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ユキアンのネタ倉庫

作者:ユキアン
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この素晴らしい錬金術で祝福を!




「え~っと、ユキエライト・ヴァージリオン、ようこそ死後の世界へ。面倒だからちゃちゃっと理解させるから動くな」

いきなりガラの悪い姉ちゃんに額を小突かれ、莫大な知識が流れ込む。別にそんなことしなくても大体の事情は飲み込めてたんだけどな、2回目だし。それにしても死んじまったのか。死因は、やっぱりあれか?妹弟子の弟子に盛られて既成事実を作られて結婚した件か?

オレを殺したのは妹弟子か、妹弟子の弟子の親友だろうな。たぶん、寝込みを襲われたな。薬には気をつけていたし、いや、香の類かもしれないな。そりゃあ、親子みたいな年の差の子を孕ませちまってるんだ、殺されても仕方ない。妹弟子の弟子の弟子は普通に祝福してくれたのにな。腐れ縁の騎士とか、ギルドの馴染みの受付嬢とかも。師匠と義母は笑ってたっけ。年下の義姉は複雑そうな顔を、義父は真正面から殺しにかかってきて妻に吹き飛ばされてたな。

「よし、自分の立場を理解したな。どうするよ」

「魔王退治しか選ぶ道がない気がするんですけど、そこら辺に一言」

「稀にだが転生を選ぶ奴がいる。基本、借金苦で自殺した奴ら」

「人の強欲さと狡猾さと残忍さがよく分かる一言をありがとうございます」

「で、魔王退治な。オススメは能力付与系だ。物品系は所持してないと意味が無いからな」

「武具は装備して初めて意味があるんだよ」

有名RPGの名台詞だな。TRPGの方が好きなオレは武具は装備する以外でも意味があるんだけどな。罠に投げたり、囮として投げたりだな。あとは、皮装備は最後の非常食だったりな。

「当然だな。で、何するよ?」

女神様に近づいて小声で問いかける。

「裏話とかあります?」

「ぶっちゃけ、ここは暇。定期的に娯楽品の奉納するって言うなら」

女神様も小声で答えてくれる。

「具体的には?」

「酒とツマミ。タバコも良いな。副作用は魔法でどうとでもなるからな」

「奉納の仕方は勿論サービスですよね」

「当たり前だろうが。ただ、加護を期待すんな。向こうじゃあマイナーだからな。大して干渉できない」

「OK。商談成立で」

「じゃあ、裏話。結構な数が向こうに送られてるが死なれるとかなり面倒だ。特に物品系はそのまま世界に取り残されるからな。回収要員がいるぐらいだ。あと、物品系は鋳型に近い。似たり寄ったりな性能だ。最初期に危険すぎる物を注文した奴らがいるからな。かなり強力な洗脳系とかな。逆に能力付与系は多少の無茶でも用意してやれる。死んだら世界に溶け込んで回収しやすいからな。別に魔王を倒さなくても適当に雑魚を狩りまくってくれるだけでも十分だったりする」

なるほど。なら、別に勇者しなくても良いな。一昔前の主人公みたいなやつが頑張ってくれるだろう。オレは好きに楽しませてもらおう。文明レベルはアーランドと大して変わらない程度か。特に特典がなくてもやっていける、いや、待てよ、アーランドと物理法則が異なるとガスト系列の錬金術が使えない可能性が高いのか。それなら、これだろうな。

「『全ての錬金術を司る程度の能力』って行けます?」

「ちょっと待てよ。ギリギリアウトくさいな。『全ての錬金術を十全に扱える程度の能力』なら行けるな」

「その差は?」

「力量次第だと神を生み出せる。神っぽいものならともかく、マジモンの神はまずいからな。どうするよ?」

「じゃあ、それで」

「よし、ついでに最低限の装備をくれてやる」

「できれば伸縮式か折りたたみ式の10フィート棒も」

「変なものにこだわるな。まあいいけどよ、おっ、ちょうど冒険者セットとかいうやつがあるな。こいつでいいだろう。最後のおまけに最初はこうした方が良いって知識も付けておいてやる。それじゃあ、楽しんでこいや。奉納も忘れんなよ」

そうして白い光に包まれて意識が遠くなる。







この世界に来てから早いもので半年の時間が経った。自重しているようなしていないような、正確には加減が分からずに錬金術を十全に使えていなかったのだが、とうとうオレは自分の店を持てるようになった。師匠のセンスに乗っ取り、屋号は『ユキトのアトリエ アクセル支店』だ。本店はアーランドだ。

これでようやく落ち着いて錬金生活が始められる。女神ロネへの奉納品のグレードも上げられる。此処まで長かった。最初期は錬金術師じゃなくてパティシエみたいになってたからな。今も『ユキトのお菓子工房 アクセル本店』ならびに『王都支店』は絶賛フル稼働中だ。アクセル本店店長としてホム君を、王都支店店長としてホムちゃんを、その部下として30人ずつのちむ達が働いている。

オレが元から使える錬金術とは異なる錬金術によって素材の質を好きなように用意でき、最高の質と腕で用意した傑作のお菓子をちむ達が量産する。儲かるに決まっている。アクセルの街の領主が不当に税を取ろうとしてきたのでちょっと王都支店にも情報を流してやれば、いつの間にか領主が変わったりもしたが問題ないな。どうも情報が途中で曖昧になったりすると聞いて、状態異常無効化を付けたお菓子を差し入れした途端に解決したけど。

さて、近況報告はともかく、初心者の街らしい便利な使い捨てのアイテムを錬金しますか。







初心者の街アクセルとは実は語弊がある。確かに初心者とも言えるレベルの冒険者は多い。だが、王都と比べても謙遜のないレベルの冒険者も多い。というか、王都の冒険者とアクセルの冒険者が総力戦をやったらアクセルの冒険者が勝つぐらいには戦力が充実している。理由はこの街にはサキュバスのエッチなお店が存在するからだ。あとは、分かるな。つまりはそういうことだ。オレもお世話になっている。

で、何が言いたいかと言えば、ギリギリ赤字が出ない程度の経営になっている。本当の初心者が扉を潜るには胡散臭く、試しに入ってみればラインナップが本当に初心者用の物しか展示されていないからだ。どんな相手でも満足できる在庫はあるんだけどな。

「はぁ~、金には余裕があるとは言え、本業が暇なのは落ち込むな」

暇を持て余してドラクエの賢者の石を錬金しながら暇をつぶす。完成したそれをコンテナに突っ込む。そろそろ新しいコンテナも作らないと在庫管理が出来なくなるなと思いながらソファーに寝転がって眠る。デカイベッドもあるのだが、ソファーの方が寝慣れているために殆ど使っていない。

「うひゃあああ!?」

女の叫び声に目が覚めて飛び起きる。声がした方はコンテナが置いてある部屋への扉の方向だ。つまりは泥棒がトラップに引っかかった声だ。

「泥棒確保って、クリスじゃないか」

限りなく透明な空気に近いスライムに引っかかっていたのはアトリエの常連客であるクリスだった。

「あ、ども」

「盗賊職についているとは言え、本気で盗みを働くか。常連の好で衛兵には突き出さないでおいてやるが、とっておきのお仕置きをプレゼントしてやろう」

「え、えっと、やめて!!私にエッチなことするんでしょう、エロ本みたいに!!」

クリスがお約束なセリフを吐くが、オレは同意の上でしかそういうことはしたくない。薬とかもちょっとな。別に飢えてないし。むしろサキュバスの淫夢サービスじゃなくて本番の時に死なないように超強力な精力剤を自分に使うぐらいだ。

「いいや、何もせんよ。放置するだけだ」

「えっ?」

「ちなみにそのトラップ、オレの魔力がないと抜け出せないから。垂れ流しになるだろうがオレは気にしない。飯は食わせてやるから安心しろ」

「気にして!!というか、嘘だよね?」

「嘘はあまり好きじゃない」

「ご、ごめん、謝るから。理由も全部話すし、なんだってするから」

さっきクリスにお約束なセリフを言われたので、こっちも某有名なセリフで対抗するか。確かネクロフィリアの盗賊の選択肢だっけ。

「このまま眺めておくのもいいか」

「やだやだやだ、ごめんなさい、本当に止めて!!」

その後、本当に漏れそうになる直前まで眺めた。おっぱいは小さいが、おしりは中々良い物を持っているな。本気でガチ泣きされてるがそれはそれでかわいいから別にいいだろう。むしろ、クリスは泣き顔のほうが可愛いな。

「それで、何を盗みに入った。あの部屋にあるコンテナは店に出していない成果物とか材料が入っているのだが。中には取扱い注意の物もある」

「ぐすっ、い、言っても信じてくれ、くれないかも、しれないけど」

「とりあえず泣き止め。ほら、工房の方の人気商品のぷにぷにゼリーと朝露のミルクティーだ」

ポーチを通してコンテナの中からオリジナルを取り出してテーブルの上に並べてやる。

「ありがとう」

「落ち着くまでは待ってやる。オレはオレでちょっと忘れていたことをやらないといけないからな。じっとしてろ」

「やらないといけないこと?」

「女神ロネへの奉納」

ポーチから簡易祭壇を取り出して、最近女神ロネが気に入っているオレがお米から作った発酵ジュースをたる(品質120)で取り出して祭壇の前に置く。それから柏手を打って、適当に魔力を祭壇に送ればたるに入った発酵ジュースが消え去る。決して密造酒ではない。

「よし、終了」

「ちょっ、ちょっと、今のって!?」

「見ての通りの奉納だが?」

ちゃんとしないと不義理だからな。たまに数日ずれたりするけど、その分はちゃんと利子を付けて送っている。

「えっと、他の世界から送られてきたの?」

「そうだけど?」

「よかった。それならまだ信じてもらえるかもしれない。あのね、私は女神エリス様の依代みたいなもので、神器を回収してるの」

「神器?ああ、物品系チートアイテムか。そう言えば回収要員がいるって聞いてたな。じゃあ、クリスがその回収要員か」

「えっと、まあそうなるんだけど」

「それで、オレのアトリエに忍び込んだのと話が繋がらないんだが」

「いや、あれだけ神器の気配が垂れ流しになるぐらい大量に集めてるから回収しようかと」

「何?素材の中に神器が混ざってるのか?」

「え?」

「え?」

おかしい。どうも話が噛み合わない。認識がずれているな。お互い確認し合ったほうが良いな。ポーチから取り出すのは作ったばかりのDQ式賢者の石を取り出す。

「これは、寝る前に錬金したアイテムなんだが神器か?」

「……神器だね。まさか、あのコンテナの中って」

「素材と店に出していない錬金物だ。コンテナ自体もちょっと特殊でな、中が体積じゃなくて個数が容量に反映される」

「それって、どんなに大きいものでも1個にカウントすると関係ないってこと?」

「逆に言えばどんなに小さいものでも数を揃えれば容量が一杯になる」

そう言うとクリスは頭を抱えてテーブルに突っ伏す。

「なんで神でもないのに神器を量産できるのよ」

「これぐらい、材料とレシピさえあれば一流の錬金術師なら簡単に作れるぞ。妹弟子(ロロナ)もその弟子(トトリ)もその弟子(メルル)も普通に作ってるし。むしろ、オレ達の流派の錬金術師は弟子入りして師匠から支給されるのは、釜と杖とコンテナとカゴとちょっとした錬金素材とレシピだけだぜ。最低限の物以外は自分で調達が基本だから」

「私の今までの苦労を返せ!!」

そんなこと言われてもな。これぐらい普通普通。師匠はもっとすごかったし。無から有は流石に生み出せなかったけど100の材料で150位は産み出してたけど。オレも10の品を魔力を対価に10と9にするデュプリケイトを使えるし。

「そもそもなんで神器の回収なんてやってるんだ?」

「ある時から魔王が死んだ冒険者たちから集めて部下に与えたりし始めたから。人間も悪用しているのがいるから」

「よし、ならば解決策を提示しよう。弟子になって神器クラスのアイテムがこの世界のアイテムの平均値にしない?」

クリスのアトリエ アクセルの錬金術師 始まります。

師匠からの支給品
伸縮式10フィートの杖
カゴ(容量50)
コンテナ(容量300)
レシピ集(はじめての錬金)(便利な日用品)(おばあちゃんの知恵袋)(錬金クッキング)(魁!漢の美学)
ちむりおん君
普通のパイ 20個
塩 5個
小麦粉 5個

「えっ、本当に始まっちゃうの!?」

「クリスがオレの初めての弟子だけど大丈夫。妹弟子とかその弟子とかその弟子の面倒は見てきたからな。安心しろ、個人で国家を転覆させれるぐらいの錬金術師にしてやる」











「すみませ~ん」

「はいよ、ちょっと待ってくれ」

ああ、クリスは素材集めに行ってるんだっけ。栞を挟んで本を閉じる。ベッド代わりのソファーから起き上がり、掛け布団代わりにしていたローブを羽織ってカウンターに向かう。

「ようこそ、ユキトのアトリエに。何をお求めかな?」

営業スマイルを心がけていたから問題ないが、内心顔を顰める。なぜならカウンターの向かいに居たのは、珍しいことに紅魔族だからだ。この一族は産まれた時から重度の厨ニ病で名前からぶっ飛んでいる。そのくせ12歳になると全員が上級職業のアークウィザードについて、学校では成績優秀者にスキルポーションが配られ、教師が紅魔族の里の周りのモンスターの動きを封じて生徒に倒させてレベルアップさせる養殖まで行っている。暇つぶしに魔王軍にちょっかいをかけるような種族だ。

なんでアクセルにいるのかは分からないが、いや、お菓子目当て、違うな、王都支店の方が近いはずだ。なんでいるんだ?

「こちらでは店頭販売の初心者向けのアイテム以外にもオーダーメイドでアイテムを作ってくれると聞きまして」

「正確に言えば店頭に置いてないだけで倉庫に入ってるのを引っ張ってきたりするほうが多いんだがな。確かにオーダーメイドも承っているが、カネがかかるぞ。まあ、材料を持ち込んでくれれば値引きは可能だ」

「特定の魔法の威力を増幅することはできますか?」

「出来なくはないが、かなり面倒だぞ。とりあえず、今持ってるその杖では無理だな。もう1ランク上の杖をベースにする必要がある。それから、増幅したい魔法の属性の力を持った物品、質によって増幅率が変わる。最後に純度の高い宝石、出来るだけ不純物の少なくて大きい物がいいな。全部こっちに任せるなら増幅率は30%~50%、魔力の消費率が30%減、属性にもよるが値段は200万エリスはいるな。所で、どの魔法?」

「爆裂魔法です」

「……ワンモア」

「ば・く・れ・つ、魔法です」

「冒険者カードを出せ」

冒険者カードを確認すると巫山戯たスキル構成をしてやがった。

「バカに付ける薬はないな」

「なっ、バカとはなんですか!!」

「爆裂魔法を1発打って倒れてるんだろう。馬鹿と言わずになんという。他人に迷惑をかけるだけだ。それにこのスキル構成からすれば、見た目に囚われてるんだろう」

「ふん、真の爆裂をしらないからそんなことを言えるんですよ」

「ふん、超一流の錬金術師は真理に最も近い者、世界一の錬金術師の恐ろしさを教えてやろう」

「ぬぅ、我が名はめぐみん、爆裂魔法を使いこなす者。やがて世界を滅ぼす者」

「笑止、我が名はユキエライト・ヴァージリオン、あらゆる錬金術を使いこなし真理に触れた者。とか言ってるけどジョブはバトルセイジ。すでに世界は思うがままよ」

実際、時間操作系とか空間操作系のアイテムを錬金できるようになったからな。あとは、材料がアレな賢者の石とか不老不死の薬とかだな。若返りの薬は割と早い段階で開発している。妹弟子に弟子が出来た辺りだな。そう言えば、同年代だと勘違いしてたっけ。

ちなみにバトルセイジは例外に分類するスキル以外の全てを低スキルポイントで習得できる冒険者の次に器用貧乏なジョブだ。まあ、火力は錬金術でどうとでもなるし、回復も錬金術でどうとでもなるし、補助も錬金術で、あれ?錬金術だけで良いじゃないか!?

それはともかくめぐみんと共に店を出て鍵を閉める。それからポーチから自転車を取り出す。ゲームのレシピはシステム上の関係でレシピ通りの物しか作れないが、一流になればそれが解禁されるのか作りたいと思った物のレシピを閃くようになる。その結果がこいつだ。

「なんですか、それは?」

「自転車だ。ほれ、後ろの荷台に座れ」

本当はバイクもあるんだけど、多少の運動も兼ねて自転車に二人乗りする。

「おおっ、これは便利ですね」

「5万エリスで売るぞ。サイズ調整とか色も指定できる。メンテの度に料金は取るが、かかっても1万エリスってところだな」

「むぅ、メンテはどれぐらいの頻度に?」

「手荒に、壁にぶつけたりしない限りは年1回程度で十分だな。異常を感じた時はすぐに持ってきた方が良いが、それだけだな」

「それぐらいなら、いえ、それでも、う~ん」

「爆裂魔法意外にも上級か中級魔法を覚えれば余裕で稼げるだろうが。あっ、ちなみに初級、中級、上級の3つを覚えると魔法マスタリーがスキルに生える。取ると魔法全般の消費魔力が減って威力が上がる」

「なんですか、それ!?」

「スキルポイントが余ってるから片っ端から覚えたら急に生えたんだよ。気になったから他のもとってみたが、どれも初級・中級・上級を取るとマスタリーが生える。効果はどれも一緒だ。影響するスキルが違うだけでな」

そんな話をする内にアクセルの街から草原にまで辿り着き、そのまま打ち捨てられた古城まで向かう。ちょうど解体の依頼があるからついでにこなしてしまおう。

「よし、到着。ターゲットはあの古城だ。先手はオレのネタ錬金術からだ」

「ネタ?」

「ネタだ。ジョークグッズに近い」

そう説明してから腰のポーチからギガフラムを取り出す。まあ、ちょっとしたネタ特性を付けてあるがな。ギガフラムを地面において、ポーチからオレの杖を取り出す。

「この距離から杖で打って城まで届かせるつもりですか!?」

「一流の錬金術師の必修科目だから、なっと!!」

ゴルフと同じ感覚でギガフラムをショットする。3km程なら誤差10cm単位での精密ショットが可能だからな。妹弟子達はもう少し誤差が出るがそこまで酷いものじゃない。

ギガフラムが空高く舞い上がり、古城に落下し、半径5kmが爆発に包まれる。まるで世界の終わりを見せつけられるかのような光景が迫って来る。

「ちょっ!?早く逃げないと」

「真の爆裂を知っているなら耐えられるって。だって、爆裂を受けてないと何が真なのか分からないからな」

逃げようとするめぐみんを捕まえて帽子が飛ばないようにしっかり持っておく。そして爆発に巻き込まれ、多少煤けただけですむ。

「えっ?」

「最初に言っただろうが、ジョークグッズに近いって」

特性:見掛け倒し(効果99%ダウン)と効果範囲・絶大を付けたネタのギガフラムだ。爆発の熱も風呂に入ったぐらいで、爆風も扇風機の強程度だ。

「今のが余計な特性を付けて威力をほぼ無害にまで落とした物だ。見た目も範囲も同じで威力だけ100倍以上に出来るが、どうする?」

「ぐ、ぐぬぬぬ、いいでしょう!!受けて立ちます!!」

「その意気や良し!!見晒せ、我が最高傑作品!!」

ギガフラムでありながら特性:融け出す魔力などのあり得ない特性をふんだんに付けまくった一品。王都に撃ち込めば誰一人生き延びることは、いや、師匠なら平気な顔して耐えそうだな。義母はちゃんと装備して防御すれば、ということはステルクの野郎もか。弟子’sも装備次第では生き延びそうだな。意外と生き延びるな。この世界にもそんな奴らがいるのだろうか?

そんなことを考えながらも身体は正確にギガフラムを廃城に撃ち込んでいた。おっと、このままだとめぐみんが死ぬな。ローブをかぶせてやって魔力を通してやる。これで30秒ほどは外界からの影響を完全カットしてくれる。オレ自身は爆発に背を向けて、デュプリケイトで複製したエリキシル剤を口に含んでおき、ダメージを食らうと同時に飲み込んで回復する。あっ、この方法を使えば生き残れる奴がもっと増えるな。

「まずい、もう一本」

回復のタイミングが早すぎてダメージが残ってしまったのでもう一本エリキシル剤をデュプリケイトで増やして飲む。発動コストより回復量の方が多いからこそ出来る無限回復は素直に便利だと思う。

「こ、これは!?」

めぐみんが草木一本も生えていない凄惨な光景に絶句する。使うのは二度目だが、ひどい光景だよな。やっぱり普段使う分はN/Aか特性:融け出す魔力を付けたレヘルンで十分だな。その後、めぐみんは何もないからこそ迷惑がかからないからと爆裂魔法をクレーターに撃ち込みぶっ倒れる。いやがらせに自転車の荷台にチャイルドシートを取り付けて、そこに乗せてアクセルまで連れて帰ったんだが、この世界にはチャイルドシートなんて存在していないせいでネタにもならないことに気付いて落ちこんだ。

その後、とっとと魔力を回復させるためにティータイムに誘ってやったのだが、父親の所為で色々と金銭に困っているようだ。聞いてみるとたしかに効果はすごい魔道具なんだが、デメリットがデカすぎたり、使い道に困るような物ばかりだ。本人は本人で爆裂魔法しか使えないからあまりお金を稼げずにいる。それでもなんとかやりくりして幼い妹のために仕送りをしているそうだ。

「う~ん、とりあえず多少は回復したな。ちょっとこっちに来て」

釜の前まで連れていき、トゲトゲがついている実とかんしゃく玉とチラシをめぐみんに渡す。

「それじゃあ、実の皮を剥いで釜に入れてかんしゃく玉も放り込んで潰すようにかき混ぜていって、たまに突く感じで全体的に押しつぶしていく。完全に潰せた感じがしたら最後にチラシを放り込んで素早くかき混ぜる」

うむ、隣で指導しているとは言え一発でクラフトが作れたな。

「よし、めぐみん。弟子になれ」

「だが、断る」

「一応アトリエで作業してる時は三食作って構わんぞ。材料は適当に使って。あと、腕が上がるとこんなのが作れる」

ポーチからエリキシル剤を取り出して目の前で振る。

「さっきも飲んでいましたが、それは?」

「マナタイトよりも安く手に入るMP回復薬、ついでに状態異常も体力もめちゃくちゃ回復する。更に更に、おまけのおまけに免許皆伝になればおまけでこの技も伝授してやろう」

ポーチ内ではなく目の前でデュプリケイトでエリキシル剤を複製する。

「魔力を使って自分の錬金物を複製するデュプリケイト。熟練度にもよるがエリキシル剤の回復量よりは少ない。つまり、お腹がチャプチャプになるのを我慢すれば無限に魔力を回復させることが出来るのだ!!」

「師匠、何をやっているんですか。早く教えてください!!」

「その欲望に目がくらんだ手のひら返し、嫌いじゃないぞ。というわけで色々説明もする必要があるし、弟子用装備一式を用意したりする必要もあるから、明日もう一度来ると良い。このアトリエは拠点として使っていいからな」

「分かりました。荷物をまとめてまた来ます」

アトリエから飛び出していくめぐみんを見送り、屋根裏の掃除と補強を施して下にあるベッドを屋根裏に運び、もう一つ出してカーテンで仕切りを用意する。それからクリスの分と同じように棚やテーブルや椅子を用意してやる。これで釜を3つ用意しても大丈夫になったな。あとは、支給品だな。中堅クラスの装備と経験を持つクリスと比べれば若干豪華だが、仕方ない。野垂れ死にされるよりは良いだろう。


師匠からの支給品
伸縮式10フィートの杖
カゴ(容量60)
コンテナ(容量300)
レシピ集(はじめての錬金)(便利な日用品)(おばあちゃんの知恵袋)(錬金クッキング)(魁!漢の美学)(爆発は芸術だ!)
ちむちむちゃん
普通のパイ 30個
砂糖 10個
小麦粉 10個
クラフト 10*3個(3回使用できるのを10個。3回使えばジャイアントトードも狩れる。お値段3000エリスで販売中)
3万エリス

師匠や弟子’sには甘いと言われそうだが、弟子’sにはよく手を貸してやっていたり、レシピもそこそこ渡してやったりしてたしな。とりあえず、3年程度で一流まで鍛え上げますか。

めぐみんのアトリエ アクセルの錬金術師 も始まります。
 
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