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お江戸

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第六章

「しかも飯食って風呂も入っただろ」
「そうしてきました」
「そこまでしたらな」
 それでというのだ。
「気持ちも切り替わるさ」
「そうなのですね」
「落ち込んでばかりだとな」
 それこそというのだ。
「身体でも動かして気分転換もしないとな」
「よくないですか」
「だからな」
「稽古や風呂もですか」
「よかったんだよ、まあ落ち込み過ぎてたらな」
「そのままだとですね」
「よくない、だからな」
 それでというのだ。
「よかったな、じゃあ今からな」
「花蝶にですね」
「行こうな」
「さて、どうなるかだな」
 ここで言ったのは権太だった。
「これから、しかしな」
「あの店のことは知ってるぜ」
 笑ってだ、太之助は権太にも答えた。
「それにこの吉原のことはな」
「だからか」
「あの店はあれでしっかりしてるんだよ」
 誠実さのある店だというのだ。
「やってるんだよ、だからな」
「今回のこともか」
「ちゃんと訳があるさ」
「そうなのですね」
「ああ、だからな」
 太之助は不安そうな濡髪に笑って返した。
「おめえさんのその肩戻してやるぜ」
「それでは」
 濡髪は太之助のその言葉を信じるしかなかった、それでだった。三人で実際にその花蝶という店に行った。すると。
 店で宴が行われていて店の外からも聞こえた、その宴の声を聞くとだった。
「今日でお別れだな」
「ああ、青柳ともな」
「店を出てか」
「身受けされるんだな」 
 そうなることを話すのだった。
「近江屋の旦那さんか」
「旦那さんの後妻さんか」
「妾さんじゃなくて後妻さんってな」
「中々いいな」
「そうだよな」
「本当にな」
「よかったぜ」
 こう話していた、どんちゃんとした鳴りものや笑い声の中で。その話を聞いてだった。濡髪は言った。 
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