周りからだった。多くの声がしてきた。
「何者か」
「どうしてここまで来た」
「旅の者が迷い込んだとは到底思えぬ」
「幕府の者か」
「どちらでもない」
 幸村は何処からか聞こえる声達に冷静に答えた。
「真田幸村と家臣の由利鎌之助じゃ」
「真田殿!?」
「そして由利殿か」
「真田家の次男殿と十勇士のお一人というか」
「嘘ではあるまい」
「いや、思えば並の者がここまで来られる筈もないしのう」
「忍の者でもな」
「ではやはり」
「貴殿達は真田殿主従か」
「そうなのか」
「うむ、これでわかるであろうか」
 幸村は腰の刀を前に出した、そしてその鞘に刻まれている六文銭を出した。そのうえで声達に対して言ったのだった。
「これでな」
「六文銭、間違いない」
「真田家の家紋」
「その家紋が刀にある」
「それでは」
 声達もここでわかった。
「真田殿か」
「そして由利殿か」
「左様」
 まさにとだ、幸村はまた答えた。
「それで貴殿等に頼みがあるが」
「何か」
「風魔小太郎殿のところに案内して欲しい」
 こう言うのだった。
「そうしてもらいたい」
「小太郎様のところに」
「そう言われるか」
「一体何の為に」
「そう言われるのか」
「それがしに術を授けて頂きたいのだ」
 由利も言った。
「時が来た場合に備えてな」
「時、か」
「時が来た時に備えてか」
「まさか」
「幕府に対して」
「今は多くは話せぬ」
 静かな声でだ、幸村が述べた。
「しかしまずは風魔殿とお話がしたい」
「どうする」
「小太郎様がここにおられることもご存知か」
「既にな」
「流石は真田殿と言うべきか」
「幕府にさえ気付かれておらぬというのに」
「無論誰にも言わぬ」
 風魔がここにいることはとだ、幸村は約束した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧